22日は皆既日食
◇ 7月17日(金曜日) 旧五月二十五日 癸亥(みずのと い) 大安; 八せん終わり来週の水曜日(22日)には日本の各地で、晴れていれば日食が見られる。日食は、太陽と地球の間に月が入り込んで、この三者が一直線に並んで起こる。だからこの日の月齢は朔、つまり新月である。地球に関しては色々な偶然の不思議が多い。地球の公転軌道がもう少し太陽に近かったら・・・、逆にもう少し火星に近かったら・・・。どちらにしても数多の命をはぐくむ命の惑星、水の惑星としての地球は存在しえなかった。だから、地球は「奇跡の惑星」とも呼ばれる。日食も同じだ。いかなる神の思し召しだか、地球から見る太陽の視直径と月のそれとはほぼ同じ30秒だ。視直径30秒とは、大人が指の先に五円玉をつまんで、腕を一杯に伸ばした時に見える、五円玉の穴の大きさにほぼ等しい。そういうと大抵の人がびっくりする。皆、太陽や月はもっと「大きい」と思っているのだ。しかし本当はそれほど「小さい」のです。これは、ご自分でお試しになればすぐ分かります。この、太陽と月の視直径がほぼ等しい事によって、美しい皆既日食や金環食が起こるのだ。若し月の視直径がもっと大きければ、日食中太陽が隠されてしまう時間はもっと長くて味気ないものだっただろうし、逆だったら太陽はドーナツのように見えることになる。或いは太陽面を天道虫のような黒い月の影が動いていくように見えるだろう。両者の視直径がほぼ等しいことで、皆既の時にはコロナや紅炎(プロミネンス)が、影になった黒い月の縁から滲み出して輝き、美しい光景が見られるのである。これも神の采配かもしれない。月は毎年数センチずつ地球から遠ざかっていくから、その内本当に日食というと、ドーナツの穴か黒い天道虫を連想するようになるだろう。とはいえ、我々はもうとっくにその頃には生きては居ないはずだが。今度の日食は東アジアから太平洋上にかけての範囲で観られる。日本では全国で部分食を観る事が出来る。また奄美大島北部、トカラ列島、屋久島、種子島南部などの南西諸島は、皆既日食帯と呼ばれる細長くのびた地域・海域内に入っており、これらの場所では皆既日食を観察することができる。日本での日食は、色々な条件がうまく重ならないと起こらない現象だし、皆既日食が観られるかと云う事になると、はるかにチャンスは少なくなる。最近に日本の陸地で観察できた皆既日食は、1963年7月21日の北海道東部で見られたものだった。実に46年も前の事だ。又次のチャンスは、2035年9月2日の北陸・北関東などで見られる皆既日食になるから、まだまだ26年も先のことだ。前回僕は高校生だったし、次の機会にはもう生きていないかもしれない。(多分そうだろうな)だから22日の皆既日食は非常に珍しい現象と言えるから、是非観てみたいものだ。しかし、南西諸島にまでは中々気軽に出かけられない。この地域はいずれも長時間の皆既日食が観測できる離島であり、その好条件から全世界から注目されているそうだから、プロの観測家達や、便乗したツァーの人達でごった返している筈だ。若し行けたとしても大変な混雑に巻き込まれそうだ。そうしたらさすが現代はインターネットの時代だ。鹿児島大学学術情報基盤センターが、「トカラ皆既日食 7島 中継プロジェクト」というのを立ち上げていて、トカラ列島十島村の内7つの有人離島(口之島、中之島、平島、諏訪之瀬島、悪石島、小宝島、宝島)にカメラを設置し、日食の実況映像をストリーミング配信してくれるそうだ。http://eclipse.cc.kagoshima-u.ac.jp/で、当日の09:30~12:30まで画像配信してくれる。7台のカメラは相互に最大100キロメートルも離れているそうだから、パソコンさえあれば日食の欠け具合の「時間差」も、居ながらにして同時に観られることになる。皆既の間は、空は夕方・明け方の薄明中のように暗くなり、明るい星ならば見ることができる。地平線近くは、夕焼け(朝焼け)のように空が赤く染まって見られる、筈だ。こうなると心配なのは当日のお天気になるが、今のところ南西諸島付近は「曇り」から「晴れ時々曇り」だという予報になっているから気が揉める。何とか晴れて欲しい。参考のために他の幾つかの地域での「日食予報」を下に掲げておく。書いてある時刻は「日食の始まり時刻」、「最大食の時刻」、「日食の終わり時刻」、そして最大食分である。(時刻に関しては、秒は丸めて分までしか表示しない)札幌 : 10:04, 11:10, 12:16: 最大食分0.51東京 : 09:55, 11:55, 12:30: 最大食分0.75名古屋: 09:50, 11:08, 12:27: 最大食分0.79大阪 : 09:45, 11:05, 12:25: 最大食分0.81鹿児島: 09:37, 10:57, 12:20: 最大食分0.96最大食分は「月によって隠される太陽の面積の割合」の事だ。だから札幌では太陽の約半分が、そして東京では四分の三が、「月によって食べられる」ことになる。若し上記以外の場所をお知りになりたければ、東京天文台暦計算室のHPで希望の場所を入力して調べる事ができる。(http://www.nao.ac.jp/koyomi/koyomix/eclipsex_s.html)ところが現在の週間天気予報では上記のどこも「曇り一時雨」だ。当日は日本の南西に行けば行くほどお天気は良さそうな様子だから、やはり鹿児島大学のプロジェクトチームの皆さんに期待するところ大である。現地の皆さん、是非晴天を祈りつつ頑張ってください!ところで、今日のニュースで、ある雑誌社が今年の1月に付録として配った「日食メガネ」に欠陥があって、このメガネをかけて直接太陽は見ないでほしいと云っていた。太陽を直接裸眼で見ると、虫眼鏡で太陽光を集めて紙を燃やすという、子供時代に良くやった遊びと同じ現象が眼の中で起こり、つまりは網膜を焼いてしまう事になりかねない。ガリレオも手製の望遠鏡で太陽を観察して眼を焼いてしまったとも聞いている。ガラス板を煤で燻したものや、黒く感光したフィルムなどを昔の日食観察では使ったものだが、万が一の事を考えると何れにしろ太陽を直接目視するのは避けたほうが良い。それより、木漏れ日を見ることをお勧めする。針穴写真機と同じ原理で、日食の欠け具合に応じて、木漏れ日の一つ一つは半月や三日月の形に変わっていくのである。頭では分かっていても、実際に眼にするとちょっと驚く事請け合いである。さて、22日はせめて午前中だけでも晴れますように!!