ＭＹ　ＨＩＤＥＯＵＴ ～私の隠れ家～

[映画鑑賞記録] カテゴリの記事

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  「東京ゾンビ」(2005・日本)

  "TOKYO ZOMBIE"監督、脚本・・・佐藤佐吉 原作・・・花くまゆうさく『東京ゾンビ』（青林工藝舎刊） 出演・・・浅野忠信 フジオ 哀川翔 ミツオ 奥田恵梨華 ヨウコ 古田新太 石原 松岡日菜 フミヨ 中村靖日 ヨッチャン 曽根晴美 マーさん 高樹マリア ヨッチャンの嫁 谷村美月 ユカリン 楳図かずお 秋山先生／王子 森下能幸 吸血ゾンビ 橋本さとし ドンガイラ 三浦誠己 マーさん軍団 ・物語序盤・近未来の東京。処理しきれない産業廃棄物で出来たゴミの山、通称・黒富士には、始末に困った人間も多数埋められていた。とある工場で働くハゲ親父のミツオとアフロヘアのフジオの二人組は、柔術を通じて師弟関係の絆で結ばれていた。昼休み、二人がいつものように柔術の技の練習をしている所へ、本社の藤本が現れ、仕事をしろと、ミツオを簀巻きにして殴り付ける。彼を助けようとしたフジオは、消化器で藤本を殴るが、運悪く彼は一撃で死んでしまった。仕方なく、黒富士へ藤本を埋めに行く二人。そこにフジオの中学時代の教師が来て、ズボンを穿いていない男子生徒を埋めようとしていた。かつてその変態教師にセクハラ行為を受けていたフジオは、カッとなって変態教師を殴り倒す。丁度その頃、黒富士では埋められた死体達が、産業廃棄物から染み出た化学物質の影響で、ゾンビとして蘇り、近くに居た者達を襲う。山から街へと降りてきたゾンビ達は、次々に市民達に襲い掛かり、ミツオとフジオの働く工場にもゾンビの群れが迫ってきた。二人はトラックに乗り、ミツオの希望でロシアを目指して北へと向かうが…。原作はカルト系のコミックとの事です。何故、ハゲとアフロなのかと思ったら、漫画のキャラクター通りの髪型の模様。でもどうみてもヅラな哀川翔の天辺ハゲは、ビジュアル的に恥ずかしい。カルト系らしく、バカ臭いノリなのですが、観ている内に、段々とだれてくるのが問題。前半はシュールで面白かったのに、五年後、ゾンビだらけになってしまった東京に、場面が変わってからのテンポが悪くて退屈。馬鹿馬鹿しいダウナーなギャグも、場面転換してから、急に無くなってしまった感じでした。ミツオが居なくなって、フジオ一人になってしまった所が問題のダレダレ部分。この映画では、哀川翔の惚けたキャラクターが引っ張り役で、寡黙な浅野忠信のキャラクター一人では、ボケとツッコミが成立しないんですよね。この痛みは癌に違いないと、ストレス性胃炎と診断している医者を殴って、無理矢理、胃癌だと言わせるミツオ。入れ歯のゾンビに噛まれたのを早とちりして、自分もウィルスに感染したと信じ、河に身を投げたミツオ。本当にバカキャラです。一部の金持ち達がシェルターとして建てた、ピラミッド型の巨大マンション。貧しい者達は奴隷として働かされている。柔術をマスターしたフジオは、大金を稼いでマンション暮らしをする為、ゾンビ相手の格闘ショーのファイターとなっているが、常に瞬殺してしまうので、客が盛り上がらず、プロモーターから叱られている。ボロ小屋では、逃亡途中でトラックに同乗させたヨウコと、何だかんだ言いつつ夫婦になって、子供まで作っている…。まあ、正直、観ているのに疲れてしまう映画でしたね。中弛みを何とかすると、改善の余地はあると思いました。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Jun 12, 2008

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  「ホステル」(2005)

