### シングル・アゲイン ###
あなたを連れ去る あの女性の影に怯えて暮らした 日々はもう遠い離れてしまえば 薄れゆく記憶愛していたのかも 思い出せないほどよまた独りに返ったと 風の便りに聞いてから忘れかけた想いが 胸の中でざわめく私と同じ痛みを あなたも感じてるなら電話ぐらいくれてもいいのに変わり続けてく 街角のようにもとには戻れない 若き日のふたり彼女を選んだ理由さえ聞けずにただ季節は流れ 見失った約束もし再び出会って 瞳を探り合っても隔てた時を埋めるすべは何ひとつない手放した恋を今 貴方も悔やんでるならやっと本当のさよならできるまた独りに返ったと 風の便りに聞いてから忘れかけた想いが 胸の中でざわめく手放した恋を今 貴方も悔やんでるならやっと本当のさよならできるやっと本当のさよならできる(by 竹内まりや, 1989)********************火曜サスペンス劇場の挿入歌だったこの曲。これを聞くと事件が終わって容疑が晴れたヒロインが刑事さんに挨拶しながら事件解決を手伝ってくれた頼り甲斐のある男に肩を寄せながら事件現場を歩き去るシーン(火サスの定番パターン)が目に浮かびますね。竹内まりやにはこの歌のような「無神経な過去の男とヨリを戻したいけど戻れない」みたいな内容が結構いくつも見られます。これらの曲の歌詞について思うんですが、そこに相手の男性の心理のようなものがまったく見えない。心が通じている感じがまったくしない。深い関係や心の傷を負いながらも、気持ちはずっと片想いなんですね。「こんなにテキトーそうな酷い男に何故?」と思いながらも、ずるずる引き摺ってしまう切なさ。そんな女性の心理が、痛いほどによく描かれていると思います。「手放した恋を今 貴方も悔やんでるなら やっと本当のさよならできる」このフレーズが、哀しいくらい心に響きました。今となってはもう戻ることはできないことが判っていて、それでも今できることって何なんでしょう。唯一できることは、彼が「後悔」という形でもう一度気持ちを向けてくれること。「嘘じゃなかった」「無駄じゃなかった」っていう事実を受け入れてようやく過去から抜け出せるんですね。それが、彼女の心を過去の呪縛から解き放つ鍵のようなものなのかもしれません。そんな些細な同情にも似た気持ちを切願する女性の心理が現されたフレーズです。また、二人が別れたのはもうずっと前のはずなのに、ここでは「今」という言葉を使ってます。もちろん元彼は最近別れたんで後悔するのは「今」なのかもしれないですけど、それ以外にも「気持ちの上では【過去】の時点で停止していて、その過去が現在でも【今】なんだ」みたいな、心の時間軸が歪んでいる心理描写が感じられます。切ない、いい歌です。