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カテゴリ:政治
リスクから解放する政策こそ 尾松 亮 世界から取り残される日本 連載1回では「2020年11月2日時点で世界全体では、既に191基の原子炉が永久閉鎖状態にあり、今後も廃炉決定する原発は増える」と述べた。23年4月末時点でみると、永久閉鎖原子炉数は209基となった。 主要国では、老朽化原発の閉鎖が続く米国で「39→41」基、脱原発政策を貫徹したドイツで「30→33」機、改良型ガス炉の閉鎖が進む英国で「30→36」基など、廃炉対象原子炉数は増えている。コンサルティング企業EYパルテノンによる22年末時点の試算では、21年~50年の間に新たに200基が廃炉のフェーズに入ることが予測されている。 世界は大量廃炉の世紀に突入したという連載当初からの基本認識は揺らがない。今後求められる政策も技術も、大量に核廃棄物を生み出す「原子力発電」ではなく、人間の生存環境をクリーンアップする「廃炉」に向けられるべきである。その問題意識も妥当性を失っていないと考える。 日本は依然、福島第1を含め永久閉鎖原子炉数27基と、廃炉決定数は20年時点から変わっていない。当初は原発事故を受けて作られた稼働期間40年のルールを守れば、日本で廃炉決定数は大きく伸びることが予想された。ちなみに上述のEYパルテノンの7市場予測では50年まで日本の廃炉市場規模は400憶㌦で、米国をしのぎトップになると見込まれていた。 しかしこの予想は大きく崩れる可能性がある。国会では60年超の延長を認める改正法案が採決され、これが老朽化原発の運転継続を促進し、廃炉決定の抑制につながる。さらには「リプレース」と称し、廃炉決定原発を抱える地域に原発新設を促す方向性を示されている。 世界が廃炉時代に突入する中、日本はドイツ同様に全原発の廃炉を決め、廃炉政策と廃炉技術によって世界をリードする立場に立つことができたはずである。しかし、実際には経済的に合理性の見えない、しかも廃棄物の量を増やすことにつながる次世代原発の開発・新設を目指す政策が進められようとしている。 今後の言の発利用がどうであれ27基の廃炉が決定している以上、廃炉政策は別途進めればよいという考え方もあろう。しかし廃炉原発立地地域に核廃棄物を増やすようなリプレース政策が進むなら、地域を核汚染・事故リスクから解放する質の高い「廃炉」は不可能になる。 (廃炉制度研究会代表)
【廃炉の時代—課題と対策—61】聖教新聞2023.6.20 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 15, 2024 05:47:55 AM
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