内部統制とは、こういうことだったのか
内部統制とは、こういうことだったのか(國廣正、小澤徹夫、五味祐子) 世のサラリーマン経営者諸氏に読んで貰いたい本である。サラリーマン取締役はエスカレータ式に取締役になったに過ぎないから、会社法や金融商品取引法で定められている取締役の義務というものに極めて鈍感である。内部統制システムを整備するのは誰か?と問われれば、会社か従業員がやるんだろうと思い込んでいる。 ところがそれを整備する義務を負うのは、他ならぬ取締役なのである。たとえば旧大和銀行のニューヨーク支店で11億ドルに及ぶ損失隠しが発生したが、善管注意義務違反により損害賠償責任を問われたのは、内部統制システムの整備を怠った取締役ニューヨーク支店長であった。 金融商品取引法では、取締役が故意に内部統制報告書に虚偽記載を行ったときには5年以下の懲役もしくは5百万円以下の罰金を科されるが、同時に株主に損害が発生したときは損害賠償責任を問われる。加えて、内部統制報告書に虚偽記載があろうがなかろうが財務報告に関する内部統制システムの水準が善管注意義務の観点から不十分だったときは、会社法の株主代表訴訟で取締役の損害賠償責任が問われる。 ことほどさように内部統制システムの整備に向けて率先して取り組むべき者は、ほかならぬ取締役なのである。日本の上場会社の取締役はたまにはまともな本を読んで、自らの責務を果たされんことを願う。