南風一の世界

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• 今生の別れ

  　　　今生の別れ　　　南風一有限の世界に生きて先に去って行く者があれば生まれて来る赤ん坊もある死ぬことが分かっているのに病気の見舞いにも行かず今生の別れの機会を逃してしまうこともある遅かれ早かれいずれあの世で再会することだしとりたてて悲しむことでもない永別といったところで今生で何度でも体験することの一つに過ぎない大学生のころラブレターを書いて返事もなかったからそのまま忘れていた女性と１０年後に在るところでばったり再会したことがあるでもそんなことは稀昔好きで一度は結婚したいと思った女性と何回今生の別れをしたことか死別でしばらく会えないことくらいには驚かない （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/10/05

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• 秋雨

  　　　秋雨　　　南風一雨の雫の合間に秋祭りの太鼓の音が聞こえてくる雨というのに神様には休みはないらしい蕾がほころび始めた金木犀はきみが一番美しかったころに似て生涯において一番芳しい香りを放つ懐かしい思い出はいつでも季節の移り変わりとともにあるけれどそれから後はどうなったのだろう未来がないから美しいね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/10/05

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• きみと初めて話したときの思い出

  　　　きみと初めて話したときの思い出　　　　南風一きみと初めて話したのは暑くなる前の５月頃だった電車を降りて歩き始めるとすぐ前に見覚えのある後ろ姿を見つけたなぜこんなところをと思ったけれど俺が歩いているくらいだから何の不思議もなかった１００メートルくらい黙って後ろを歩いていたかな彼女はジーンズ地のスカートにトレーナー姿肩に本やルーズリーフが入ったバッグを引っかけていた俺は意を決してきみに声をかけた何と話しかけたか忘れたきみは驚いたような顔をしていたけれど同級生と知れたのかすぐに警戒心は薄れたようだった自己紹介をして歩くうちにきみの家の前まで来たきみは悪びれる様子もなく「もしよろしかったら　寄っていきませんか？」と俺を誘うのだった初対面でいきなり家に上がりこむのはどうかなと気が引けたが彼女の「構いませんから」という言葉につい甘えて上がってしまった彼女の家ではお母さんがにこやかに迎えてくれた嫌がる様子は全然なくてまるで俺が来るのを待ち受けていたような自然な素振りにはちょっとびっくりしたお父さんはリビングでテレビを見て寛いでいたようだったが俺が挨拶すると気さくな会釈を返してくれた彼女と話をしているといつかしら長居をしてしまったようで「夕食を食べて帰ったら」と言われたさすがにそれは厚かましいと思ったが彼女や彼女のお母さんが当たり前の顔して言うのでつい「ではご馳走になって帰ります」と言ってしまった彼女の家には随分長居をしてしまったようで外に出たときは辺りはもうすっかり暗くなっていた「いつでも寄って行ってくださいね」きみはそう言って見送ってくれたけれどそうそう毎日寄るわけにも行くまい彼女の家から俺の下宿まで２００メートルくらいしか離れていなかった彼女の家がこんなに近かったのに今まで気付きもしなかったとは驚きだった （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/10/04

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• 赤色の車

  　　　赤色の車　　　南風一ぼんやり交差点で行き過ぎる車を眺めていた赤色の車が来ないなあと思った「今度乗せて上げるから」彼女はそう言ったけれど彼女の赤色の車には乗らず仕舞いだった彼女の赤色の車の名前も知らない父親が新米教師に買い与えた車だろうけれどもう２０数年経っているからとっくに処分されたことだろう彼女のお父さんは何処かを手術したと言っていたけれど健在だろうか俺が出した手紙を読んで悲しんでいたというから悪いことをしてしまったそれもこれも彼女に原因があったのにそんなことにはまるで無頓着だった俺の思い通りにはなれないけれど好きでいてくれというそんな無理難題俺には分からなかった （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/10/04

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• 風の便り

  　　　風の便り　　　南風一日曜日だったかな電話があって「今から訪ねていいか？」と訊ねてきた「いいよ」と答えるとさっそくやってきたそのとき高三だったかなエコノミストという雑誌を手にして経済問題のことについてあれこれ質問してきた私は冗談半分いたずら半分にひねくれた見方を披露したと思う彼は高校生ながら持てる知識でよく考えを巡らせていた私の好きだった彼女の弟が彼だったのだが風の便りに法学部に進学したという話を聞いた彼女と親交が絶えてすっかり彼のことも忘れていたそれから数十年が経って法学雑誌に見覚えのある名前を見つけたそれは紛れもなく彼の名前だった官僚か司法関係職に就いたのかと思っていたら法学者になっていた両親が学校の教師だった彼女のお父さんは美術の先生でスケッチのとき生徒の上半身を裸にしたとかでＰＴＡから苦情が出たとか話していた彼女の夫は会社を退職して学者になるんだと言って大学院に行き直していたというから今は学者になっているのだろう金より生きがいどういうところに生きる価値を見い出すかなんて家族を含めた生活環境に大きく依存するのだろう法学論文にも書いた人の性格が色濃く出ていて彼女の弟の論文はあれこれ配慮の行き過ぎたくらい温厚なものであった数十年前に下宿を訪ねてきた彼女の弟を見送ったときのことを思い出して俺は何処で道を間違えたのかなとわが身を振り返った （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/10/04

