カテゴリ:B~C級グルメ
◇ 10月14日(土曜日):旧葉月二十三日(丙子);鉄道の日、釜石船曳祭。
最寄の駅を降りて、踏み切りを渡り家に向う道は、日中は途切れることなく車が往来し随分賑やかだ。先日夜遅くに帰宅する途中、ここでタヌキを見かけた。 人気の無い道を歩いていると、何やら近くに生き物の気配がして目を向けると、普通の犬位の生き物が並んでこちらを見ている。直ぐに狸君だと分かった。 「へぇー、こんなところにも居るんだ。」と思った。黒っぽい、丸い体つきで、お尻の辺りがなんだかプリプリして愛嬌がある。二匹揃ってこちらを見ている様子は、猫のように狷介で無く、犬のようにへつらう雰囲気も無い。ただいきなり出会ってしまって、挨拶をしたものかどうか戸惑っている雰囲気である。家の直ぐ近くで狸を見かけても特に仰天することも無かったのは、とぼけたようなその様子のせいだったろう。 暫くしたら、向こう様も興味をなくしたのか、二匹揃って家と家の間の闇にそそくさと消えていった。 僕の父方曽祖父は群馬県の館林の辺りの出身だと、ずっと昔に父親から聞いた記憶がある。館林と言えば茂林寺。これは曹洞宗のお寺で、茂林寺は文福茶釜の伝説のあるお寺だ。つまりはだから、僕自身狸君とは何処かで血縁である可能性もあるのだ。 狸と言えばタヌキ汁を思い出す。 タヌキ汁は童話などではごく普通に出てくるが、恐らくはこれを食べた事がある人となると殆ど居ないのではなかろうか。無論僕自身も食べた経験が無い。 ところが、このタヌキ汁を食べられるところがあって、それは奈良の宝蔵院という槍術で有名な、日蓮宗のお寺である。 しかし、狸君の肉は非常に獣臭く、そのままではとても食べられたものではないそうだ。臭みを消すために肉を稲藁で包んで1週間ほど土中に埋め、その後掘り出した肉を更に2時間ほど流水に晒す必要がある。更に更に、料理の段階でも、酒で煮たり、生姜や大蒜を使ったりと色々工夫しなければならない。タヌキ汁も臭みを消すため、味噌味にするのである。 地方によっては「タヌキ」といえば、アナグマのことを指す。アナグマはネコ目イタチ科の動物である。アナグマを「タヌキ」と呼ぶ地方では、イヌ科の狸のことは「ムジナ」と呼ぶのだそうだ。 栃木県のある猟師が、偶然狸が獲れたので、土地の老人にタヌキ汁の作り方を聞いて作ってみたが非常に不味い。翌日老人に文句を言ったところ、「これは『ムジナ』でねえか。タヌキ汁は『タヌキ』の肉で作らんと、食えるわけねぇべ!」と言われたという話がある。つまり、どうも「美味しいタヌキ汁」は実は「アナグマ汁」であるようなのだ。 しかし、この飽食の時代に、手間隙かけて無理してタヌキやアナグマの肉など食べることもない。奈良の「宝蔵院流タヌキ汁」も、昔は狸肉(アナグマ肉?)を使用していたけれど、やがて歯ごたえが似ている(??)蒟蒻を狸肉に見たて、野菜などを入れて味噌仕立ての精進料理へと変化したそうだ。つまりは、「タヌキ汁」は「コンニャク汁」に化けてしまったのだ。まぁ、そういうことで先ほど見かけた狸君も、うっかり人間に食われてしまう気遣いは無いのである。 狸君は、一度配偶者と出会うと、終生一緒に暮らすという見上げた倫理観の律義者なのだそうだ。件の狸君も二匹が一緒だった。東京のベッドタウンに居を構えた狸夫妻には、何となく「頑張れよ」と云ってやりたい気持ちである。 ♪♪今回の厚木語辞書♪♪ 『産まず弛(たる)まず』 -出産は女性にとって大変な事業であり、どうしても事後体形に影響が出てしまう。それを避けるために、出産することなく、のみならず加齢しても体の諸方が重力に屈服して弛まないように、様々な不断の努力を重ねること。その後、女性だけでなく男性についても、努力を継続することをこう云うようになった。 【対応する日本語】 - 倦まず弛(たゆ)まず。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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