化学調味料‥ではなく、科学調味料の話しをしたのは、
「所さん!大変ですよ」という、私の大好きな番組内だった。
芸能人格付けチェック‥という番組を知ってるかなぁ‥。
特番で年に2回ほど放送する番組である。
芸能人の皆さんが一流かどうかを、検証する番組である。
世の一流芸能人は、音楽や作法などの知識や立ち居振る舞いを、
本当に知っているだろうか、本当に出来るだろうか‥。
あらゆる分野に渡って、検証しようというものだ。
この番組内で一番よく出されるのが、食材である。
一流のワインの飲み比べとか、高い食べ物を見分ける目。
まぁ、それならまだ問題ないのだけど、
エビとザリガニとか、A5ランクのお肉と冷凍のお肉とか、
それを一流芸能人がまさか間違えるなんて‥と思うようなものを比べて、
それでも間違えてしまうということが、起こってくる。
それは‥目隠しをして当ててもらうもので、
視覚を奪った状態で、安い商品のほうには裏ワザを使ったりして、
触感だけを頼りに当てさせているのである。
ここで一流として残れる芸能人というのは、ガクトさんぐらい。
他の人は、次々に脱落していく。
そのガクトさんも、盆栽の見極めには焦ったという話しを、
後日淡々とだが話していた。
最後には芸能人の「そっくりさん」扱いされたり、
「映す価値無し」とされて、テレビから消されてしまう人も居る。
ここで思うのは、食べるという行為が食材だけでないということ。
味覚のみならず、視覚や聴覚等々色々な五感を使って、
食材の美味しさを感じているということである。
ディレクターの目の前には、どう見てもそうめんが用意されている。
実際、めんつゆを付けたそうめんだ。
特殊なゴーグルを付けてそのそうめんを覗くと、
なんと!そこにチャーシューとネギが乗っているのである。
いやいゃ~、そう見えるからといって、味がラーメンになるなんて、
有り得ないよねぇ‥。
ところが、ところがである。
ディレクターは「ラーメンだ!」と叫んだのである。
ゴーグル越しに見えるそうめんの味は、ラーメン味に変わったのである。
実はこれをクロスモーダル効果と言うらしい。
人が感じる味は、味覚だけで感じているわけでなく、
視覚、聴覚、匂いを全て脳でまとめて、
自分は今、何を食べているかを考えているのだ。
だから視覚を変えて目の前のそうめんをラーメンと錯覚させる。
脳の混乱を利用した方法なのである。
なぜこんなことを考えたのかというと、
考えたのは23歳の若い男性で、彼はクローン病という難病を持っていた。
その病気が発祥したのは18歳で、
それからアブラの多いものが食べられなくなってしまった。
ラーメンが大好きだった彼にとっては、重大事だったのである。
でも、この方法が将来自分のように食に制限がかかる人や、
高齢者の助けになる日がくるだろうと、彼は思っているのだ。
彼は今、奈良先端科学技術大学院大学の、学生さんである。
もう一つ番組で紹介していたのは、
聴覚を使ったクロスモーダル効果である。
二つのお皿にチョコレートをおいて、
それぞれ違った音をヘッドホンで聞かせて、味の感想を聞くものだった。
最初は不協和音‥低くて角張った音を聞かせて、
一つ目のお皿に乗ったチョコレートを食べさせる。
所さんは、ビターチョコだと言う。
次は落ち着いたロングトーン‥高くて滑らかな音を聞かせて、
二つ目のお皿に乗ったチョコレートを食べさせる。
こちらは甘くてクリーミーだと言った。
結局、一つ目のお皿も二つ目のお皿も、
全く同じチョコレートだと、所さんに告げる。
でも‥苦さと甘さ、別々のチョコレートに感じたわけだ。
成るほど‥こうなるとレストランの音楽も、
随分と味に関係してくることになる。
所さんが、楽しい会話をしながらの食事は美味しいと言った。
聴覚は料理の味覚さえ変えてしまうものだという証拠である。