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カテゴリ:そのた
夫は「あなた、ほんとにだまされやすい人だね」と言って笑う。
「あなたに言われる筋合いはないでしょ、似たもの夫婦なんだから」 とわたしは笑い返す。 疑わずに人の言葉を信じるので、友だちの冗談に毎度担がれて、 びっくりしたり、あわてたりして、みんなに笑われる。 「だって、それが我が家の家訓なんだもの、しょうがないのよ」 わたしの父方の祖母の家では、子どもたち、孫たちは、みな おばあちゃんのこの言葉で育てられた。 「人をだますようになったら人間おしまいよ。 だまされるうちが花。だまされるほうがいいんだよ。」 おばあちゃんは子沢山だったので、こうも言っていた。 「こどもや孫がたくさんいますからね、いつどこで、どなたに お世話になるかわかりません。」 父も、母も、親戚中の大人たちが、このおばあちゃんを 「偉いおばあちゃんだ」と言うので、偉い人なんだろうなと 思いながら育ってきた。 そして、今、わたしもいい歳になって思う。 ほんとうに、おばあちゃんはすごい人だったんだなぁ。 実際に、おばあちゃんは人にお金を貸してだまされたこととか あるらしい。親身に世話をしてあげても、お礼のひとつも言わず、 苦境を脱したら2度と会いに来ることもない、そういう人は 世の中にたくさんいる。 でも、おばあちゃんは、絶対に文句を言わなかった。 貸してあげられる(結果的には騙し取られる)ものを持っていた ということがシアワセなんだ、と。 人をだまさないといけないような人生でなかったことが、何より シアワセなんだ、と。 お世話をしてあげられるだけの健康と余裕があったというのは、 それだけでシアワセなんだ、と。 いつか、めぐりめぐって、こどもや孫がお世話になることも あるんだから、それでいいんだ、と。 しみじみとおばあちゃんの言葉を思い出す。 そうよね、おばあちゃん。だまされて大騒ぎしている人たちは、 自分の欲のために生きているから、あんなに喚いたり恨んだり するハメになるのね。 儲けてやろうと思ってお金を出して、その結果だまされて、 だました人を恨むのはみっともないもんね。 なんで急に、おばあちゃんの言葉を思い出したのかわからない。 ここのところ、広い家に引っ越したいなぁ、なんて思って、 ちょっとお金のことばかり考えていた自分に、おばあちゃんが 注意しにきてくれたのかもしれない。 何事も、欲から出発すると、ロクな結果にならないよ、と。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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