映画・海外ドラマ・本　ひとこと言いた～い

みなさん、こんばんは。コロナウィルスでディズニーランドを運営するオリエンタルランドがダンサーを配置転換するようですね。

今日も山田風太郎作品を紹介します。

江戸忍法帖
山田風太郎
講談社文庫

　前将軍家綱の御落胤、葵悠太郎は江戸の貧乏長屋に住んでいた。ところが自らの愛妾と養女を使って将軍家を操ろうとしていた御側衆、柳沢吉保はその存在に慌てて、配下の甲賀七忍に悠太郎とその家来の暗殺を命じる。彼の身を守って長屋の住人、角兵衛獅子のたあ坊こと丹吉が犠牲になった時、悠太郎は、丹吉の姉お縫とともに甲賀七忍の敵討ちに乗り出す。

　実業之日本社の週刊漫画サンデーに1959年8月号から連載され、講談社から1960年3月に初単行本化。前作『甲賀忍法帖』より時代は進み、舞台は徳川五大将軍綱吉の治世の江戸。忍法帖シリーズ第二作といっても、時代小説の枠組みに入れ込んだ、随分と健全な忍法帖になっていた。自身に対する全ての欲に対して全く執着がない主人公・悠太郎は、自らもコメントしているように、足柄の山奥で育った金太郎だ。『ノーブレス・オブリージ』という意識も、ないらしい。家来3人を甲賀七忍の秘術に討たれても泰然としていたのも、「彼等は自分を担いで何らかの栄誉や身分を得ようとしたから」と私利私欲に対して、きっぱり一線を引く態度を貫く。そんな彼が動くのは、仇討ちの逸話を持つ曲芸『角兵衛獅子』で生計を立てる、幼き少年の死。

　しかし剣の師匠・織部玄左衛門が倒されても動かないのは、正直「冷たくない？」と思うけど。彼は悠太郎のためを思っていたのではないのか？
攫われて来た吉保の養女・鮎姫も、敵方の首領の孫娘・服部志乃も、彼に協力し、恋敵について多少嫉妬するものの、相手を窮地に陥れて悦に入る事はない。山風氏自ら本書を「少年小説」と言う由縁となる、少年少女の何者にも怯まぬ正義感と勇気が、全編を力強く支える。だからいくら吉保や忍者達、色と欲に取り憑かれた大人達が出てきても、胡散臭さやエロティックな場面の印象が薄まった。

　甲賀忍者の術で印象に残ったのは、葉月の『サロメ』の『7つのヴェールの踊り』みたいな「陽炎乱し」。ビジュアル的に映えるだろう。しかし、相変わらずお家騒動っていうと呼び出されて、挙句の果てにヒステリーで見捨てられる忍者って、本当に「やってらんねーよ。」って言いたいだろうなぁ。

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