カテゴリ:ゴハン
その店は、高校を卒業したときに、友人たちと記念に行った店だった。
当時、ラッシャンティ―、と言っていたが、ようするにジャムをいれたロシア紅茶というものが 仲間内で流行っていた。 といっても、現物を飲むことよりも、そのようなものが世の中にはあって、 という情報から、それらしいものを作っては飲み、作っては飲み、 ああでもない、こうでもないとたわいのない会話をくりかえす、 飲んだことがないもんだから、いよいよ妄想が膨らむというような仲間内の盛り上がりである。 そのロシア紅茶が飲める、ということで選んだのが市内に唯一あるロシア料理店「ツンドラ」であった。 めいめい、ボルシチだの、ピロシキだの頼み、出てきた料理と料理名を見比べながら、 これがロシアの料理なのか~と楽しんだ後、お目当てのロシア紅茶をみんなで賞味する。 甘い。非常に甘い。 目が覚めるほど甘い紅茶だったのが記憶に残っている。 さて、そのツンドラが60年の営業に幕を下ろすことが新聞にでた。 閉店まであと3週間弱。 新聞に出たことで、行列ができていた。 それだけ沢山の人の思い出になっていたのだろう。 今回の閉店は店主が高齢なこと、後継ぎがいなくて事業譲渡も検討したが不調におわったこと、周囲の再開発で家賃が値上がりすることなどの懸念、などいろいろと理由は書いてあったが やはり、コロナの影響も大きかったのだろうなと思う。 閉店するとなると、最後に今一度・・・となるのだけど、 やはり思い出の店がずっとそこにあって欲しいのであれば、 普段から定期的に利用するしかないのだとしみじみ思った。 こういうお店はずっとあるので、 ほったらかしていてもいつまでもそこにあるのだ、という幻想を持っていた。 コロナは私たちからいろいろなものを奪っていく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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