カテゴリ:俳句ちら読み 逍遥遊
『プレバト』(大阪MBS制作、TBS系全国ネット)10月31日放送。
今回の兼題は「外食」。いかにも楽しげな掲題に秀句が多く、豊穣な回だった。おなじみのメンバーに加え、子育て中のママタレントが揃った。 千原ジュニア 二軒目へ行く汝帰る吾薄月夜 名人・千原浩史、心理描写すら感じさせる、相変わらず快刀乱麻の秀句。 「汝」、「吾」は、文献に残る中で最も古い、上代の第二人称・第一人称代名詞。古事記、日本書記、万葉集などに出てくる語彙。「吾子」、「吾嬬」などに残る。それを用いた格調高い言葉遊びになっている。 現代短歌の秀歌、永井祐「月を見つけて月いいよねと君が言う ぼくはこっちだからじゃあまたね」のシチュエーションをちょっと連想したが、こちらが青春ドラマだとすれば、千原の句はぐっと成熟した大人の世界になっている。 フルーツポンチ・村上健志 秋爽の皿やオリーブオイルの黄 イタリアかフランス料理の前菜のサラダの一皿か。観察眼の細やかな作者らしい、眼前一尺の光景に秋を見てとったおしゃれな逸品。 相席スタート・山崎ケイ 良夜なりすっぴんママのワイン会 幼子を旦那に預けての、ママ友たちとのつかの間の息抜きの楽しさが伝わる、なかなかの佳句。 「すっぴんママ」のナチュラルな感じが利いており、上五「良夜なり」が古典的でありつつ、ほのぼのとした素直な表現でいい。 今回は、3人揃ってお笑い芸人の、言葉に対する鋭敏なセンスが披露されて、さすがだと思った。 三倉茉奈 吾子抱きつ食むや秋刀魚は小骨ごと 原作「吾子抱えつまむ秋刀魚は骨多し」を、評者で俳人の夏井いつき氏が添削。諧謔味を生かしつつ、ちょっと重厚な感じになった。 「食む」は、「食う・食べる」の意味の古語。「ついばむ」(「突きはむ」の音便)や「むしばむ」(「虫はむ」)などに残る。 すみれ ビブの児と夫と秋夜の白ワイン 原作「秋の宵ビブとあなたと白ワイン」も悪くないとしながらも、夏井氏が添削。「ビブ」は乳幼児が使うよだれかけのこと。漂う幸福感がいい。 なお、「つま」はもと「偶(配偶者)」の意味なので、伝統的な短歌・俳句表現では「夫・妻」双方に用いる。cf.) 「稲妻」は、もと稲の夫の意味。古来、雷電が米を実らせると信じられていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年11月04日 06時20分47秒
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