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• きみだけ特別

  　　　きみだけ特別　　　南風一出入りの保険のおばさんは子どもが小学生というからまだ３０代の半ばくらいプロポーションがよくて顔も可愛いかな平凡な女性なんだけど色気があってなかなかと思わせる女性の魅力は容姿と身体と性格どれか一つが欠けていたって一つが圧倒的に魅力的だったらコロっと行ってしまう男は結構いるだろう俺がある女性を好きになったといっても星の数ほどいる魅力的な女性の一人に惹かれてしまっただけのこときみは俺以外の男を幾らでも惹き付けただろうし俺はきみ以外の女性に幾らでも恋することができただろうきみだけ特別俺だけ特別ってものはこの世に有り得なかったのかも知れない （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/10/03

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• 猿芝居

  　　猿芝居　　　南風一自分から離れておいて悲しんでいる悲しむくらいなら自分から離れなければ良かったのに他でもない自分が作った猿芝居に溺れてしまって去っていった男それだけの愛情しか持たなかった男に誰が未練なんか持つものか （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/10/02

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• 恋人

  　　　恋人　　　南風一台風が近づく夜でも駐車場に泊まった車は夜通しエンジンをかけて恋人との逢引を重ねる本当に好きな恋人同士なら毎夜でも逢いたいよね１６歳から２５歳まで好きとか一言も口に出さなかったから続いた関係ってものもあるのかな俺が思いつきでかけた電話の向こうできみは他の男のことを考えていたものかどうかそんなことは聞かない約束だったから最後まで俺たちは本心を語らなかったね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/10/01

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• 後ろ姿

  　　　　後ろ姿　　　　南風一きみの後ろ姿はすぐに分かるけれど俺の後ろ姿は自分では分からない「俺の彼女に手を出すな」と殴り込みをかけられなかったのはきみがまだ本当の彼女でなかったから家族のためにとか子どものためにとか家のローン返済のためにと言っているうちは自分の人生ではないきみのためにというのも自分の人生ではない俺の人生を生きるためにきみと再会できる日が訪れたらと思うんだけどきみも自分の人生を全うするために俺と再会できたらと思う日が来てくれたら楽しいことだね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/30

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• 猫かぶり

  　　　猫かぶり　　　南風一今から思えば馬鹿な二人だったと思う俺はなぜきみを好きだったのか分からないきみはなぜ俺に応えなければならないのか分からないそれなら「なぜだか分からない　だけど今だけはきみが好き（そのあとどうなるか分からない）」と言えばよかったきみにしたって「私はあなたを好きでない　なぜだか分からない　この先も好きになるかどうか分からない」と言ってくれればよかったお互いに本心を語ることなく嘘ばっかり言い合って猫かぶりをし合って最後に決壊してしまったね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/29

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• 球根

  　　　　球根　　　南風一今年もチューリップの球根をプランターに植える穴を掘って油粕を置いて地表から１センチくらいの深さに球根を埋める毎年秋に同じことをして毎年正月には土から芽が覗く毎年３月から４月にかけてチューリップは大きな花を咲かせる球根を植えるときは開花はこれから半年後と思い随分先の話しと思うけれど毎年気がついてみればもうチューリップは満開を迎えているこれから半年何を考えて生きるのだろうと毎年心細くなるけれど過ぎてみれば何を考えて暮らしていたのかいつも思い出せないでいる （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/28

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• 不適応症候群

  　　　不適応症候群　　　南風一向こうの道を自転車に乗った子どもとお母さんが行くお母さんは北を指差して子どもに呼びかけている（その方角からは音楽が漏れ聞こえてきて　運動会をやっているらしい）きみにもし小学生くらいの子どもがいたらきみも同じようなことをやっているのだろううぶな女学生だったからといっていつまでも女学生のままでは子どもを育てることはできない母になって子どもを育てるためにはお母さんに変わって行かなければ平和な家庭生活を築くことはできないだからいつまでも女学生のままでいたいと望むのは不適応症候群女学生のままのきみをいつまでも恋しく思い出している男も不適応症候群そんなことは分かっているけれど思い出の中のきみと俺はいつまでも青い姿のままにとどまっていたいね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/28

