カテゴリ:百人一首
小倉百人一首 五十六
和泉式部(いずみしきぶ) あらざらむこの世のほかの思ひ出に いまひとたびのあふこともがな 後拾遺和歌集 763 もういられないであろうこの世の外(に行った時)の思い出に もう一度だけあなたとお逢いすることがあればなあ。 註 後拾遺集に「心地(ここち)例ならず侍りけるころ人のもとにつかはしける」(具合が悪い時に、人のもとに遣わした歌)と詞書(ことばがき)が付いている。 重病の床に臥した作者が、長年の恋仲であった皇族・敦道(あつみち)親王に宛てた玉梓(たまずさ、歌によるラブレター)。 なお、この時の病(詳細は不詳)は、のちに治癒したという。 あらざらむ:「(もうこれ以上この世に)いないだろう」。文法的には、動詞「あり」の未然形「あら」に、打消しの助動詞「ず」の未然形の一つ「ざら」と推量の助動詞「む」が付いたもの。語源論的に見れば「あらずあらむ」が約まったものともいえる。 普通、この「む」を終止形と見て初句切れとする解釈が多いが、連体形と見て、「この世」にかかっていると見ることも可能と思う。前者は、「あらざらむ」だけで「生きていないだろう」の意味に解するが、やや無理があるように思う。 この世のほか:現世の外。あの世。 もがな:詠嘆を込めた切望を表わす終助詞。「~だったらなあ」。万葉集など上古の形は「もがも」。 【現代語訳(またはインスパイアド短歌)】 米川千嘉子 逢う苦しさ待つよろこびのない後世へたった一つの水晶の夜を お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年03月24日 18時45分08秒
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