即興小説 『さくらと野良猫』
この世の苦しみから逃れる為に女は桜咲く公園を歩いた。 小雨降る中、緑の木々と桜は春の美を彩っている。 女は思い出の場所を探して歩いた。 桜が雨の中満開に咲いている。 花を咲かせるおじいさんが灰を撒いたのだろうか? そのあたりの桜の樹や植物は青かびに覆われいた。 けれども、気にせずソメイヨシノは美しく佇む。 鶯が鳴く。小鳥たちも嬉しそう・・。 桜や木々を眺めていると、遠くに猫がいた。 女はおいで、おいでと手で招いた・・・。 すると、猫は来た・・・。 野良猫だ・・・どうみても・・・ クールに目つきは鋭い。 女と2メートルほどの距離を取り小雨の中こちらを見ている。 「お腹が空いているの? チョコレートがあるわ」 女はリュックからチョコを取り出し銀紙を剥く。 ひとカケを猫の手前にポンと投げる。 野良猫は、近づいて匂いを嗅ぐ。 お好みの香りではなかったよう。 残念そうな猫の顔。 そうして、女を見る。時々目を閉じる。 「まあ、残念、これって食べ物なの? もうちょっと違うものが食べたいわ」 「まあ、うちの飼っていた犬なら食べたのだけれど.今はこれしかないわ、残念!」 女は猫に言う。「あなたとわたしは同じよ、ひとりぼっち。じゃあね・・」 女はそう言って、野良猫にさよならを告げる。 猫はチョコの前で動かない。 「バイバイ」 すると、向こうから、トラ猫がこちらに近づく。 「なんだ、あなたひとりぼっちじゃなかったのね? よかった! 」 女は、猫に手を振り別れを告げる。 ちなみに、昨年12月に『猫屋太郎店』を キンドルダイレクトパブリッシングで出版しましたが、 ろくろく宣伝しなかったので、順位が随分下がってしまいました。 それは吉祥寺が舞台のお話でした・・。 それでは本日もありがとうございました! 皆様、今日も良い日をお過ごしくださいネ~