曹操閣下の食卓

[ランチ] カテゴリの記事

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  創業【天保五年】日本橋☆千疋屋総本店☆

  世界のフルーツ食べ放題バイキングhttp://www.sembikiya.co.jp/eat/eat_honten.php【江戸】 1834年 (天保5年) 　 武蔵の国埼玉郡千疋の郷(現在の埼玉県越谷市千疋)の侍であった初代弁蔵が江戸、葺屋町(現日本橋人形町３丁目)に「水菓子安うり処」の看板を掲げ、果物と野菜類を商う店を構えた。1864年 (元治元年) 12月 二代目文蔵が店を継ぐ。　　　　　　　　　　　　　　　　文蔵の妻むらが茶の湯の師匠として知られた渡辺治右衛門に茶の湯奉公をした縁で、浅草山谷の料亭八百善に上がるようになった。ここに出入りすることで各界の寵を受け、文蔵は徳川家御用商人ともなった。1867年 (慶応3年) 6月 三代目大島代次郎生まれる。　　　　　　　　　　　　　　三代目代次郎は、日本橋本町(室町)に店を移し、しばらくして、当時としては最新式の洋館三階建の店舗とした。三代目は経営の近代化に心を砕き、外国産の果物を輸入し、また国産果物の品質改良に心血を注いだ。結果、我が国初の果物専門店が創立され、千疋屋総本店の基礎が出来あがった。 【明治】 1881年 (明治14年) 　 中橋店【現、(株)京橋千疋屋】をのれん分け。 1887年 (明治20年) 1月 四代目大島代次郎(旧名文一郎)生まれる。　　　　　　　　　　　　　　　四代目代次郎は三代目の方針をさらに積極的に押しすすめ、フルーツパーラーを創業。 1894年 (明治27年) 　 銀座店【現、(株)銀座千疋屋】をのれん分け。 【大正】 1920年 (大正9年) 6月 三代目大島代次郎没。 1925年 (大正14年) 　 銀座松屋にフルーツパーラー出店。

  2006.10.18

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  【大穴】麺屋武蔵○青山店☆

  行列ができるラーメン屋は、中野の青葉、池袋の大勝軒、新宿の麺屋武蔵が三強である。曹操閣下はみんな行ったけれど、行列が少ない日（平日・午前・雨天）をちゃんと見計らっていくので、だいたい３０分ぐらいで食べられる。要するに、席についてラーメンを注文してから食べ終わるまで時間が３０分ぐらいだから、狭い店内が満席になっていたら、それぐらいは待たされても仕方ない。でもまあ、うまくいけばすぐ席に座れて、３０分以内に店を出ることができる場合もある。このときは雨天が実に楽しく思われるものだ。ディズニーじゃあるまいし、５０分も待つつもりはない。たかがラーメン。そんなに血道をあげても、全人類や社会を幸福にするようなことではない。ところで麺屋武蔵には青山のホンダ本社の角・外苑通りに青山支店がある。武蔵は新宿本店でも店主は店番をしているだけ。実際には弟子たちが麺を湯きり、スープを合わせている。そこで曹操閣下は考える。弟子たちも人間である。開店の初めの時間は、大いに気合が入っている。売り切れ閉店近くになると、やっぱり疲れも出るだろう。だから青山店の開店直後、店員に「頼むよーっ」とこっちから大声で気合を入れて注文したラーメンの出来が一番いいに違いない。うまいラーメンは、待たないで食べるのが一番おいしい。だから、うまいラーメンをいかにして待たないで食べられるように工夫をするのが、ひとつの実践的な戦略ゲームなのである。

  2006.10.17

• 三越本店フランス･フェア(１)☆チーズ熟成師の仕事☆

  曹操閣下は毎年、伊勢丹のサロン･ド･ショコラ、三越本店のフランス･フェアは必ず行くようにしているのである。このフランス･フェアは閣下が生まれたころから続いているのかな。とにかく歴史が古い。そして、行くたびにいろいろ勉強するものがある。今回のフェアではマリー･キャトル-オムさんという職人さんとの出会いがあった。彼女は３０そこそこの若い女性だが、ジャック･ド・シラク大統領からＭＯＦ(フランス最高技芸師)の称号を持っている。ＭＯＦの料理人、ケーキ職人(パティシェ)、ショコラティエ(チョコレート職人)はよく聴くが、彼女の職業は【チーズ熟成師】だという。キャトル-オム夫妻のチーズ屋さんはパリの街中にあって、地下鉄の駅の近くだという。「ああ、あの店か｣という記憶もないのが恥ずかしいが、なるほどチーズの匂いの思い出はちょっとある。フランスにしろ、ドイツにしろ、チーズ屋さんの近くの匂いはかなりキツイ。あれが｢いい匂いだ｣とは、なかなか言えないのである。便所の悪臭とまでは言わないが、日本で同じような店ができたら、たちまち近隣で大反対が出るに違いない。そのようなわけで、言い訳がましいが、曹操閣下はドイツでも、フランスでも、どこの街にもある豆腐屋さんのような、チーズ屋の中に、わざわざ入ったことはないのである。今回はそのことをちょっぴりと後悔した。チーズはヨーロッパの食生活で欠かせないものであるが、どのように食べているか、そのあたりの知識は欠落していた。キャトル-オムさんの店では、ブリーとか、コンテ、ロックファールといったさまざまなチーズを産地から仕入れて、地下の倉庫(カーヴ)で熟成する。ワインを地下倉庫で熟成するのはレストランで一般におこなわれているが、小売のチーズ屋さんの熟成技術にＭＯＦが授与されたとあって、閣下の認識は改まった。フランスのチーズ屋さんは、チーズのソムリエであると同時に、チーズの品質を保ちつつ、さらに年数をかけて熟成させていく技術をもった人々なのだ。だから、彼女の店では「コンテ･チーズの二年熟成｣とか、｢ロックフォールの三年もの｣が食べられるというわけ。チーズといえばビニールに包まれた切れ端ばかりだと思っていたのは全くの無知だった。キャトル-オムさんが熟成したコンテ･チーズは果実酒のような味と香りがした。彼女と握手した曹操閣下がパリでの再会を約束し、さっそく｢お徳用チーズ｣を買ったことは言うまでもない。

  2006.10.14

• 三越本店フランス･フェア(３)☆ボルドー６１本セットの行方☆

  曹操閣下は毎年、伊勢丹のサロン･ド･ショコラ、三越本店のフランス･フェアは必ず行くようにしているのである。さて、今年の三越には「三越らしい｣大きな目玉商品が一つ出ていた。何といっても数千万円の旅行券や、数百万円の壺を並べている日本橋三越である。ボルドーワイン６１銘柄６１本、６３万円で限定１０セットというのを見て、驚くというか、何だかあきれてしまった。そんな６１本のワイン･セットで買って、自宅の倉庫に転がしておく人間の気が知れないなと思うこと。もう一つは、これだけのワインを自宅でセラーに入れて管理するには、相当のノウハウが必要だということだ。どこかのレストランがちゃんとソムリエを置いていて、それだけの管理コストを払うならともかく。三越も三越。｢売れればいい｣というものではない。このようなコレクションは空き瓶やラベルならともかく、悪趣味というほかはない。フランスのワインは繊細な文化。農民一家が汗して働いて、醸造業者が丹精を込め、選別するプロが見極めた一本一本は、それぞれに個性があり、葡萄の収穫年数によって糖度も熟成のプロセスも違う。したがって、味も微妙に違うものだから、好みのワインをいくつか心得て、それを年数によって深く掘り下げて、飲み比べていくものだと思う。６１本･１０セットのボルドー･ワインの行方が気になるのである。別に成り金オヤジに嫉妬しているわけではない。

  2006.10.12

• 三越本店フランス･フェア(４)☆ボルドーワイン６１銘柄☆

  　曹操閣下は毎年、伊勢丹のサロン･ド･ショコラ、三越本店のフランス･フェアは必ず行くようにしているのである。　さて、三越の【パーフェクト･ボルドー】のヤンヤ祭にはアキレかえった曹操閣下ではあるが、考えてみると、三越百貨店が６３万円をワインに投資しようという顧客に出した６１銘柄のセレクションは、それなりのノウハウや情報があってのこと。　曹操閣下も知らない銘柄、見たことも、飲んだこともない銘柄も含まれている。　知ったかぶりをするつもりはない。人生は何事も勉強。（Ｃｈ．はChateau･醸造館の略）１.Ｃｈ．オーバジュ･リベラル２.Ｃｈ．オー･バタイエ３.Ｃｈ．オー･ブリオン４.Ｃｈ．カマンサック５.Ｃｈ．カロン･セギュール６.Ｃｈ．カントナック･ブラウン７.Ｃｈ．カント･メルル８.Ｃｈ．キルヴァン９.Ｃｈ．グラン･ピュイ･デュカス10.Ｃｈ．グラン･ピュイ･ラコスト11.Ｃｈ．グリュオ･ラ･ローズ12.Ｃｈ．クレール･ミロン13.Ｃｈ．クロワゼ･バージュ14.Ｃｈ．コス･デス･トゥールネル15.Ｃｈ．コス･ラボリー16.Ｃｈ．サン･ピエール17.Ｃｈ．ジスクール18.Ｃｈ．タルボ19.Ｃｈ．ダルマイヤック20.Ｃｈ．ディッサン21.Ｃｈ．デス･ミライユ22.Ｃｈ．デュ･アール･ミロン23.Ｃｈ．デュ･クリュ･ボーカイユ24.Ｃｈ．デュ･テルトル25.Ｃｈ．デュ･ル･フォール･ヴィヴァン26.Ｃｈ．ドゥーザック27.Ｃｈ．バタイエ28.Ｃｈ．パルメ29.Ｃｈ．プージェ30.Ｃｈ．フェリエール31.Ｃｈ．ブラーヌ･カントナック32.Ｃｈ．ブラネール･デュ･クリュ33.Ｃｈ．プリウレ･リシーヌ34.Ｃｈ．ベイシュヴェル35.Ｃｈ．ペテスクロー36.Ｃｈ．ベルグラーヴ37.Ｃｈ．ポンテ･カネ38.Ｃｈ．マルキ･ド･テルム39.Ｃｈ．マルゴー40.Ｃｈ．マレスコ･サン･テグジュペリ41.Ｃｈ．ムートン･ロートシルト42.Ｃｈ．ラグランジュ43.Ｃｈ．ラスコンプ44.Ｃｈ．ラトゥール45.Ｃｈ．ラトゥール･カルネ46.Ｃｈ．ラフォン･ロシェ47.Ｃｈ．ラフィット･ロートシルト48.Ｃｈ．ララギューヌ49.Ｃｈ．ランゴワ･バルトン50.Ｃｈ．ランシュ･バージュ51.Ｃｈ．ランシュ･ムーサ52.Ｃｈ．マルキ･ダレム･ベッカー53.Ｃｈ．ピションロングヴィル･コンテス･ド･ラランド54.Ｃｈ．ピションロングヴィル･バロン55.Ｃｈ．モンローズ56.Ｃｈ．ボイド･カントナック57.Ｃｈ．レオヴィルバルトン58.Ｃｈ．レオヴィル･ポワフィレ59.Ｃｈ．レオヴィル･ラスカーズ60.Ｃｈ．ローザン･ガシー61.Ｃｈ．ローザン･セグラ聞いたこともないない銘柄がある一方で、ディスカウント店で一本７００円で売られていた記憶のある銘柄もある。一言でいえば、玉石混肴ということかな。ハッハッハッ

  2006.10.11

• 新宿の戦略拠点☆

  プライベートでノートパソコンできる場所といえば。赤坂プリンスホテルのロビー。　これは電源が使えないんだ。帝国ホテルのインペリアル･クラブ。　ここは電源を使わせてくれるけれど、無線ＬＡＮがなくてね。というわけで、曹操閣下としては電源を貸してくれる無線ＬＡＮスポットをずっと探していた。そしたら、新宿の南口マクドナルド二階にモバイル･センター席ができていた。これは便利だ。もうネット喫茶はいらないな。ハッハッハッ。

  2006.09.13

• 赤坂四川飯店の麻婆豆腐定食

  　赤坂四川飯店は国会の裏の平河町･自民党本部と森派｢清和会｣の派閥事務所がある赤坂プリンスホテルの中間、全国旅館会館にある。　一階に映像会社のＩＭＡＧＩＣＡ･イマジカのスタジオがあり、隣りがゲームメーカーのＴＡＩＴＯ･タイトーの自社ビル。　実に狭い世界の中に、世界に誇る中華料理店がある。　それでいつもお世話になっているわけだ。　去年まで、四川飯店では二つの麻婆豆腐を出していた。　一つは激辛の麻婆豆腐。　もう一つは日本人向けに創作されたオイスターソース･ベースの甘辛の麻婆豆腐。　激辛の麻婆豆腐は、｢陳麻婆｣ということで、かなり普及した。　四川省成都市の本場･陳麻婆豆腐店も赤坂見付の赤坂東急ホテルのモール街に進出した。　しかし、今日、陳麻婆の基本レシピになっている豆板醤と山椒のミックスは陳建一さんの尊父、陳建民さんが日本に来てから考案したという。　陳建民さんは蒋介石軍の四川軍閥のお抱え料理長であり、立ち木を切った枝で、兵士たちに料理をふるまった逸話の人物。　しかし、赤坂四川飯店はそんなエピソードはあまり宣伝しない。　しかも、伝統の陳麻婆をランチメニューからはずしてしまった。　なかなか考えが深い。　陳麻婆は辛すぎて、食べ残しが多かったからだろう。　今では陳麻婆とオイスター麻婆(これも陳建民さんの創作レシピ)のミックスがランチメニューに出るようになっている。　創作する力を持った料理店が強いのである。　

