館長泰三「20世紀の陰謀」1.チャーチルの謀略(2)「世紀の恋」の影にチャーチルあり
1936年1月、イギリス国王ジョージ5世がなくなり、ナチスドイツに好意的なエドワード8世が即位した。ところが、この新国王とシンプソン夫人とが恋愛関係にあった。エドワード8世はシンプソン夫人との結婚を真剣に考えていた。しかし、皇太后クイン・メリーをはじめ、王室関係者、貴族の多くはこの結婚に反対であった。ボールドウィン首相も反対であった。カンタベリー大僧正まで反対声明を出した。大英帝国の王冠の座をアメリカの2回の離婚歴を持つ女性に汚されたたまるかという雰囲気であった。ヒトラーはこの年にドイツとイギリスとの間の友好同盟を結ぶつもりであったが、このシンプソン事件の発生で頓挫してしまった。チャーチルは国王の側につき、ボールドウィン内閣打倒とセットにする戦術とした。ヒットラーに対抗する軍事力の強化と、エドワード8世に対するボールドウィンの干渉への反対を主張した。世論は国王支持派が優勢だったが、閣僚・貴族は結婚に反対でエドワード8世は孤立した。そして国王は退位を決意し、シンプソン夫人と手を取り合ってイギリスを去り、ロスチャイルド男爵のウィーンの別荘に入った。ナチスドイツに好意的なエドワード8世がいなくなったので、イギリスとの間に友好同盟を結ぶヒトラーの望みは遠のいたとのことである。