「鯖缶、サバ缶!」
市外に住んでいる友達のU君は市内で飲み会があると必ずボクのマンションに泊まる。自宅が遠いため車の代行代が高いからだ。「いつも申し訳ない。あさってまた飲み会なんだ。大丈夫かな?」U君は電話越し、小さな声で済まなそうに言う。だけどボクはたとえ体調が優れなくても「いいよ。いいよ。予定ないから」と返事してしまう。高校時代から、幾多の思い煩いの半生の中で多分に一番このボクを励ましてくれた友達だからだ。彼はいつものようにボクの住むマンションの下に車を停めると済まなそうにボクを携帯で呼び出す。「どうもね。いま、下に着いたんだけど…」そしてボクはいつものように彼を飲み会の場所まで車で送って行くのだ。「ぜんちゃん、後で世話になる。じゃ、いつもの買っておいてよ」と彼はボクにお金を手渡すのだ。「わかった。わかった。いつものやつね」いつものやつ。冷酒、そしてカップ麺。そして絶対に欠かせないボクらの好物。そうなのだ。サバ缶なのだ。それもサバの水煮。思えばサバ缶はずいぶん学生時代に食べた。食べた種類の割合は味噌煮が50%、醤油煮が30%、そして水煮が20%だ。そのあとゴマ味というものも出た。そして究極(?)のサバカレーというものも出現した。でもやっぱりサバ缶は水煮に止めを刺す。刺身醤油を数的垂らしてガシガシ惜しみなく一缶、一気に食べるのだ。勿体ないなんて半分、冷蔵庫に残したらヤバイのだ。サバ缶は時間が経つとモノスゴク生臭いのである。ああ、サバ缶…。お腹が空いたのだ…。