  2006.08.30

• 松屋ＶＳねぎし【ランチ対決】

  新宿ねぎしというのは、新宿ヨドバシカメラ本店の裏町で創業した炭火焼の居酒屋だった。　今でも三店舗が集中している。　それが麦トロと炭火焼肉の定食屋として、全国展開を始めている。　特に顕著だったのは、渋谷･秋葉原の進出だった。　これは大成功だった。　オタクは焼肉が好きなのに、焼肉屋に行けない。　焼肉屋はどこもカップルとかグループで行く居酒屋であり、一人で行く場所ではない。　しゃぶしゃぶ屋もそうだ。　一人で焼肉を食べたいと思ったら、松屋に行くしかなかった。　そこに麦トロと牛･豚･鳥の焼肉を定食で出す｢新宿ねぎし｣が殴りこんだわけだ。　｢ねぎし｣が健闘しつつあるのは、オタクだけではなく、若い女性客が来るようになっているからである。　若い女性も一人、あるいは女の子の友だちとランチで焼肉が食べたいのだ。　もともと西新宿の飯場(都庁をはじめとする東京の大規模都市計画)の落とし子がヨドバシカメラ裏の飲食店街だった。　その肉体労働者向けの塩辛い焼肉が｢ねぎし｣の味だ。　それを新宿アルタに隣接する地下街･新宿サブナードでは、若い女の子たちが｢ねぎし｣に殺到して食べている。　松屋もこの動きに注目したと思う。　まずアルバイトに女性を積極的に採用している。　お店にいる店員さんが、マクドナルドのように挨拶してくれると、いつもの松屋とは雰囲気が全然違うからね。　これは実にうまい作戦だ。　店舗のリニューアルもいらないしね。　それだけ戦略転換は急務だったわけだ。　資本力のある松屋は、次に｢野菜炒め定食｣と｢とろろタン定食｣をこの夏に出した。　これも｢ねぎし対策｣だろう。　企業が競争する。　真剣勝負で闘う。　そこに新たなサービスと消費者の顧客満足が生まれてくるのだ。

  2006.08.29

• 阪急塚口駅前【アングル】のシチュー☆

  閣下は関西出張中であるが、たまたま阪急塚口に来た。ここは｢塚口新地｣、「通称･つかしん｣のあるところである。別に｢つかしん｣に関心があったわけではないが、曹操閣下は東映映画【バルトの楽園(がくえん)】の公開初日に見たいと思ったので、わざわざ塚口サンサン劇場に来たわけである。驚いたのだが東映系の映画館は、この塚口と神戸の三宮東映しかロードショーしていなかったのだ。閣下はこの映画館は｢つかしん｣にあると考えていたのだが、何と駅前のボロッチー映画館だった。ガッカリした。昼に着いたので上映時間は午後一時十分ということになった。昼飯でも食べようと駅前をうろついたが、何もない。何もないと思っていたら、｢シチュー＆カレーの店･アングル｣という看板をこれまた汚い駅ビル一階で発見した。おもしろい。行ってみたら、若い職人たちが懸命に動いている。これはフリーターの仕事ぶりではない。ここの料理人が若い職人たちをも感動させる味を作り、尊敬されているから、これだけしっかりと働くわけだ。店の雰囲気は必ずしも清潔ではないが、それはマアいい。ここのシチューは牛肉のブロックが七個ほどドカンとでて、１０５０円という良心的な価格設定だ。これだけのシチューを浅草のヨシカミあたりで食べると、２０００円から３０００円ということになるだろう。それもおもしろい。ここのシチュー･ルウはドロリとした京風ドビイで、京都ではもう失われつつある味である。特にハチミツの風味がきいていた。付け合せのニンジンも、普通はバターで甘味を出すのだが、ここでもハチミツ風味をきかせている。これは濃い味のシチューだから、よく合う。味は確かだ。シチューを看板料理にするだけのことはある。ただ場所が悪いなあ。東京の曹操閣下は関西のグルメ･ファンに、この店のシチューを自信を持って推薦する。やがて大きな店構えとなり、大阪の梅田、神戸の元町にも進出する名店となるだろう。

  2006.06.16

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  第一パン【牛乳パン】で反撃開始☆

  第一パンの正式名は「第一屋製パン株式会社」。創業は昭和２２年。前に紹介した名古屋のフジパンと同じように、学校給食用の学童パンで急成長した。工場は東京の蒲田・小平・金町。千葉の松戸と栃木の宇都宮。それから大阪と大阪空港近くにも工場がある。ここからポケモン・シリーズの菓子パンや女の子アイドルとのタイアップ商品など、「東京のパン工場」の地の利を生かした商品構成をとってきた。　　　ところが、ここへ来てフジパンの東京進出に明らかな反撃を開始した。その反撃商品が、店頭にならびはじめた。このパッケージは明らかにパクリだね。さて、第一パンはフジパンの東京進出を止められるか。曹操閣下の見るところ、第一パンはいくつか致命的な失敗をしている。まず、季節。これから夏だが、「砂糖をかけた揚げパン」は真夏にふさわしいものか。次にパッケージ。ダサイ。袋のカラー。全然、おいしそうに見えない。結果。大量に売れ残って安売りされている。企画担当者をクビにするしかないね。ハッハッハッ。

  2006.05.29

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  【イクスピアリ】舞浜地ビール工場のランチ(1)

  「舞浜地ビール｣って、どこかで聞いたことあるけど、実際にドコにあるのか。最近、閣下もトシだから、うまいビールを求めて街を歩くことがなくなったなあ。でも、ここは偶然に発見したところだ。イクスピアリ最上四階の一番奥のところ。ここのランチバイキングは非常に凝っている。基本的にサラダ＆ケーキのバイキングで６００円。これはメインディシュ１０００円のサイドメニューだから、簡単に言えば１６００円ということ。メインデッシュのパンはビール酵母と麦芽カスをつかった手作り。これは売り物ではなかなか食べられないよ。バイキングのケーキも工夫してある。地ビールは今、かなり苦戦を強いられている。銀河高原ビールが廃業したし、台場地ビール工場も生産中止。ここも苦労はあるに違いない。しかし、料理場のシェフやパティシェたちはがんばっているようだ。これからちょっと応援してみようか。

  2006.05.22

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  せんば自由軒☆いつのまにか東京進出☆

  曹操閣下は大阪に行って船場の問屋街を歩く時は、だいたい【せんば自由軒】で名物のドライカレーを食べることにしている。最初は食べ方がわからなかったのだが、ここは高速道路の高架下の船場センター地下二階にある店がまえなので、気楽に大阪人の食べ方を観察することができた。一言でいえば、もんじゃ焼きのような食べ方である。ドライカレーの真ん中にクボミがあり、そこに冷たい生卵がのっている。ここにウスターソースをかける。ガガッと混ぜ合わせるのは大阪流ではない。それは時間のない丁稚の食べ方である。生卵とソースをスプーンでサラサラとかき混ぜると、ドライカレーは自然に火山型になり、ドーナッツ型になり、阿蘇山のように外輪の土手ができる。そこで、土手を少しずつ削って、トロトロ卵を漬けて食べる。大阪の旦那衆は、このように優雅なものなのだ。キタの相場でパツーッと当てたという成り上がりは、こういう洋食屋には来ない。それはフグとかステーキとか、歓楽街ミナミの領域だ。レトロの時代、商家の女将さんの目をのがれて、娘婿の旦那さんがちょいと粋に一人飯をかきこむところだったのである。今回、あらためて驚いたのは、地下街の洋食屋の自由軒はいつのまにか横浜みなとみらい、埼玉新都心、そして東京の新橋にも路面店のレストランをかまえたということだ。今度、行ってみようかな(笑。

  2006.05.04

• 餉餉・銀座店☆確かにボリュームはあるが。

  永谷園外食事業部の和食バイキングでもう一つ大きな柱が、銀座プランタンの裏手のビルにある。それが餉餉(http://keke.jp/)銀座店である。ここは非常に話題になっている店だ。行列もできる。予約もいっぱい。テレビでも何度も取り上げられたらしい。メニューの内容も｢ぎょうさん｣という感じだな。有機切り干し大根 有機大豆使用　卯の花煮 有機ごぼうの金平 国産ひじきの煮物 京都千鳥酢 鮭の南蛮漬け クーブイリチー（昆布煮） 有機さつま芋のレモン煮 天然だしのおでん各種 秋刀魚の香梅煮 豊後鶏の胡麻煮 有機里芋のそぼろ煮 有機肉大根 有機野菜の肉じゃが 博多がめ煮 有機ほうれん草の胡麻和え 有機小松菜の白和え 有機南瓜の含め煮 セイアグリー健康卵の茶碗蒸し もずく酢 甘海老の唐揚げ かつおの生姜煮 塩鯖（天然塩） オーガニックパスタ　トマトソース オーガニックパスタ　ペペロンチーノ 自家製無添加ピザ オーガニックグラタン 健康卵スクランブルエッグ 北海道興農豚の一口とんかつ 有機栽培里芋コロッケ 無添加ウインナーのポトフ 有機ポテトフライ 有機野菜とチーズのサラダ スモークサーモンのマリネ たこのマリネ 有機野菜のスティックサラダ 有機野菜とチーズのサラダ 海草サラダ 有機ジャガイモの和風サラダ 有機ザル豆腐 温野菜のサラダ 蒸し野菜 特製水餃子 甘海老のチリソース 有機野菜炒め 餉餉チャーハン 有機栽培米　白ご飯 有機栽培米　黒ご飯 有機栽培米　玄米ご飯 有機栽培米　宮崎地鶏飯 日替わり　ちらし寿司 玄米梅かゆ 国産地粉打ちたて十割そば 国産地粉打ちたてうどん 天然だしのお茶漬け 天然だしの味噌汁 有機野菜たっぷりのスープ 有機野菜で作ったカレー 有機小豆のぜんざい 柚子白菜漬け キムチ かつお大根漬け 嵐山漬け かあちゃん漬け ミックスみぶな漬け 手作り梅干 無添加イカの塩辛 国産無農薬納豆 有機栽培さしみこんにゃく いかのマリネ 大根漬け 北海道興農豚の角煮 豊後鶏の唐揚げ 宮崎和牛のローストビーフ ラムの香草焼き 野菜と魚介の天麩羅 フレッシュフルーツポンチ 黒糖蒸しパン 杏仁プリン 白胡麻プリン ほうれん草のパンナコッタ 有機トマトのパンナコッタ 季節のフレッシュフルーツ盛り合わせ ドライフルーツ盛り合わせ ヨーグルト 有機大豆使用豆腐のデザート 有機レーズン 有機コーヒーゼリー 有機シリアル キャラメルプリン 有機豆腐の寒天デザート お芋のプリン 有機オレンジゼリー 有機コーヒー 有機三年番茶 有機麦茶 黒豆茶 有機紅茶 ぶどう酢健康飲料ビワミン 100％りんごジュース オーガニックオレンジジュース 茜茶（有機小豆茶） 天然水 きき酢コーナー ☆さて。　物量作戦は結構。　しかし、皮肉を言うようだが、これはビジネスじゃない。　宣伝効果はあるだろう。　店舗経営としては失敗の部類だ。　なぜか。　せっかく客たちを行列させたり、バイトなんぞに横柄に断ったりさせている。　バイトの教育マニュアルが不備だということがわかるよ。　これではチェーン展開は難しいな。　料理も粗雑。　切り方でわかる。　味付けも適当。　つぶれはしないだろうが、大きくなることは期待できない。　このバイキング価格レートでは柿安ダイニングの【三尺三寸箸】があるからな。http://ikuko.ciao.jp/2005/repo/33n.htm　こっちは惣菜屋だから、かなり手の込んだ料理を出している。　素材は鹿児島黒豚と松坂牛のしゃぶしゃぶ肉だ。　銀座では日比谷シャンテの地下にあって、目立たないが人気店の一つだろう。　永谷園という資本が、バイトまで傲慢にさせているから、商売になっていないんだよ。

