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丁寧な暮らし

丁寧な暮らし

2019.09.17
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カテゴリ:おしん
今週は俊作あんちゃんとの雪山編です。
多少、心がほっとするところです。


俊作と松じいが、納屋から杵とうすをもってでてくる。
おしんが、まだ気づいていないうちに設置して驚かそうとしている様子である

おしんは、炉端に座り、釜の火のばんをしている。

餅つきの設置が終わり、二人は目で合図をした。
松じいがおしんを呼ぶ

「餅つきだぞ!」

その声におしんは、驚いて外に出た。
雪の中に、うすと、杵が用意されている。
目を輝かせるおしん。

「うすもきねもあるのか?」おしんが聞いた。

「松じいがな、おしんのために餅ついてあげたいって、わざわざこしらえたんだ」と俊作。
「いつもだば、正月だってもちなんかつかねんだども。彼岸になったときぼたもちにして、
 しがりさそなえてやりてえとおもって。もち米少し、かいてあったさけ。へっへ、、まんず
しるしばっかりだ。」松じいがおしんに話す。

「おれのために、うすも杵も、じっちゃん。」
「いやあ、こげなものはぞうさがねえんだよ、」そういって、杵を手に取る松じい
「なんでもできるんだなぁ、じっちゃんは。」おしんがじっちゃんにいった。
「せがれがちっちぇえときも、こうやって餅ついてやったもんな。」
二人が話している間、俊作は、ふかしたこめと、湯をとりに小屋に行った。
「ほら、松じい。」俊作が米を松じいに渡す。
「おう、」松じいは、それをうけとると、少しつまんで味見をした。
「ん、ちょうどいいわ」そういうと、もちを丁寧に、杵にいれた。
「ほい、おしん」
からのようきをおしんに預けると、松じいは杵をもった。
「んだば、おめえ、けえしてくれ、おれつくさけ。」と松じいが、俊作にいう。
俊作は、困った顔をして、手をふった。
「いや、お、おれ、、だめだよ。餅ついたことないから」と俊作。
「は、?なあんと、、東京育ちだば、役たたねえもんだな、んだば、おめ、つけ、おれ、けえすから。」
そういって、杵を俊作に渡した。
俊作が杵をもってうすに振り下ろす。
杵がうすから、外れて、うすのわきにあたり、俊作はバランスを崩して転びそうになった。

「うわっ、うわーおめ、だーめだ、おめ、はずして、まてまてまて、、」

そういって松じいは俊作から杵をあずかり、、杵に水をつけて、餅になじませながら、要領よくつく準備を始めた。
その姿を見ながら
「いやーー難しいもんだな、餅つきってのは。」と俊作。
「あんちゃんでもできねことあるんだな」とおしん。なんだかうれしそうだ。
そして、意気揚々と、松じいの前にたち、
「じっちゃん、おれがかえすから」
そう、松じいに言った。
「ふぇ?」
松じいが、おしんのほうを目を丸くして、みた。
「おれんとこだって、正月は餅くらいつくんだからぁ」
「そっか、よし!おり、」
松じいは、杵を振り上げた。
「よいしょ!」
するとすかさずおしんが、小さい手で、要領よく餅を返す。
よいしょ、と杵がおちるたび、おしんが、
かえしをする。

「はぁ、、うまいもんだな、、」
俊作がおしんに感心する。

おしんは幸せだった
生まれてこれほど満ち足りた暮らしはなかった
ここでは腹いっぱい食べていろんなことも教えてもらえた
そして何よりもあたたかい心に触れることができた
人はものよりも、心が豊かであれば幸せになれることをおしんは子供心に知ったのである。

小屋の中
丸められた餅が並んでいる。
「13、14、15.。15もあるぞ。」とおしん
「うん、これで、正月が来るな」と俊作。

後ろから、松じいがにこにこして何かを持ってきた
「正月にきれ!」
おしんは驚いて立ち上がった、
「俊作がとったウサギでこしらえたんだ。」
それは毛皮のちゃんちゃんこだった。
「こだい、大事なもの。毛皮は春になったら、村さ下りていろんなものと代えるんだべ。?
 大事なものなのに、、。」
「わらしのくせして、そげな心配するもんでねえんだ」
そういっておしんに着せてやる松じい。
「あったかーい。」嬉しそうににこにこするおしん。
「めんこいのー」そういって松じいは、毛皮のちゃんちゃんこをきたおしんの腹のあたりを
 ひもでゆわいた。
「なーーもう、俊作の借りなぐだてえんだぞ、俊作のはだぶだぶでみられねかったもんな。
着物も着たきり雀ではかわいそださけ、こしらえてやりてども、春にならねば村さおりられねからな」
おしんの姿をほほえましく見つめる俊作
「ええんだ、これでもまだまだつくろえば、着られるんだから。おれ、これもらっただけで、、」
おしんが、ちゃんちゃんこをぎゅっと握った。
そして、急に正座をして、松じいのほうに向いた。
「ありがとうございました」深々と頭を下げるおしん。
今度は、俊作に向き直って、「ありがとうございました」と深々と頭を下げた。
「おれ、幸せもんだー。あ、うっかりしてた、洗濯もの取り込むの忘れてた。」
おしんは、急いで小屋の外に出て行った。

