カテゴリ:NHKよるドラ&ドラマ10
NHK「燕は戻ってこない」が終了。
いろいろと予想を裏切られた。 基の選択も、 悠子の選択も、 リキの選択も、 リリコの反応も、 すべてが予想とはちがってました。 ◇ 奇しくもリリコが、 産後うつを「ホルモンの奴隷」と言いましたが、 人間は、 「遺伝子の奴隷」でもあるし、 「生まれ育ちの奴隷」でもあるし、 「名前の奴隷」でもあるし、 「経済の奴隷」でもあるし、 「法律や契約の奴隷」でもある。 女は「結婚」と「出産」の奴隷でもある。 リキの最後の選択は、 そのすべての呪縛を振り切ったものだけど、 それは自由である同時に不穏でもある。 ◇ 基と悠子は、 あえてDNA鑑定をせず、 リキの子の「里親」として手を取り合う、 …という選択をしました。 たんなる「里親」なのだから、 リキが片方の子を連れ去ったとしても、 おそらく彼女の選択を尊重するだろうし、 草桶夫妻は文句を言わないはずです。 実際、訴訟を起こしたところで、 リキが戸籍上も母親なのは事実だし、 事前の契約が双子の想定をしてたかは怪しいし、 遺伝的な父親が誰なのかも不明だから、 草桶夫妻が《愛磨》を取り戻せる保証はない。 ただ、 基の母の千味子は納得しないかもしれません。 ◇ 一方、 リキが自力で子育てできるのかは不安だし、 出生届が《愛磨》なのに、 彼女のことを《ぐら》と呼び続ければ、 出生名と通名とに齟齬が生じることになる。 さらに、 将来的にDNA鑑定をした場合、 リキの連れ去った子と草桶家の育てた子が、 あべこべの結果になってしまうかもしれない。 子供たちが、 自分たちの出自を知りたいと主張したときに、 どんな結果が生じるのかも分からない。 … 帝王切開の傷が残っただけでなく、 さまざまな禍根と不穏な要素を残す結末です。 ◇ もとより、 これは代理出産を奨励する作品じゃないので、 ハッピーエンドにならないのは当たり前だし、 想像しうるかぎり、 もっとも不穏な結末を選んだってことでしょう。 桐野夏生の原作があるとはいえ、 長田育恵の脚本作としては、 朝ドラ「らんまん」との作風の違いに驚かされる。 わたしが思うに、 「ぐりとぐら」という絵本も、 卵を食べる物語であることが意識されている。 「ぐりとぐら」が他者の卵を食べたように、 彼らの生命も他者から食いものにされてるのでは? そういう怖い話ですよね。 ◇ わたしは、 「いとうせいこうの登場に意味があるに違いない!」 …と予想したのだけど、 それ自体がミスリードだったのかも (^^; 結局、さほどの意味はなかったのですね。 富田靖子が序盤で語っていた、 「結婚すれば自由になれる」という遺言も、 ある意味ではミスリードだったように思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.07.03 08:20:07
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