  2006.05.03

• 【響】の闘い☆永谷園の攻勢開始☆

  閣下は久々に銀座に出かけた。永谷園の幹部と会食しようということになった。場所は銀座通りの資生堂とヤマハ･ホールにはさまれたＧＩＮＺＡ ＧＲＥＥＮビルの5階。京都自然式おばんざいとお魚料理･嘉の香(http://r.gnavi.co.jp/a364900/)と看板が出ている。行ってみて驚いた。 ～　ランチビュッフェ ≪　メニュー　≫●国産ひじき煮　　　　　●鮭つみれ●有機切干大根　　　　　　●茶碗蒸し●有機さつま芋レモン煮　　●有機里芋コロッケ●有機大豆昆布　　　　　　●天然だしのおでん●豚角煮　　　　　　　　　●鮭南蛮●鯖塩焼（天然塩）　　　　●有機ポテトサラダ●鶏の唐揚げ　　　　　　　●鶏胡麻煮●根菜たっぷり筑前煮　　　●有機野菜サラダ●肉大根　　　　　　　　　●黒糖本つぼ漬●鮭ソーセージ　　　　　　●味噌汁●白ごはん　　　　　　　　●杏仁プリンお店の雰囲気、そして｢おばんざいバイキング｣。これは明らかに｢膳丸｣や｢響｣を展開するサントリーの外食事業部に対する挑戦だ。永谷園がこうした外食を展開し、日本料理の職人を養成し、その技法から新商品開発のノウハウを蓄積していくのは賛成だ。そして、ライバルを【打倒･響】ときちんと定めているのも面白い。実際、このビルは【響】銀座七丁目支店のランチバイキングも同居しているのだ。この【響】の闘い、永谷園は善戦しているように思われたが、目立つ｢有機｣というコンセプトはどうか。実際、料理の細やかさの点では、やはりサントリーに軍配をあげざるをえない。新宿･膳丸のほうが、バイキング料理の扱いが慣れている。地方料理のいろいろな要素をとりいれるのもいいが、どれもその地方料理の老舗の味には及びも着かないものだ。この｢嘉の香｣はまだ支店展開が始まったばかりだから、何ともいえないが。ライバル【響】から、いろいろ学んでいけば、改善もできるだろう。汝の敵を愛せよ。これもマーケティング戦略の基本である。

  2006.05.02

• 【膳丸】の反攻作戦☆おばんざい革新☆

  さて曹操閣下はちょっと気になって新宿の膳丸(http://r.gnavi.co.jp/g068201/)を訪ねてみた。そしたら五月一日からメニューが一新されていた。永谷園対策だな（笑。まあ見てくれ。● 焼き春雨ヌードル【NEW】 380 低カロリーの春雨を中華風に味付けしました。 スリムバディーをあなたに!【低カロリー】 ●新じゃがとアスパラのおかか炒め【NEW】 420 旬の野菜をシンプルに仕上げました。日本人で良かった～という味付けです。 顔がすっきり!むくみを無くす【カリウム】 ●新玉ねぎの丸ごとトロトロ煮【NEW】 420 トロトロに煮込んだ玉ねぎです。野菜の甘みをお楽しみください。 血液サラサラ【硫化アリル】 ●桜海老とやまと芋のふわふわ揚げ【NEW】 450 旬のカルシウムたっぷりの桜海老を召し上がれ! イライラ予防!【カルシウム】 ●春きゃべつと新じゃがのコンビーフマヨネーズ【NEW】 450 サラダ感覚で召し上がれる逸品。懐かしのコンビーフがポイントです! 胃腸がばっちり!【キャべジン】 ●たけのこと大豆もやしのナムル 350 食感の楽しいナムル。ガーリックをきかせました。 貧血予防【ビタミンC】 ●びっくり！カツレツ！ 320 「サクっじゅわ～」の未体験の高野豆腐カツレツです。 体のバランスＵｐ【鉄分】 ●揚げたて手作りがんも 380 外はサクっ！中はふわふわ！！　生姜醤油でどうぞ。 お肌ツルツル【植物性たんぱく質】 ●宇和島のじゃこ天 420 美味しいじゃこてんを丸々一枚！おろしでさっぱり召し上がれ！ イライラ予防！【カルシウム】 ●牛すじをコトコト煮込んだ肉じゃが 500 とろとろに煮込んだ牛すじの肉じゃがです。 貧血予防【ビタミンC】 ●懐かしの大学いも!!! 350 さつま芋と黄金千貫を懐かしい味に仕上げました。 お腹すっきり【食物繊維】 ●ピリっ辛！玉こんにゃく【RENEWAL】 380 食物繊維た～っぷり！ストレス解消にも○。 スリムバディーを貴女に!【低カロリー】 ●じゃがじゃが明太揚げ!! 380 じゃが芋を練り揚げ、明太マヨネーズを！まさにばりうまか！！ 顔がすっきり!むくみを無くす【カリウム】 ●いも豚のとろける角煮【RENEWAL】 500 味噌デミグラスで煮込んだ角煮は、まさにコラーゲンの宝庫！ お肌ツルツル【コラーゲン】 ●ごぼうの唐揚げてんこ盛り ～ケール塩とともに～ 350 膳丸でしか味わえない一工夫が…。おつまみにどうぞ！ お腹すっきり【食物繊維】 ●ゴーヤのこだわりキムチ和え 420 栄養価の高いゴーヤをこだわりのキムチと和えました。 スリムバディーを貴女に【低カロリー】 ●海老とほたるいかの百年酢マリネ【RENEWAL】 450 沖縄の百歳まで生きられるという泡盛酢を使用しました。 疲れ知らず【クエン酸】 ● まぐろとアボカドの炙りカナッペ 580 ワイン、焼酎なんでも合います。おしゃれに盛り付けました。 ●京のお漬け物 600 京の旬の野菜を堪能ください。 ●豆力のなめらか手作り豆富【RENEWAL】 650 濃厚でなめらかなお豆富を醤油あんとすり胡麻でどうぞ! ●ころころチーズの葱まみれ【NEW】 620 リコッタチーズをこんにゃくで包みました。葱をたっぷりつけて! ●炙りトロと京野菜の湯葉巻き【NEW】 650 色鮮やかな湯葉巻きを豆乳ゴマだれあんでどうぞ。 ●フルーツトマトのカルパッチョ 680 あま～いフルーツトマトをさっぱりシンプルに仕上げました。 ●ダチョウのたたきカルパッチョ 980 三高ならぬ三低肉です。（低脂肪 低カロリー 低コレステロール） ● 明太じゃこピッツア【NEW】 650 みんなの大好物、明太子マヨネーズチーズのピッツアです ●じゃがバクダンのピリ辛トマトソース【NEW】 680 肉汁たっぷりのハンバーグをじゃがいもで包みました。ご注文いただいてから出来上がるまで20～30分お待ちいただきます。 ●島らっきょの肉巻き焼き【NEW】 680 ビールにぴったりのおつまみメニューです。 ●こだわり卵の出汁巻き 650 定番中の定番。出来立てをお召し上がり下さい。 ●ジャン棒！つくね！ 680 長～いつくねです。ふわっとした食感をお楽しみ下さい。 ●豚タンピリ辛煮込み【RENEWAL】 750 じっくりコトコト丁寧に煮込みました。 ●うな玉ゴーヤチャンプル【NEW】 750 定番のゴーヤチャンプルに鰻を入れちゃいました。 ●うにの豆乳グラタン【NEW】 950 山芋とエリンギの入ったグラタンです。●あつあつトマトコロッケ【NEW】 550 アツアツにしたトマトを包んだコロッケです。 ●サクサク湯葉ぎょーざ【NEW】 650 野菜たっぷりのぎょうざの具を湯葉でくるみました。 ●山芋のガーリックフライ 580 シャキふわのおつまみに最適なガーリックフライです。 ●若鶏のコーンフレーク揚げ【RENEWAL】 680 ジューシーな若鶏にコーンフレークをまぶして揚げました。 ●黒豚メンチのぶっさし 680 黒豚を使用したサクッジュワ－のメンチカツです。 ●もっちりチーズの磯辺揚げ 680 とろとろチーズを海苔で巻き揚げました。 ●海老のはんぺんチーズ 750 三種の人気者が素敵に出会いました。和風タルタルソースでどうぞ！ ●味玉だいこんサラダ 650 とろとろの味玉とシャキシャキの大根がベストマッチ！！ ●京野菜のサラダ 650 京野菜に蕪と塩昆布…胡麻油の風味豊かなサラダです。 ●生ハムとツナのパリパリサラダ【NEW】 680 春巻きの皮の食感がアクセント!柚子胡麻ドレッシングでどうぞ! ●海老とアボカドのポテトサラダ 680 キングオブ緑黄色野菜のケールを和えました。 ●おばんざいやの焼き飯 680 ぶぶ漬けを焼き飯に! 二度美味しいご飯です。 ●冷! さっぱり梅うどん 750 コシのある氷見うどんをシンプルに仕上げました。 ●マグロほほ肉のステーキどんぶり【RENEWAL】 800 甘辛く味付けしたマグロほほ肉は絶品です。 ●ニラ玉キムチ焼そば 750 人気の焼そばをピリ辛で! ●石焼きオムドライカレー 850 香り豊かなカレーのおこげをお楽しみ下さい。☆勝負はついている。　一流ホテルの和食バイキングでも、まずかなわないだろう。　どこまで追いつくかどうかは永谷園の努力次第。

  2006.05.01

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  なぜか美味いコンビニのパン☆名古屋気質が出ている。

  　どこのコンビニでも見かけるパッケージである。　食べてみて、「いやあ、こんなの食えないよ｣という人はいないだろう。　いや実際、なかなか美味いのである。　つくっているのは名古屋のフジパン。　水の代わりに、１００パーセント牛乳でパンをこねているのだそうだ。　これはうまいはずだよ。　フジパンは名古屋気質のある企業といえるね。　もともとは名古屋市中区長岡町のパン屋として大正11年に創業した。　企業として成長のキッカケとなったのは、占領軍の援助食糧である配給小麦を利用して、学校給食用にパンを全国で大量製造するような需要が生まれたとき。　昭和２１年のことだった。　昭和３４年、伊勢湾台風の被災地にパンを供給し、非常食としてのパンの役割は全国に普及した。　これがフジパンの成功の始まりである。　他の商品を見ると、どれもパッとしたものがない。　しかし、コンビニの要望に応えたのがフジパンだけだったというのが面白い。　｢ぶどうぱん｣の面白さ。　それはレトロチックで、しかも安い、シンプルなデザイン志向だ。　配給向け･学校向けの「面白くないパン｣ばかり焼いていたフジパンだからこそできる逆転の発想だ。　「面白くないパン｣が懐かしいのだ。　パスコにせよ、神戸屋にせよ、懲りすぎたパンが多過ぎる。　「名古屋らしい｣というのは、これだ。　中にマーガリンが仕込んであるネオ･シリーズ。　　　　　これは「天むす･ひつまぶし｣の発想だね。　まあ、がんばってくれ。

  2006.04.24

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  豪快☆富士屋ホテルのクラシック･ランチ･コース☆

  曹操閣下は最近、春休みなので箱根に通っている。さて、ロサージュの手抜きランチに、神戸北野坂の異人館の時のように、せっかくの金をドブに捨てたような後悔を味わった。そういえば、異人館の入場料も１６００円だった。あのロサージュ手抜きランチも１６００円ナリだ。数字に祟られるとは、このことだ。直感で気がつかなかった自分が未熟だった。不覚。しかし、心を癒されたのは、やはり富士屋ホテルの料理だ。魚料理は箱根の姫マスを豪快に丸一尾をローストしたもの。メイン･ディッシュはビーフ･カツレツだ。これはステーキ肉のカツレツで、東京の洋食屋、例えば｢たいめいけん｣で食べるビフカツよりも数段ちがう。さすがに富士屋ホテルのほうがウマイ。つまり｢たいめいけん｣や｢松本楼｣、｢浅草ヨシカミ｣アラカルトのビフカツより、富士屋ホテルのコースのビフカツのほうがウマイわけだから、ランチコース４０００円は決して高くはない。充分に、心のおつりが出るわけだ。ああ、いいランチを食べると気分がいいな。それにつけてもロサージュの失敗が悔やまれる。

  2006.03.25

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  食卓で激怒しながらグルメの舌は考える☆

  曹操閣下は最近、春休みなので箱根に通っている。《山のホテル》ティーラウンジは、夕方にやってきた客をマントルピースの火で迎えてくれる。寒い季節と違って、季節はもう春だ。ホテルの暖房で軽い半袖姿に暖炉の火。いいねえ。まるで自分の家みたいだね。でも、いいことばかりではなかった。前々から行ってみようと思っていた《山のホテル》別館のカフェ、サロン･ド･テ･ロサージュは箱根の中でもなかなか有名な店である。一つはホテルの別館だし、芦ノ湖に突き出た絶景の建物であることもあるだろう。楽天トラベルでもオススメの店となっている。しかし、吉兆の帝国ホテル大阪店のように、有名だからといって、実際に言ってみたら「何だ、ここは｣と憤激する場合もある。ここでも１６００円のお食事プレートとして出てきた｢アルミホイル焼きハンバーグ｣の内容のなさに曹操閣下は激怒した。あのなア、小田急ホテルの他の調理場のシェフたちが、プライベートでこんな貧弱な手抜きランチ･プレートに納得できるかね。ここは紅茶が名物で、女子従業員たちが懸命に働いていることはわかった。しかしねえ、この程度の店は東京の新宿には五本指ぐらいあんだよ。特にパークハイアットのアフタヌーン･ティーを楽しみにしている曹操閣下は、こんなところで紅茶を飲もうなんて気持ちはサラサラなくなってしまった。最後に曹操閣下は店の女の子に提案したよ。「アルミホイル焼きをやめて、パイ包み焼きにしたらどうかな。トロワグロの技術があるんだし。あれでは値段に見合わないよ｣曹操閣下は小田急ハルクで、高橋徳男シェフのパ･マルのパイ包み焼きのイートインを楽しみにしている。トロワグロは、フォワグラ･ミートパイ(今は販売中止)を５２５円で売っているのだ。小田急ロマンスカーで車内販売しているサンドイッチは５２５円だが、トロワグロで４５０円で売られているものだ。いいかげんな料理に、いいかげんな価格をつけている料理店には本当に憤激しなくてはならない。ロサージュのことを｢いい店だ｣などというヤツは、箱根しか知らない箱根人だけだろうね。そんなわけで、いたく気分を害した曹操閣下は、ただちに富士屋ホテルに急行した。メインダイニングの《ザ･フジヤ》ここで再度、新任シェフおまかせランチ･メニュー･コース(４５００円)を楽しむことになった。値段じゃないんだよ。舌の肥えた客をだますようなロサージュのレストラン経営が、曹操閣下を激怒させたのだ。《山のホテル》はラウンジが最高。あれだけでいいよ。ケーキもジャム(ヴァニラ･ビーンズ入り)もトロワグロ･レシピだしね。最後に一言。ロサージュなんかやめちまえ。クソッ。

