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藤原惟規(ふじわらののぶのり) 辞世
都にも恋しき人のおほかれば なほこのたびはいかむとぞ思ふ 後拾遺和歌集 今昔物語 京の都には恋しい人がいっぱいだから なおもこの度は生き抜こうと思うのだ (浄土に行く前に、都にもこの旅は行こうと思うのだ)。 註 NHK大河ドラマ『光る君へ』13日放送。 作者は、紫式部の兄弟(兄または弟)。大河ドラマでは弟の設定。 姉妹・紫式部ほどのずば抜けた文才はないが、快活で人好きのする風流人であったと伝わる。演:高杉真宙。ナチュラルな演技が良かった。 越後守(えちごのかみ、勅命による新潟県知事のようなもの)として赴任した父・藤原為時の命に従い、おそらく役人実務見習いとして訪れた越後国で、間もなく病を得て急逝。まだ三十歳代だったという。大河でも、ややあっけにとられるぐらいの急な展開だったが、おおむね史実だという。 この一首は、今わのきわの病の床で自らしたため、「思」の字まで書いたところでこと切れたと伝わるから、まさに辞世中の辞世の歌。 父・為時が悲しみの中で末尾の「ふ」を書き足したという。 このたびは:「この度は(今回は)」と「この旅」を掛けている。 菅原道真(すがわらのみちざね)の名歌「このたびは幣もとりあへず手向山紅葉の錦神のまにまに」を踏まえている。全体としても、この道真の歌の華やかなイメージをそこはかとなく響かせているとも見える。 いかむ:「行こう」と「生かむ(生きよう)」の両義を掛けている。 「この旅は行こうと思う」の文脈の場合、「死出の旅だが、せめて魂だけでも都に帰ろうと思う」という、哀切悲愴なニュアンスも帯びる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年10月17日 07時02分00秒
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