俊作が出て行ったおしんを見ている。松じいも顔をほころばせている
「松じい、人のことはいえないな、」と俊作。
「いやぁ、おしんにはかなわねんだよ。孫娘みてえなきもちばしてな。」
うなづく俊作。
「だども、春は来るんだ、くるなっていったって、来るんだ。」険しい顔になる松じい。
俊作の顔も曇る

「ああ、おとうとよ、きみをなく、きみしにたもうことなかれ、、」
一面雪の中で、与謝野晶子の詩を暗唱しながら、洗濯物をとりこむおしん。
「あかんぼうはうまれたべかな?弟だべか、妹だべか」
おしんは、急におしんの家のことを思い出した。

おしんの家
ふじが、何かを隠し持って家に戻ってきた。
「どこさいってきた?」作造が聞くが、それを無視して母屋に向かおうとする。
「ふじ、米一升くすねて、どこさいってきたんだ?俺の目ば、
節穴だと思ってるのか?米一升といえば、みんなが何日くえるかわかってるのか?」
母屋に走っていくふじ。
「ふじ!」

ふじが走って仏壇の前にいく。
懐から戒名をとりだしてお供えする
ばっちゃんがおどろいておきあがる。
「ばっちゃん、おしんはとうとう、こだなすがたになってしまった。」
「なんのまねだ」と作造
「お寺さまいっておしんの戒名つけてもらった。米一升では、一番安いお布施だから
 お経しかあげてくんなかったけど。それもほんのおしるしでよ、おしんがかわいそうだ
でもそれもしかたねえべ、おれのきもちがつうじたら、迷わず成仏してくれる。」

「このばかたれが!」作造がふじをなぐる
「作造!」ばっちゃんがとめる
「死んだかどうかわからねえもんば、こんなこっぱいちめえに米一升も無駄にしやがって。
 米ば、どぶさ、捨てたようなもんでねえか。けえして来い、こんなもの!」
作造が戒名をふじにつきかえす。
ふじは、それを胸に抱きかかえ
「おしんは、まだ七つのおぼこだ。娘っこならともかくあのおぼこがなんのしらせもねえってことは
生きてる道理がねえでねえか。
 おれは、おしんの夢みるたんび、つらくて。
 せめて供養だけでもしてやらねば」
ふじが作造のほうに顔を向けた。
 「おとっつぁん、そんなに米が惜しいのか、んだからおしんが生きてると思いてえのか。」
「なんだと、、この」
作造が、ふじの胸ぐらをつかんだ。
ばっちゃんが止めに入る
「んだら、んだら、おれがくわねでもええ、おれ、日干しになったって、おしんの、、、」
ふじが戒名をだきしめて、涙ぐんだ。
作造は、怒って外に出ていった。
泣いているふじのうしろでばっちゃんが、ふじにはなしかける
「おふじ、作造だって、おしんがめんこいのにかわりはねえんだ。
だから、生きてると思いてえだけだ。」
「おれだってそう思いてえ、でも、、」
「春になって、雪、とけたら、何かわかんべ、、」とばっちゃん。
「おしんが死んでみつかったんだら、遅いんだ」
仏壇に戒名を戻すふじ
「極楽さ、いかれねでねか、、雪ン中でおしんがつめてえおもいしてるとおもうとおれ、、」
「ふじ、、」
「おしんは、つらい思いばっかりしてきたから早く極楽さ行ってらくさせてやりてえ」
「そいば、、母親の気持ちだべな、、」ばっちゃんが、ふじの後ろで言った。
「なぁおしん、早く極楽さいって、楽んなれ」ふじは、戒名を置いた仏壇に向かって語りかける

そとで作造がたっている
しょうじが、戻ってくる。
作造は、急いで目をふく。
「きよしんとこで、餅つき手伝ってきた。5升もついたんだぞ、うちはいつやるんだ?
もう正月だべ」