  "HOSTEL"監督、脚本・・・イーライ・ロス 出演・・・ジェイ・ヘルナンデス パクストン デレク・リチャードソン ジョッシュ エイゾール・グジョンソン オリー バルバラ・ネデルヤコーヴァ ナタリーア ヤナ・カデラブコーヴァ スベトラニャ ヤン・ヴラサーク オランダ人ビジネスマン リック・ホフマン アメリカ人ビジネスマン 三池崇史 ジェニファー・リム カナ ・物語序盤・バックパッカーで欧州各国を旅行しているアメリカ人大学生パクストンとジョシュと、道中で知り合って仲間に加わったアイスランド人オリーの３人。彼等はオランダはアムステルダムに到着し、如何わしい店で夜遊びに興じる。恋人と破局したばかりのジョシュに、ヨーロッパの女とセックスしろと囃し立てる二人だが、ジョシュは金を払って女性を買うのには抵抗があった。深夜、滞在先のホステルに戻った３人だが、玄関は既に鍵が掛かっており、悪態を吐いていた所、近所に住むアレックスという若者が家に上げてくれた。更なる刺激を求めている３人に、スロバキアのブラティスラヴァに行けば、極上の快楽を味わえるホステルがあると紹介するアレックス。３人は教えられた通り、そのホステルへ辿り着く。部屋は生憎と相部屋だったが、ナタリーアとスベトラニャというセクシーな女性がルームメイトで、３人はそれぞれに夢のような一夜を過ごした。翌朝、パクストンとジョシュが目覚めると、オリーの姿が見当たらない。フロントに行くと、彼は明け方一人でチェックアウトしたと言う。そして同じホステルに滞在していたカナという日本人女性から、オリーと彼女の連れユキが映った、さようならと書かれた写メールを見せられる。 腑に落ちないものを感じながら、オリーを探して街中を歩き回る二人は、彼のジャケットを着た男を発見するのだが…。 何より、スロバキアに対して失礼でしょ…。(-_-)/~~~ピシー!昔、日本でソープをトルコ風呂と称していて、トルコから苦情が来ましたが、それと同じ位、スロバキア国民に対して失礼だと思うよ、この映画は。色々と重い歴史を背負った国ですが、こんな偏見はやめたってくれ。また日本人じゃない日本娘が出てきてるし…。個人的にかなり期待外れな一本でした。もっとエグイ、惨殺シーンがあるのかと思っていたら、見るからに作り物でチープな感じ。肝心のシーンは画面がターンして、肩透かしだし…。お蔭で、痛いとか怖いとか、全然感じなかったよ。トホホ。これでもホラーかよ…。(－－〆)この間観た「ランボー」の方がよっぽど、気持ちよく人間が破壊されてたわい。Ｂ級ウケ狙いホラーとも思えないし、中途半端な映画だなぁというのが実感。先ず、前置きが長過ぎて、そこで既にかったるい。いつになったら、恐怖のホステルに連れて行ってくれるんだよと、早送りしたくなる。こっちはホラーを観たいのに、前半はエロばっかりで。(；一_一)やっと始まったと思ったら、どの残虐シーンも、かなり短くて、じわじわと殺されてゆく恐怖感がゼロ。アンタ、何人よ、と言いたくなるカナは、一体何でどう切れば、あんな傷口が出来るのか、誰か納得行くように説明してほしいよ。目ん玉でろりんになって、助けに来たパクストンが仕方ないので、目を切断しますが、何故か膿がドバーッ。今、切られたばかりなのに、何故、膿んでるのか意味不明…。その後の彼女の顔は、正にお岩さん。笑。これはジョークなんだよね…、多分。終盤、指を切られたパクストンと顔半分切られたカナの逃亡劇が始まりますが、お前等傷口から全然出血してないやんけ！パクストンが危険を犯してまでカナを助けに戻る理由は、昔溺れた少女を助けられなかったトラウマから。結局の所、助けられずに終わるんだけど。電車の中の変態オヤジ、実は殺人クラブの常連野郎への報復も、結構あっさりしていて、もう少し傷め付けろよ…と。個人的には、あの経験で目覚めちゃったパクストンが、殺人クラブの客に変貌するとか、そんなブラックなオチが欲しかったね。途中で思ったもん、「私、お金払うんで、客にしてもらえません？」て。笑。終局的に金でしょ、彼等が欲しいのは。それなら、相談に応じてくれても良いよね。秘密のクラブで楽しみを終えて出てきた客らしきアジア人の男。何故ここで、唐突にアジア人なのかなぁ、と思ったら、彼は三池崇史監督ですか。結構、レビューで評判が良かったけど、ホントにくだらねー映画だった。終わった瞬間に、ちゃんちゃら可笑しいわ、と思わず声が出てしまった。前半の余計な部分をカットして、ホステル～殺人クラブの恐怖だけに重点を置いて、もっとストーリーらしきものを盛り込めば良かったと思います。製作がタランティーノってだけあって、おちゃらけでチープなタランティーノ風味の映画です。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Jun 10, 2008

