映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。今日は夏至ですね。
朝のうちは雨がふっていましたが昼過ぎにあがってしまいました。
今日から昼が短くなるんですね。

では、今日は大河ドラマ『真田丸』でも人気の直江兼続が登場する山田風太郎小説を紹介します。

叛旗兵
山田風太郎傑作大全7
山田 風太郎
廣済堂出版 [文庫]

　上杉家に謙信時代より仕えた家老・直江山城守兼続の養女伽羅に、本多佐渡守正信の次男正重との縁談が持ち込まれた。これを嫌った兼続は、大谷刑部の忘れ形見・左兵衛を婿として迎えた。ところが島帰りの左兵衛は、腑抜けでさっぱり覇気がない。怒った伽羅は、左兵衛の花婿修行として、婚礼に徳川方として参加した、加藤清正、伊達政宗、福島正則ら、かつての豊臣恩顧の大名と本多正信に一泡吹かせる事を要求。そして彼の指南役に、直江四天王と呼ばれる前田慶次郎利太・上泉主水泰綱・岡野左内宗政・車丹波猛虎を指名するのだが。

　ソフィ－・マルソー演じるダルタニアンの娘を、かつての4銃士達がサポートする「ソフィーマルソーの三銃士」という映画があった。元気がよく誇り高いヒロイン・伽羅を心から愛する四天王は、さしずめ銃士達か。この四天王達のキャラクター設定が独特だ。前田慶次郎利太は「花の慶次」で知られ、洒落者で豪傑というのが通説だが、ここでは倒した敵に小便をかける困った癖の持ち主として登場。「犬か君は」と突っ込みを入れようとしたら、自分で「まるで犬のようでござるがな。あははははは！」と一人ツッコミを入れていた。や、やられた…(脱力)。

　上泉主水泰綱は、剣聖上泉伊勢守の息子だが、ひどい女性恐怖症。西洋好きの大久保長安(『忍法封印いま破る』)に誘われてサウナに入るが、熱さと女性の接近という事態に、気絶してしまう。
ケチでギャンブル好きとクリスチャン的精神が、なぜか同居している不思議な男、岡野左内宗政は小判大好きの守銭奴。車丹波猛虎は、名の通り猛々しいが、ただ一人、文字どおり「ナントカを握られている」女房だけには弱い。

　これだけでも大変なのに、婿を断られた隠密疑惑のある正重の両サイドには、後に決闘する事になる剣豪二人、宮本武蔵、佐々木小次郎まで加わった。更に、吉良上野介と浅野、果ては茶屋遊びにうつつを抜かす大石内蔵助まで顔を出す。室町時代のオールスターキャストもの『室町お伽草紙』に、ひけを取らない豪華な顔ぶれだ。『室町お伽草紙』でも、各章のタイトルに「にやり」としたが、本書も、「雀剣一如」「二条城松の廊下」「椒図志異」など、凝ったものが多い。それぞれのリベンジに笑わされる。人によってウケのツボが違うらしく、解説の細谷氏は武蔵と小次郎の麻雀風景に興趣を覚えていたが、私は上泉主水受難の「慶長トルコ風呂」に大笑いした。

　しかし、こうした表面の馬鹿馬鹿しい騒ぎの下に、或る者の実にシビアな戦いが繰り広げられていた事が、クライマックスで明かされる。この小説のタイトルの、本当の意味が明らかになってくると、愚直なまでのヒロイズムが、なお沁みる。

尚、岡野左内と車丹波は司馬遼太郎氏の「城をとる話」で主役を張っているので、そちらと読み比べてみるも一興。


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