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• 彼岸

  　　　彼岸　　　南風一　　　　川の向こうはいつも可愛そうな国橋でも架けてこちらの水を送ってあげれば住みよい国になるこちらの物資を送ってあげれば豊かな国になるこちらがそう思うようにあちらもそう思って川の向こうは永久に不幸な国川にはこちらも向こうもないから本当は不幸な住人なんて住んでいないのだろうきみのことを可愛そうな境遇と思い込んでいつまでも後ろめたく感じていたそれなんてのもこちらの勝手な思い込みできみは本当は幸せだったのかも知れない （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/27

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• 空想の中でくらい

  　　　空想の中でくらい　　　南風一金木犀の枝に黄色の膨らみが付き始めた透明の光が差して昨日までの短パンとＴシャツ姿ではちょっと肌寒いただ遠いところへ旅行に出てたみたいに「ただいま。　随分ご無沙汰。　元気にしてた？」ってきみに電話をかけてそんな風に気安く話しても何のおかしいこともないような気がする日「それじゃ　何処で会おう？」「車で迎えに行くから」もうすっかりきみを迎えに行っている気分になって有頂天になっている俺あとはきみに再会したときの場面を想像してみるのだけど「全然変わらないね」かな？それとも「会わない方が良かった」？空想の中でくらい昔の姿で現れようよ （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/27

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• 未来

  　　　未来　　　　南風一無性にきみのことが恋しく思い出されるのはなぜだろう？今頃　昔のままのきみがいるわけじゃないしきみが酔狂に昔のことを思い出していることもないだろうきみと俺との間柄は成るようにしか成らなかったし出会ったときからそんなことは百も承知だったはず何十年もたってこんなはずじゃなかったと思う方がどうかしていたのだろう未来が読めていたのになぜあんな風に出会ってしまったのだろう？未来が変わるとでも思ったのかな本当はきみの目前まで駆け寄りたくて仕方なかったのにいつもきみから遠ざかってばかりそのくせいつも面と向かい合っていることばかり夢想した誰が邪魔したわけでもないのになぜまっすぐにきみの手を取りに行けなかったのかな （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/26

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• 取り柄

  　　　取り柄　　　南風一シャツの胸元から覗く深い谷間と乳房の盛り上がりそれは魅力に違いないけれどそれだけのこときみも女だったけどそれだけのこと女ということ以外に何の取り柄があっただろうたったそれだけのことで魅力がいつまでも続くものじゃないそんなこと分かり切ってたのになぜ好きになったりしたのかな （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/25

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• 耐用年数

  　　　耐用年数　　　南風一きみは俺のことなどもう何とも思っていないのかも知れない誰でも一時熱中することもあれば趣味的に好きになることもあるその相手がたまたま俺でありきみだった多分きみの隣りにいた友だちであってもおかしくなかった俺の隣りの友人がきみの恋人であってもおかしくなかっただからきみに執着するのはもう止そう俺の命はちょうど街中に組み立てられつつある高層ビルの耐用年数ほどもない高層ビルは３０年経っても何食わぬ顔して朝日を浴び夕日を浴びているだろうけれど俺はもう何処にもいないだろうきみだって何処で何をしているかきみも俺もそれだけのもの何もかも忘れて行けるのはビルより幸せだけどね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/24

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• 稲刈り

  　　　　稲刈り　　　南風一　稲刈りが終わった田んぼはすっかり見通しがよくなってなるほどここにも稲が植えられていたのかと気付く稲の刈り取られた後には空き缶やらビニール袋蛇の死骸やらそれまで稲に隠れて見えなかったものが姿を現す稲がいつまでも実っていれば目にするはずもなかったものごとそんなものはたくさんある白黒つけずに別れてしまったきみと俺もう一度会うことがあったら本当の想いを打ち明けることができるのだろうか今さら終わってしまった真実を披露してもらったところで蛇の死骸ほどの価値もないね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/23

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• 歩く

  　　　　歩く　　　　南風一戸外は秋きみへの想いを鎮めるために歩くすたすた　すたすたとぼとぼ　とぼとぼホップ　ステップ　ジャンプきみへの想いを忘れるために歩くすたすた　すたすたとぼとぼ　とぼとぼホップ　ステップ　ジャンプ （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/23

