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カテゴリ:日本とモンゴル(経済・ビジネス)
日本企業の現地法人が多い国ランキングが東洋経済に出ていました。当然ですが、大市場である中国やアメリカが多いに決まっており、ランキングとあるくらいですからモンゴルがそのリストに載っているとは思ってもいませんでした。ですが、そのランキングは138位まであるのです。そうなると、モンゴルのことが気になります。
そこには「現地法人数」「進出日本企業数」「5年前の現地法人数」「5年前の進出日本企業数」が国別に載っているのです。現地法人数と進出企業数が違うのは、例えばトヨタは中国で第一豊田と広汽豊田の現地法人を持っているので、この事例だけを取り上げれば「進出企業はトヨタ1社」で「現地法人は合弁2社」という計算になるのでしょう。 日本からの進出法人数上位30か国を対象に平均値を出すことで、日本企業の進出の様子をデータで見てみましょう。進出日本企業1社に対して、現地法人は平均1.55社です。つまり、日本企業は平均的に進出先で1つか2つの現地法人を持っているということになります。 この5年間は色々なことがありました。特に大きな影響は、コロナとウクライナ戦争でしょう。そうした厳しい環境下にもかかわらず、上位30か国での現地法人数は7.71%増え、進出日本企業数は7.57%増えています。残念ながら日本国はこの5年間でわずか5%程度しか成長していませんから、やはり日本企業の多くは成長を海外に求めているのだと思います。 現地法人数第一位の国は、やっぱり中国で6,862社で、進出日本企業数は3,149社です。これは進出日本企業1社あたり平均2.18社ですから、上位30か国平均よりはかなり高いと言えます。ただ、第2位のアメリカも平均2.09社とやはり高いですから、これは大市場に進出した日本企業は複数の現地法人を持つ傾向にあるということでしょう。 上位10か国で、現地法人数も進出日本企業数も唯一5年前よりも減少しているのが香港(第7位)です。これはわかりますね。もう自由な香港はなくなったのですから、撤退する企業が出てきたことは当然でしょう。撤退の意思決定には時間を要しますから、今後撤退をする企業もまだまだ出てくるでしょう。 他方、上位10か国で一番増えているのはベトナムで、ランキングは5位です。現地法人数(1,467社)は38%増、進出日本企業数(1,185社)は35%増とともに大きく伸びています。他方中国はそれぞれ2%、3%の伸びとかなり低いことから、やはり中国からベトナムへシフトしていることがわかります。中国への不安がベトナムシフトをさせているんでしょうね。 上位30位以内で目立つのはミヤンマーで、ランキングは25位です。現地法人数(170社)は41%増、進出日本企業数(120社)は35%増とともに増加しています。軍事政権下でも、最後のフロンティアと言われたミヤンマーへの進出は増えているのでしょう。 「新興国」という言い方が出てきた2000年代にはベトナムもそうでしたが、モンゴルも新興国として将来の発展を期待されていました。そしてその多くの新興国に日本企業は進出したのです。ではモンゴルは現在どうなっているのでしょうか? ランキングでいえば、71位で、現地法人数は11社、進出日本企業数は10社とかなり少ないです。しかも5年前と比べて、それぞれ1社減、5社減となっています。進出日本企業数はもともと15社と少なかったのですが、33%も減ってわずか10社となりました。 ここまで少ないと、企業名を数えられるような気もします。ハーンバンク、モビコム、ソフトバンクのエネルギーや新潟クボタなど、固有名詞が出てきます。他にも住宅や農業などあるようですが、ほとんど増えていないと思ったら、逆に3分の2に減ってしまったということです。 世界の多くの国々で日本企業の進出が増えている中、もともと少なかったモンゴルはさらに減少しているということになります。非常に残念ですが、肌感覚と合っているだけに残念です。もっと私の知らないところで、意外な企業がどんどん進出しているという期待がありましたけど、そうではないようです。 日本企業は大消費地が好きですから、モンゴルに難しいのはよくわかります。ですが、人口1,000万人以下の主要国(シンガポール、ノルウェー、パナマなど9か国)の平均をとると、現地法人数は216社、進出日本企業数は161社で5年間でそれぞれ共に9%程度は増えています。 ここからわかるのは、 ・日本企業の多くが、海外進出に積極的で、ほとんどの国で進出企業は増えている。 ・人口が少ないからと言って、極端に法人数が少ないわけでもなく、また過去5年間で法人数を減らしているわけでもない。人口そのものは、理由にはならない。 ということです。 つまり、日本企業の進出や法人数が少ない、或いは減っているというのはかなり、モンゴル固有の事情だということがわかります。とまあ、こんな数字の分析なんかしなくても、皆さん肌感覚ではわかっていると思います。日本企業の進出がない、せっかく進出して来たのに結局撤退した、それに引き換え中国や韓国企業の進出は活発だ、などです。 こうした現象に対する理由は私なりには理解していますが、結論としては、日本企業のモンゴル進出は10年以上前から叫ばれていますが、全く活発ではないということと、モンゴル側も最早日本企業の進出に過度な期待は持たなくなっているという事実です。 私はモンゴルと日本の交流は、企業任せだけではなく、もっと根本的なところから変えていかないといけないのではないかと思っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.05.08 21:10:48
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