きよしこ
生まれながらの「吃音」のため、自分の伝えたいことを言えない主人公が、同じ「吃音」で苦しむ子供の母親からもらった手紙にこたえる形で自分の幼少時代からの物語を短編で描いていくお話。母親は子供を励まして欲しいと嘆願する。「吃音なんかに負けるな・・・」と励まして欲しいと・・・「・・・なんか・・・」そう、人間は様々なコンプレックスで悩み苦しむ、それが他人にはちっぽけなことであっても、当事者には地球規模の大問題なのだ。「~なんか」という表現で励まそうとする「おしゃべりサマーセミナー」の講師に吃音で苦しむ主人公を含む児童たちは机を揺らし抗議の意思を示す。自分の伝えたいことを話せない主人公(少年)は、作文が得意だった。作文では自分の考えをスラスラと書けて、相手に気持ちを伝えられる。しかし、作文を皆の前で発表することを考えると、大好きな「加藤君」も、「佐藤君」に意識的に変えてしまう。苦手な「カ行」は、どもって読めなくなるから・・・引越しが多く、吃音に悩む少年は中学、高校と進み、東京へ。友達との別れ、家族との別れ、図書館で知り合った二つ上の恋人との別れ。この本を読んで、誰にでも思い当たるような、なんでもない日常での出来事がいまとなっては懐かしい、久しぶりに昔の友人に会いたくなった。題名の、「きよしこ」の意味は、本を読んでからのお楽しみ。いまは、重松清の、「永遠を旅する者」を読んでいます。「きよしこ」は、さくらんぼのははさんの紹介文を読み、手に取りました。 一 夢 庵 風 流 日 記