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• 秋の一日

  　　　秋の一日　　　南風一乾いた風が吹いて陽射しは明るく道行く多くの人はまだ半袖の服冷んやりした空気にいつまでも夏じゃないんだよと季節に置き去りにされたようなはぐらかされた気分になるもう二十数年も前駅までの道のりは谷あり岡あり畑あり雑木林あり道沿いには八百屋がりんごや梨を並べていて自転車でその前を横切るときつい立ち止まってしまった休日の午前に足を伸ばして駅前通りまで行けば道が歩行者天国になっていて沿道はテントを張った露天街に早代わり新米　取れたて野菜秋の果実　新酒何処もかしこも取りたて尽くめ　もぎたて尽くし酔っといで食べといでと呼び込み声も勇ましいそうして天の高さを実感した秋の一日まだ家族連れやカップル老若男女で賑わう駅前通りを後にするまたアップダウンの畑の間の道を縫って家に辿りつく人恋しくてきみに電話して「泊まりに来ない？」と誘うきみは色々理由をつけて拒絶するけど本当はもう少し強くプッシュしてくれればという気持ちがほの見える適当なところで切り上げて受話器を置くあれ以来かなきみに電話していないのはもう電話番号も忘れてしまった （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/23

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• 特効薬

  　　特効薬　　　南風一１位を確信したウサイン・ボルトがゴールの手前でスーッとスピードを緩めて流すように毎日仕事を流しておれば一日はすぐに過ぎるただ仕事に明け暮れて家に帰れば飯を食ってただ寝るだけ時間がないから何をしようかと悩む暇もないだからときたまベルトコンベアーに乗った部品を思い浮かべる部品はやがて完成品になるのだろうけれどそこまで見届けることもないから自分の分担がうまく終われば後は野となれ山となれ（それから後のことなど何の興味もない）そんな風に暮らしておればきみのことを考えることもないから心は平和どんな薬よりもよく効くね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/22

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• 休日

  　　　休日　　　南風一休日といってもきみが何をしているのか想像もつかない子どもがいたなら高校生か大学生くらい進学のことや就職のことであれこれ気をもんでいるのが関の山女性にとって恋愛はよき伴侶　よき子孫を残すための生殖本能に過ぎないのだろうけれどそれだけじゃ夢も何もあったものじゃない女が男に夢を抱くことはないのだろうけれど男は女に夢をいだく素っ裸にしてしまえば女に女は変わりないはずだけど自分が恋した女は特別と思い込んでしまうそこで間違ってしまって一生を棒に振る男が跡を絶たない本来ならば世界を股にかけた冒険家になったかも知れないのに何の害悪も与えないかわりに去勢された家畜に成り果てるいやなに自分のことを言ってみただけさ （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/21

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• 驟雨

  　　　驟雨　　　南風一雷が轟き突然の驟雨こんなときに外出していた日には軒下でもあれば逃げ込むこともできよう木陰でもあれば多少の難を逃れることもできよう（といっても所詮気休め程度）驟雨の度思い浮かべるのはきみのことちょうど駅から降りたところで土砂降りに遭ったきみ髪からセラー服、スカートまでずぶぬれになったきみセーラー服はぴったり身体に貼りついて胸の膨らみは露わになってスカートから流れ落ちた雫が白い脚を流れ落ちる「さあ　早くこっちに来て。　俺の部屋で雨宿りすればいい。　しばらく待てば　雷も通り過ぎるだろう」タオルを受け取ったきみは顔と髪を拭く濡れた服をどうしようかと思案していたので「さあさあ　風邪を引くからその服もさっさと脱いだ」きみはちょっとはにかみながらセーラー服とスカートを脱いで下着姿になった下着も濡れて透けていた「さっさと下着も脱いだ」きみはしぶしぶ下着も脱いで素っ裸になった空想はそこまで行くのだけれどさてそれからきみと俺はどうなったのかな？ （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/21

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• ばら色の人生

  　　　ばら色の人生　　　南風一大学生になって下宿生活を始めた近くに銭湯がなかったので大家さんの風呂を使わせて貰った３０年前とはいえ風呂が２日に一回というのにはびっくりした風呂は毎日入るものと思っていたので東京というところはそんなものだろうと思った毎日三度の飯を食えて風呂に入って安らかに眠ることができればまずは成功の人生それに加えて恋愛をして好きな伴侶を得てたまに気の置けない友人と一時を過ごすことができればその人の人生は大成功かな人生のバラ色というのはこんなに簡単なことなんだけど単純すぎてすぐに忘れてしまっている （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/20

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• 今なら

  　　　今なら　　　南風一「今なら」ということはたくさんある今ならきみに会える今なら腰を落ち着けて勉学に励める（かな）今なら冷静にきみと話せる今ならきみが望むところに行ける今ならきみが望むなら毎週でも会いに行ける（かな）昔はなぜあんなに不自由だったのだろう思い通りに行動したら何かが壊れる（そんな脅迫観念をいだいていた）多分そんなことはありえなかったのだろうけれど気付かないうちにすべてが終わってしまったね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/20

