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カテゴリ:Figure Skating
ソルトレークシティオリンピックでの例の問題が起こったとき、アメリカのマスコミはロシアペアの着氷の乱れを繰り返し放映し、「こういうミスしたのに、こちらが勝った。これぞ不正の証拠」と騒ぎ立てた。その結果導入された新採点システムのもとでは、着氷のミスどころかコケた選手がコケずに演技をきれいにまとめた選手より高得点が出てしまう。プロトコルを見なければどうしてそうなったのか、ほとんど誰にもわからない。プロトコルはそれなりに筋はとおっているし、「演技・構成点」はジャッジの主観だから、バラツキがあっても主観の相違だ、といわれてしまえばそれまでだ。こんなにわかりにくくする意味はあったのだろうか?
この複雑な採点システムによって不正は防げるかといえば、答えは「そうとも言い切れない」ということになると思う。11人とか9人とかジャッジの数はやたら多いが、そのうちの何人かが示し合わせて「技術点」のGOE(加点・減点)を少しずつオーバーにつけていったり、「演技・構成点」で「不当に高得点をつけたり」逆に「不当に低得点をつけたり」といった点数の操作がある程度できるからだ。ジャッジによる点数のバラツキが大きくたって「この部分はジャッジの主観だから」と言われればそれまでだし、だいたいプロトコルに出されるジャッジの点数は「ランダムな順番」になっているから、誰がどのくらい高くつけたか、低くつけたか「犯人」の特定すらできない。 まあ、逆に全日本選手権の場合、ジャッジがお互いに示し合わせて、このぐらい、と調整している可能性だってあるわけだが。何しろMizumizuが見ていて一番「この順位は示し合わせてるでしょう」と思ったのはトリノ直前の全日本だったからだ。あれには落胆させられると当時に、スポンサーなしには成立しなくなったフィギュアの商業化の現実を見るような気がした。だが、スポンサーが付いてくれるようになったことは、選手にとっては基本的によいことだ。あれほど素晴らしい技を身につけた世界トップレベルのアスリートが食えないようでは、あまりに残酷だ。今は若い選手も半ばプロのしょうにショーに出ることができる。これは長い間、フィギュア選手の悲願だったはずだ。 さて、新採点システムの危険性についてはスタート当初から、ヤグディンなどの一流選手が懸念を表明していた。旧採点システムでは、誰が変に高い点をつけ、誰が不当に低い点をつけているか明らかだった。たとえば、伊藤みどりに対して徹底的に低い点をつけ続けたのがイギリスのジャッジだというように(苦笑)。ところが、新採点システムでは、12人いたら9人、10人いたら7人というようにランダムに点が抽出され、そこから上と下を切って平均点を出すから、誰がどんな点をつけたのかわからない。だから、全員ではなくても数人が示し合わせるか、あるいは暗黙の了解があれば、点数の操作はある程度可能なのだ。 このままで、果たしてファンはずっとついてきてくれるのだろうか? 国際スケート連盟はそのあたりのことも考えるべきだろう。 太田選手の単独3回転2度に対する減点も、2度目のジャンプが点にならないだけ、というのならわかりやすい。ところが、2度目の3回転ジャンプを転倒したことで、立ち上がったあとやってもいないジャンプの回数が余計にカウントされ、最後の3連続がキックアウトされたというのだから、まったく理解に苦しむ。つまり、ここに連続ジャンプは最大3回までというルールも絡んでくるのだが、「実際に」太田選手が行ったのは3回の連続ジャンプ。だが、転倒3Tは本当は連続ジャンプにならなければならなかったので、そこで幻のシーケンスジャンプ(連続ジャンプ)とみなされ、実際には3回しか連続ジャンプを跳んでいないのに、4回跳んだと見なされて、最後の3連続がキックアウトというわけだ。まったくワケがわからない。 コケてしまったジャンプだけを0点とみなし、ただ、トライしたジャンプの種類のカウントには入れておくということでいいはずだ。 1種類のジャンプを跳ぶ回数を制限するのは正しいと思う。そうしなければ、基礎点の高いジャンプだけ何度も跳んで点数稼ぎをする選手が出てくるからだ、だから、ある3回転ジャンプを2度単独で跳んでしまったら、2度目のジャンプは点数にならず、しかも3度目の同じジャンプのトライは、たとえそれを連続ジャンプにしたとしてもチャレンジできない、とすればよい。コケたとしても、それが2回転を跳ぼうとしてコケたのか3回転を跳ぼうとしてコケたのかはわかる(つまり2回転以上まわってコケているかどうかで判断することにすればよい)から、3回転を跳ぼうとしてコケた場合は、もう1度それをトライしてもそれはキックアウトする。それでいいのではないかと思う。つまり1種類のジャンプを2度だけトライできる、そしてそのうちの1回は連続にしなければいけない。浅田選手のように3Aが1Aになったら、それは1Aとしてカウントしているのだから、3Aのチャレンジはなかったことになり、もし望むならもう1度トライしてもいい。連続ジャンプの3回という制限は、「実際に跳んだ連続ジャンプの数」で数える。転倒してしまったジャンプは0点で、しかも1種類のジャンプの回数制限には入れるようにする。こういうルールでまったく問題ないはずだ。こうすればリカバリーのための無駄なジャンプのトライも十分制限できるはずだ。それなのに、2度同じジャンプを単独で跳んだからといって、そこに連続ジャンプの回数制限が絡み、太田選手のように関係ない3連続がキックアウトされるからややこしくなり、選手がしばしばこのルールでひどく減点されるのだ。バカバカしいにもほどがある。 それにしても女子フィギュアのフリーを6時半から9時すぎまで延々とやるとは… かつては、伊藤みどりがいたころでさえ、TBS系で4時半ぐらいから1時間弱放映するだけだったというのに。エキジビションのショーアップも凄い。オケも最初はその音にズッコケたが、今年は相当なものになってきた。ただ、選手は生の音に合わせて滑るのに苦労しているようすがありありとわかったが(というか、ぶっちゃけ、どんどん音楽とズレていって、最後はだいぶタイミングが違ったが・苦笑)。 この人気はいつまで続くのだろう。浅田選手より下は、世界レベルで図抜けた才能がないのが気になる部分ではある。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.01.10 04:42:19
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