「ワンちゃん」 楊逸
芥川賞候補作!初の中国人作家登場。「王愛勤」ことワンちゃんは、名前のとおりの働きもの。女好きの前夫に愛想をつかし、見合いで四国の旦那のもとへ。姑の面倒をみながら、独身男たちを中国へ連れていき、お見合いツアーを仕切るのだ。各紙絶賛の文學界新人賞受賞作。 <感想>★★★★☆著者の楊逸さんは64年に中国で生まれて87年に来日されている中国籍の方です。 今回の芥川賞ノミネート作品である本書は、その点が注目されているようです。 帯には「芥川賞候補・初の中国人作家登場」なっていますが、初の外国人作家というわけではありません。 国籍という観点ではなく、日本語以外を母国語とする作家とするなら『いちげんさん』のデビット・ゾペティさんの名前がパッと思い浮かびますが、調べてみたところ、もうお一人いらっしゃいました。 帰国子女まで加えるとするなら、もう少し増えると思います。さて、まずは表題作ですが、日本人男性と中国人女性をお見合いさせるツアーを主催する中国人女性の王愛勤ことワンちゃんが主人公です。 ワンちゃん自身も中国に子供を残して、お見合いツアーに参加して四国に嫁いでいます。 一見、クールと思われるワンちゃんの内面を描いていくわけですが、そこには打算的にならざるを得ないワンちゃんの事情があります。 平板な文章でありながらキャラ造形はピカイチだし、ラスト数行の秀逸さには舌を巻きました。 ただ贅沢を言うなら200頁ぐらいでじっくり読んでみたいと感じました。 究極まで贅肉をそぎ落とした結果の70頁だというのは充分わかるんですが・・・。もうひとつ書下ろしの「老処女」という作品が収録されています。 内容は割愛しますがキレのあるイイ作品です。 むしろこちらの方が芥川賞向きかなぁ~と感じました。 二編146頁で1,200円をコストパフォーマンスに優れているとは言いませんが、ノミネートの時点で、この作品が気になっていたという方なら損はしないと思います。 オススメ本