ゴースト 第2章 [祝福されし翼あるもの]
「悟」(さとる) 校庭のサクラの木々が、晴れ渡った青い空を後ろに背負って満開の宴を謳歌していた。その下で記念写真を撮っている初々しい親子の姿は、見る人の心に愛と平和の歌を輪唱させるような気がする。美しい光景だった。この世界は本当はこんなにも美しいのだと・・・何度でも教えてくれるようだった。「お母さん、佐藤先生の話・・・わかった?」「うん、ちょっと泣いちゃった。」「ぼく、あの先生好きだな。」「あらっ、どこが好きになったの?」「う~ん、分かんない。」「ふふっ、どうしてかしら?」「お母さん、好きになるのに理由が要るの?」「そういえばそうね・・・お父さんも同じことを言っていたわ・・・好きになるのに理由は無いんだ・・・って。」「それなら、良いじゃん!」「ふふっ、悟はお父さんに似ているのかな?」「うん、ぼく、お父さん大好き!」「悟はいつもそればっかりね。」「良いじゃん・・・あっ、お母さんも大好き!」「ふふっ、ありがとう。」悟は不思議な子供だった。お腹の中にいるときから、私の言う言葉が分かるようだった。私は様々な本を読んで聞かせてあげた。悟はジッとそれを聞いているように思えたのだった。大きくなるにつれて、悟の不思議さは増していった。私は「天才」というものをはじめて身近に知った。そしてこんなにも優しさを感じる存在もはじめて知った。ちなみに父と母はもう生まれる前から悟にメロメロだった。(^^)彼は本当に色々なものを私達に残していった。彼に弁護士のお友達が居たのも・・・その人が彼の莫大な財産管理をしていたのも・・・初めて知った。まぁ、ドクターのお友達が多いのは別に不思議ではないが・・・いい男が多いのには・・・ちょっと吃驚だ。まるで悟のためにすべてが用意されているようなことまであった。もともと、出逢ったときから不思議なひとだったけど・・・亡くなってからも私を少なからず驚かせてくれた。私はまた看護士の仕事に戻った。彼の言葉を想い出した所為もある。「君は出来るだけこの仕事を続けた方が良いと思うな。君には笑顔布施というものがあるんだ。患者さんたちは君が微笑んでくれるだけで薬以上の効果があると思うよ。」「もう、上手いことばっかり言うんだから・・・何も出ませんよ!」「いや~、ほらっ、笑顔が出てきたよ。(笑)」「もう~、おやぢ~!」「はははっ、ごめんごめん・・・でもね、フラシーボ効果って言うのは知っているだろう?偽薬でもドクターによっては本物の薬以上の効果が出せるんだ。人は人に依って癒されるんだよ。笑顔にも確実に薬以上の効果がある。まして智恵子の笑顔なら百倍ぐらい効果があったりして・・・(笑)」「もう~、そんなことばっかり言ってて恥ずかしくないの?(++)」「大好きだよ、智恵子。」「もう~、知らない!」「お母さん・・・どうしたの?」「えっ、ごめん!」「またお父さんのこと、思い出していたでしょう?」「ち、ちがうわよ!」「あっ、よだれが!?」「えっ!?」「ウソだよ~~~ε=ε=(ノ^∇^)ノ」「もう~、悟ったら・・・(><)」こんな風に笑い合える日が来るなんて・・・想像もしなかった。あの苦しかった日々は何だったのかしら?それとも、乗り越えられたからこそ今の幸せがあるのかな?そういえば、さっきの佐藤先生・・・けっこういい男だったわね。・・・私もまた恋をしようかな?・・・まだまだイケてるわよね?細い腰をひねって自分の身体を想わずチェックする彼女。そんな姿を熱~~~い眼差しで見ているお父さん達が大勢居ることを・・・そしてその横でお母さん達が眉間にシワを寄せていることを・・・知っているのは作者だけの秘密です。(^^)『Imagine all the people living life in peace...』 ジョン・レノン「世界中の人達に、愛と平和を。死んでゆく人達に夢と希望を。生きてゆく人達に感謝と寛容を。」ゴースト 第1部 終了 ありがとうございました。