利き酒
くそっ!!親父の馬鹿やろうっ!!心の中で毒づく俺っ!!絶対ぎゃふんといわせてやりてえっ!!一体どうしたらいいんだよっ!!浄瑠璃が抵抗できないのをいい事に、奴の意思とは関係無く、強引に関係を続けているんだろう。卑怯なあいつのやりそうなことだっ!!何だかそのまま部屋に戻りたくなくて、いつもの居酒屋に顔を出したら、染姫が1人、カウンターで日本酒を飲んでいた。日本の居酒屋のチェーン店が、この国にも進出してきて、安い値段で飲み食いが出来るとあって、皆がよく集まる居酒屋だ。「よう!お前1人か?いつものお供はどうした。隣いいか?」「いいですよ!今日は彼女とデートですって!高校生の可愛い彼女だって言ってましたよ」「ふーん。高校生ね。今時の高校生ってちゃっかりしてっから、あいつ集られちゃうんじゃないの!紅緒単純だから騙されそうだし」彼女の隣に腰を下ろしながら話しかける。「同感!彼、とても素直だから、騙されやすそうですよね」八海山を口に運びながら答えると、「お前、日本酒好きだな~!いっつも日本酒飲んでんのな。一口くれ」そう言うと、お猪口を手渡してくれる。「お、いけるじゃん!これ美味い!!」「日本人ですもの。故郷の味が楽しめるのは、流通があってこそですね。父とよくお酒を飲んで仕事の話をしたり、将来の話をしていたんです。何飲みますか?」「こいつと同じのくれ!冷やでいい!」彼女の徳利を指差して、厨房に声を掛ける。「毎度っ!!八海山ですねっ!!」常連だけあって、店の人間も彼女の飲む銘柄は、いつも同じだって知っている。話が早くて助かるよ。「娘が産まれたら、成人を過ぎて共にお酒を楽しむ事を、楽しみにしていたらしいんです。付き合っているうちに、味の違いや、銘柄なんかも判るようになりましたよ」「男親はそんなささやかな夢を見たりするもんさ。俺は親父と酒を飲んだ事は一度も無いけどな。いつも仕事ばかりで家に居なかったし。帰ってくるのは午前様。女の所に行ってたり男遊びしたりで、ろくでもない親父だぜ」「お父様、元気な証拠じゃないですか!亭主元気でなんとやらですよ!」「お前、驚かないの!男も女も好きなんだぜ!両刀なんだぞ!俺の親父っ!!」((藁´∀`)) 「言い方を変えれば、お父様は人が好きってことですよ!人の悪い面を見て人嫌いになる人間も多い中、人が好きだからこそ、性差を超えて、好きになってしまうのかもしれませんよ」「お父様、白雅さん同様経営者ですよね。経営者って物凄い重圧の中で、従業員を護る為に日々戦っているものです。そんなときにホッとする存在に出遭ったり、優しい言葉を掛けられたりすると、縋りたいって思ってしまうのかもしれません」「私の父も芸者遊びや、オカマバーに出入りして、遊び呆けてしまう人ですよ。今はもう行っていないんですけどね!」ァ'`,、'`,、(ノ∀`*)'`,、'`,、「ふーん。染姫は面白い解釈をするんだな」『物事は多面的に捉えないと、本当の姿を見せてはくれない』そう言った白雅さんの言葉に自分も感化されたんですよ。だから、悪い所ばかり見るのではなくて、良い所を見つけようと努力するようになったら、自身の視野が広がったように感じたんです」「俺、そんな事言ったっけ」店員が持ってきた、グラスに入った冷やに口をつける。「言いましたよ。私の考え方を、見方を変えろって言われたようで、今でも心に残る白雅さんの名言だと思っています」「そりゃ、嬉しいね!俺の発した言葉が誰かの心を動かしたり、励ましを与えられたなら凄いよな。作り上げる製品も、そうであって欲しいもんだ」「ええ。本当にね。皆で気持ちを一つにして作品を作り出す。私達は一心同体の職人ですからね!」お猪口を俺のグラスに軽く当て、微笑む染姫。「お前いい奴だな」口に出して呟く俺の顔を覗き込む。「いつもの強気な白雅さんは何処に行ったんです?今日はとことん付き合っちゃいますよっ!!私、お酒強いですよっ!!」(´∀`*))ァ'`,、 無邪気な女だな。そう思った。「女で酒飲みは嫁の貰い手がなくなるぞっ!!」「いいですよ~!結婚しなくてもっ!!キャリア積んで、シングルでも生きていくようになりますともっ!!」(>д