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テーマ:フィギュアスケート(3637)
カテゴリ:Figure Skating
四大陸選手権、安藤美姫選手は3位に終わった。実験的に入れると入っていた4回転サルコウは残念ながら失敗。また、フリー、ショートとも最初のルッツ+ループの連続ジャンプがうまく行かなかったのが痛かった。大技を入れることのリスクがモロに出た結果だと思う。4回転を入れることに気持ちが行き過ぎると、ふだんは決めているジャンプがうまく行かなくなる。よくあることだ。体調ももうひとつだったようだ。
だが、収穫もあったと思う。今シーズン、安藤選手は全日本までずっと調子が上がらなかった。NHK杯では、ルッツとフリップで失敗を繰り返し、何度も転倒した。フリップの矯正に取り組んでいる過程でルッツも調子が悪くなったという。これもありがちなことで、アメリカのマイズナー選手も同じ理由でずっと調子をくずしている。NHK杯を見ていたときは、「もしかして、今シーズン矯正しようとしたのは失敗だったのでは?」という思いがよぎったのだが、全日本では見事に矯正したフリップを披露し、ルッツもきれいに決めた。四大陸ではどうかな? と思っていたが、ルッツ、フリップともwrong edge判定による減点もなく、キチンと矯正ができたことを印象づけた。これは素晴らしいことだと思う。世界を見わたしても、ルッツあるいはフリップに問題があった女子のトップ選手のうちで、完璧に矯正できたのは彼女だけかもしれない。 それと、全日本で悪かったスピン。プログラムの最後に、ショート、フリーとも1回と2回のコンビネーションスピンが入っているのだが、全日本では、レベル1(ショート)、レベル1+レベル3(フリー)に留まり、実はこのスピンの低得点が浅田選手に僅差で敗れる結果につながった。今回はこの3つのスピンですべてレベル4を並べた(フリーではもう1つのスピンもレベル4)。これは前回の失敗をきちっと取り戻しているということなので、賞賛に値する。 スピンで残念なのは、ショートのレイバックスピン。安藤選手は肩を痛めてから、ビールマン・ポジションが取れなくなり、レベル取りに影響が出ている。ショートのレイバックスピンは今回もレベル2で加点を加えて1.9点。浅田選手2.97、ロシェット選手2.69(それぞれレベルは3)に比べると、1点台というのはさびしい。まあ、スピンはせいぜい差が出ても、1点前後だから、あまり無理をする必要はないのかもしれないが、世界選手権に向けて、ポジションを少し工夫するなどしてレベルを上げる努力はする余地があるかもしれない。 最大の問題は、トリプルルッツからの連続ジャンプだ。安藤選手のもつトリプルルッツ+トリプルループは、トリプルアクセルからの連続ジャンプを跳ぶ選手のいない現在の女子シングルにおいては、最高難度(浅田選手はフリップからのループジャンプになる)であり、成功すれば安藤選手の大きな武器になる。 全日本では見事にこの連続ジャンプを決め、GOEで加点をもらって12.4、12.6という驚異的な点数を稼ぎ出している。これが今回、ショートでは2つ目の3ループが回転不足判定でダウングレードされて、たったの5.71点。フリーでは2つ目のジャンプを2回転にしたが、結局ダウングレードはないものの、GOEで減点対象とされて、5.79点にしかならなかった。これだけで6点以上損をしたのだ。さらに4回転サルコウがスッポ抜けたことで、2回転サルコウ(基礎点1.3点)の失敗とみなされ、ステップアウトもしたために、-2から-3の減点をくらって結局0.41点にしかならなかった。 安藤選手の3回転サルコウは、4回転も跳ぼうかという選手だけあって、素晴らしい。全日本では4.5点の基礎点に加点をもらって5点になっている。つまり、四大陸では、4回転にトライして失敗したために、ここでも4点以上損をした、ということになる。 なまじっか(?)4回転サルコウという超大技をもつだけに、常に安藤選手は4回転を入れるか入れないかのジレンマに悩んでいるように思う。オリンピックで惨敗したのも、4回転に固執しすぎたためだ。得点「だけ」を考えたら、リスクの高い4回転サルコウは入れないほうがいい。たとえ降りたとしても、今の回転不足判定の厳しいルールでダウングレードされては元も子もないからだ。大技はほかの技への影響も大きい。だが、やはり「自分にしかできない」ジャンプに挑戦したいという気持ちは、その能力のある選手には強いのだろうと思う。ISUの公式国際大会で4回転サルコウを成功させた女子選手は安藤選手しかいない。男子でさえ、ほとんどの選手がやっているのは、1つグレードの低い4回転トゥループだ。今年はむずかしくても、また来年、調子と様子を見ながら夢の4回転サルコウ成功に向けて頑張ってほしい。 今年はとにかく、3回転ルッツ+3回転ループを成功させることが第一だろう。去年の安藤選手は、この連続ジャンプに抜群の安定感を見せていた。ショートではすべての国際大会で成功させた。その安定感が彼女に世界女王のタイトルをもたらしたといってもいい。今年は前半は2つ目のジャンプを2回転で回避してきた。全日本では見事に3+3を決めたが、四大陸ではショート、フリーとも失敗している。この連続ジャンプをもう一度きれいに成功させることが、安藤選手の世界選手権での最大の目標になるだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.02.18 16:12:42
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