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みなさんこんばんは。愛知県長久手市に11月1日に「ジブリパーク」がオープンします。今日はあのベラスケスにまつわる小説を紹介します。

ベラスケスの十字の謎
El Misterio Velazquez
エリアセル・カンシーノ
宇野 和美 （訳）
徳間書店

表紙は言わずと知れたディエゴ・ベラスケスの「ラス・メニーナス」である。しかし一部がカラーだ。絵の重要人物はセンターに描かれているマルガリータ王女なのに、少年と犬、そしてその背後にいるぼんやりした人物のみがカラーになっている。

　ところで、この絵には疑問点がある。ベラスケスの胸に描かれたサンティアゴ騎士団の赤十字だが、画家が王命により入団したのは1659年11月28日のことであり、絵が描かれた1656年にはこの事実はなかった。おそらくこの部分は後日描き足されたものであろうと思われているが、では、いつ、誰が何のために書いたのか？「画家の中の画家」と呼ばれたベラスケスの絵に加筆するのだから、それ相応の技能がなければできないし、一旦書き終えた絵に加筆するどんな理由があったのか？また「ラス・メニーナス」は絵に描かれた人物をほとんど特定できるが、ただ一人わからない人物がいる。ぼやけた人物がその人だ。どうでもいい人を国王一家も含めた絵に描くわけがない。では彼は誰なのか。

　本編はその謎を解き明かす。語り手となったのはカラー表示されている少年だ。少年と見えるが、実は小人でイタリア人のニコラ・ペルトサートと名前もわかっている。宮廷の小人たちは、公の場や儀式の席で王や女王のすぐ隣に『特別な地位』を享受していた。とても小さい彼らを置くと隣にいる国王ははるかに大きく見え、視覚的に彼の強力な地位を高めることができた。ベラスケスの「ラス・メニーナス」の二人の小人たちのうち、軟骨無形成症のドイツ人マリア・バルボラ、通称マリバルボラはこちらを向いて威厳を保っている姿に描かれている。

　なりは小さくても知能は発達しているが、大抵の人は外見で彼等を判断する。久しぶりに会った、自分をスペインに連れてきたデル・カステリーリョに
「全然大きくならなかったようですね。」
と言われ
「ぼくはこんなに大きくなったのに」
と独白する場面があるが、「事実は見た目通りではない」という本作のテーマを表している。史実とフィクションを巧みに織り交ぜたミステリタッチのYA。

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