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カテゴリ:読書
「水曜日の凱歌」乃南アサ/著
鈴子、14歳。私の戦争は、8月15日に始まったーー占領下の東京を生きる少女が目撃した、本当の「敗戦」 昭和20年8月15日水曜日。戦争が終わったその日は、世界のすべてが反転してしまった日、そして女たちの戦いが幕を開けた日だった。14歳の鈴子は、進駐軍相手の特殊慰安施設協会で通訳として働くことになった母とともに、慰安施設を転々とする。苦しみながら春を売る女たち。米兵将校に接近し、したたかに女の生を生き直す母。変わり果てた姿で再会したお友だち……。多感な少女が見つめた、語られざる戦後を描く感動の長編小説にして、『しゃぼん玉』に並ぶ著者新たな代表作。芸術選奨文部科学大臣賞受賞。解説=斎藤美奈子。 特殊慰安施設協会とは 日本が進駐軍の性暴力に備えるために女性を募り、東京・大森海岸や静岡県・熱海などに慰安施設を日本各地に作った実在の組織。5千人を超える女性が売春や娯楽を提供したとされる。通称RAA。 斎藤美奈子さん「解説」より 戦争の犠牲になるのは女性と子どもだ、といわれます。しかし、『水曜日の凱歌』に登場する女たちはみな、それぞれのやりかたで戦っている。重い題材にもかかわらず、本書が心地よい読後感を残すのは、そのためでしょう。思えば乃南アサはデビューした当時から、戦う女を描いてきた作家です。直木賞を受賞した『凍える牙』(一九九六年)で初登場した音道貴子も、パワハラやセクハラが横行する男性社会の警視庁で働き、戦う女性刑事でした。立場や時代がちがっても、逆境に負けない人は私たちを勇気づけてくれます。本書も例外ではありません。 図書館で借りた本。長編の部類ではあるが、一気読みに近い感じだった。 「特殊慰安施設協会…RAA」については、何かで読んだか見たかで知ってはいたが、この作品でそこに関わっている女性や子どもの視点で書かれているものは、初めてのような気がする。 戦争は女性や子ども達が犠牲になるとは判で押したように言われるけれど、 このような歴史の陰の犠牲者はどれほど多いことだろう。 生きるために、家族を養うために、どれほどの多くの女性たちがこのような仕事に就き、 そして放り出されてしまったのだろう。 Wikipediaの記事によると、の女性兵士用の「慰安夫」も存在したらしい。 ため息が出るような話ではあるが、これが人間の業というものなのだろう。 それでも、そそのような体験をしたとしても、その人たちの人生は続く。 この小説の中の女性たちは、よく「負けたんだから仕方がない」とつぶやき現実を受け止めて生きている。 傍から見たら、前日まで「鬼畜米英」と言っていた国の人達に対しての豹変は、 信じられない気がするけれど、それも生き抜くためには仕方がないのだ。 彼女たちの生き方は、それぞれたくましく時には明るい。 同時に自分たちの家族や家を奪った戦争と、その戦争を巻き起こした者たちに 怒りと復讐をするかのように、自分の持ちうる能力をフル稼働して生きようとする。 その人たちの頑張りのおかげで、今の日本があるのかもしれない。 世界中の紛争の中に生きる人たちは、絶望の中でもその日の糧を求め、 尽きようとする命を守るために必死に生きているのだろう。 その頑張りが報われる日が来るのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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