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• 女

  　　　女　　　　　南風一図書館まで本を返しに行ったけれど図書館は休み回れ左して帰り道で信号に引っかかった高校・短期大学の校舎がある側からギターの形をした黒い袋を持った女性たちが横断歩道を渡ってきた先頭を歩く二人の女性は演奏会があったのだろうか黒いドレスを着ている中年だけど細面のスタイルのいい女性を眺めているとその女性も私の方を見返してきたうん　もし若かったらすぐにデートへ誘うんだけどな既婚者とてたまには女の切れ味を試してみたくなるのかな見つめ返してきた女性の眼差しはきらきら輝きを放って女として見られていることを知っていた （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/20

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• 魅力的

  　　　魅力的　　　南風一細身の身体に横縞のＴシャツとホットパンツ姿の女性とすれ違うそれは確かに若い女性でなければあり得ない体形そんな姿なら誰だって魅力的に違いない俺がきみに惹かれたのもそれだけの理由だったのかも知れないたったそれだけの理由というのも即物的過ぎてちょっと哀しいねでもそれ以外に何があったろう （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/19

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• 幸せ

  　　　幸せ　　　南風一後から振り返ればほんの一時に過ぎないけれどそのときはきみしかいないきみしか愛さない未来もずっときみに恋してるきみだってきっと同じ気持ちそう信じて疑わなかった年を重ねてみればそんなことはありえないと分かるでも一時そう信じて仲睦まじい時期を過ごした二人にとって幸せだった事実は消えようがないね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/18

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• 恋した娘たち

  　　　恋した娘たち　　　南風一恋した娘たちを頭の中に並べてみる細雪の美人姉妹のようにいずれも甲乙付け難いけれどそれでもやっぱりきみと彼女たちは何処で差が付いたのだろう？と思うきみとは電車に乗る駅が同じだったから何の努力をしなくても毎朝同じ電車に乗り合わせた肩や腕　お尻が触れ合うこともあったきみのお喋りが毎日聞こえてきたたったそれだけの差だけど毎日意識し合っていれば情だって自然に湧いてくるらしい「なぜ私なんかを？」と反問してきたきみに対する答えになっているかな （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/17

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• 夢

  　　　　夢　　　　南風一朝方　子どもの物音で目を覚ました時計は午前３時半いつもなら深い眠りの中ちょうど夢を見ていた場所はもうとっくに取り壊されてしまった高校の校舎に似て一番最初に就職した会社で先輩を送別するときに行った三井本館のようでもあり天井は高く二階から一階までがぐるりと見下ろせたなぜか大学の校舎の中を若い女性と歩いていた許婚のようでもありよく見たら今勤めている会社に５年ほど前に入社して来た女性だった（彼女とは親子ほど年齢が離れていたのに　　なぜ私の通った大学の中を仲睦ましく歩いているのだろう）（それに彼女は２年ほど前に結婚して今では一児の母親だった）そんなことには一切お構いなしに若い私は彼女と恋人気取りで歩いているそこで目が覚めたそんな夢も朝起きたときには全部忘れているのだろうけれど今回は運良くというか運悪く見つかってしまった自分がどんな夢を見て鬱憤を晴らしていたのかちょっと分かったような気がした （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/16

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• 秋

  　　　秋　　　　南風一季節は正確なもので暑さがぶり返したといっても雨雲に覆われればすっかり気温が下がってもはや夏が過ぎ去ったことを実感する大学生のころなら休日の昼下がり自転車ロードを通って街の本屋さんに出かけた　特に買いたい本があったわけではないから途中で靴屋の店頭に洒落たスニーカーを見つけて覗き込んだりクリーニング屋の前でジーンズにワイシャツ姿のいかした女の子が制服かワンピースを受け取って歩く姿にどきりとしたり時間なんて幾らでもあったから気の向くままに横道に逸れた裏道に入れば古本屋さんを見つけて店頭には１冊５０円の本が並んでいた時間の制約も何もなかったから暗くなって腹が減るまで外をほっつき歩いたそれから下宿に帰って侘しい夕飯を食べて寝た観念的な暮らしぶりだったから外は夢物語に溢れていた大学生にとって道行く人　店の人たち街を歩く女学生　サラリーマン　ＯＬ彼らのすべてが小説中の人物に見えた４年を終えても就職先が決まらずさて大学を出たら何をして暮らしているか全く想像がつかない成り行き任せ風任せ危ういけれど随分お気楽な日々だった （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/15

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• 記憶

  　　　記憶　　　南風一いつも思い出すわけではないけれど何かの拍子に思い出すことがある大学２年の夏だったかな家庭教師のアルバイトを始めた近所の中学生に下宿に来てもらって勉強を教えた二人のうちの一人の家は弁当屋をしていたそのせいでいつからかお母さんが弁当を届けてくれるようになったせっかく弁当を届けてくれるのに邪険に扱うわけにもいかずいつも部屋に招き入れて小一時間ほど雑談したある日友だちと新宿駅で待ち合わせした直後にお母さんに訪問されて本当に困った友人と約束があると言い出せず新宿駅に着いたときは約束の時間を１時間以上オーバーしていた友人は不機嫌そのもので「何にもなくても　教え子のお母さんと二人きりでいて　誘われたとでも言われた日には　退学ものだぞ」と忠告されたそんな意思など子を持つお母さんの胸のうちにないことは分かっていたけど今自分がその頃のお母さんの年齢を超えてしまって今ならどういう展開になったか分からないなと思い返しているあのときの中学生はもう４０歳前後お母さんの方は６０歳前後になるのだろうか名前も何も憶えていないし今出会っても分からないだろう （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/14