• 「地下鉄（メトロ）に乗って」(2006・日本)

  http://www.metro-movie.jp/監督・・・篠原哲雄 原作・・・浅田次郎『地下鉄に乗って』（講談社文庫・徳間文庫刊） 出演・・・堤真一 長谷部真次 岡本綾 軽部みち子 常盤貴子 お時 大沢たかお 小沼佐吉 田中泯 野平啓吾 笹野高史 岡村 北条隆博 小沼昭一 吉行和子 長谷部民枝 ・物語序盤・衣類販売の会社で営業マンとして働く長谷部真次は、妻と一人息子、母民枝と暮らす男。彼は会社の同僚、軽部みち子と不倫関係にあった。ある日、弟から父が倒れたと連絡を受けた真次は、父の経営する企業を継いでいた弟を訪ねる。真次は父・小沼佐吉と決裂し、高校卒業と同時に家を出て以来、父とは一度も会っていなかった。今日は、若くして事故死した兄の命日で、真次は昔の事を考えながら、いつもの地下鉄の地下道を歩いていた。真次は通行人の中に、兄の姿を見て、思わず後を追って駆け出した。階段を上がって地上に出た真次の目の前に広がるのは、見慣れた風景ではなく、レトロな街並み。やがて真次は、そこが東京オリンピックを目前にした昭和39年の東京であると気付く。公開前に試写会で観たのですが、感想も書かずに放置していた作品でした。思い出す為に、断片的にテレビ放映をチラ見したので、こちらに記録として残します。おぼろげに残っていた印象は、まあそれなりに楽しめたけれど、ネタが不倫なので、今一つ、主人公とその相手に感情移入できなかったなぁという点と、場面切り替わりに一々挿入される、地下鉄の映像が目障りだったという二点でした。最初は実際に地下鉄に乗って、タイムスリップしていたので、その映像も必要だったのですが、途中からは、何の前置きも無く過去の世界に戻っていたので。不倫相手は、実は異母妹でしたってのも、あーあな結末なんですが、あれではお時さんが余りに不憫ではないですか？あと、ファンタジー作品に有り勝ちなのですが、年齢設定が可笑しい…。前に観た「死神の精度」でも、明らかに年齢が合わなくて、は？と思ったのですが、その辺は如何にファンタジーと言えども、一応合うようにしておくべきではないのか…？　　

  Jun 8, 2008

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  「ミスト」(2007)

