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田崎正巳のモンゴル徒然日記

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2024.08.22
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前回の記事でモンゴルから日本への売り方に問題がある、と書いた。「売り方」というぼんやりした言葉を書いたのは、それだけ範囲が広いからである。

マーケティングでの4Pより広いが、きりがないのでここでは4Pをベースに考える。4Pとは、Product、Price、Place、Promotionの4つのPを切り口にマーケティングを考えるというツールである。対象はモンゴルから日本に輸出できそうな消費財とする。

最初はProduct製品である。カシミヤのように既にモンゴルで作られているものから、はちみつのように新たに日本向けに作られるものもある。既存製品ではやはりカシミヤであろうか。ゴビカシミヤは過去対日輸出に力を入れていたと聞くが、日本での知名度はほとんどなくニッチな存在だ。

売り先は中小零細企業が多く、日本にはマーケティング機能も総代理店もないようだ。しかも安定供給はできてない。冬用のシーズン前に、「今年はほとんど供給できない」と言ってきたりする。ゴビカシミヤは自社店舗中心で、日本への輸出には興味がないのだろう。

カシミヤでは何と言っても日本にはユニクロがあり、あの品質と価格に太刀打ちできるものはないようだ。モンゴル産で「地球に優しい」とか「環境に良い」などのカシミヤを売りたいとの相談はあっても、それを証明する検査結果はなく製品の差別化は難しい。

はちみつの場合も日本で「天然」や「純粋」とラベルに書くにもいろいろな基準がある。チャッツラガンや岩塩もそうだが、製品に関しては「モンゴル産」以外の差別化要因がないのが実情だ。更に言えばはちみつの入った瓶の蓋から中身が漏れて検品で不合格になったり、消費者からのクレームも多かったようで品質問題もある。

次はPrice価格である。これが最大の問題と言えよう。私が見た製品のほとんどは競争の厳しい日本市場ではモンゴル製品は高い、というより非常に高い。

日本は49か国からはちみつを輸入しており、市場の大半を占める中国品の輸入価格がkg当たり300円で全輸入品の平均値は500円である。この中でモンゴル品は一番高く5,580円と、北欧のプレミアム品よりも高い。

私は輸入当初にスーパーの店頭を見てそんな価格では売れない、というよりスーパーでは扱ってもらえないと思った。そもそもそんな高い価格で日本で売れるとなぜ考えたのかがわからない。

日本への輸出を検討した環境に良いカシミヤも、「輸入」価格がゴビカシミヤの「小売」価格よりも高く諦めた。岩塩も日本には北米中南米、欧州、アジアから輸入されており、モンゴル産の価格競争力は小さい。

次はPlace売る場所である。上記のように商品差別化訴求が難しく、価格競争力がない場合は残念ながら大手スーパーで扱われるのは困難だ。例外的に以前チャッツラガンの飲料水を大手スーパーで売られたことがあり大いに期待したが、最初の出荷だけで終わってしまった。

一つはチャッツラガンの良さを訴求できなかったこと。身体に良いことの裏付けがないと、大手スーパーでは宣伝できない。もう一つは価格だ。スーパーでは標準価格500mlで160円程度の飲料水が68円で売られてたりする中で、ml単価で10倍近く高いとなると厳しい。

結局のところ現在日本で売られているモンゴル製品の多くは、中小零細企業による通販がほとんどで売上は小さい。そうした状況なので、4つめのPromotion販売促進に金をかけられないのである。

あるカシミヤ企業は日本の展示会に日本語のパンフレットすら用意してなかった。当然ながら多くの場合はメーカー専任の輸入担当者やマーケティング機能を日本に持つことはできず、日本の輸入側にお任せとなる。

4Pを見ても明らかだが、現状ではEPA締結後でも満足できるレベルの消費財輸出はなかなか見当たらない。またロットが少ない故に物流コストが割高になってしまうハンディも大きい。じゃあどうしたらいいのか、ということだ。

現状では個別企業の努力だけでは難しいだろう。国際的基準の検査機関の整備、物流コストの低減は対日輸出には、最低限必要であろう。

もう一つの可能性は、以前書いた薬草を求めた製薬企業のような要求に対応できる体制を持っていれば、日本側からのにニーズに応えることで大きなビジネスになる可能性はある。それがどんな企業かは、あるいはその有無については不明であるが。





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Last updated  2024.08.23 13:29:09
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