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みなさんこんばんは。17日には愛媛でも地震があり、最近日本は地震が多いですね。今日から山田風太郎作品を紹介します。

戦艦陸奥 戦争篇―山田風太郎ミステリー傑作選〈5〉
山田風太郎
光文社

『テンペスト』や、若い男女が愛を育む『青い珊瑚礁』なんぞに騙されてはいけない。島というのは、人間の根底にある欲求が露になる、とっても恐ろしい所だ。本書収録の『裸の島』『女の島』『魔島』は、いずれも戦争の最中に孤島で暮らす事になった日本人達の物語。人間には第一次欲求というのがあるが（食欲、性欲、睡眠）戦争という一種の異常事態の中で、更に世間と隔絶された特殊な状況に置かれた彼等の、とりわけセックスに関する描写がすさまじい。『女の島』では男3人に慰安婦、看護婦あわせて12人の女が島に降り立つ。たった1人の健康体で若い男に6人の女性が群がってゆく姿は「美しいというより凄惨ですらあった」と書き表される。更に女性達が空から襲ってくる鷹に気づいてさっと離れた時、そこには「行路の餓死者のごとく」ひからびた男の姿が。いや、恐い。まるで死肉にたかるハイエナか禿鷹ではないか。『裸の島』では、たった1人の女性をめぐって男達が嫉妬に狂って殺しあい、大人しかった人妻がどんどん増長して女王の如き振舞うという映画『流されて』のリバース+人数拡大バージョン。「本当にこんな事ってあるんだろうか?」と大いに驚きつつ、「極限まで追い込まれれば、或いは世間の目というものがなければ、人間はそうなってしまうのかもしれない。」と思わされてしまうのは、冷静な人間観察に基づいた描写故か。

ところで光文社の文庫の表紙はヒエロニムス・ボッシュの『愚者の舟』が採用されている。人間の愚かさを誇張して描いたボッシュの絵は、山風の個性に似合う。山風には戦前も、そして現在も人間達は変わらず愚者の舟に乗り続けていると映ったのだろうか。本書は戦中～戦後にかけて、人間の愚かさの最たるもの-戦争-に踊らされた人間を時に突き放し、時に哀しく描く。最初章のタイトルの意味がよくわからなかったけれど、最後にあっと驚かされた『太陽黒点』他、戦艦陸奥の爆沈の謎を解き明かした『戦艦陸奥』、『腐爛の神話』『狂風図』『黒衣の聖母』『さようなら』収録。​
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