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マックの文弊録

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2007.08.16
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カテゴリ:B~C級グルメ
◇ 8月16日(木曜日) 旧文月四日、壬午。 京都五山送り火、箱根大文字焼き、三嶋大社祭、松島灯籠流し。

最近はまともに昼食や夕食を摂る機会が少なくなって、コンビニでおにぎりやサンドイッチを買ったり、いわゆる「ホカ弁」を買って慌しく済ませてしまうことが多い。元来グルメ(とはいえ、B級)の僕としては、「一生の食事の回数は限られているのだから、一回ごとの食事をおろそかにしてはいけない。」などと思っていたのだが、慣れてしまえば最近売っているお弁当は中々美味しいのだ。それに何より廉い。コンビニのおにぎりは殆ど百円台の前半で買える。これを二つほど購入して、お湯を注ぐカップ味噌汁を添えれば、一回の食事に5百円玉でおつりが来る。

当社の辺りはオフィスが多く、昼には「昼食難民」が出るせいで、ホカ弁のお店も数多く出ており、競争が激しいせいかもしれないが、最近など温かいご飯におかずが三品ほどついて390円などというのまで出てきた。コンビニの「おにぎり昼食」より廉いのである。無論「ホカ弁」だから、ご飯は温かいのが売りだし、一食に付きふりかけか味噌汁のパックがひとつ付いてくる。

廉いからといって、栄養価に変わりはあるわけでもないし、いただけばちゃんと空腹は癒され、午後の仕事に向かうだけのエネルギーも得られる。
先日など、新しくできたファーストフードレストランで、「ポークカレー290円」という看板を見て驚いた。若布入りお味噌汁も一椀付いてくる。もうこうなるとホカ弁も脱帽である。この店はテイクアウトもできるけれど、店内でカウンター沿いに椅子に腰掛けて食べることもできる。いつも必ず客が入っているから、味も悪くないのだろう。

一方で、同じ商店街の筋には、「ステーキランチ880円」、「掻揚げ丼1,350円」とか、「中華ランチ1,050円」などという「普通の」クラスの食事どころもあるし、「うな重松4,000円」などという店も平気で軒を並べている。
先日、テレビを観ていたら「トリュフの炊き込みご飯、ランチコース」というのがあって、これは3人前が一まとまりでセットされ、一人前が2万8千円なのだそうだ。上記の「ポークカレーランチ」とは実に百倍近くもの懸隔がある。

こうなると、ちょっと考え込んでしまう。
「ポークカレー290円」(男爵コロッケを付けると350円になる)で養われる命と、「トリュフの炊き込みご飯ランチ」で養われる命とには、どういう差別化ができるのであろうか?まさか数時間後に体外に出てくるモノによって差別化をするわけにもいかんだろうに。
百倍のコストをかけた食事で生きている人間が、百倍も優れた仕事をしているわけなどないし、百倍も長生きすることもない。毎日高価な美食を繰り返していれば、逆に290円で賄われている命より早く終わってしまうだろう。金を費やして、不健康と早死にを購う・・・か?或いは単なる無駄か?はたまた、多額の消費による社会貢献なのか?
・・・・どうもよく分からない。


食事といえば、日本人の場合は大抵「主食」として米を食う。
主食に対するものは「おかず」であるが、この「おかず」に相当する英語はない。「おかず」を和英辞典で引いても出てくるのは、「food」か「dish」である。
海外に行けば、「鱈の塩竈焼きを、グラス一杯の白ワインで流し込む」。それで終わり。所謂洋食、つまりは狩猟(漁)民族の食事はそんなものだ。主食などという概念はないから、洋食の世界では「米のご飯」は野菜に分類されているのである。
「主食というならパンがあるじゃないか。」といわれるかもしれないが、彼らはパンを「主食」という感覚では食べていない。炭水化物を摂取するなら、穀類でなくとも、芋でもトウモロコシでも豆でも何でもいいし、実際そういう感覚である。

その点日本人の場合には、どうも米の飯がなければ落ち着かない。僕の知り合いの女性は日本人だが大変パンがお好きなようで、殆ど毎食といって良いほどパンを食されているそうだ。それも、聞けばどうも「主食」の感覚で召し上がっているらしい。その彼女にしてからが、二日に一度は「お米のご飯」を召し上がらないと落ち着かないとおっしゃる。

日本人の大半は無論農耕民族である。
だからお米が無いとどうも落ち着かない。「銀しゃり」がお茶碗に盛られてきて、初めて「食事」という体裁が整う。そういう根源的な感覚があるようである。
今ではもはや死語の部類なんだろうが、子供の頃うどんやパン、素麺や蕎麦が食事として出てくるときは、母親は「今日は代用食だから」と云っていた。その云い様には若干忸怩たる匂いが有った。代用食というものは、何の代用かといえば、それはやはり「銀しゃり」の代用だったのである。
そう思うと、日本人は米の飯を食い、それを「主食」とすることで、獣肉や魚肉などを主体とする「おかず」の地位を貶め、自らの獣性を糊塗しているのかもしれない。





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最終更新日  2007.08.16 20:06:24
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