漁師の娘のたわごと
千葉の房総半島、勝浦市で行われる「ビッグひな祭り」 遠見神社にて。こちらの巫女さんは、観光客やメディアの撮影用にこうしてずっと立っていてくれます。ところで、この後ろの1,200対もの雛人形、驚く事に祭り期間中は毎朝飾り、毎晩片付けているそうです! 2006年3月撮影私の父は北海道の知床・羅臼で漁師を何十年もしていました。家庭の事情で高校に進学したかったのにさせてもらえず、中学卒業と共に漁師の道へ。祖父も同じ羅臼の別の漁場で船頭をしていたので必然的に父親と同じ職業に就く流れになっていたのでしょう。そして父は、船頭になるにはかなり若いとされる40代で船頭となり、当時話題になったようです。それ以来、40年以上、毎年青森から出稼ぎして漁師として働いていました。父が船頭を任せられていた漁場は当時の羅臼町長、Yさんが経営していました。父の事をとても可愛がっていたYさんとはYさんが亡くなるまで家族ぐるみでずっとお付き合いがありました。当時、「地の涯に生きるもの」という映画撮影のため羅臼を訪れていた森繁久彌さんが映画撮影に協力してくれた町民のみなさんに感謝の意味を込めて曲を作ったそうですが、それがあの有名な「知床旅情」です。その曲が出来上がった時に、町長のYさん宅でそれを森繁さんがギター一本で披露したそうです。森繁さんとYさんはとても気が合ったようで(同年齢と言う事もあり)その後、親交も深まり、何度かプライベートで羅臼を訪れていたようでした。森繁さんが可愛がっていた俳優の竹脇無我さんも同行されていたようで、父の番屋で一緒に酒を酌み交わす記念写真は父の宝物のようで、実家に飾られていました(笑)。一度、森繁さんが筆を持って巻き紙にサラサラと詩を書いて”船頭さん、これ秘密だよ”とくれたこともあったようで、それが父の自慢でもあるよう(笑)。そんなわけで我が家には祖父、父と船頭が2人いたため出稼ぎから帰ってくる年末は賑やかなものでした。食卓には、毎日来る日も来る日も魚、いくら、刺身などの魚介類が並び、当時の私は”また魚~~~?!”とうんざりしたものでした。今となっては贅沢な不平でしたが。スパゲティとかハンバーグとか、そんな洋風な味付けのが食べたい~といつも思っていました。でも大人の今になって思い返すと随分と豪華な食卓でした、やはり。朝から焼き魚、昼は白いご飯にイクラの醤油漬け、夜も魚の煮付けとか、魚の入った鍋・・・冷蔵庫を開けると、どんぶりにピカピカ光ったイクラの醤油漬けがたっぷりと山盛りに盛られてありました。オカズのない時はとりあえず、それでご飯が食べれました。(大人になってからスーパーで、ほんの一握りのイクラの値段を見てアゴが落ちそうになりました・・・)鮭児と呼ばれる若いシャケ、1万匹に1匹くらいしか獲れない幻の魚と呼ばれているそうで、大人になってから料理番組などでその希少価値を知りました。父が”ホラ、これは鮭児といって珍しいシャケなんだぞ”と食べさせてくれたのを覚えています。出汁を取るのに最高級といわれている羅臼昆布。羅臼は母の生まれ故郷でもあるため、小さい頃から毎年夏休みには行っていましたが、岩場の波打ち際にたくさんの長い羅臼昆布が干してある光景は典型的な羅臼の風景でした。小さい頃は、いとこのお兄ちゃんとすぐ家の目の前にある海に(家から徒歩で何十歩という距離でした)マッチと新聞紙、お醤油を持って行き、岩場の陰に隠れているカラス貝やウニを水中眼鏡をかけて潜って獲ったものです。その場で火をおこし、カラス貝の口がパクっと開いたところへ醤油を垂らすとジュッと音がし、香ばしい匂いがしてそれがまた美味しいんですよ~。ウニは獲れたてを新鮮なまま食べるのですが、あの時に私はウニの美味しさを知ったように思います。子供心に何故か”ウニってプリンみたいな味がする・・・”と感じたのを覚えています。それだけ濃厚で甘みがあったのです、味に。羅臼のウニはエゾバフンウニと呼ばれていて、特殊な美味しさのようです。大人になってからいろいろなお寿司屋さんで好物のウニを食べてきましたが、未だにあの幼少の頃に体験した獲れたてのウニの味に勝るウニには巡り会ったことはありません。そうそう。この頃の羅臼には、スケソウダラの豊漁でがっぽり儲けた地元の人達の建てた”スケソウダラ御殿”と呼ばれる豪邸が建ち並んでいました。あの当時(70年代)で、地下のある3階建ての家とか2階3階にバストイレの完備された豪邸で、それは小さな小さな漁村の田舎町に似合わぬ豪邸でした。・・・ちょっと成金趣味っぽかったかもしれない(スミマセン)。祖父や父が北海道から年末に帰って来てまた次の年の春に出稼ぎに出発するまで寒く厳しい冬を越しますが、この時期には風物でもある”トバ”が倉庫の軒下にぶら下がっていました。生シャケを皮付きのまま、寒風吹き荒ぶ外に吊るして干しておきます。良い感じに乾燥したらそれを細長く、細かく食べ易いようにカットして食べるのですが、これがまたとてつもなく固くてねぇ。。。お酒のおつまみに最高のお魚ジャーキーです。*********************そういえば、父が小学生の頃のお話ですが。。。。学校のお弁当にいつも入っているお馴染みの魚やタラコ、イクラ。家でも毎日魚介類を食べ続け、お弁当もほぼ同じようなメニュー。さすがに父も飽き飽きしてきて、同級生の食べているウィンナーソーセージや玉子焼きが食べたくて食べたくて、羨ましかったそう。そこである日、同級生にお弁当のおかずの中身を交換しないか?と言ってみたところ、二つ返事で交換してくれたそう。向こうは向こうで、普段なかなか食べられないイクラや魚を食べれる訳だから大喜びだったそう(笑)。************************北海道はもちろんのこと、私の地元、青森も魚介類の本当に美味しい土地です。やはり寒い地方のお魚は一際、美味しいように思います。私が地元に帰ったらぜひ食べたいのが”貝焼き”。大きな空のホタテの貝ガラの上に、イカの腑と豆腐、ネギを乗せるだけ。調味料も水分も一切なし(場所によっては大根の薄切りが乗ることも)。それを下から火で炙っているうちに、イカの腑がほぐれてきてそれを箸でグチャグチャと混ぜていくうちにちょうど良い塩加減になり、熱々のところを頂きます。地方によって多少、バリエーションに違いはありますが日本酒好きならたまらない酒の肴だと思いますよ~。あとは「はかま田」さんのホヤの海鼠腸(コノワタ)の茶碗蒸し。これ、ビックリするくらいの美味です!これまで何度となく食べてきましたが、飽きるどころか食べたくて食べたくて、今でも思い出しただけでヨダレがでそうです。我が家が家系的にコレステロールが高いのはこんな食事が原因なのかも。。。魚卵、イカ、エビ、タコなどの魚介類ってコレステロールが高いんですよね・・・それにしても”のんべえ”には持って来いの食環境ですが、下戸な私は何だか損してる気がするなぁ。イカの塩辛と日本酒を嗜むなんて、ワインとチーズより粋な気がしませんか?(笑)。