Jean Paul Gaultierのパリコレ
いろいろ取り沙汰が多い今期のパリコレで、Gaultierのアトリエは元気いっぱいのようだ。エルメスのチーフデザイナーに就任したことは、明らかにプラスになった。彼はこれまでジーンズ系の縫製のノウハウしか持っていなかった。それが数百年の馬具製造技術をもったエルメスと融合することによって、高度な縫製や布地の立体裁断技術に踏み込んだ。これはエルメスのデザイナーがあえて挑戦しなかった「シナジー融合」である。具体的には。エルメスのバッグの縫製技術。皮革を裁断して、立体に仕上げる技術。これが女性の起伏に富んだ身体をつつむ立体裁断に応用できるわけだ。イブ・サンローランが肩パットを積み上げて重い服で造形を試みたのに対して、エルメスのノウハウをつかえばテトラパックのように軽い服の造形ができる。サンローランの時代には、お針子がマネキンと格闘して立体裁断をやっていた。ディオールのオートクチュールは今でもこの方法にこだわっている。これはココ・シャネルが編み出した方法なんだが、もちろん今ではコンピューターの3Dシミュレーターで微積分解析して、レーザー・カットでミクロン単位の誤差もない型紙を出すようにしている。シャネルは世界中に店舗があり、各国で内覧会をするだけでも、使いまわしはできない。オートクチュールも量産体制を組まなくてはならないから大変なのだ。ゴルチェとエルメスの関係は、結果的にアトリエの資本増強になった。ゴルチェのアトリエも、レーザー・カットで型紙をつくり、造形は思いのままだ。鬼に金棒、ファッションの鬼才に最新テクノロジーといったところか。