もうひとつのラスト (23) 本当に、ラスト・・・
にほんブログ村 (23) 本当に、ラスト・・・「そうだ!この辺りは空気もきれいだし、騒音も少ないから両親を呼んで、一緒に暮そうかしら?そしたら修司さん、いつでもサンドイッチしてあげられるわね」お姉さん、それは何時頃から考えていたこと?それとも、今、思いついたこと? まあ、どっちにしても僕にとって、それは名案だけど・・・「そうね、それもいいかな?姉さんも私も親には心配かけたから、とてもね・・・」と、香瑠。「最高だね!今日はきっと何処かの誰かさんの計らいが強く作用しているんじゃないのかな?」 と、僕はまた父さんの笑顔を思い浮かべながら、そう言った。「きっとそうに違いないわ」香瑠と鈴香は、同時にそう言ってからまた僕をサンドイッチしてくれた。最高の一日!生きていれば、こんな素晴らしい事も有るんだ! それから4ヵ月後、本当に彼等はやって来た。香瑠のご両親と姉の鈴香である。彼等は東京の自宅を売り払い、ぼくと香瑠のアクア・プランツショップ『ウオーターサイド』から徒歩で10分ほどの所に運良く『売り家』を見つけて買い取り、少しばかり手を加えて暮らし始めた。近すぎず、遠くもない。丁度良い距離かも知れない。そしてさらに2ケ月が過ぎた頃、僕と香瑠は周囲の意見を聞き入れて、秋の気配が深まったある晴れた日、朝一番で区役所に行き、婚姻届けを済ませた。香瑠は「特には望まない」と言ったが、僕は反対した。父さんがここに居たら「きっと僕に賛成する」の一言に香瑠は頷いた。急なことであり、(3日前) 日曜日なのに、イタリアンレストラン「BIANCO」のオーナーは快く応じてくれた。 キャンセルを受け入れてくれたお客さんたちにも感謝!おかげで「BIANCO」を貸し切り、香瑠のご両親、 佑一、梨緒夫妻と香瑠2世、『CHARLEY』の伊藤夫妻、そして新しく『ウオーターサイド』のスタッフとなった鈴香さん、皆さんの祝福を受けて、少人数ながら賑やかな結婚の宴を開くことができた。これから先どんなことが有っても、そのすべてが大団円に終わることがなくても、これまでの、そして今日の恐ろしく高価な思い出が、これからの人生を生きてゆくエネルギーとなる、香瑠も僕もそう信じている。それから、生まれる時は別々だったけれど、『あの場所』へは一人では行けない。二人ともこれからは、一日たりとも離れてはいられない。そう思っているし、根拠など無いがそうなると確信している。「ねえ、香瑠。そうだよね」 と、僕。誰かの祝福を受け、杯を飲み干したばかりの香瑠は、なんの前置きも無い唐突なぼくの問いかけに、目を細め、笑みを浮かべてこう言った。「何のことだか解んないけれど、あなたと一緒よ!」彼女は充分解ってくれている。「10年前は、君に先を越されたから今度は僕が先に言うよ。愛してるよ香瑠。たとえ宇宙が終わったって僕は君だけを愛している」「その言葉、そっくりあなたにお返しするわ。愛してる。あなたよりも深くあなたのことを愛しているわ、修司・・・」ぼくらは人前も憚らず、長いキスをした。『永久の光となっても』 心の中でそう誓いながら・・・ ☆最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。 また、いつかどこかで・・・ 沢田 佳