|
テーマ:フィギュアスケート(3637)
カテゴリ:Figure Skating
プロトコルを見ると、高橋選手はジャンプとスピンの評価が高く、ステップには改善の余地があるという、苦笑ものの評価になることの昨日お話したとおり。では、今回4大陸選手権で優勝した浅田真央選手はというと、特にショートに関して、「ジャンプがとても悪い選手」ということになる。
え? と思うかもしれない。グランプリファイナルのときに、浅田選手は最初の2連続ジャンプであわや転倒かというお手つきをしたうえ、トリプルルッツが完全に抜けてしまった。今回は連続ジャンプも決めて、トリプルルッツはステップアウトしたものの、ちゃんと入った。ところが、点数を見ると、グランプリファイナルのショートが59.08、今回の4大陸が60.93とたいして差がない。しかも、最初の2連続ジャンプだけについていうと、なんとひどい失敗をしたグランプリファイナルのときの点数のほうが、今回のきれいに降りた(ように見えた)連続ジャンプより点数が高いのだ! http://jp.youtube.com/watch?v=Xs5EGzkfl7c ↑ これがグランプリファイナルでの浅田選手のショート。最初の連続ジャンプで両手をつき、モロに演技の流れが止まってしまっている。このときの連続ジャンプの点数は基礎点10.5からGOEで引かれて、7.7点。 http://jp.youtube.com/watch?v=utzKadsWkUY ↑ これが今回の4大陸のショート。最初の連続ジャンプの点数は、なんと、たったの5.71。グランプリファイナルのひどい失敗ジャンプより2点近く低いのだ!! 2点ですよ、2点! なぜ? Mizumizuブログを読んでいる方ならわかるだろう。例によって「回転不足によるダウングレード」を食らったのだ。基礎点が3F+3Lで10.5点のはずが、3F+2Lの基礎点7点しかつかず、さらに、「回転不足」ということでGOEでも-1から-2をつけられ(つまり、2回転ジャンプの失敗と同じとみなされてるということだ)、結果5.71点。これはトリプルルッツ単独の基礎点6より低い。トリプルフリップ単独だって5.5点だ。 この2つの最初の連続ジャンプを見て、一体どちらがいいと思うだろう? 明らかに4大陸選手権だ。ところが、「回転不足」のツルの一声がかかると、基礎点を下げられ、GOEでも引かれてしまう。3回転ジャンプを回転不足で降りたといっても、2回転以上は回っている。2回転ジャンプの失敗ではないにもかかわらず、この採点システムでは自動的に回転不足は1つ下の基礎点のジャンプの失敗とみなしてしまう。そのうえ、今年から「回転不足を厳しくジャッジする」ことになったから、ますます、減点に拍車がかかった。 しかも、その回転不測判定(45度以内の回転不足ならば、一応大丈夫だということになっている)が実に曖昧で、大会(というか、つまりは判断する担当者)によって違う。Mizumizuはグランプリファイナルのフリー、それに全日本でのフリーの浅田選手の最初のトリプルフリップ+トリプルトゥループは「回転不足だ」と思った(2007年12月17日の記事の最終段落参照)。今回は前のこの2つの大会よりはきれいに2つ目のトリプルトゥループを降りていたように見えた。だが、前の2回の大会ではダウングレードなし。つまり回転不足判定はされなかった。ところが、今回だけは、プロトコルを見ると、トリプルトゥループは回転不足と判定されて、ダウングレードされている。前回がラッキーだったというべきか、今回が厳しかったというべきか。 とにかく、こんなテキトーな判断でジャンジャン減点していいのか、とどうしても思う。ダウングレードしたうえにGOEでも引くというのは、上に述べたとおり、まったく不合理だ。2回転以上は明らかに回っているジャンプを、なぜ2回転の失敗と同等に扱うのか。 回転不足は着氷してから回っているから、きれいな着氷には見えない。だからGOEでだけ引けばいいのだ。カメラの位置や大会の担当者の主観によって変わってしまうような回転不足判定に、これほどの点を絡ませるのは公平性の観点から見て、あまりに危険だと思う。 浅田選手という人は、不思議なことに、3F+3Lの確率は、フリーの後半に入れてるものが一番高い。普通は体力が落ちて難しくなるのに、フリー後半で入れる3Lはちゃんと回っており、ダウングレードされることはほとんどない。ダウングレードになるのは決まって、ショートの連続ジャンプ、フリーの最初の3F+3T。ときどきダウングレードされるものとしては、フリーの後半の2A+2L+2Lのどれかだ。ということは、十分にスピードがついた状態で跳べば、3F+3Lは問題ない、ということかもしれない。 とにかく、今年のショートの連続ジャンプは浅田選手にとって悪夢のようになってしまった。よいできだと思った4大陸でこの判定というが象徴的だ。 このショートの最初の連続ジャンプを決めるために、浅田選手は、タラソワのもともとの振り付けをほとんど省いてしまっている。 http://jp.youtube.com/watch?v=qJPQCMeoJmM ↑ こちらがシーズンはじめのショートプログラム。Mizumizuは出だしの回転動作と腕の表現、それと、ルッツを跳んだあとのすばやい回転動作を拙ブログで絶賛した(2007年10月7日の記事参照)。 ところが、このオリジナルの振り付けどおりやったのはカナダ大会まで。フランス大会からは最初の振り付けを全部飛ばし、ルッツのあとの回転もスピードを抑えて、回数を少なくしてしまった。プログラムの密度を犠牲にしても、なんとかジャンプを跳びたいという浅田陣営の判断だろう。グランプリファイナルでは手の振りが少しだけ入るが、今回はそれさえ飛ばして連続ジャンプに入っている。つまり、最初の出だしは単なるジャンプの助走になってしまっているのだ。それでも、実際、最初のころよりは、点数が出るようになっている。こんなに振り付けを省いてしまっても、点は高くなるなんて、いかに今の採点システムがジャンプばかりに重点がおかれているかを物語っているようで悲しくなる。 選手の演技が、どんどんつまらないものになりそうだ。ジャンプの着氷さえしっかり決めれば。加点もついて点が出るのだから、そうするのは当たり前になるだろう。そして、若い選手に有利になる。若い選手がジャンプだけで勝ち始めると、あわててルールや採点基準を変える。そして、皆が対応してきたころ、また変えて混乱に陥る。国際スケート連盟は、いったい何度、こういう轍を踏んだら気が済むのだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.02.17 15:57:26
[Figure Skating] カテゴリの最新記事
|