  2006.03.24

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  曹操閣下が楽しむ「極上の箱根」

  さて、富士屋ホテルについては、もう多くは語るまい。箱根に来る機会があったら、何はともあれ、一回はここに泊まることを推奨したい。すべてはここから。箱根には実にいろいろなホテルがある。小田急系の「山のホテル」ここは三菱財閥の旧岩崎男爵家の別邸跡。レストランのシェフたちはみなトロワグロで徒弟修行した人々だ。ただ、ここには温泉がない。さらに箱根で美食を求めるならば、パヴィヨン・ミラドーがある。ここは曹操閣下が何度も紹介している《クラブ・デ・トラントゥ》の一人、勝又登オーナー・シェフのオーベルジュ・ミラドーである。http://rakuten/kakkanogourmet/200501010000/それから箱根プリンスホテル。ただし曹操閣下は利用したことがない。箱根はやっぱり富士屋ホテル（箱根ホテル）が便利だからな。箱根ホテルについては、次の機会にまわそう。さて上質の上にも上質を求めるなら、格式ある洋風ホテルもさることながら、和風ホテルがよいに決まっているであろう。「和風」というのは、いわゆる旅館ではないのだ。富士屋ホテルの正面にある別館・菊華荘というのは、旧高松宮御用邸であり、戦前の宮内庁建築だ。旅館ではない。まさに明治宮殿の一部なのだ。すばらしいの一語につきる。出てくる料理もすばらしい。これが曹操閣下の「極上の箱根」というわけだ。

  2006.03.14

• 新宿膳丸☆京風オムライス食べ放題

  曹操閣下公認。日本一のおばん菜を出す《膳丸･新宿店》。http://www.suntory.co.jp/gourmet/shop/0332253038/index.htmlこの前の日記を読んだ京都の町衆の次男坊が「連れて行ってくれ｣という。まあ毎日メニューが変わるところだから。今日のブッフェ(食べ放題)メニューは胡麻クリームソースのサラダ京風ひじきスズキ(鱸)の香草パン粉焼き鳥唐揚げのマヨネーズ添えトロトロ卵のスクランブル自家製トマトピューレソース牛挽肉の麻婆豆腐玉ねぎとジャガイモのスナック佐賀とうふ京漬物納豆檜櫃の白飯ジャコ紫蘇飯筍とワカメの吸い物紅茶ゼリーコーヒーウーロン茶これで一人９５０円。ハッハッハッ。また来てよかった。そこで考えた。トマトピューレを白い御飯にのせて、かきまぜ。これね、市販のケチャップは御飯に混ぜると色むらしたり、香料が分離して酸っぱくなるから、すぐわかる。このピューレは御飯に混ぜると甘くなった。だからイタリア産のホールトマト･ピューレだとわかるわけ。で、いわゆる京都の｢ケチャップライス｣にする。肉はマーボー挽肉を混ぜてもよし、鳥から揚げの肉だけを入れてもよし。その上にトロトロ卵をのせると。京都のどんつき｢丸太町東洋亭のオムライス｣の味ではないか。もう想像しただけで｢うまいっ｣でしょ。キョー(京)はたのしーおむらいすーっと。

  2006.03.05

• 新宿膳丸☆菜の花に誘われて

  梅は咲きかけ。菜の花も、つぼみの時。「菜花の御浸し｣がうまい季節である。そこで曹操閣下が向かったところが、日本一のおばん菜を出す《膳丸･新宿店》。http://www.suntory.co.jp/gourmet/shop/0332253038/index.html曹操閣下公認。京都の嵐山《ぎゃあ亭》や三条《万菜》よりも「格段にうまい｣と認定したところだ。http://plaza.rakuten.co.jp/kakkanogourmet/diary/200512070000/京都人も、新宿でランチ時間を迎えたら、ぜひ寄ってみるとよい。今日のブッフェ(食べ放題)メニューはバンバンジー風蒸し鶏もやしサラダ菜花の御浸し鰤(ブリ)の照焼牛スジすき焼温泉卵おでんマカロニサラダ玉ねぎと桜海老かき揚げ佐賀とうふ京漬物納豆檜櫃の白飯チラシ寿司飯はまぐりの吸い物ココアムースゼリーコーヒーウーロン茶これで一人９５０円。ハッハッハッ。来てよかった。温泉卵をトポッとかけたすき焼き肉。白い御飯にのせて。もう想像しただけで｢うまいっ｣でしょ。キョー(京)はたのしーおばんざいーっと。

  2006.03.03

• なだ万の梅粥☆高級料理とは

  閣下は毎月、帝国ホテル地下･なだ万の「季節点心｣を楽しみにしている。これは月ごとに内容が変わるので、飽きないということもあるし、いろいろな発見もある。一方で、「何だよ、これは｣と不満もあるわけだ。今月の料理は、だいたいよかったと思うが、薯饅頭の汁が塩味がキツかったな。やはり塩味はデリケートだ。今回の季節のメインは何といっても、梅粥だったのだろう。閣下の家の近くの世田谷区羽根木公園には７００本以上の梅林があり、白加賀やしだれ咲き梅、大宰府の飛梅など在来種ばかりでなく、新品種も植えられている。金曜日に通りがかったが、まだ咲き始めで、花が開いている木は二割もない。しかし、梅の香りは実によい。そこに梅粥。なるほどという気持ちでいただいた。これはかなり気合いが入っていると見た。なかなかのものだ。最近、いろいろな料理を食べてきて思うことがある。同じ味だと「飽きる｣ということがある。特にアメリカ式料理だと、ハンバーガーやらステーキということになり、感覚の繊細さは微塵もない。中華料理や中東料理は、いわゆる大皿料理。技巧も繊細さもあるが、こってりしすぎている。メインは手が込んでいるが、主食の焼き飯に驚くようなことはあまりない。その点、なだ万の梅粥は高級料理にふさわしい品格があったと思う。塩味も非常に吟味した形跡があり、実に見事。種を抜いた梅干をほぐして入れているが、これもまた普通の塩梅干ではない。鰹節をからめた鰹梅でもない。ほんのり甘く、実に上品な味わいである。おそらく炒り子や香味などを工夫して独自に漬けたものであろう。また、この粥には隠れた工夫があって、なだ万の出汁味をかけた部分があり、蓮華匙の一口ごとに違った味わいが楽しめるようになっている。これはなかなかのものだ。最近、フランスのミシェランでトゥールダルジャンが２つ星から１つ星に降格されたことがニュースになっていた。これは｢同じ味｣を守りつづけすぎたところにもあろう。同じ味だと飽きるのだ。星を１つ落とした理由は、ミシェランの評価を深く分析せず、接待やサービスの改善と向上に今ひとつ努力が不足していたことだろう。食材の肥育管理そのものも改善が必要であったと思う。しかし、トゥールダルジャンの最も大きなハンデは、「アメリカ式料理｣と誤解されつつある位置にあると思う。ステーキと同じ種類の料理と分類されつつあるのだ。フランスの高級料理の傾向が日本料理に影響を受けているのは間違いない。日本人の料理人のレストランが続々と星１つを獲得している。これはミシェランの評価基準が軸足を動かしていることの証左だ。曹操閣下がトロワグロやポール･ボキューズの料理について思うことは、やはり「一口ごとの味の計算｣がしっかりと積み重ねられているということである。料理の提供温度はもちろん、歯ごたえなど食感も計算されている。このような料理人の｢計算の重視｣が明確に伝わることが、高級料理としての品格になっている。フランス人は数学が好きな国民である。数学者は詩人のように尊敬される。貴族も数学を愛する。グルメ評論家も経歴を見ると数学者が多い。フランスのベンチャー経営者も理数系だから数学の素養はあるわけである。したがって料理の中に数学が見えること。これが最近のフランスの高級料理の最高評価につながっていると思う。例をあげれば、３つ星レストランの｢ミシェール･ブラス｣はまさに数学料理の典型といえよう。これは何の変哲もない普通の食材を一つ一つ最適の調理法で仕上げてある。見かけは何でもないのだが、口に入れたとたんに「これはすごい手間がかかっているな｣と実感させられるのだ。食材一つ一つが素材に最適な味付けがされている。味が違うのだ。ソースもドロッとかけない。つまり、別々のフライパンなり鍋で調理されていることは明らかだ。温野菜数種類も、煮方や食感が細かく計算されている。それが一つの皿に、いっぺんに最適の提供温度で出されるのだから、「これは手間がかかっているなあ｣と実感するわけだ。数人以上の料理人が両手に鍋を抱えて、仕上げ時間が同時になるように料理をやっているわけ。これは相当な訓練と時間の計算、そして料理人たちの呼吸がピタッと合わないと一つの皿にこれだけの味と食感を盛り込むことができない。まるでサーカスの空中ブランコようなものだ。これが数学料理。なだ万の梅粥は和算料理といっていいだろう。

  2006.02.26

• 京都のオムライスを考える(3)

  閣下に｢オムはドビイ･ソースかけなんだらお子様ランチになる｣と教えてくれたのは下鴨のグリル･オーツカの店主だったが、この店は今はない。店主の言い分では、「ケチャップなんぞオムにかける店は手間かけたドビイ･ソースがない店でん。それはホンマの洋食店ではあらしまへんで｣というのである。そりゃそうだ。浅草のヨシカミ、根岸の香味屋、銀座の煉瓦亭、東京の老舗洋食屋はみな自慢のドミグラを持っている。でもドミグラをオムライスにかける習慣は、やはり京都発なのだろう。東京だと、ドミグラより一歩進んだオムハヤシの文化があるからだ。ドミグラとオムライスは合う場合もあるし、合わない場合もある。オムライスの中味が酸味のあるケチャップ味のチキンライスだと、甘いドミグラ･ソースとのかけ合わせはうまくない。両方の味を殺してしまうからだ。ところが京都のオムライスの中味は実は中華風のハムライスやひき肉チャーハンだったりする。ここに、ふわふわのオムレツ卵がのり、上にドビイ･ソースがかかると、なるほど絶妙なのだ。京都のドビイ･オムは、まさにオリジナル･レシピだった。ところがグリル小宝は、中味はケチャップライス、上に濃厚なドビイをかけるので、昔風の京都ドビイ･オムではない。いつのまにか京都オリジナルの｢ハムライスとドビイソースのオムライス｣は絶滅してしまっていたのだ。四条富小路のボントンの閉店が痛かったな。問題はオムライスの中味がケチャップライス一色になってしまったことだ。これは憂えるべきことじゃないかな。｢昔ながらの京風オム｣といって、ドビイ･オムを出してくれないか。京都市役所の隣り、グリル･アローンは洗面器みたいなオムライスに、ケチャップとリンゴを混ぜた甘いソースをかけている。実は「洗面器オムライス｣は西早稲田の居酒屋のメニューなのだ。四条祇園の高台寺道にあるグリル冨士屋は｢ケチャップを手づくり｣しているのが自慢だ。それぞれに独自のソースでオムライスを守っているわけだ。でも、本筋はドビイ･オムだろう。ちゃんと見直して京都名物にしてほしい。曹操閣下が勝手に提案する京風オムライスとは1. 中味は牛荒挽肉とベシャメルの塩バターライス 2. ソースは濃厚なドビイ　 3. オムレツは半熟のまま上にのせるだけこれなんだよ。何でやってないの京都で。　與多呂北店（よたろきたみせ）は大宮にある洋食店だが、オムライスは隠しメニューで、客に中味はハムライスかケチャップか、上にかけるのはドビイかケチャップか、一つ一つ聞いてくれるという。今度、試してみたい。

  2006.02.18

• 京都のオムライスを考える(2)

