『……なんでだよ、

　つきあってたのに、彼女は、“友達だ”なんて、割り切れるんだよ……!!』






電話越しの健一さんの言葉が、私の胸を突き刺した。





…………共鳴…………したの…………―――――――――――――――…。





健一さんの気持ちが、そのまま私の気持ちだったから。





健一さん、は。

前の彼女に振り回されてた。


前の彼女には、もうつきあってる人がいる。


そして、不満があると、健一さんのところに来る。


彼女は、健一さんが、どれだけ自分のことを好きかを知っているから、

健一さんの優しさを、慰みにする。


そんな健一さんは、うつ病と診断されてしまったらしい。

ひきこもり気味なんだ。





健一さんの話を聞きながら、勝手に涙が出てきた。



自分の親しい人に、自分と同じ思いをしてほしくないよ。




悲しかったから。心が壊れそうなくらい、つらかったから。

勝手に相手だけ自己完結して、勝手に別の人とくっついて、

気持ちを置き去りにされた健一さんは、どうしたらいいの…？

私はどうしたらいいの…？





相手のことを想ったまま、ひとりだけ置き去りにされて、どうしたらいいの…？




健一さんの叫びが、私に共鳴する。

私の中で、健一さんの気持ちがループする。




『!!

　おまえ、泣いてるの!?

　どうした、あんり………!?』




『……健ちゃん。

　私も、ちょっと前に、同じ思いをしてるのよ………

　だから、健ちゃんに、同じ思いをしてほしくないんだよ………



　一緒に、どうにかしよう？　考えよう？

　このままじゃ、健ちゃんの気持ちが壊れちゃうよ………』




健一さんが、どれだけ彼女を好きか、解かるから。

一緒に考えようよ。ね、健ちゃん……。





『ねぇ、健ちゃん。

　まず、引きこもっちゃダメ……!!


　ちっちゃなことでいいの。

　美味しいパスタ食べたーい!! でも、 ドライブしたーい!! でもいいから、

　適当に口実作って、友達と外に出ようよ!!




　でね、今、無理に誰かを好きになろうとして、

　異性の子を紹介してもらうと、つらくなっちゃうよ。

　だって、健ちゃんは、こんなにも彼女が好きなんだもん……!!

　自分のこと、傷つけることになっちゃう。

　ちゃんと好きになれないなら、相手にも悪いし、何より自分はもっと可哀想。



　でも、いろんな人に逢うことは、とてもいいことだと思うから、

　たくさん友達を作ろう!! ってな気持ちで、

　紹介受けたりとか、パーティに参加したりしてね。



　このとき気をつけることは、“新しい恋愛をしよう”って思わないこと。

　恋は、探すものじゃなく、自然にするものだから……。



　引きこもると、余計なことまで考えちゃう。

　だから、気分転換してね。

　それでも動く気になれないときは、心が休みたがってる証拠だから、

　ネガティブリフレッシュで、たーくさん眠ってね☆



　肝心の彼女については………



　ねぇ、メールや連絡が来ても、期間を決めて、返さないで。

　たとえば、一ヶ月なら一ヶ月って決めてね。


　
　彼女は、たぶん、離したくないのよ。無条件で愛してくれる健ちゃんを。

　だから、それに甘えてるの。



　で、彼女自身が悪者になりたくないから、
　
　“好きな人はつきあってる人、健ちゃんは良き理解者”なんて、口実を作るの。



　どうしてだと思う？

　好きな人が思い通りにならないからよ……………



　健ちゃんなら、わがままも、全部ひっくるめて愛してくれること、

　彼女は知っててやってるのよ。



　でも、健ちゃんは、決定的な決断を下したくないんでしょう？

　彼女が好きだから、“もうつきまとわないでくれ”このひとことが言えない。


　だったら、まだ言わなくていいわ。


　その代わり、無言で応戦しましょう？



　人って、無視されることがいちばん嫌なことで、不安要素なの。



　だから、一定期間、彼女からの連絡を、シカトしてね。

　これは、2つの理由があるの。


　ひとつは、期間を置くことで、彼女の出方を見る。

　頼っていた健ちゃんがいなくなった。

　そのときに、彼女はどう思うか。

　一定期間連絡を絶つことで、彼女はどう出るか。


　もうひとつは、健ちゃんの心の病気の原因を、時間を置いて取り除くこと。

　こうすることで、健ちゃんの負担がちょっと減るよね。

　で、今、彼女に振り回されっぱなしだけど、

　彼女と距離を置くことで、健ちゃん自身も、

　彼女に対する気持ちを冷静に見つめることが出来るよ。』





そう言ったら…。


健一さんに、感心されてしまった(笑)