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じゅびあの徒然日記

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2012年10月15日
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母が肺がんで亡くなって年単位の時間が経った。
ずっと温めていたこの話題に触れても、そろそろ許してくれるだろうと思う。
突然だが、久々の更新をすることにした。

亡くなる3ヶ月前、母の呼吸状態は悪化して、再び総合病院へ入院となった。
その時まず、胸水がかなり溜まっているとのことで、それを抜く治療が行なわれた。

次に主治医(後期研修医で、内科になって1年目。もちろん上に指導医はついている)から
勧められたのは、「胸膜癒着術」という治療だった。
肺とそれを包む胸膜の間に薬を流し込み、人工的に炎症を起こさせて、肺の外側と胸膜を
癒着させ、物理的に胸水の溜まるスペースをなくしてしまう、という説明を受けた。
もちろん大手の総合病院なので、説明は書面で行なわれ、様々な合併症についても聞かされた。

「この治療をやらないと、また短期間で胸水が貯留して呼吸困難になり、抜く治療を行なわなくてはならない」、
「やっておけば今回のような呼吸困難は起こしにくくなる」、
「ただ、この治療をしても十分に癒着しなかった部位に部分的に貯留することはある」、
「炎症を起こすので、発熱、場合によっては高熱が出ることもある」
「もちろん体力的に治療に耐えられない場合もありうる」云々...。

現在の医療は訴訟に対して常に防衛的にならなくてはいけないので、とにかく
マイナス要因について一通り説明しなくてはならない、というのがある。
このような大手の総合病院では、きっと説明のマニュアルも決まっているのだと思う。

私も医師の端くれなので、胸膜と肺をくっつければ胸水が溜まりにくくなるというのは分かる。
そしてもちろん、それが姑息的な治療(一時しのぎ)でしかないということも分かる。
だが、決めかねた。
これが医師である私でさえそうなのだから、一般の「素人」だったらどうなんだろう、と思った。

まず、母の余命はどれくらいと予想されるのか。
短期間で胸水がまた貯留する可能性がある、と言っても、もうそこまでももたない可能性が
高いなら、何も高熱など苦しい思いをして、そんな治療を受ける必要はないと思えた。
それに体力的に耐えられない可能性がある、というのは「防衛的な説明」としては分かるが、
実際のところ、そんなに危険を冒してするような状態なのか?
また、その治療は実際かなり苦しいのか?

主治医の説明は
「とりあえずすぐに今の状態が生命を奪うということはないが、急変すれば分からない」
「すぐに亡くなるような状態ではないので、数ヶ月から半年単位で考えてもらいたい」
「高熱は出る人と出ない人がいるし、苦しい程度には個人差がある」
「もちろん人工的に炎症を起こすし、合併症もあるので絶対安全とは言い切れない」
...全然答えになっていない。そんなことは分かっているのだ。

この先生はわざわざこの治療の説明で私たちを呼んだのだから、多分やりたいのだろうけど、
やったほうがオススメなのか、危険だということを前もってやたらに念押ししておきたいのか、さっぱり掴めなかったのだ。

私は仕事を急に早退してまで、指定された日時に姉と主治医面談に出向いたのだが、
どうしても即決できなかったのである。

数日後改めて主治医に面談をお願いして「先生のお考えは、色々な合併症も考えられるが、
本人の呼吸困難を考えると、やったほうがベターということですね?」と念押しして、
書面に署名をし、治療の同意をした。
しかし主治医の先生にとって、この時の私たち家族の印象は、どうもサイアクだったようだ。





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最終更新日  2012年10月15日 23時26分45秒
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