  閣下は京都に来ている。ホテルを出るときに、　「大学にはどう行かはるんどすか」と聞かれたので、　「バスですよ。バス待ちはつらいねえ。排気ガスをかぶって」　「そないなら、うちとこの自転車使こてくれなはれ」　「えっ。いいのですか」　京都も北京も、本当に自転車で走ると気持ちがいい。　何しろ道に迷わないからね。　さて京都のオムライス事情はかなり変化していると見た。　四条の繁華街にあった「ドビィ・オム」の洋食屋ボントンが閉店。　錦小路の先にあって、「ワラジ」ほどの大きなビフカツを出していた「ワラジのムラセ」も古着屋になっていた。　隣の主人の話では、先代がなくなり、遺産やら店の存続で対立があったという。残念なことだ。　このように先斗町・開陽亭、高台寺・冨士屋をはじめ、老舗洋食店がケチャップがけのオムライスになっているのに、懐かしの大人味ドビィ・オムは提供者が姿を消しつつあった。　それでも健在なのは、平安神宮の脇道、漬物の大安本店・観峰会館の先にある岡崎道・グリル小宝である。　ここは味もボリュームも申し分ない。価格も安い。　しかし、今回一人で来てみて気がついた。　「ジクセル」という料理。　横文字はブリュッセルと書く。　つまりは「ポーク・ジクセル」は「ブリュッセル風豚肉料理」というわけだ。　なんだろう。　聞いてみたら、肉をオム生地で巻いて焼くそうだ。　なるほど、これは「ピカタ」であるらしい。　ポークソテーを「ポーク・チャップ　Pork Chop」と呼んだり、洋食屋で出会うレトロな名前の料理に興味は尽きない。　東京ではハヤシソースがけオムライスはどこでも出している。　京都では「オム・ハイシ」という。　でもドビイ・オムは京都人の生活文化なのだから、がんばってほしい。　グリル小宝の店員さんに「ドビイ」は「ドビイ」なのか、「ドビイ」と正調発音を聞いた。　すると女の子は即座に言った。　「わかりません」　あれれれれ。　困る。

  2006.02.17

• 京都のオムライスを考える(1)

  曹操閣下は京都に来ているぞ。さてランチは何を食べようか、というと場所はだいたい決まっている。京都の洋食は上野レトロの味がする。丸太町東洋亭というのは、大正六年の創業。看板に「当店は姉妹店はありません」と書いてある。東洋軒は精養軒と並ぶ日本洋食発祥の店だ。天皇の料理人として有名だった秋山徳蔵さんは三田東洋軒の料理長だった。しかも東洋軒は多くの従業員に気前良く味とノレン分けをした。だから上野あたりの老舗洋食の味が京都にもあるわけ。最近、三重の津市の「東洋軒本店」がチェーン展開をはじめたが、これはいかがなものか。名古屋駅で見かけたが。三田から移転した東洋軒は、今は千駄ヶ谷の日本青年館にある。俳優の岡田真澄の母親(スウェーデン女性)がウェイトレスとして勤めていた時期もあったと聞く。京都にも北山にキャピトル東洋亭・本店という明治年間創業、京都で最古の洋食屋というものがあるが、もちろん創業以来のメニューは何もない。むしろパスタや銀紙で包んだハンバーグなど、ファミレスのようなことをやっている。これも京都駅地下のポルタに出店している。もちろん本家ではないが、丸太町東洋亭の存在感は、行った人間ならばわかるだろう。ここも東洋亭の伝統があるのか、独立した料理人たちはみな同じレシピ同じつくり方で客に出す。自立を奨励する。それによって洋食を庶民に普及していこうという大きな構想があったわけだ。東京の人間に、京都の店が入りにくいのは、やはり「言葉の壁」があるからであろう。東京の下町ではデミグラス・ソースを「ドミグラ」というが、京都では一般に「ドビィ」という。最初は何のことかわからなかったが、出てきて初めてわかった(笑。「オムライス」は、「オムねんね」といわれたので、なるほど「オムいうねんなあ」と理解した。不便だが、洋食にも京言葉があるのは美しいことだ。で、京都の町衆に言わせると、「オムはケチャップかけると子どものマンマ。ドビィかけると大人の食事や」という。で、丸太町東洋亭は。何もかけない。「中のライスに味ついてま」　むむむむむ。　京都人の感覚は鋭い。　オムの焼き味をソースが殺すことを知っているわけだ。　大阪の会津屋のたこ焼きとも奇しくも同じ発想なのである。

  2006.02.16

• 京王百貨店☆全国駅弁大会(4)☆鯛いろいろ

  京王デパートの「全国駅弁大会」第41回「元祖・有名駅弁と全国うまいもの大会」。食い倒れの街、大阪の駅弁は水了軒の「鯛すし」である。これは何となく理解できる。関西の人々、特に大阪のキタの人々は非常に縁起を担ぐ。だから大阪の料理は、食事の締めの一品に「鯛茶漬」をあしらう。鯛は魚の王者であり、「めでたい魚」として婚礼にも用いられる。大阪から旅立つ商人は、この「鯛すし弁当」で景気をつけるわけだ。大阪に来て、わざわざ駅弁を食べる旅行者はいないわけだから。でも鯛という魚は、もともと内海の深海魚である。産地では小鯛の寿司もある。長崎の「御飯の鯛めし弁当」８５０円。これは鯛茶漬のように鯛の切り身をチョコンとのせている。パワー不足か。神奈川の大船。「鯵と小鯛の押し寿司」７４０円。これはよく茅ヶ崎の帰りに食べたな。その内容はコンビニ弁当と比較できないね。石川県の加賀温泉。「発芽玄米たいめし鯛の稲荷手箱」９００円。加賀前田侯は京都から多くの町衆の移住を勧めた。それで金沢ではまだ古い京言葉が使われている。ここの「鯛めし」もそうした由来だろうか。熱海駅。「金目鯛炙り寿司」１０５０円。金目鯛というのは本当に深海魚だよね。アンコウほどではないにせよ、皮の厚みにコラーゲンがたっぷりあるんだ。これを「炙り」にして香ばしく締めるのが熱海の贅沢。和歌山駅。「小鯛雀寿し」１０５０円。大阪と同じ水了軒が出している。ここは明治２１年に東海道線が開通した時に、アンパンの社内販売を始めたという。鯛は和歌山の加太沖のものだそうだ。同じ食材でも、それぞれの味がある。味わいがあるんだ。お互い、日本人に生まれてよかったね。

  2006.01.17

• 京王百貨店☆全国駅弁大会(3)☆クジラ肉の郷愁

  京王デパートの「全国駅弁大会」第41回「元祖・有名駅弁と全国うまいもの大会」。もう一つ、重要な出会いがあった。クジラ肉。昭和３０年代生まれ、オイルショック世代のわれわれにとって、学校給食といえば、鶏肉よりもクジラ肉のほうが多かった。ＮＨＫのテレビ「みんなのうた」では「どうしてお腹が減るのかな･････母ちゃん、お腹と背中がくっつくぞ」という歌が流れていた。日本全体が貧しかったのだ。豊かとはいえなかった。それが貧しいということだ。田中角栄が総理になり、「日本列島改造」を歌い上げたとき、日本人は「やっと豊かな社会になるのか」と淡い期待を抱いた。「豊かな社会」、つまりエコノミック・アニマルといわれた経済成長主義の日本は、同時に政治腐敗の連続で国際的な政治力を喪失していった。ロッキード事件の田中角栄･リクルート事件の竹下登から小渕・橋本まで政治資金のスキャンダルは一時も絶えなかった。これも日本の「貧しさ」が緒を引いていたといえるだろう。小泉総理には、田中角栄のように「金」にまつわる「飢え」のような感情がサラサラ見受けられない。いい意味で、「飢え」の悔しさを経験していないから。小泉内閣になって、自民党が変わったといえるのは、まさに政治資金だ。田中角栄の金脈がすべて破壊され、角栄の遺産はほとんど消えた。これは地域によって違うだろうが、東京の世田谷区では本当にクジラ肉のサイコロ焼きとか、クジラ肉ジャガとか、いろいろな料理でクジラ肉を使った。理由はもちろん安かったからだ。高騰する物価の中で、クジラの肉の値段は非常に安定していた。横浜市長の中田宏が、衆議院議員初当選からこだわりつづけているのが、超党派の捕鯨の維持運動だ。国際会議で、日本の調査捕鯨の禁止が議題になるたびに、日本の若手政治家として懸命に発言を続けてきた。思いは同じだ。あの当時、給食で牛肉を食べた記憶がない。それでマクドナルドがオープンして、あちこちに店を出した時、「マクドナルドは猫の肉を混ぜている」という噂が広まった。私は小学生にして全くの常識人だった。「まさか。そんなにたくさんの猫を殺して、マクドナルドは猫の死体をどこに隠しているのか」と反論した。すると、ウソをいいふらしていた人間は、面子をうしない、こっちの運動靴を隠したり、かなり悪さをしたものだ。そんな男は出世しないな。消えるよ。ハッハッハッ。いろいろな意味で、クジラ肉の郷愁を語ると、話は尽きない。今回の駅弁大会で目を引いたのは、新宮駅の南紀くじら弁当と、長崎の鯨カツ弁当の二つがあることだ。やはり郷愁にそそられてしまう。「長崎にクジラがあるとは知らなかった」と聞いたら、「長崎が本場ですから」と強く言い張る。「長崎に来れば、本当にクジラ食べ放題ですよ」「え、捕鯨の基地は南紀だと思ったけれど｣食べ放題の長崎の鯨カツ、居酒屋の「紙カツ」のようにスライスしたクジラ肉なのである。確かにクジラの味だ。でも、薄過ぎないか。本場なのに。ちょっとムリな、お国自慢も楽しい駅弁大会なのである。長崎の奥さんたちには申しわけないが、閣下のおすすめは「南紀くじら弁当」。紀勢本線は「本線」とは名ばかりのローカル線、「くじら弁当」は予約できるが一日に五個しかつくらないという。カツじゃだめなんだよ。鯨肉は出汁醤油味の龍田揚げじゃないとね。これこそ、わが郷愁の味といえる。

  2006.01.15

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  京王百貨店☆全国駅弁大会(1)

  書くことがたくさんあって大変だ。曹操閣下は生まれたときから新宿がホームグラウンドだから、京王デパートとの付き合いは長い。大阪で野田阪神の駅近く(ここは松下幸之助さん創業の地)に住んでいたら、買い物は阪神デパートになるだろう。そんなところだ。京王デパートの「全国駅弁大会」正確には第41回「元祖・有名駅弁と全国うまいもの大会」。これはテレビ番組取材も連動した、かなり大掛かりなイベントなのだ。今年の目玉は《カニ対決》。福井・根室・釧路・小樽・長万部の各駅の駅弁に長蛇の列。もちろん、このままでは並ばないとカニは食えないのかというと、さにあらず。函館・五稜郭の寿司店・谷ふじ。カニ、ウニ、イクラ三点大盛りのチラシ寿司を出している。岩手・宮古駅の名物・いちご弁当にもカニ大盛り弁当あり。海は遠い旭川駅にも「まんざいドン弁当」あり。なかなか掘り出し物がいっぱいのイベントなのだ。ただ熱心な高齢者がすごく多いので、歩きにくいのは困る。ここは一日で数億円の売り上げが出るのだ。といっても、ここで実演販売しているお店の人々の晴れがましい表情が何ともすばらしい。この年令になると、わかるもの、見えてくるものがある。飛騨高山・鍛冶橋のニ四三屋というダンゴ屋さん。本当に小さな小さな店なんだ。八十以上のおばあさんが、一生懸命、やすみなく団子をタレにつけながら焼いている。本当に真剣そのものなのだ。この新宿で、全国の名物が集まって、このように味を競い、お互いの存在を誇示しあうというのは、非常におもしろい。伊勢丹のサロン・ド・ショコラはもう一つ舞台が大きいが、百貨店イベントの企画は同じ枠組みといえるだろう。団子を真剣に焼いているおばあさんのまなざしを見ていると、デパートにはまだまだやれることがたくさんあると思わざるをえない。

  2006.01.13

• 赤プリ☆ポトマックのサラダ･バー

  曹操閣下の丞相府秘書省は赤坂プリンスホテル新館の一角にある。だから３階のカフェ･レストランのポトマックは学生食堂のようなもので、よく利用させていただいているのだ。しかしまあ、とりたてて特別な料理はない。最近、話題になっているビック･サイズの佐世保バーカーを出しているが、さて売れているだろうか。閣下が残念に思ったのは、ここのサラダ･バーでグルメにあるまじき「食わず嫌い」をしていたことである。ポトマックのサラダ･バーというのは、そんなに内容豊富だとはいわない。ただ新鮮で甘いミニ・トマトとアスパラガス、海草やレタス類ならば納得いくまで食べられるので、「食べ過ぎたくない」という場合はありがたい。白いポテトサラダがあるのはいつも気がついてはいたのだが、「今さらマヨネーズ味のポテトサラダは食べなくていいだろう」と最初から避けていた。それがたまたま食べてみると。何とマヨネーズ味ではなく、濃厚なクリーム味で仕上げたヴィシソワーズ味のサラダだったのだ。これは完敗した。自分の「食わず嫌い」を本当に後悔した。こんなに美味しいサラダがごく身近にあったことに、私は過去への失望を禁じえなかった。後悔するほど美味しいポテト･サラダなのである。

  2006.01.03

• 赤坂・紀尾井にメイドカフェ出現☆

  いやいやいやビックリしてしまった。今日まで限定だと思うけれど、ホテル・ニュー・オータニ宴会場・鳳凰の間で正月イベント《ミルクホール大谷軒》という大正レトロの洋食喫茶をやっていた。その店員さんたちが、そろいもそろってメイドさんのコスプレなんだなあ、これが。でもアキバ系は知らないだろう。閣下も驚いた。でも世相なんだなあ。コスプレしていたホテルの女の子たちは実に楽しそうだったよ。

