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カテゴリ:書評
ウクライナ戦争をどう終わらせるか 東 大作著 早稲田大学教授 山田 満評 「二月二四日ライン」での停戦 ニュースから流れるウクライナの悲惨な状況をみている人々にとって本書のタイトルは最大の関心事であるに違いない。戦争の影響はエネルギー価格や食料価格を高騰させ、世界の人々の日常生活にも大きな打撃を与えている。 本書は、世界各地の軍事紛争の和平調停や平和構築を調査し、実務にも携わってきた著者の経験を踏まえた内容になっている。ウクライナ隣国のモルドバでの難民への聞き取り調査もしかり。「ウクライナ戦争をどうしたら終わらせられるのか」という難問に一石を投じている。まずはウクライナの人々の苦境を一刻も早く終わらせ、同時に世界大戦に繋がるロシアの核戦争をも回避させることである。そこで、「二月二四日ライン」までの領土奪還をウクライナに求め、編めるかをはじめとする西側諸国にも共通の目標とするように訴える。また、ロシアの撤退を踏まえて経済制裁を終わらせるというシナリオだ。 現在西側諸国の郷司援助で勢いづくゼレンスキー大統領はクリミア半島や新ロシア派の実効支配地域の奪還魔までに言及し出しているが、当初はロシアが侵略を始めた「二月二十四日ライン」までロシア軍を押し戻せばウクライナの松露と主張していた。それ以外の地域はロシアとの和平交渉の中で解決すると述べていた。もちろん、著者も主権国家であるウクライナに対するロシアの侵攻を強く非難しているが、現実的な「ウクライナの勝利」を見据えて考えるべきではないかと訴える。 また、日本の「グローバル・ファシリテーター」としての役割を強調する。実はウクライナ戦争以外にも地球温暖化、干ばつ、感染症など地球規模の危機に国際社会は直面している。著者はアメリカ主導の二項対立的な国際政治間ではなく、日本が得意とする「自立と安定」に向けた支援の在り方に注目する。国際機関やNGОなどとの協力で、日本はその存在感を高めてきたと述べる。ウクライナ戦争を一刻も早く終わらせ、同国の復興・平和構築支援で日本の大きな役割が期待される。 (岩波新書 1012円) ◇ ひがし・だいさく 1969年生まれ。カナダ・ブリッテシュコロンビア大学で博士号取得(国際関係論)。上智大学教授。
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Last updated
July 13, 2024 04:51:32 PM
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