「月の欠片(かけら)」浮穴 みみ【著】
【出版社内容情報』
新時代への希望を胸に成長する青年が事件を追う、気鋭の長編時代書下ろし!
開化の帝都に連続する死。“四人の敵"は誰なのか?
戊辰戦争で孤児となった会津の青年琢磨は、十六歳を迎え、築地外国人居留地近くの西洋茶店都鳥に寄宿することとなった。主人の祐三郎は、書生を無償で西洋塾に通わせる奇特な人物。だが、訪ねた矢先、新橋の牛鍋屋主人治五郎が割腹死体で発見される。明治の世に切腹? 侍の出ではなく、若い頃の悪事を悔いて洗礼を受ける予定だった治五郎が、自死を選ぶのは不自然だった。さらに、この事件には、一連の敵討ちの端緒と思われる、ある理由があった。
続発を防ぐべく、琢磨たちが治五郎の過去を洗い始めた矢先、第二の殺しが……。
本を返しに行った時に、この本をみつけて借りてきた。
時代設定は先日読んだものと同時代だが、これは史実とは無関係の物語。
時代物サスペンスとでもいうのだろうか。
敵討ちや切腹が美徳とされた江戸時代が終わっても、人間の心や美意識はなかなか変わらなかったことだろう。
明治維新の頃には、ひょっとするとこのようなこともあったのかもしれないと思わせる。
また、人の悲しみや悔しさ、憎悪などは、強い怨念のマグマとなって、本人はもとより周囲にまでも強い影響を及ぼすのは今も同じである。
そんなことを連想しながら、面白く読んだ本である。