  2006.01.02

• 消費者がコンビニを選ぶ☆コンビニは顧客を選別できない

  ローソン２４時間営業つらい、オーナー高齢化で 寒冷地、冬季深夜営業の廃止も検討 　コンビニエンスストア大手のローソンが、２４時間営業について一部見直す方針であることが２８日までに分かった。背景には各店舗の経営者の高齢化に加え、新規加盟店オーナーが集まらない事情があるという。　２４時間営業見直しは、２８日付の朝日新聞が報じた。それによると、一部店舗で、２年後にも２４時間営業を取りやめる方針を、同社の新浪剛史社長が明らかにしたという。　オーナーの年齢層の主体が、５０歳前後に移っており、「２４時間開けている必要はないのではないか」「体力的につらい」といった声が寄せられるようになったといい、新浪社長は、「来年度に実験店を設けた上で、２年後ぐらいに本格的にやるのではないか」と話し、寒冷地の冬季深夜営業停止などの案を検討し、今後、詳細を詰めるという。　ローソンは今年２月末現在、全国４７都道府県に８０７７店を出店。このほか、中国・上海にも合弁で２１５店を出している。このうち、国内店舗については、夜間に閉鎖するビル内で営業している店などを除いて、原則として２４時間営業を行っているのが実情だ。　コンビニ業界では、既存店売上高が、今年１１月まで、１６カ月連続で前年同月割れしている。　こうした現状の中、売り上げを伸ばすには新規出店が必須。実際、ローソンでは、２００１年から２００２年の間に微減したのを除き、創業から一貫して店舗数は拡大の一途をたどっている。　だが当然、そこにはひずみも生じる。特に都市部などで、同一社のコンビニ店舗が近くにできるといった例はよく見られ、全体の売り上げこそ伸びるものの、パイの食い合いとなって、既存店舗の売上高が減るといったジレンマも。　ローソンでは、フランチャイズ契約の締結時に提示された利益予測を、実際には大きく下回ったなどとして、ＦＣ契約をしたオーナーなどから損害賠償を求められ、地裁がこれを認めたことなどもある。　業界内からは、「２４時間営業してこそコンビニだ」といった声も上がっているが、果たして、ローソンの動きを他社が追随するかどうか。 ZAKZAK 2005/12/28☆銀行ＡＴＭみたいに、無人販売だけのコーナーと、いつものレジ販売の二つに分割すればいいんじゃないかな。　営業時間がセブン・イレブンにもどる手もあるな。　まあ、競争してみてくれ。消費者が選ぶから。

  2005.12.30

• 三国シェフの新名物☆モンゴル平茸

  あまり詳しくは聞いていない(女の子たちしかいない)ので、推測で書こう。久々にマダム・ミクニにランチに行った。そこで発見《モンゴル平茸》。モンゴルの人たちは平茸とか、とにかくキノコ類はほとんど食べないだろう。中国の食材会社ならば、もちろん美味ありと聞けば、地の果てまでやってくる。ツバメの巣のゼリーは、海辺の断崖絶壁で採取される。孟子が《旨いから何度でも食べたい》と断言した「熊の手のひら」は、野生の熊の絶滅が心配されるほど乱獲されている。しかし、三国シェフがこんな新食材をモンゴルで発見したとは驚きだ。これは確かにうまい。熱を加えても折れず、歯ごたえの弾力感がちがう。価格もそんなに高くないのだろう。ふんだんに使っている。ふと気がついたのが、この新しい平茸はどうやらワイン・ビネガーの壜漬けにして日本に持ち込まれているらしい。これは輸入商社の発想ではあるまい。さすが三国シェフなり。そこで思うのだが、日本の有名シェフには二つの傾向が明確になってきた。一つは熊谷喜八さんや、わがオーベルジュ・ド・スズキの鈴木シェフのようにキャッチ・アップ型なんだよね。日本の有名シェフがフランスの三ツ星レストランを食べ歩きするというのは、それは確かにすばらしいこと。でも、それはアメリカの自動車を昔の日本の自動車会社が参考にするという３０年前の経済構造と同じものだ。三国シェフは独自の新しい食材を求めて、モンゴル平原まで行った。彼の料理は、ミシェル・トロワグロさんが絶賛するほどの腕。もちろんミシェラン三ツ星よりも、レジョンドヌール・シュバリエ勲章のほうが権威がある。《バサラ》の小山さんのほうがこの勲章で名前を売ったが、三国シェフも受賞しているのだ。三国さんほどの人になると、料理の技法より、世界の有名シェフたちは「新しい食材」という新たなステージについて話題を渇望していることがよくわかる。これはアメリカの経営アカデミーをはじめ、国際学会に出ている経営学者として、「世界の要求」がそのように共感できるのだ。モンゴル平茸は、三国シェフの手で、全世界に紹介されることになるのかな。ヴォルフギャング・パックさんが採用すれば、国際的なニュースになるだろう。

  2005.12.29

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  虎ノ門プティ・トノー

  虎ノ門に来たら、他の店に行くことはない。まあ、必ず「ここ」という店があるのはうれしいよ。プティ・トノーは何度も取り上げたが、http://plaza.rakuten.co.jp/kakkanogourmet/diary/200509050000/前菜・パスタ・紅茶のセットで１０５０円で出している。この店は久しぶりに来た。このあたりの店は、飲み物なしでランチ９００円などというところが多い。霞ヶ関ビルの日東紅茶ダーリントン･ホールなど、まさにオムライス９００円なのだ。まあ味は大したことはないよ。虎ノ門に来た以上は、まあ他でランチすると損した気分になること請け合いである。

  2005.12.27

• 新宿くじら軒☆大将が出ないとね。

  今日は久々に新宿マイシティの「くじら軒」に行ってきた。前の日記でマヌケなバイトのチンタラを酷評したが。あれはラーメンそのものの味じゃなくてさ、客としてスタッフ(店の呼び名)の態度や素振りがおかしいと非常に気になるわけだ。特に行列のできる店で、従業員が客に対して「傲慢な態度」に出ることは、店長なり経営者が一番配慮し、警戒しなければならない。別に従業員が美男美女だから、客が行列しているわけではないのだ。それなのに、いつのまにか従業員が、店長代理のような顔をして、客を整理したりする。これは腹立たしい。政治家の秘書もね、長くやっていたり、勘違いした若手が、「私は議員代理です」みたいな顔をしていたり、「私は副議員なのです」と名刺に書き込みそうな傲慢な秘書がいる。今日は、くじら軒の大将が、旭川本店から麺を打ちに来ていた。さすがだ。自分で何もかもやっている。仕事も正確。若いスタッフたちに、あのムダのない動きの意味がわかるだろうか。まったく休むヒマも見せない。これは彼自身の長い苦労がなせる姿、まことに労働の美学といってもいいぐらいの動きだった。実はこれが今日一番の収穫だった。くじら軒の大将、ますますの発展を祈る。

  2005.12.11

• アメリカン・フーズの世界(2)☆FRIDAY's

  グルメな閣下が、アンチ・グルメの世界、アメリカン・フードについて少し書いておこうと思う。今日の話題はFRIDAY's。閣下のテリトリーの一つ、下北沢南口にＦＲＩＤＡＹ'Ｓが進出した。それで「あっ出ているんだ」と気がついた。チェーン展開している日本代理店は居酒屋《和民》のワタミ・フーズである。なるほど、これならば店舗経営ノウハウもあるし、店員教育もやりやすいわけだ。ここはアメリカの「すかいらーく」みたいなファミレスなのだ。いってみれば、アメリカの新興住宅街の憩いの場なんだな。とにかくケチャップとか、ソースとか、大阪のたこ焼きみたいに、コテコテと塗りつけて肉やジャガイモ・卵を食べるのがアメリカン・フーズである。ここの特徴は、最近は普通になってきた一皿のアメリカン・サイズ。値段は安くない。しかし大皿の大盛というわけだ。シェーキーズのように、どうでもいい塩味ソース味のものをどんどこ出す。たまたま友人と、高輪プリンスホテルの隣り、ホテル・パシフィック店に行って、ちょっとびっくりした。外国人ばかりなのだ。いや、もちろんアメリカ人ばかりだろう。本来は六本木あたりで飲んでいる連中だ。しかし、六本木店は日本人も多い。ここで外国人ばかりで、ゆっくりと飯を食べたいというのがホンネのようだ。英語(かなりナマッている)で歌も歌う。酒場だからな。でも明るい仲間たちだけではない。一人でタバコをふかしてボッとしている男。何だか寂しそうにうつむいて、ハンバーガーも食べないでいる女性。偶然だが、日本に住んでいる彼らの孤独感がよくわかった。北京の日本人留学生たちが王府井の吉野家の牛丼を食べに行くように。

  2005.12.09

• アメリカン・フーズの世界(１)☆ＳＩＺＺＬＥＲ

  グルメな閣下が、アンチ・グルメの世界、アメリカン・フードについて少し書いておこうと思う。今日の話題はＳＩＺＺＬＥＲ。

  2005.12.08

• 新宿くじら軒★帝国ホテルなだ万☆

  閣下は「吉兆・不躾事件」を通じて、それなりに学んだ。やはり料理店は「味」だけではダメだ。人間も、そのサービスも「味のうち」なのだ。帝国ホテルなだ万の「栗おこわ・塩加減事件」では完全にブッちぎれて、副支配人に激怒した閣下であったが、かなり反省と精進したように思われる。今月の季節点心は四条流のように陰陽や瑞兆の形象をつくり、まるで高砂の景色のように手の込んだものだ。これまで中村前料理長が引っ張ってきたヌーベル･キュイジーヌ系の新懐石路線が一服したのはよろしいと思う。あまり奇をてらってはいけない。日本料理は盆栽のようなもの。あまり驚きがなくてもいい。料理の盛り付けなどは、やはり料理人が客に出してくるメッセージでもあるのだから、きちんとテーマがとれていないと料理人の素養・教養が疑われるものだ。きれいだからといって、メチャメチャな飾り付けをするのは幼稚園の学芸会のようなものである。客の来ない温泉旅館がまずい料理をテレビカメラの前でボコボコ出して並べる無様なアリサマを見よ。閣下は飲まなくても、味噌汁の色や湯気の立ち方で料理人の粗忽を判定する。しっかりした料理人は、借景庭園や庭石などの工夫に、盛り付けの美しさを競う。今月のなだ万は、銀閣庭園のような秋色を写した素晴らしいものであった。日本料理のフロンティアは一品ニ品ぐらいでよい。味はもちろんであるが、全体のまとまりの美術性は料亭料理の生命線であろう。なだ万のサービスについては、もちろん何も言うことはない。「この前の栗おこわはボテトチップスみたいな塩味だったよ」と笑い事にしておさめた。　しかし、今月の松茸御飯の塩加減は非常によろしかった。　実に見事に御飯と松茸の甘味旨味が引き出されている絶妙な塩加減だ。　やっぱり名門は「気抜き」は困りますね。　そんなことを思っていたら、新宿マイシティの「くじら軒」では正反対のことをやっていた。　ここは味は確かだ。　ラーメンをつくる店員はもちろん店長代理クラスであり、本当に休みなく手を動かしている。　ところがホール･スタッフのアルバイトはまったくだらしのないフリーター野郎たちだった。　おしゃべりする。　メニューの名前は覚えていない。　注文をとってもスムーズに調理場に伝えない。　まあボンヤリした若いフリーター二人組が店内をウロウロしてんだよ。　こっちは行列を並んで、ようやく店にすわった客なんだ。　そこで閣下は憤激した。「味をつくっている先輩たちは休みなくラーメンをつくっている。その前でアルバイトがダラダラ仕事をしているのは、客としてまことに見苦しい。注意するように｣　その場にいた全員が顔が青くなっていたな。　まあ味はいいんだから、気合を入れるか、もっといい店員に取り替えることだよな。　ハッハッハッ。　「気抜き」はいかん。　

  2005.11.11

• 煮込みうどん☆山本屋

  名古屋名物の「煮込みうどん」といえば、筆頭は山本屋ということになるだろう。とにかくまあ、味噌がうまいねえ。東京では、こういう八丁味噌をふんだんに使う料理はなかなか出会えない。茗荷の付け合せの味噌に「八丁味噌仕立て」と書いてあるのが目を引く程度だ。豆の一粒一粒が目に浮かぶ手作り味噌の味だね。頑固に手作りを貫いている田舎味噌の代表選手だ。山本屋のうどんは、出てきたときは固い。アルデンテの一歩手前だ。これで先代の主人はかなり客とケンカをしたというエピソードは有名なことだ。煮込みうどんを熱いまま食するのは、店としても不本意なのだ。ちょうど煮込みのグツグツ沸騰がさめて、汁の温度の頃合のいいころに絶妙のアルデンテ状態になる。煮込みうどんは、そうでもしないと、すぐのびてしまうものだ。讃岐うどんや、大阪のぶっかけは、汁の温度を少し調整することでアルデンテ状態をキープしている。「のび対策」ということだ。みんな気を使っているんだよ。山本屋のうどんは「一半(いちはん・１.５倍の大盛り)」だったんだが、最後までシコシコした食感だった。食べているうちに考えた。「ああ古奈屋のカレーうどんもこんな感じだよなあ｣「そういえば、新宿の麺屋武蔵もこんな感じだよな」名古屋自慢のコーチン肉もポンポンと入っている。これは出汁を強化するし、これも身の引き締まった食感がうれしい。最後は白飯を注文し、味噌粥にした。「セットにしますから」ということで、店員さんが気を利かせて、こんにゃく田楽もつけてくれた。名門の店なのに、こういう一人の店員さんの心づくしのサービスが客をひきつけるのだ。これは勉強になった。

