第112話 ヘイワーズ家の正体
僕は、良く寝ているアリシアの髪を撫でながら、今だったら言えると思った。アリシア、君はずるい。多分、僕の気持ちに君はもう気付いているはずなのに。告白すら、拒絶する。だけど、寝ている今だから、せめて言わせて欲しい。気持ちが溢れて、言葉になって零れ落ちた。「僕は君を誰よりも愛してる。多分、初めて会った時から」そっと耳元で囁いた。ベッドの方から、「パパ……」と言うエリーの小さな声に、びくっとすると、指を立て、「しーっ」と口止めした。その時、廊下をバタバタと走る音が聞こえ、独特の間延びした声と共に扉が勢い良く開いた。「センセー、凄いよぉ~!アリシアちゃんじゃな~い?これぇ~」アマンダが手に握り締めた新聞の「Missing(失踪)」の文字と、一面いっぱいのアリシアの顔写真に気付き、奪うように新聞を手に取り、急いで記事に目を通した。「ねぇ~。センセ~。なんて書いてあるのぉ?」「まずい……」この内容は決してアリシアに読ませてはいけない。僕はこの新聞を捨てようと、立ち上がった。「ねえ。先生、なんて書いてあるの?」突然、背後から白い手が伸び、僕が持っていた新聞を奪い取った。「アリシア!」一体、いつから起きていた?さっきの告白の時、彼女は、本当に寝ていたのだろうか……そんな疑惑に動揺し、その場に凍り付いた。しかし、新聞に目を落とす彼女の様子に我に返り、僕は急いで新聞を奪い取ろうとした。そんな僕の手を、アリシアは読みながらスルリと逃げていく。やがて、アリシアはピタリとある一点に目を落とすと、蒼ざめ、新聞をその手から落とすと、崩れ落ちた。僕は真っ青になり、震えるアリシアの肩を抱きしめた。The Haywards, a merchant of death, is ……(『死の商人』ヘイワーズ家の……)「先生、これは……本当なの?」彼女は信じられないと言った表情を浮かべると、震える手で記事を指差していた。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