テーマ:日々自然観察(10123)
カテゴリ:エッセイ
冬から春へと季節が変わる三月、野でも庭でも春を待ちかねて咲く花がある。毎年のことではあるがその花たちを見ると、春への期待感が高まって、うれしい気持ちになる。 野道を歩いて目につくのがホトケノザやヒメオドリコソウ、この二つはちょっと見にはよく似ているので見分けがつかない。オオイヌノフグリという気の毒な名前を付けられたブルーの小さな花も、地面にへばりついて咲いている姿が美しい。誰かが「星の瞳」という素敵な別名を進呈した。おそらくオオイヌノフグリではあまりに可哀そうだと思ってのことだろう。でもまだこちらの名前は定着していないようだ。 目立たないけれどハコベの小さな白い花も咲く。花があまりにも小さいので、ほとんどの人は見向きもしない、というより花に気づいていないのだろう。フユシラズという黄色い花も目立つ。本来なら名前の通り、冬の間も咲くのだろうが、当地は寒冷地のため、冬の終わりのいまごろになって咲き始めた。 畑では小松菜や勝山水菜の花が咲き始めた。いわゆる菜の花である。茹でて辛子和えにすると春の味がする。 ハナダイコンという鮮やかな紫のかわいい花もある。別名をショカッサイ(諸喝采)とか、ムラサキハナナ(紫花菜)という。黄色い花が多い中で紫がひときわ目立つ。 庭ではヒヤシンス、カンアヤメ、スイセン、オキザリスなどの宿根草が咲く。一年草では大輪のパンジー、ピンクパンサー、この春初めて我が家の庭に仲間入りしたネモフィラなどが咲き始めている。 偏見かもしれないが、一年草は華やかではあるが宿根草と違って、いかにも人工的な感じがして、どちらかというとボクの好みではない。 木に咲く花ではマンサクやサンシュユ、レンギョウ、ミモザなどの黄色い花が目立つ。他にも椿、木瓜、馬酔木が庭で咲いている。そこにはうれしいことにうぐいすも仲間入りしてホーホケキョと春を告げてくれる。 我が家の周辺はまだまだ自然が豊かで、それは子どものころからほとんど変わりがない。しかし祖父母も両親ももうこの世にはいない。まさに「年年歳歳花相似 歳歳年年人不同」の世界である。 子どものころから身の回りの山野草などにはなんの興味もなく、目には入っていても観てはいなかった。それが定年退職後、時間に余裕ができたからか、山野草への関心が深まり、花を見つけては写真に撮って名前を調べるようになった。金持ちではなく時間持ちになったのだ。その分だけ周りの自然と仲良くなれて、心が豊かになった気がしている。(2024年3月) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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