おれは中小企業外資サラリーマン 26 訂正
日本とアメリカ、同じ相撲でも土俵はちょっとちがいます では きょうはじめての人はフリーページから 朝。タイマーがなったとき松田はどこにいるのか一瞬、わからなかった。その、ピピピピーという聞きなれない音がなになのか?そして、そばに妻、恵の存在をおもわず探していた。そして、すぐに、いまはアメリカにきているということを認識した。 目を覚まさせるために、シャワーをあびた。すると全身の毛穴がはじけ、目がさめたように感じた。そして、髪をブラッシングして寝くせを整えた。身繕いをし、ネクタイまでしめた。もう、すぐにでも出かける体制になった。 しかし、頭は完全には晴れきっていない。これが時差ぼけというやつか、松田はあらためて思った。アメリカは東海岸の場合、直行便で13時間近くかかる。そして時差もほぼそれと同じくらいあるから、成田を発った同じ日の、ほぼ同じ時間にアメリカに着く。そのとき、日本は時計の針はすでに半日先をいっているのだから、リズムが狂うのは当然といえば当然だ。 このあと、出張に何度かいくことになるが、かならず夕方につく便をつとめてとるように心掛けた。ただ、一度だけシカゴへ出張することがあり、朝たって現地に朝8時半ころつく便でいったことがあったが、平日であったこともあり、空港から会社へつれていかれた。そして、半日、会議にでたがさすがに頭が機能しなかった。それ以来、渡米にはかならず、夕方もしくは午後着便を使うようにしている。 すべて準備をすませ、一階のレストランでバイキング形式の朝食をとったが、大沢の姿はなかった。スコットが迎えにくる9時まで、コーヒーをのみながら、部屋からもみることができた同じ風景を眺めていた。さきほど着替えながらニュースショーをみていたら、渋滞情報をながしていた。おそらく、ホテル前をいく道路を走る車も通勤なんだろう。頭のもやもやをはらすために、コーヒーを何度もおかわりをして、同じように外をみていると、トントンと窓をたたく音がした。気が付くと窓のそとにスコットが立っていた。そして、すこし離れた場所に大沢もいる。 川越は松田の英語に対する不安の払拭で、大沢をつれてきたはずなのに、きままに行動するのが目にあまる。これではまるで物見遊山のアメリカ旅行ではないか?見ていると駐車場と隣接した庭で写真をとっている。松田のなかで、ある種の不信感が大沢にたいして意識の中で顕在化したのを感じた。 会社につくと、大きな会議室にとおされた。窓際にはきのうはトムの部屋に積み上げてあった段ボールが開封された状態で並べてあった。「これらをみていくんですね」松田のなかから出る会話はそれくらいしかなかった。というか、会話のネタを発掘する意欲が松田のなかで、極限まで欠いていた。「だいじょうぶよ。安心してればいいわ」なににたいして大丈夫なのか、松田にはわからなかった。10分ほどしてトムがあらわれた。東洋系の女性をともなっている。「おはよう、マツダ、オオサワ。よく眠れましたか?」「ええ、まあ」「そうだ、彼女を紹介します。キョウコさん。日本人です。アンテラと契約している通訳です。」「キョウコです。よろしく」川越はトムに大沢のことをどういっていたのか?もし英語が堪能な国際派のコンサルタントなら、通訳なんてよけいな費用はかけなかったはずだ。それもビジネスクラスで。しばらくすると、経理部のマネージャーたちが3人はいってきた。ナンシー、マイク、スージーの3人で、ナンシーは関連会社の数字をまとめる役回りを、マイクは世界規模のキャッシュフローを、スージーはコスト管理をまかされていて、経理はあと財務担当のリンダの4人がまわし、下に10人近いスタッフがいた。あらまし、自己紹介が終わると、さっそく段ボールに入った書類の解析がはじまった。松田は、まず難渋したのは、アメリカの企業会計、というよりもルーチンがまったく日本とはちがうため、理解されない点が多いところであった。では、どこが違うか?たとえば、日本の会社はたいがい末締めの請求書を発行し、翌月にそれらを一括してしはらう。しかし、アメリカはちがう。出荷ごとにつどインボイスという名の請求書がついており、早くお金を支払えば、一定の率がデイスカウントされる。だから、エイジングという売掛金の管理方法がものをいうことになる。つまり、滞納がないように管理していくわけだ。商品もしくは請求書がとどけばすぐに支払うようにする。そういう日常をおくっていれば、出荷したにもかかわらず、入金がなされていない、もしくはし支払われていない掛金の残高は気になるわけだ。そういうこと。つまり社会の習慣ひとつひとつが日本とアメリカでは違うから、証憑の意味付けの説明からしなくてはならない。そして、それは骨のいる仕事だった。もちろんキョウコはいるが、経理の専門ではないから結局は松田が細部は説明せねばならない。その時点で、松田の視界から大沢は消えていたのはいうまでもない。そして、あっという間に昼がきた。マイクが イタリア料理 ハンバーガー 中華のうちどれがいいか聞いてきた。松田としてはファイル一冊の説明で半日もかかったことに、いたく疲労を感じたが、おなかは、心身疲労、時差ぼけとは関係なく空腹となる。昨日のステーキに懲りた松田は中華を希望した。--中華だと、はずれはないだろうそう思った松田ではあったが,,,,。