<祝! 高橋大輔選手、世界歴代最高得点(四大陸選手権)の続き>
だが、高橋選手の快挙は素直に嬉しい。そして、彼のプロトコルを見ると、課題はジャンプでもスピンでもなくステップだということになる(大苦笑)。高橋選手のショート「白鳥の湖、ヒップホップバージョン」のストレートラインステップは、最高に目を惹く芸術性を備えている。にもかかわらず、レベル4が取れないというのは、レベルを取るための要素が何か欠けているということだ。だが、レベルを取るためのモーションを入れれば、あの「上半身と下半身が別々に動く」すばらしい振りは犠牲にする部分がどうしても出てくる。逆に言えば、振りに神経を使っているとレベル取りに必要な要素が飛んでしまうこともあるということだ。
ヒップホップということで、高橋選手は首を上下に動かしながら踊っているが、あれはスケート靴の細いブレードにのった状態でやるのは非常に難しく危険なのだ。首を上下に動かすと、自分の位置がわからなくなる。だからフィギュアスケーターは、首を回転させたり、ひねったりはするが、上下にはなるたけ動かさないようにしている。上下に動かしても直接的な点には結びつかない。だが、「ヒップホップ」を踊るためには必要な動作だ。
ここにプログラムの芸術性を追求するか、点数稼ぎを優先させるかのジレンマが出てくると思う。「白鳥の湖、ヒップホップバージョン」にモロゾフは振付師として強い愛着とこだわりをもっている。それは、「ポエタ(フラメンコ)」に対するランビエールの情熱に通じるものがある。この2つのプログラムは、他の選手のどのプログラムより密度が濃い。それをショートにもってきた高橋選手とフリーにもってきたランビエール選手。確率から言えば、長いフリーのほうがミスなくまとめるほうが難しい。
どちらにしろ、今回よりハッキリしたことは、男子に関しては、「世界選手権では自分のもつジャンプをミスなく決めたほうが勝ち」になるということだ(女子に関しては、そうとも言いきれないかもしれない。女子の採点のほうが、今年は男子よりもっとわかりにくい)。もっているジャンプのグレードに関しては、高橋、ランビエール、ジュベール、ベルネル、ライザチェックといった選手に大きな差はないから、全員にチャンスはある。今回高橋選手に「銀河点」が出たからといって、次の大会でジャンプにミスが出たら、どうなるかわからない。だが、どちらにしろ、今回の高評価は高橋選手(それに勝負師モロゾフにも)大きな自信を与えたことは間違いないだろう。
ちなみに高橋選手のショートはテレビで放映されなかったようだが、You Tubeで「2008
4CC SP」で検索すれば見られる。
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最終更新日
2008.02.16 17:58:33
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