初夢な方と私
初夢って、元旦の朝起きたときに記憶している夢だと、長らく思っていたが、どうも、二日の晩に見る夢、つまりは、三日の朝に記憶している夢のことらしい。 今年の我が初夢は、何故かフランス人のおばーさんに、「雌ライオンがどーたらこーたら」という話を聞かされている、という内容だった。ちなみに私、フランス語は分からないのだが、夢の中では何故か、お婆さんがしゃべる、とても流ちょうなフランス語を聞きながら、「フランス語ってきれいだなぁ~」なんて思っているのだった。 そして「今年はフランス語でも、勉強しようかなぁ」と思いながらも、その裏側で、「これは夢だよな。夢なのにどーして、知りもしないフランス語が出てくるのであろうか?」などと考えていて、支離滅裂なのだった。うーみゅ。 私が初めて「この人は嘘つきだ」と、はっきりと意識したのは、小学校時代のクラスメートだ。彼女は確か「H」さんという名前の、小柄で華奢な、とても可愛い女の子だった記憶がある(が定かではない)。で、12月の終業式の時に、担任の先生が「一富士、二鷹、三茄子と言って、縁起の良い初夢の筆頭は、やっぱり富士山だ」というようなお話をしてくれた。 私はその年の大晦日、手近にあったナスをにらみつけてから寝たが、めでたい初夢を見ることなく終わり、大変悔しい思いをしたのだった(つまり当時は、31日の晩に見るのが初夢だと思っていたワケね)。 新学期が始まると、その年は初夢の話で持ちきり。みんな「おめでたい夢って、案外見られないものだねぇー」と言っていると、件のHちゃんが「私は見た!」と口を挟んだ。彼女によれば、「家族みんなで富士山を見ていると、目の前をナスをくわえた鷹が、すううーっと横切っていった」という、もー、どーしよーもなくウソな内容のものだった。 その場にいた全員が「えー、うそだー、そんなのあるわけないじゃーん」とHちゃんを非難した。ぼんくらな私もさすがに、「こりゃまたなんて、嘘つきなヤツなんだろう」と思ったが、Hちゃんは必死になって否定する。しまいには「ほんとだもーーーーーーん」と絶叫して泣き出してしまった。 可愛い子はトクである。Hちゃんが泣き始めると、男子が「やーいやーい、いじめたー、なかせたー」と周りではやし立て始めた。私たちが悪者かよ。しまいには担任の先生もやってきて、「そういう夢だって、無いとは言えないだろう」と結論づけた。そうですか、嘘つきは私たちですか。ふんっ 初夢、ろくな思い出がない。