  2005.10.22

• なだ万の《気抜き》について★

  今日はちょっと批判的な論評を書こう。閣下は今日、船井総研の後輩君を招待して、帝国ホテル地下の「なだ万」にいった。今日はなぜか料理長まで帽子を脱いで出迎えてくれた。若い副支配人とも名刺交換した。これは立派なことだ。しかし、そこまでする必要はないと思う。客としては、せっかく時間とお金をかけてお店に来ているわけだから、いい仕事に出会えたらいいわけだ。でも、その後の出来事は少し分析が必要だ。閣下は数日前、三井不動産の「《越後屋カフェ》の塩むすびは出来そこないだ」と批判した。こういう新しいアルバイト寄せ集めの店は、基本的なことがなっていない。手抜きが目立つ。今日のなだ万はさすがに「手抜き」という表現はあたらないだろう。ノレンの伝統もあり、ホテル直営店をおしのけて、帝国ホテル本館の地下にあり、優秀な人材もそろっているし、調理もみんな一級の人々がたずさわっている。ところが、食事の「栗おこわ」の塩加減、これは何か手違い、間違いがあったようだ。原因は手を抜いたことではなく、「気を抜いたこと」じゃないかな。とにかく少し塩辛かった。それに黒ゴマをつかっている。思うのだが、栗おこわは白飯の白と栗の黄色という対比の色を楽しむものだから、黒ゴマ、特にすりゴマの黒つぶは茶碗の中を汚く見せてしまう。黒ゴマの香ばしさを出したいならば、白ゴマを少し炒りたて、すりあげて再度炒るという一手間を加えれば、油分も出て、いい具合になるのだ。白ゴマを使うべきだったな。特に白ゴマをミルサーで微細につぶして、「形をなくして風味だけを加える」という手があったであろう。これはもちろん、他の日本料理でも使われる常套の手法だから、黒ゴマを使った理由がますますわからない。でもまあ、「茶碗の中だけは基本が大切だ」という原則が確認できればいいじゃないですか。さて最大の問題は塩加減だ。閣下はせっかくだから三杯おかわりして、「この塩は内海(瀬戸内)の塩かな、外海（高知・沖縄）の塩かな」と考えた。伯方と比べると、おそらく高知じゃないかなという風味だったが。でも、これは栗おこわだ。焼き魚や薄塩ポテトチップスのように塩味の風味を論評する料理ではない。塩味が味の主役になってしまうならば、栗と米は脇役になってしまう。それは「栗おこわ」ではありえない。おこわ飯の塩加減は、栗などの「炊き込み・かやく」の甘味を増し、米の旨味を引き出す脇役として使うのが料理の哲学であり、それにはおのずから微妙な、しっかりした制限がある。脇役が主役のセリフをとってはいけない。塩加減というものは調理の基本だ。塩加減一つで、白湯が吸い物のようになり、冷水が海水のようにもなる。天然水にもかすかな旨味はあるのだ。それが塩に反応して変化するミネラル分であろう。藤野のような豆腐屋や辻利のような茶舗は、「東京の水では京都の味が出ない」という。それはあながち京都人のお国自慢とはいえない。柴漬けのような漬け物も、やはり比叡山からめぐまれる明礬質の鉱水が必要であり、発色がちがうと言う。豆腐はやはり嵯峨野だ。酒は伏見だ。それが鉱水の性質にあわせて、だんだん淘汰された結果だろう。料理にあたる人々は、そのことも知識としてわきまえなくてはならない。米と水、そして塩という組み合わせは、すでに永遠のテーマになるほど相性と種類があり、料理に合わせて相性のとり方もいろいろあり、それぞれ「ウマイ」と言わせる決定的な塩加減があるものだ。なだ万ほどの企業としては、そこに決定的な教義、ドクトリンを立ててもらいたい。一人一人の料理人が若手にいたるまで真剣勝負の求道者として奉職してもらいたい。それがどうもおかしかったというのは、「気が抜けていた」というしかないだろう。せっかく料理長が店の前まで出て来てくださったのですから、御一考をお願いしましょう。

  2005.10.15

• 曹操閣下＠日本橋越後屋カフェ

  曹操閣下は経営学者としてオープニングに招かれた。ケミストリーやら鈴木亜美、はなわが出席していた。生演奏というのは音量調節がきかないな(笑。今、東京ＦＭのサテライト・スタジオで藤井フミヤの電話インタビューが終わったところだ。ここのカフェで、ランチにおむすびセットが出たが、これはいけなかった。おむすびのようで、これはひどい出来だ。『美味しんぼ』で絶賛されたコメを使っているということだが、こういう特殊なコメは炊き方も特殊なのだ。研ぎ方も足りない。コメの舌ざわりが粘っこい。お茶碗にのっていても、この炊き方は失格だ。しかも、炊飯器から直接におむすびをつくったようだ。寿司のように、いったんは木桶に移して、余計な湯気は飛ばさなくては、うまい握り飯にならないのだ。２００円の塩むすびなのだが、これは他人に食わせるようなものではない。「ちゃんと試食してから、客に出せ」店長を呼びつけて、怒鳴りつけたぞ(怒。ケミストリーはしゃべり方がボソボソっとしているんだけれど、エミネムのようなマイクアクションでハスキーな歌声を出すんだね。さすがにうまい。

  2005.10.10

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  九段・パレスホテル前のブチ・トノー

  これは《料理の鉄人》で勝利を制したフランス人シェフ、フィリップ・パットンさんが始めたレストランだ。パットンさんの個人料理店は代官山に別にあるんだが。フランス人のギャルソンが働いているので、まずフランス人は必ず遊びに来る店になっているようだ。ここのスポンサーがどうやら「ティファニー」というフランス食材の貿易会社らしい。なかなか洒落た店なのである。フランス料理というと、どうしても構えた感覚になってしまうのは残念だ。ここはビストロ、つまりフランスのおふくろの味の店というところだ。日本で言えば定食屋だな。パスタかリゾットのセットが１０５０円。肉か魚のランチ・セットが１６００円。価格も良心的なものだ。閣下がフラッと寄るにはちょうどいい店なのである。

  2005.09.05

• 脅迫され、ストーカーされる主婦の哀しみ

  閣下は《怒りの曹操閣下》のサイトのメールボックスに、ある小学教師の迷惑行為について相談をもらった。はっきりした犯罪行為なんだが、弁護士がいないので犯罪事実の証拠が整理保存されていないんだ。警察が「次は逮捕する」と誓約書を書いて一応のケジメをつけたらしいが。問題は、その小学教師がある女性を「過去の経歴を暴露する」といって脅迫したり、ストーカーして、不倫関係を強要したとのことだ。しかし、それは伝聞情報で確証はない。部分的な録音はあるらしい。で、それが事実ならば多くの他の女性にも迷惑行為があるはずだろうから、「みんなで迷惑の事実を手紙に書き、住民の署名を集めて、教育委員会に小学教師の処分・辞職を求めたらどうですか」とアドバイスした。_______Ｓさんへ迷惑行為は現行犯でないと逮捕しにくい。だから小さな証拠や被害証言を集めて、運動するしかありません。 被害にあわれた奥さんは、本当にかわいそうですね。 私事ですが、昔のテレビシリーズで松田優作主演『俺たちの勲章』(1975)という刑事ドラマがありました。たまたまサントラ盤を見つけて狂喜しているんですが(笑)。 http://plaza.rakuten.co.jp/kakkanogourmet/diary/200509030000/ 第七話「陽のあたる家」のことを思い出します。元ホステスの元愛人のチンピラが殺人犯で逃亡している。で刑事の松田優作と中村雅俊がボンヤリと元ホステスの現住所に聞き込みに出かける。元ホステスは、普通の主婦になっていて、姑と暮らしていたんですよ。 この女性もすごく不幸な人で、極貧生活からホステスして、チンピラ殺人鬼と同棲して、ようやく別れて幸せな結婚ができて、あこがれの「陽のあたる家」で人並みの生活ができたと思ったら、またチンピラの逃亡先を聞かれる。姑は女のカンで「うちの嫁はあやしい」と思って問いつめる。そこにチンピラから「出てこい」と脅迫電話がくる。それで主婦は家を飛び出し、チンピラに殺されてしまう。本当にかわいそうなんですが、どうすることもできない。 自分の身の回りの人にだけでも、こうしたドラマを知ってほしいものです。__________こういう結果になったのはもちろん、自業自得ということなんだが、それではあまりに哀しい。閣下は男性として、すべての女性の幸福を祈っている。

  2005.09.04

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  奈良公園《塔の茶屋》茶粥懐石

  奈良は京都より物価が安い。京都は昔からおのぼりさん観光客の足元で食べてきた。奈良の駅前と京都の駅前、みやげ物屋の数も勢いもちがう。だから閣下は円山公園は全く楽しくない。暑いだけだ。芝生も剥げている。木陰もない。京都で楽しいのは錦小路と、松尾大社あたり、すいている時の鍵善かな。奈良公園で鹿と遊びたい。浮御堂で鯉とたわむれたい。春日大社の境内で、ゆっくりと抹茶をすすりたい。それでいてほとんどお金もかからない。だから奈良は大好きである。「これこそが奈良である」というお茶屋さんが《塔の茶屋》である。ここで名物の茶粥懐石を食べていると、本当に時がたつのを忘れてしまう。東京にも永田町の日枝神社下に《峠の茶屋》がある。ここはよく行って楽しんだが、鰻懐石で二万五千円以上になってしまう。京都にも下鴨茶寮というのがある。ここで昼懐石を楽しんだら、あとで「ここ五万円とるんでっせ」と言われた。ひええええ。そこへいくと、《塔の茶屋》はいい。三千円で茶粥弁当、六千円でミニ懐石、本格的な懐石でも８４００円から。二人で一万円あればいい。写真は弁当だ。だから閣下の奈良滞在は、ここの茶粥懐石に始まり、奈良ホテルの茶粥朝食で締めくくるのだ。

  2005.08.19

• SPASSO CAFEの大盛りパスタ･ディ・アルデンテ

  SPASSO CAFEというのは、新宿小田急ハルク地下１階のスパゲッティ専門店。いつも満員である。その理由は大盛り無料サービス。普通のパスタの三倍である「ＬＬサイズ」が普通のサイズ「M」と同じ一律６０９円なのだ。そして、パスタは茹で立てのアルデンテ。これはね、自動的にアルデンテ(歯ごたえのある茹で立て状態)に仕上げるパスタ・マシンが開発されたからだ。あちこちに出店している「ブイトーニ」も同じシステムだ。これは確かに本物の味だし、歯ごたえなんだよ。こうやって、歯ごたえがしっかりしたパスタを食べつけていると、もう日本の他の値段の高いパスタが許せなくなってしまう。憤激に耐えない。帝国ホテルのＡＱＵＡで、「パスタがいまいち」と注文をつけたのは、閣下がパスタといえば、このアルデンテ状態を食しているからだ。少しふにゃふにゃのパスタが出てくると許せない気持ちになってしまう。そこは帝国ホテル、すぐ閣下の提案の通り、パスタを変えてきた。しかも手打ちパスタである。これはさすが。結局ね、「何がうまいか」を知っている人間が、うまいものをつくるのだ。なぜ料理人がヘタクソな料理を出してくるか。それは「うまさ」の哲学・美学を忘れているからさ。

  2005.08.03

• なだ万・帝国ホテル店にて☆

  「なだ万」は言うまでもなく、日本の美食文化の最先端であると思う。料理人も立派だが、サービスの面でもきちんとしたものがある。だから、海外のお客様を連れて行っても、まず間違いのないメニューと味付けで和食を出してくれるのだ。サービス係のキャプテン(「女将代」とか和名にすればいいのにね)さんに聞いた。「実はね、今、帝国ホテルのサービスの問題でちょっとバトルしているんですよ。何しろ内親王殿下の結婚式をやるのに、サービス部門にキチッとした哲学がない。それで私は提言したんです。皆さんは俳優、女優のように演技しなくてはならないとね。なだ万の皆さんには、そうした感じを受けますね」キャプテンは少し興奮して言った。「そうなんです。私たちも教育されたんです。演じなさいと。演技指導だったんですね」「ほほう。やっぱりね。私はヨーロッパの大貴族の屋敷でホームステイした時に、立派なサーバントによくしてもらったので、あなたの職業哲学は何かと聞いたんですよ。そうしたら、自分は俳優ですと言うわけ。観客大衆向けではなく、価値のある個人に演技をする俳優で、そのほうが社会的な意義が大きいと考えているというんです。なるほどと。そのサーバントの下では、メイドさんたちも女優なんですね。そう教育されている。お掃除の動き一つも寸分のスキもない。主人やゲストに見られているという意識で働いている。こいつはすごいぞと思ったわけ｣「そうなんですか」「で、日本に帰ってきてみると、この世界は一応のマニュアルはあるけれど、本当に未開拓の分野だなあと痛感したものです。伝統芸のようなものに近い。大道芸にすぎないものもあるね。基本は先輩から教わるんだけれども、一人前になると、ほとんど誰も注意しなくなる。サラリーマンなのに、職人の世界になっていくわけ。それが怖いよねえ」「怖いというのは」「どんなにいい料理でも、サービス側が気をつけないと、うるさい客は怒ってしまうんだ。ビアホールでも、ジョッキはあらかじめ冷凍庫で冷やすでしょう。ところが冷製スープの器を冷やしていないものだから、ヴィシソワーズがナマ暖かくなって出てくる。ホット・ティーに冷たいミルクを持ってきたりしてね。その点、なだ万のサービスは抜群によろしい。今日はその理由がわかりました」キャプテンは非常にうれしそうだった。かくして、なだ万・帝国ホテル店では、閣下はVIPクラスの有名人になった(のかな)。