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• 呼び出し音

  　　　呼び出し音　　　南風一夜更けに雷が鳴って驟雨があったそれ以外は取り立てて何事もなく一日が過ぎた昔　その日がくるとちょっと緊張した電話が鳴るので出れば大抵無言で切られる「？」そしてまた夜中に鳴ったりするそんなことが何年か続くとよりによってこんな日に？もしかしてきみの怨霊かなと訝しがったもう終わってしまったこときみの誕生日だからといって俺に何ができただろう今はもうそんなことも忘れていることが当たり前になってきみから俺の存在俺からきみの存在ってものは随分遠くなってしまったね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/14

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• 気が付いたときには

  　　　気が付いたときには　　　　南風一運動会の季節がやって来て切り株だけの田んぼとそろそろ頭を垂れだした稲穂がまだ青い田んぼ一週間に一度は目にしていたはずなのに刈り取りされるほど稲穂は黄金色になっていたか憶えていないまだ穂が青い稲の高さは６０センチメートルいつの間にそんなに高くなったのか憶えているのは田植えをする前は確かに何もなかったそのうち田植えが終わったなと思っているうちに稲はもう６０センチメートルになっていた毎日当たり前にきみを見ていたのにきみがすっかり大人の女性になったことを知らずいつかしら気が付いたときにはきみはもう何処かにいなくなっていた （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/13

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• 木立

  　　　　木立　　　南風一木立に立つと枝がそよいで風の囁きが聞こえてくる葉っぱの隙間から木漏れ日が落ちてくる葉っぱと葉っぱが触れ合って木の囁きも聞こえてくる葉っぱが揺れるのは何処かへ行きたいからではない風に合わせてダンスを踊っているだけさ風が止まれば　風との戯れもそこでお仕舞いきみとのことを忘れないのは季節の風が俺の脳裏の襞を揺らすから季節の風に反応してきみは出会ったときの姿で踊りだすいつもは何処にもいない振りをしているくせに季節に合わせた服装で立ち現れるきみは何処からやってくるのかな？ （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/13

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• 恋しく思い出しているのは

  　　　恋しく思い出しているのは　　　南風一７才のきみが好き８才のきみがやっぱり好き１０才のきみを好きになり１２才のきみがやっぱり好き１３才のきみが好き１４才のきみが好き１５才のきみが好き１６才のきみが好きになり１７才のきみが好き１８才のきみがやっぱり好き高校生までなら好きになったきみの年齢を知っていた大学生からあとは好きになってもはっきりした年齢は分からない部活が引けてか仲良く帰る中学生のカップル姿を見かけて中学生というのは　ああいう年齢をいうのだとつくづく思う俺が好きになったのはその時々の女の子俺とそんなに年齢が違わなかったそれなら今好きになる女の人だってそんなに年齢の違わない女の人のはずなんだけど恋しく思い出しているのははるか昔の年齢のかけ離れた女の子もう姿が変わることがないから安心して恋しているのかな （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/12

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• お天気地図

  　　　お天気地図　　　　南風一お天気地図を見てきみのことを思い出した向かいの県でも良かったはず向かいの一つ向かいの県でも良かったいや向かいの隣りの県でも良かったそれなのになぜきみはそこに生まれたのだろう？きみが生まれるべきはもっと他の土地だったかもしれないそしたらきみと俺が出会うことはさらさらなかっただろう生まれた土地しだいで生涯出会うはずもなかったきみと俺出会えたけれどすぐにすれ違いになったことをそれでも喜ぶべきか運がなかったと悲しむべきかお天気地図の土地の数だけある出会いと悲しみ （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/11

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• 秋日和

  　　　秋日和　　　南風一学生時代にはあんなに時間が進まなかったのに過ぎ去ってみればなぜあんなに短かったのだろうと思う時間なんて掃いて捨てるほどあったからむしろきみに会えない日々が続くことにストイックな喜びすら感じたいつでも３両目の電車に乗りさえすればきみと出会えることは分かっていたのに何を恐れていたのかな？余りにも早く有頂天の境地に陥ることになんとなく漠然とした不安を感じ取っていた電話ではすぐ面前にきみがいるように何でも話せたのに毎日きみが乗る車両とは別の車両に乗った通学途中ではきみと話せないそんな風に決めてしまったのはただ臆病だったせいかな （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/10

