Dear 昭和 第1章 ちぎれた夕陽 (2)
ちぎれた夕陽 (2) ヴ、ヴィ-ン! 原付独特のエンジン音を響かせて、少女たちが商店街の方向へ去ってゆく。 通常、商店街のゴミ置き場の清掃は、商店街の組合などで当番を決め、交代で行う。そういうものなのだが、マキは、後輩たちのバイト先を確保しようと考えていた。後輩たちの中には、父親が居なかったり、居ても生活に余裕が無く、荒れてた子もいた。二度目に商店街で会った時、「あの日のお礼だから」と、マキに誘われるまま入った喫茶店で 佑はマキと原付軍団の少女たちとの関係を、何故あんなに親切にしてあげるのか、そのわけを訊ねた。 「あの子たちに、せめて小遣い銭くらいあげたいと思ったのよ」しかし、ただ与えるのでは、後輩たちの為にならないし、彼女たちの自尊心を傷付けることは避けたかった。そこでマキは、たまたま面識のあった、商店街の世話役を務める会長に、事情を説明した。「報酬は少しでいいんです、なんでもやりますから、あの子たちを使ってくれませんか」マキの後輩を思う言葉に、心を動かされたのか、会長は意外にすんなり応じてくれた。「今のところ、商店街のゴミ置き場の掃除くらいしかないが、それでもやるかい?」マキは二つ返事で、掃除の仕事を感謝して引き受けた。 ここでマキの話しが終わり、二人の間に、温かな沈黙が、しばらく続いた。この店のBGMは、ほとんどカントリーだ。内装は、古民家の解体情報を入手して、オーナー自ら手に入れてきた。 古い木材で出来た、板壁や椅子、テーブル。薄い珈琲色の布張りの壁面に貼られた、 古いポスター。時折貼り替えられる度に店内の時は、行き来する。古いものばかりでなく、ライブのポスターが貼られてたりもするから・・・贅沢な時の流れに、声の葉を浮かべたのはマキだった。「なんで、あたし、あんたにこんなこと話しちゃったんだろう・・・?」「俺もだ・・・」「俺も何?」「なんでこの話し、聞いちゃったんだろうってことさ・・・」「だよね・・・」二人の・・・否、8割マキの笑い声が、小さな喫茶店に響いた。このとき佑はまだ、マキがモデルだとは知らなかった。こんなに若くてきれいな女の子が、後輩たちが、ひとり立ちできるまで、物心ともに、支えになろうとしてる。自分の今後を決めかねている、今の俺にはとても真似できないことだ・・・。 「ゴミ置き場の掃除だけじゃ、とても足りやしないなぁ・・・」マキは、注文したスパゲティが出来上がり、カウンターに置かれるのを見やりながら、つぶやいた。 初めて出会った時は、こいつ大丈夫かって思ったマキの印象は、この日から変わった。 ♪ マトリックスが選んだ昭和の名曲、今日はこの曲です ♪ 応援のポチをお願いします。 どちらも一日一回有効です。