カテゴリ:森田理論の基本的な考え方
渡辺和子さんのお話です。
良寛和尚という方が、その手紙のなかに「災難に遭うときには災難に遭うがよく候、死ぬる時節には死ぬがよく候。これはこれ災難を逃るる妙法にて候」と書いていますが、これは辛いことの多い人生を生きていく上の一つの知恵ともいえましょう。 病気の時には病気になりきること、浪人の時には浪人になりきることの大切さ、つまり、そのものと一体になることによって、そのものの存在から解放され、自由になるということなのです。 今、私はいわゆる高齢者の仲間入りをして自分の不甲斐なさと顔を合わさねばならなくなっています。 かってのように物事を手際よく片付けられない自分、若い時にはなかった体の諸部分の不調、ハイヒールでさっそうと歩いていたのにローヒールを履かざるを得なくなった自分、そんな自分が今や自分の目の前に立ちはだかっています。 老いというものは悲しいものと、しみじみ思います。 そこで最近、生きるということ自体がすでに一つの大切な使命で、何をどのくらいするかということは、それに比べたら付随的なものではないかしら、と考えるようになりました。 良寛の言葉になぞらえていうなら、老いる時には老いるがよく候、とでもいうのでしょうか。 今まで自分が持っていたプライドが一つひとつはぎ取られていって、自分より若い人たちの活躍を喜ぶことができる自分になること、他人に頭を下げて生きていかねばならない。 その現実を直視して、それを謙虚に受け止めていくこと、それは口でいうほど易しいことではありません。でも、そのように、その時その時の、ありのままの自分を肯定して生きていくことこそ、真の自分へのやさしさであり、人生を生きていく上での一つの妙法といえるのではなでしょうか。 (目には見えないけれど大切なもの 渡辺和子 PHP文庫 163ページ) 歳をとると今まで苦もなくできていたことができなくなってしまいます。 なんとかできるという人もぎこちなくなります。 歩くことがやっとという状態になる。骨粗しょう症になることもあります。 肌の艶もなくなってきます。しわやシミが出てきます。 髪も抜け落ちてくる。歯も抜けてくる。記憶力も衰えてきます。 さまざまな痛みや病気で苦しむようになります。 歳をとるということは、今まで当たり前だったものが、次第に失われていくということだと思います。 名誉、権力、所有物、金銭、財産、健康、筋肉、記憶力などこれだけは絶対に手放したくないと思っていたものが自分の手元から逃げて行ってしまう。 この現実と格闘していると、身体はますます衰え、不安やストレスだらけになります。また自己嫌悪、自己否定するようになります。 これから逃れる方法は何でしょうか。 良寛さんは、その事実を価値批判しないでその事実と一体化することが災難から逃れる妙法だと言われています。森田の考え方と同じです。 そのうえでまだ失われていない面を見分ける知恵を持つことが大事だと思います。 長く生きてきた人は他人様のお陰でここまで生きてきたということがいえます。 これからはもっと他人様のお世話にならざるを得なくなります。 そこから自然に感謝の気持ちが生まれてきます。 感謝即幸福という人もいます。 次に年老いた人は、数多くのミスや失敗の経験者です。 それを公開して、他山の石として役に立つ活動をすることができます。 年老いた人はもう1回人生をやり直すとしたら、ここは注意したいというものをつかんでいます。 自分の人生は1回限りですが、その知恵を若い人達に伝えていくようにすれば、自分の人生を大いに活かすことができます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.08.24 06:31:48
コメント(0) | コメントを書く
[森田理論の基本的な考え方] カテゴリの最新記事
|
|