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• 胸元

  　　　　胸元　　　南風一私から受け取った発注書をバッグにしまうとき胸元から白い肌に浮かび出た青い血管がはっきり見えた血管の先に服の奥に隠れた乳房が想像できた今日は特に胸元を隠す仕草をするわけでもなく気を許すところがあるのかなと思うもしここで胸元に手を突っ込んで乳房を揉んだらどうなるかな？と考えるいつもにこやかなセールスレディの顔を眺めながらありえないねと思う「なかなかいい乳房ですね」と言うのかそれとも黙って服を脱がせて抱きつくのかそんな場所でもないしそこまで進める時間もない結局中途半端になって理由も何も立たない彼女だって取り繕いようもないそんなことを考えながらお礼を言われたらもう話すことがなくなったので彼女を見送った若い女性と二人きりで向き合っているとろくな妄想しか浮かばない （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/09

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• 空に立つスイカ

  　　　空に立つスイカ　　　南風一さよならして１年と半年早すぎたというべきかそれとも遅すぎたというべきかどんな風に吹かれてかきみが俺の実家に電話してきたのはどんな理由があってか姉から知らされたときは「何を今さら」と思ったそしてそんなことも忘れてしまった今日仕事からの帰り道に南の空にスイカを真っ二つにしたような月を見た左側の半球がきれいに欠けたスイカが立つはずないけれど真っ二つにされたスイカは立っていたそれできみのことを思い出したきみは多分晴れて教員になれたから俺に電話してきたのだろうと思ったきみと俺の恋愛ごっこなんていつでも忘れられる頭で解決できる程度のものだったのさ今きみが俺とのことを思い出す日なんて３６５日の何処にもないだろう （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/08

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• 心のおもむくまま

  　　　心のおもむくまま　　　南風一何の変哲もない川をじっと覗き込んでいる初老の男が一人開かれた水門を通り抜ける水は渦巻いて様々な文様を作り出す浮き草や藻が流れ　亀が立ち泳ぎするじっと見ていても　ぼおーっと見ていても見飽きることはない俺は暇ができたら散歩に出る目的はないけれど歩くことは気持ちいい小さい頃　日がとっぷり暮れて母から呼び戻されるまで外で遊んでいた楽しさに通じる無邪気な楽しさを封印してしまって何十年になるかな好きだった女の子に感情のおもむくままいたずらしたりおっかけっこをしたりそれから高校生のときは何の意味もない受験勉強という理由を付けてきみのことを忘れようとしたただ身体を動かすのが心地いいから手や脚を振って歩くただきみのことを恋しく思うからきみに接するそんな当たり前の感情にいつから従えなくなったのかな？ （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/07

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• 秋

  　　　秋　　　南風一ツゲは親木が枯れても根元から枝を伸ばした子木が元気に育っている傍ではツゲの親木が枯れてすっかり日当たりが良くなったのでラベンダーがたくさんの花を付け始めたそれまで当たり前のようにあったツゲの木が消えると景色も一変してツゲの木がない方が見通しが良くなって良かったかなと思ったするそうやって季節も木も変わってゆく何も人間だけじゃない年老いて死んで行くものがあって新しい生命が育ってゆく （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/07

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• 秋の味覚

  　　　秋の味覚　　　南風一早いところではもう稲を刈り取ったらしく田んぼに残る切り株から青い葉が顔を覗かせているばらばらに裁断された稲の切れ端からぷーんと甘い香りが漂う昔　父に連れられて祖父の田んぼに稲刈りに行ったとき谷に下りていくまでの道や畦にイチジクの木が何本も植えてあった木にはイチジクの実が鈴なりだったイチジクの食べ方を父に教わってそれから何個でも食べたイチジクは無尽蔵だった好きなだけ食べることができたきみにだって昔なら好きなときに電話をかけることができたいつでも電話口の向こうにきみの声を聴くことができたどちらも懐かしい楽しい思い出田んぼやイチジクの木が消えてなくなってもイチジクの味を忘れないようにきみの声を聴けなくなってもきみと話したときの楽しさを忘れない （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/06

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• 未来

  　　　未来　　　南風一きみと待ち合わせしたとき未来の責任など思いも及ばなかったきみを拘束した男どもだってきみのことに当座の興味を持ったこと以外に何の考えも持ち合わせなかっただろうそれからきみと俺の間に吹き始めた隙間風など誰の頭にも存在しなかっただろう誰かに責任があったのだろうけれど今となっては責任をとるべき者は何処にもいないきみと俺の３０年後を予想したことはなかった１年後すら予想できなかったそれから３０年間の未来を歩いてしまったけれどやっぱり今も３０年後の未来は分からないきみと再会しているかもしれないそれとも未来に翻弄され続けた男はとっくに地上から消え去っているのかもしれない （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/06