  2005.07.03

• 帝国ホテルＡＱＵＡ☆サーバント文化の哲学

  この前、ここでＡＱＵＡのサービスのことを徹底的に批判したら、関係者はかなりショックを受けたようだった。そこで土曜日の昼に、インペリアル・クラブからＡＱＵＡに行ったら、もう扱いが天地逆転のように改善されていた。私は基本的にはＡＱＵＡのことは非常に賞賛していたんだよ。海老のむき方とか、野菜の切り方とか、新人の若手の仕事にも、しっかりと力と魂がはいっていること、これが一流の料理店の原則なんだ。味がおいしいのは当たり前だけれども、新人の教育がしっかりしていないと、「味の継承」に失敗する。つまり、野菜の切り方、付け合せの食感にはね、料理人の秩序とか、調理室がどんな雰囲気で仕事しているか、そんなものまで素直に表現されてしまうのだ。だって、皿の上にのせた料理は、すべて客の口にはいるわけだから。そりゃもう敏感ですよ。味の世界は。一瞬の芸術ですから。一流のシェフでも、すべての皿の料理を目視で検閲するわけにいかない。しかし、料理はすべてお客様が舌の上で味わうものなのだから。見るだけではだめだ。味見だけでもダメ。調理場そのものが秩序正しく動いていれば、新人の細かい作業もおろそかにはならない。その点、第一ホテルはあかんかったなあ。閣下に洗ってないコップを平気で出してきた。ウェスティンもおかしかった。キャベツの芯をサラダに入れていた。もう、あいつらの料理なんか信頼できない。デザートのシャーベットは、私が先週、「これじゃ食べにくいよ」と意見したように、ちゃんとナイフを入れて食べやすくなっていた。うん、これでいい。やっぱり帝国ホテルの調理場は信頼できる。サービスについていえば、ＡＱＵＡの人々はやはり「帝国ホテル」というブランドに酔いしれてしまって、自分の仕事を客観的に見ることを忘れていたようだ。これについては、取締役クラスの幹部まで出てきて、かなり反省をしたようだ。そりゃまあ当然のことだ。あんな末端の野放図なサービスを放置していたら、帝国ホテルのファンに見捨てられるよ。私さえ激怒したんだから。しかし、この日はうって変わって、まるで別の店のようにサービスがよかった。水はすぐとりかえる。お茶もすぐ持ってくる。ただちょっと待て。女の子たちの表情がすごく冷たく固くなっている。目が三角になって。これはかなり叱られたね。こりゃ悪いことしたね。決して女の子が悪いんじゃないんだよ。ただね、サービスの基本というものが近代的、合理的ではないものを感じるのだ。帝国ホテルは伝統に頼りすぎて、慣習とか習俗でサービスを考えているみたいだ。自分たちが最高の教科書だと思っているうちに、お客様の心理や反応に心を砕くことができなくなっていたのではないか。つまり、サービスの原点ですよ。それを中心に置き忘れているんじゃないですか。それに新しい知識とか、世界の名門ホテルのサービス哲学というものを再学習するチャンスがなかったのではないかと心配しているのだ。調理場はいつも海外とネットワークを保ち、外国人の料理人も採用して研鑽に励んでいる。ヤマハピアノも、スタインウェイの音色を学習するために、まず調律師をヨーロッパに出して、「いいピアノの音色とは何か」を現場で徹底的に研究させた。そこで、私はまったく勘違いした幹部たちにきつく叱られたであろう女の子たちがかわいそうになった。問題はね、彼女たちの不注意じゃないんだ。帝国ホテルのサービス部門に経営哲学があるのか、ないのかということだ。一筆したためることにした。「便箋とペンを持ってきて」その場の即興だから、正確な記述ではないが、だいたいこう書いた。____私はヨーロッパ留学の経験で、彼地の「サーバント文化」に接することができました。これはヨーロッパの名門ホテルのサービス哲学の淵源となっており、源泉になっているものです。その本質を一言でいえば、サーバントは舞台芸術の俳優であり、女優であるということ。つまり舞台芸術の演技者としての自覚と演技技術の鍛錬こそが、サービスを芸術の品質にまで高めるということなのです。サービス業に従事する人々はいつも、お客さまたちの注目の中で働いています。つまり、皆さんは舞台の上で仕事をしているのです。皆さんは俳優であり、女優なのです。冷たく、固い表情で演技したら、失格です。歩き方も、話し方も、接し方も、俳優のように、女優のように、美的で、優雅に、上品なものであらねばなりません。そのための修練や研鑽は、俳優や女優の演技法、演出法のように、しっかりと体系的に学習できるシステムが必要で、常に時代に合わせて改善や更新が必要です。俳優と女優が舞台の上で私語したり、恐い表情で相談事をしたりするでしょうか。これはまったくタブーです。組織上、必要な指示は、野球やテレビ撮影のように無言で伝達するサインや手振りなどの「客から見えない」工夫をすべきです。舞台芸術は、そうした「秘密の伝達」を何度もやりながらタイミングをとらえつつ進行しています。このような至高のサーバント文化を目標にして、舞台俳優として、舞台女優として、お客様の最高のひとときをドラマチックに演出することを、皆さんの目標にしていただきたい。経営学者として、私がありのまま感じたことを意見させていただきました。_______ご理解いただけましたか。

  2005.06.26

• 小田急ハルクのPasMal（パ・マル）

  この「曹操閣下の食卓」もようやく20000Hitsの大台を迎えようとしている。で、やはり開店日の１月１日の話題、「クラブ・デ・トラントゥ」を回顧したい。高橋徳男シェフはまさしく日本を代表するグラン・シェフである。東京サミットの時、私は桐蔭学園の高校生(デーモン小暮閣下がダチ)だったが、あの時の迎賓館の歓迎晩餐会を臨時総料理長として取り仕切ったのが、高橋徳男さんだったのだ。プチ・ポワンの北岡さん、シェ・イノの井上さんが補佐で働いた。しかし、メニューを決めたのは高橋さんである。伝説だよね。子爵のジスカール・デスタン大統領が、メイン・ディッシュのソースをパンにつけて、きれいに食べたのだ。高橋さんは喜んだだろう。彼はフランスの三ツ星レストラン、トロワグロでソーシエ(ソースのシェフ)も経験した。下働きだけであちこちの名門料理店を転職する流れ職人ではない。ハルクのパ・マルで店頭に立っているシェフはなかなか好人物で、私が通るたびに「今日のお昼は寄っていきませんか。ワインをサービスします」と言ってくれる。そうだね。売り切れる前に、サーモンパイを食べていこうか。

  2005.06.23

• 

  帝国ホテルＡＱＵＡのランチ・ブッフェ☆

  昨日はいやなことと、飛び切り素晴しいこと二つがあったけれど、もっとショックだったことがある。それは帝国ホテルの展望カフェAQUAのことだ。ここでランチ・バイキングをやっているとは知らなかった。ホテルの料理で、一番安心できるのは食材の品質だ。特に野菜類は新鮮でいい。肉類も安心だ。プリンスホテルは契約栽培方式をとっていて、各地のホテルの地元農家とうまく付き合っている。特別な食材はきちんと商社を入れて確保している場合が多い。帝国ホテルは、料理部門がこの「商社」のようにうまく機能していると思う。この食材調達部門が、横浜のクィーンズ・コートに本拠をもって、通販事業もやっている。閣下がホテルで食事するのは、プリンスホテルか、帝国ホテルしかない。後悔したくないからね。第一ホテルやウェスティンはお茶ぐらいは飲むが、食べ物は信用しない。大阪は阪急ホテル、特に宝塚ホテルがいい。宝塚ホテルは閣下の定宿だが、別に宝塚ファンの女性たちを見物に行くわけではない。料理もデザートも、室内の家具調度も、大阪駅前の新阪急ホテルよりも上だからだ。同じ値段なら、新阪急のデコレーションよりも、宝塚ホテルのチーズケーキのほうが喜ばれるよ。さて、AQUAのブッフェ料理だが。高輪プリンスのマルモラーダと比較しても、決して引けをとらないレベルだと思う。料理そのものはシンプルだが、鴨ロースのスモークはいいねえ。閣下の好物なのだ。バンバンジーでなくてよかった。海老のマヨサラダもいい。素材のカットも入念にやっているのがわかる。こういうところに、次世代の料理見習いの真剣さが伝わってくるのが喜ばしい。白身魚のポアレもよくできている。ますます学士会館のヌーベル・キュイジーヌがつくづく嫌になった。あんなに量の少ないフランス料理はもう行かない。行く気もしない。どんなにまあ「おいしいだろう」と料理人が威張っていても、「あれは損したなあ」という気持ちにさせる料理店は、他のいい料理に出会うたびに後悔に後悔を重ねてしまうものだ。こうおいしいものが並んでいるとね、「これまで私は何を食っていたんだああ」と後悔の念がふくらんでくるなあ。このＡＱＵＡにはアフタヌーン・ティーは何度も来ているんだ。インペリアル・クラブから会員プレゼントの申込書がきた時にも、「アフタヌーン・ティー・セットのペア招待チケット」を２枚も申し込んだんだ。それなのに。不覚だ。まさに不覚。このショックはちょっと消えそうにない。それに反対側のブッフェ・レストラン☆サールもよく利用している。この前もプールで出会ったフランス娘といい仲になったところ。でも、ここは料理数が多すぎるし、デザートも多すぎる。毎日いつも食べ比べているわけではないが、オードブルやパン類など、メインからはずれたところに意外に味が落ちている品目もある。これだけの規模でバイキングを運営するということは、なみなみならぬ経営の苦労はあると思う。AQUAのブッフェは、品数が限定されているし、料理人が客の反応を観察するのにもちょうどいい。出ている量も、バイキングの常識(大皿・大盛)というわけではなく、数人が料理をとりわけしたら、すぐなくなってしまうぐらい。なくなると、一分ほどで新しい皿が出てくる。つまり、出来立ての料理がいつも食べられるということだ。魚のポアレの温度もちゃんと熱いまま食べられる。これは物量主義のサールよりも料理人たちの大きな負担になると思うが、中堅の料理人の育成にはなると思う。料理人が客の顔を見ながら料理ができるようになればすばらしいことだ。これは経営者・総料理長の「読み」に敬意を表したい。ただし、ひとつ注文がある。客が席に着いたら、すぐに「おしぼりと水」を持ってくることだ。少なくとも「お持ちしますか」と聞かねばならない。これはレストランの原則だ。このことを忘れてはいけない。手順というのは、「客が席に着いたら、どうするか」というセット・プレイだ。配慮というのは、「客が何かを頼もうとしている」という気配を察して行動することだ。インペリアル・クラブは、この手順と配慮が非常によくできている。クラブの女性たちは、みんなトップ・スチュワーデスのようにしっかりしている。だから、閣下はここを大切な人の応接室として使っているのだ。このインペリアル・クラブを舞台に、帝国ホテルの社長に新しいビジネス・プランを提案しようと思っている。

  2005.06.21

• 横浜から日本は変わる☆

  今日は閣下にとって、なかなか出来事の多い日だった。一つは約束したのに、相手があらわれずに困ったこと。電話一つしないで、こっちを「恥しらず」なんて非難するんだ。ひどいねえ。「恥」とは何でしょうか。私は日本を代表する経営倫理学者なんですから、「恥」についてはよく知っていますよ。ハッハッハッ。もう一つは、ゴミの廃棄・焼却・リサイクル事業のプロセスに総合的なトレーサビリティ(追跡可能な情報公開)政策を立案することだ。おもしろい。舞台は横浜市。市長の中田宏は松下政経塾で研究員をしていたころから仲間(彼は塾生・私は職員)としてがんばってきた。松下政経塾の古山和宏塾頭もみんな仲間だった。日本新党が結成されて、細川護煕代表、小池百合子副代表が参議院議員に当選した時に、中田宏は小池ユリちゃんの第一秘書をしていた。遊びにいったねえ。この「遊び」が大切なんだ。仕事のつきあいじゃなくて、若い頃から本音で天下国家を語り合った関係だから。今、中田は横浜市長、ユリちゃんは環境大臣。横浜市の新政策大綱は、二人の同盟関係で日本を動かす。

  2005.06.20

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  南部亭のフレンチ☆

  閣下は帝国ホテルの料理も好きだが、こう毎日ではメニューも決まっているし、飽きてしまう。そこでちょいと足をのばすのが、日比谷公園内のレストランだ。一押しは、いつもの日比谷・松本楼だが、今日は「南部亭(http://www.nambu-tei.com/)」まで歩いた。ここは予算的には帝国ホテルとあまり変わらない。３１５０円のコース料理もある。日比谷公園内の小さな一軒家のレストランだから、厨房で腕をふるうシェフたちの働きぶりも味のうちだ。近くの欧米系の外資も接待に使っている。ここを知らずして、東京で「グルメ」と言っちゃダメだよ。

  2005.06.18

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