「やらね」

「なして?
 今年はもち米、いっぱいとれたでねえか」

「子供が死んだうちには正月はこねえんだ、だから、やっちゃならねんだ。」

首をかしげてその場を去るしょうじ。
まだたちつくす作造。

山の小屋の中
おしん、松じい、俊作が、座って飲み食いをしている
どぶろくをのむ俊作と松じい。
飲み干した俊作が歓声をあげる。

「おおーーー松じいのどぶろくもまんざらではないな」
「一年にいっぺんおむさけだ、大事に大事に仕込んだんだよ。」
そういって、俊作に酒をつぐ松じい
「おっとっとっと、、」そういってつがれた酒を飲む赤ら顔の俊作。
「ああ、いい正月だーはっはっはっは」松じいがいう。
「去年はお目とふたりっきりでよ、あじもそっけもなかったども。
 おしんのおかげで、餅つくきもちにもなってよ。」
おしんは、一生懸命お持ちを食べている。
「こげん、正月らしい、正月は、いやあ、おれも久しぶりだなー」
上機嫌になった松じいが歌を歌いはじめた。
「いやーらしょう、よーいこらまかーーせーこらまかせちゃよーーいしゃよ、
 まかせーやらんせーえーやーえーやーえーどー、、、」
松じいのうたをきき、下を向くおしん。
俊作がおしんが元気なくなっているのに気付いた。
「おしん、どした」と俊作。
下を向いたまま
「じっちゃんの歌、前によおくきいたから、、。」松じいが歌をやめる。俊作が心配そうにおしんをみる
「奉公してるとき、川でおしめ洗ってると、船ひいてる衆が。その掛け声きいてると、なんとなく悲しくなって うちさ、かえりてえ、この川ずっと上っていくと、うちさ、帰れるのにって。」
「帰りたいのか?うちへ」俊作が聞く
「心配してるんだろ、うちじゃ、、。」というと、おしんが首をふった
「年季終わるまでは帰らねえと思ってる。」とおしん。
「だども、奉公先では、、」と松じい。
「んでねえ、旦那さんもおかみさんも、うちさ、家帰ったと思ってるんだ。春になって帰ったら
 母ちゃんも父ちゃんも年季あけたから、帰ってきたと思うべよ。」
そうけろっといって笑うおしん。

「おしん、おめえは、のんきなわらしだ。いい根性してるわ、あっはっは」大笑いをする松じい。
おしんも笑っている。
そんななか、俊作だけがなぜか厳しい顔をしている

おしんが九九を言いながら、野菜を剥いている。
その横で小刀で仏像を彫る俊作。
「さざんが、9、さんし12、さんご15?」と振り向いて俊作に確かめるおしん。
「さぶろく18、さんしち21、さんぱ24、さんく27、観音様も春になったら村で
うるのか?」
「うん?いや、、」
「だら、なして?もう、いっぱいほったのに」
「供養だ。戦争で死んだ人たちのな、いや、おれが殺した人たちのだ。」
おしんは、手を止めて俊作の方をじっと見た。
「おしん、おまえはこれからさき、何十年も生きていくんだ。いろんなことがあるだろう。
 つらいこと、苦しいこと、嫌な奴にだって会う、
だがな、決して人をうらんだり、にくんだり、傷つけたりしてはいけないぞ
人を恨んだり、憎んだりすれば、結局自分もつらい思いをするだけなんだ、
人を傷つければ、それは必ず自分も傷ついて苦しむことになる。
みんな自分にかえってくるんだ。
もし、おしんが誰かを憎んだり、恨みたくなったときは、憎んだり恨んだりする前に
相手の気持ちになってみるんだ。
どうしてこの人は自分につらく当たるんだろう、、何か理由があるはずだ
それに思い当ったら、自分の悪いところは直す、でも、もし、おしんに悪いところがないのに
相手が横車をおすようなことがあったら、相手を責めずに憐れんでやれ。
理由もなく、おしんをいじめるやつは、きっと自分も不幸な人間に違いないんだ
心貧しくてかわいそうな人間なんだ。そう思って許してやれ。なっ。
今は判らなくても、おれは、ただ、おしんには人を許せる人間になってほしいんだ。
人を愛することができたら、きっと人からも愛される人間になれる。
そうすれば、心豊かに生きていけるはずなんだ
それだけは、覚えておくんだな。
おれは、おしんに字や算術を教えた
でも、そんなものいくらじょうずになったって、心が貧しければ何の役にも立たない
いくら勉強してえらくなっても、
それを使う人間がだめだったら、いくら勉強をしてもそれが仇になることだってあるんだ

やっぱり、おしんには難しいかな?」

まじめな顔でずっと話していた俊作の顔が少しほころんだ
そして、また、小刀で仏像をほりはじめた。

おしんには、俊作の言うことが良くは理解できなかった。
が、戦争で人を殺したことで、あんちゃんも死ぬほどつらいおもいをしているだなと思った。
そして、自分はどんなことがあっても人を愛することのできる人間になろうと、愛することの意味も分からず、心に決めていた
静かな雪の山のひだまりには、おしんの知らぬ間に、いつか春の気配がしていた。

あんちゃんが彫った仏像を小さいほこらにおき、じっと手を合わせるおしんであった。





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最終更新日  2019.09.18 16:53:34
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