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• 終着点

  　　　終着点　　　南風一川の終着点は　海それなら　きみの終着点は？もっともっと素敵なきみに出会えると思い込んでいたけれどやっぱり思い描いているのは出会ったときのきみの姿なかなか終着点にたどり着けないね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/05

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• 秋はいつも

  　　　　秋はいつも　　　　南風一秋の虫が声高に鳴いて日の沈んだ後の風は懐かしさを運んでくる季節はいつも新しいけれど秋はいつも変わらない昨年の秋も１０年前の秋も３０年前の秋もすべて一直線に並んでいるだから秋の中にいるきみの姿も変わらないこれからあの校門に行けば約束したとおりにきみが待っていて今度は二人だけで何に気兼ねすることなく気ままに歩けそうな気がする （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/04

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• きみにとっては

  　　　きみにとっては　　　南風一入社して３年俺にとってはただ退屈な毎日だった毎日満員電車に揺られて会社に着いたら判で押したような仕事をしてチャイムが鳴ったら先輩たちの顔色を見てそそくさと会社から逃げ出すきみにとっては結婚相手も含めてそこにしか人生はなかったろうからいつ顔を会わせてもにこにこしていた今から思えば女性たちはなぜあんなに優しかったのだろうと思ういつ辞めようかとそんなことばかり考えていた俺は決して愉快な新入社員じゃなかったろうきみがどんなにはしゃいでうれしそうに振舞ってくれたって俺の心は晴れなかったそれから２０年が過ぎて結局心が晴れるような職場は何処にもないことを知ったそれならきみをもっと喜ばせてあげればよかった一回きりの人生だったのにね （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/03

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• 昼下がりに

  　　　昼下がりに　　　南風一秋の日差しを浴びて昼下がりの人っ子ひとりいないビルの谷間に迷い込んだそんな懐かしい風景に出くわした日にはすぐそこにきみが現れ出てきそうな錯覚に襲われるもう何十年も前のこと驚いたような顔をしてそのくせ出会えることを予期していたかのように全身からうれしさをほとばしらせているそんな姿をしていたら俺を好きなことがばれてしまうのにそこまで無防備になれるものかな俺は今でも冷や冷やした心持になる明るくて屈託なくてすぐ目の前に笑い声が響いてきそうな気がするきみはそんな女性だった （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/02

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• きみに会えなくなって

  　　　きみに会えなくなって　　　南風一ほんの１年半のうちにきみがいなくなって俺は大学生のころから住みなれた街を離れるきみはどこへ行ったかそれは１年半前きみが言いたかった台詞に違いないきみのところだけ最後の挨拶回りに行くこともなく俺は会社を去った大学生のころ学籍番号が一つ前だった友だちの名前を名乗ってきみの名前を伝えた「もう退職しましたが」「・・・・・」きみが俺から見舞われたパンチをそのまま二倍返しにされた気がした「よろしければ　連絡を取ることはできますが・・・」「お名前は　そう読むのですか？」（電話の相手は　俺が誰なのか察知していた）「いいえ　結構です。では」がちゃりと電話を置いてため息を付いたきみは俺がきみを好きだったことを知っていた俺が先にきみを好きになったのではないきみは俺に出くわしたときはいつも態度が大げさ過ぎたそんなに感情をあらわにしなくても俺には十分伝わっていたのにだけど　だからと言って何ができただろうきみもそんなことは百も承知のくせに俺に好意を寄せてくる更衣室から出たところでエレベータの中であんなに何度も顔を会わせたのにきみの下の名前を知らなかったそれであんな軽口を言い合っていたなんて随分薄情な男もあったものさ （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/09/01

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• 恋人の墓石

  　　　　恋人の墓石　　　南風一いつも散歩する道に墓地がある墓石には付近の民家の姓が彫られたものがある同じ姓の墓石が多いのは亡くなった人が多いとみるべきか随分昔からの旧家とみるべきか付近の家の多さからすると墓地の数は少ないと見るべきか死んでしまえば少ない数の墓石にまとめられると見るべきかいずれしろ墓石の下に眠る人たちが昔どんな顔をしてどんな暮らしをしていたのか知る由もない昔好きな人がいて夫婦になれたのかそれとも叶わなかったのかそれも分からない死んでしまえば好きだった人のことは分からないもちろん好きになられた方だって好きといわれた相手のことを好きだったのか好きでなかったのかそれも分からない死んだあとには生まれる前と同じように感情の痕跡は何もない死んだ人は昔から石だったのさ （詩集の宣伝）「青春１７切符＋１」１２月１４日発売。購入は、こちら（Amazon.co.jp）からどうぞ詩が良かったと思う方は人気blogランキング

  2008/08/31

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