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みなさん、こんばんは。菅内閣の組閣が発表されましたね。
今日も山田風太郎作品を紹介します。

かげろう忍法帖　山田風太郎忍法帖（12）
山田風太郎
講談社

「忍者明智十兵衛」「忍者仁木弾正」「忍者石川五右衛門」「忍者枝垂七十郎」「忍者車兵五郎」「忍者向坂甚内」「忍者本多佐渡守」「忍者玉虫大膳」
収録作のタイトルをずらっと並べてみました。凄いですね、日本にはこんなに忍者がいたんです。我々が習ってきた日本史は一体何だったんでしょう？もう笑うしかないですね。わはははは。

　様々な忍法帖シリーズで悪役(ヒール)を張って来た本多佐渡守も忍者です。やっぱり。そうでないと、忍者部隊のトップである服部半蔵は服従しないでしょう。そういえば、『影』の大御所が彼のニックネーム。宿命のライヴァル大久保忠隣との対立が表面化。結局、一族である長安の不正発覚のあおりを喰らって、忠隣も失脚する(『忍法八犬伝』参照)。しかし、彼を追い落とした本多一族も、やがて来る失寵の時を避けられない。このあたりの栄枯盛衰は、項羽を滅ぼした後の劉邦の粛正を思わせる。手を下すのが、また意外な人物なのですが、滅ぼす過程に『忍びの卍』で滅びたはずの根来忍者が使われる。老いてなおますます盛んな正信と女忍者の関係は、川端康成の『眠れる美女』に似ている。

　忍法としてキモかったのは、「忍者明智十兵衛」の『忍法人蟹』。切っても生えてくる蟹のように、切り落とした腕が生えてくる。いわんや、首をや？という実験にトライしたのは、明智十兵衛(光秀)と同じ土岐一族で、野心に満ちた弥平次。実力があるのに、出自がはっきりしないため、不遇を囲っていた彼が、ちゃんとした家系図を持っているけどちょっと時代遅れの忍法しか取り得がない光秀と取り引き。入れ替われば歴史も変わるはずなのですが、「史実に反した事は書かない」のがポリシーの山風、ちゃんと辻褄のあうラストに着地。御見事。
「忍法小塚原」『伊賀忍法帖』(『忍法関ヶ原』収録)でも同様の実験を試している。よほど山風は首チョンパが好きなのだろう。再生過程はかなり生理的に気持ち悪い。ええ、間違ってもCGで再生してはいけません。

　本多正信と大久保忠隣の確執や、本多二代の運命は、松本清張の『戦国権謀』にも描かれているので、テイストの違いを確かめて見るのも一興。「なぜ忍法帖を書くに至ったか」を綴ったエッセイ「『今昔物語集』の忍者」も収録。巻末エッセイ法月綸太郎＆解説日下三蔵。

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