テーマ:旅するシーカヤック(153)
カテゴリ:カヤック
風が強かった昨日とは打って変わって、今日は穏やかな晴れとなり、絶好のツーリング日和。
久し振りに、亀ヶ首に行ってみよう! *** 9時過ぎ。 いつもの浜からシーカヤックを漕ぎ出す。 秋らしく、空気が澄んで気持ちの良い朝だ。 奥ノ内湾を出て亀ヶ首までのルートは、風が吹くと荒れる場所。 東風、北風、南風。 どの風でも波が立ち易いので、安定した天候のときにしか、亀ヶ首に向う事はない。 鈴鹿島の南で、釣りをしている船の横を通る。 『こんにちは』 『どこまで?』 『今日は、亀ヶ首まで行く予定です』 『さっき、結構風が吹きよったよ。 じゃけん、私らはここまで戻ってきた』 『ありがとうございます。 じゃあ、近くまで行ってみて、風が強いようなら引き返してきます』 *** 途中、特に風が吹く事もなく、弱い引き潮に乗って順調に漕ぎ進み、1時間ほどで到着した。 ここ亀ヶ首は、旧海軍の試射場などがあったことで有名な場所である。 今でも、コンクリートで作られた昔の施設の残骸が残されているのだ。 浜にシーカヤックを引き揚げ、見晴らしの良い場所に上がって一休み。 *** 今日は日帰りツーリングなので、超ミニマムパッキング。 ストーブも、久し振りに『パイトーチSSS』を引っ張り出してきた。 これが良くできたアルコールバーナーで、お気に入りの品の一つである。 お湯を沸かし、抹茶ラテを入れる。 海を眺めながら、シェラカップに注いだ抹茶ラテをすする。 ああ、温かい飲み物がおいしい季節になったなあ。 *** 荷物を積み込み、バウを北に向けて情島へと向う。 今日は、情島でお昼ごはんにする予定。 太陽を背にして、穏やかな瀬戸内の海を漕ぎ進む。 漕ぐ手を休めると、物音一つしない静けさに包まれる。 ポカポカと暖かい日の光を浴びながら、雑音のない贅沢な空間で美しい景色を眺める。 最高の一時! 今日は、海に出て良かった! *** 情島の桟橋に近づくと、以前訪ねた時にいろいろな話しを聞かせていただいた漁師さんの船が見えた。 『こんにちは。 ご無沙汰してます。 今日は、亀ヶ首まで行ってきたんですよ』 『今日は凪で良かったなあ』 『ええ、穏やかで良かったです』 『そういえば、情島の事が、数ヶ月前に新聞に出てましたねえー。 見ましたよ』 『そう、出とったらしいね』 『今から漁ですか?』 『うん。 今から網を入れてみようと思うて』 『最近はどうですか?』 『それがのう、盆から後はあんまり魚が採れんの』 『そりゃあいけませんねえ。 今日はようけ採れりゃあええですね』 *** 干潮で干出した桟橋の近くのゴロタ浜にフネを揚げさせていただき、お昼ごはんの準備に掛かる。 『パイトーチSSS』でお湯を沸かし、うどんを作る。 ふーふー、ハフハフ。 つるり、ゴクリ。 うん、うまい。 *** 食後に散歩していると、蛸壷の手入れをされているおばさんが居られた。 『こんにちは』 すると、『こんにちは』と返事が返ってきた。 『蛸壺の手入れですか?』 『そうよ』 『タコは、きれいな壷が好きらしいですね』 『そうそう、きれい好き。 それに、掃除しとかんと、揚げる時に重いしね』 『ああ、なるほど』 今日は漁は休みで、ご夫婦で蛸壺の手入れをされているようだ。 手を動かしながらも、私の話し相手になって下さる。 お話を伺うと、タコは年中捕れるが、夏がシーズンである事。 昔は、サワラ漁にも行っていた事。 また、この島にあった学校の話しや、そこに赴任してきた先生たちの生活等々、『あるく、みる、きく_旅するシーカヤック』をテーマに海旅を続けている私にとって興味深いお話を伺う事ができた。 『じゃあ、そろそろ昼にしようかね』と言って、椅子にしていた台と、タコ壷を掃除していた道具を手押し車に載せられた。 『どうもありがとうございました』 *** しばらくすると、漁に出ていた船が桟橋に戻ってきた。 『どうでした?』 『だめだめ、一匹だけ』 『そうですか』 『見せてもらってもいいですか?』 『ええよ、乗りんさい』 いけすを覗くと、30cmを越える鯛。 立派なものである。 『すごいですね』 *** 地元のおじいさんが加わり、桟橋に舫った船の上で、しばし四方山話。 サワラ漁をしていた頃、網にはサメが掛かる事があり、市場に売りに行っていたという話。 漁をしていると、大きなサメが舷側にピッタリとくっついて来て怖かった話。 『あんたあ、カヌーに乗っとって、サメは大丈夫か?』 『イルカは見た事があるんですが、サメはまだ見た事ないんですよ』 『サメは大きいんですか?』 『うん、4、5メートルはある』 『網を揚げよったら、船が傾いたこともあったのう』 *** また、昔はこのあたりでも、『デゴン(すなめり)』がよく見られたとの事。 『サワラの網に、デゴンも時々入りよった』 『今じゃあ、デゴンも見んようになったのう』 もう一人の漁師さんは、若い頃には五島列島や対馬に住んで漁をしていた経験や、和歌山から鰹船に乗ったこともあるという。 イルカ漁の話や、五島での漁の話、面白い武勇伝なども聞かせていただいた。 漁船の上での、最高に楽しい一時! 『あんた、「でんちょう」食べるか?』 『え、いいんですか?』 『ええよ、2匹持って帰りんさい』 『ありがとうございます』 すると、もう一人のおじさんは、『煮付けたら、甘うておいしいで』 『ええ土産ができました』 *** 『じゃあ、帰ります』 『気を付けての』 『なかなか島に泊りにこれませんが、また遊びに来ます。 本当に、ありがとうございました』 最高のパドリング日和に恵まれ、気持ちの良いツーリングと、島の人々から様々な興味深いお話を聞く事ができた秋の一日。 日帰りツーリングではあったが、久し振りに『あるく、みる、きく_旅するシーカヤック』を堪能する事ができた。 やっぱり、瀬戸内は最高じゃのう! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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