  "THE MIST"監督、脚本・・・フランク・ダラボン 原作・・・スティーヴン・キング『霧』（扶桑社刊『スケルトン・クルー１　骸骨乗組員』所収） 出演・・・トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローリー・ホールデン、アンドレ・ブラウアー、トビー・ジョーンズ、ウィリアム・サドラー、ジェフリー・デマン、フランシス・スターンハーゲン、アレクサ・ダヴァロス、ネイサン・ギャンブル、他。 ・物語序盤・記録的な大嵐が長閑な田舎町を通り過ぎた翌朝。湖畔の家に住むドレイトン一家の家は、祖父の植えた木が倒れ、二階窓ガラスを直撃していた。映画ポスターなどを手掛ける画家デヴィッドが描き上げた絵も台無しに。妻ステファニーと二人で、嵐の惨状を見て話していると、一人息子のビリーが、隣家の家の樹が倒れて、ボートハウスが木端微塵だとはしゃいで告げに来る。ステファニーは湖の向こう側から、霧が出てきているのを不審に思うが、デヴィッドは単なる自然現象だろうと軽く流す。隣家の住人ノートンはＮＹの黒人弁護士で、彼とは以前にも境界線の問題で裁判沙汰になっていた。枯れた樹を切るよう頼んでいたのにと、憤慨するデヴィッドは、妻から喧嘩はするなと釘を刺されて、保険について尋ねるだけだと隣を訪ねる。ノートンの愛車は倒木の下敷きになっており、彼は街に行くなら、同乗させてほしいと頼む。デヴィッドは息子とノートンを車に乗せ、街のスーパーマーケットで買い出しに出掛けた。電気も止まってしまったスーパーは、復旧までの買い出し客で満員で、店員はてんてこ舞いの状態だった。彼等が買物をしている間に、霧は段々と濃くなり、やがて一人の男が血塗れで、スーパーに駆け込んでくる。彼は霧の中に何かが居て、近くに居た人間を連れ去ってしまったと訴える。尋常ではない異常事態に、人々はとにかく店内で様子を見る事に。息子に掛ける毛布を探しに、店の倉庫に行ったデヴィッドは、閉じられたシャッターの向こう側から異様な音を立て、シャッターを湾曲させる程の力で中へ入ろうとする何かが居る事に気付く。慌てて店員に話すが、彼等は全く取り合わず、換気用のボイラーを直す為に、若い店員ノームを外へ出した。すると霧の中から、巨大な触手が現れ、ノームを捉えて引き摺り出してしまった。　上映終了日に滑り込み鑑賞。予備知識は入れたくなかったので、殆どレビューは読まずに行きましたが、いやーな映画だというコメントは見ていました。本当に一言で表現するなら、実にいや～な映画ですね。笑。救われない度マックス。人間の怖さ・醜さマックス。悲劇愛好家の私には、ストライクゾーンど真ん中でしたわ。(#^.^#)大好き、この手の映画♪ダラボン監督はキング原作で「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」と、大ヒット映画を生みだしている、キングとは相性の良い監督。個人的には、今作も上記二作に並ぶほど気に入りましたが、内容が内容だけに、万人受けはせず、話題作にもならず、ひっそりと公開されて終わってゆきましたね。真っ当な人間も、鬱になりそうな内容ですから。笑。登場するのは、先日公開されて話題を呼んだ「クローバー・フィールド」を彷彿とさせるクリーチャー達。破壊ちゃんに匹敵するほどの巨大モンスターも出てきます。でもあちらは、飽く迄、怪獣中心のパニックムービー。今作では、エイリアン達は極限状態を作り出す為のネタでしかありません。この映画が描いているのは、日常から懸け離れた、想像を絶する窮地に追い遣られた時の、人間達の心の動きです。現代社会に於いて、人間が人間らしいと想定された範疇で行動する所以は、社会という枠組みがあるから。良識的な教師アマンダは性善説を唱え、現代社会で人は理性的に行動するものだと当然のように言う。それが如何に儚い夢想であるかは、僅かな時間で証明されてくる。恐慌下で、スーパーマーケットという狭い空間に閉じ込められた、思想も階層も異なる様々な人々。普段ならば、腹の底に隠している醜い本音を平気で口にする。店内に侵入した小型のモンスター達の襲撃で、完全に平静を失った店内。隣接する薬局に薬を取りに行った者達が、見聞きした惨状と、このパニックの原因。たった２日足らずで、いつもは皆から変人と見做されていた、旧約聖書の教えを盲信するカーモディー夫人が声高に説く神の裁きに、人々は熱心に聞き入るようになった。アマンダの言う良識派の人間は、刻一刻と少数派となってゆき、神の教えに背き、惨劇を齎した軍の一員てある若者を生贄として捧げる事に、疑問すら抱かない。まるで魔女裁判の行われていた中世のように、文明と科学を否定し、知性も理性も失くしてしまう人間達。ここからネタバレ含みます。注意。観終わって気に掛かった事は、キング＆ダラボンは、どの程度、キリスト教を信仰しているのかなという点。穿った見方をすると、結末は、神を否定し、思い上がった行動をした者達が罰せられる形とも、受け取れるんですよね。もし彼等が熱心なキリスト教信者ならば、私の映画への評価は若干下がります。純粋な皮肉であるなら、大変結構です。ついでに、最後のトラックの荷台に、店内に残った人達が乗っていて、彼を見下ろしていたら最高にエグかったと思いますね。店内でデヴィッドの息子ビリーが父に哀願する場面で、うわぁ…と思いました。そう来るか…と、厭～な結末が見えてしまった。「怪物達に僕を殺させないで…。」って事は、・・・・・しかないよね。でもそれ以降に続く本当のラストには、心底驚きました。目も当てられない悲惨な締め括り方。それは余りに非道ではないですかぁ！！お父さん、これからどうしたら良いんですかぁ？あの状況下ならば、心神喪失で刑事責任は問われないと思いますが、そんな次元を遙かに超えてしまったよね、お父さん…。彼の行く末は、精神病院での生活か、世捨て人の廃人の二者択一でしょう。音楽も消え、トラックの走る音などだけが響いているエンドロールの、何とも言えない無情な感覚。ナイス過ぎます。(*^^)v是非、エンドロールが途切れる最後まで、絶望的な余韻に浸っていて下さい。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Jun 6, 2008

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  「秘密結社　鷹の爪 THE MOVIE ～総統は二度死ぬ～」(2007・日本)

  http://www.kaeruotoko.com/movie/監督、脚本・・・FROGMAN 出演(声)・・・FROGMAN、ホンマキョウコ、亜沙、他。 ・物語序盤・ 世界征服を企むベンチャー秘密結社・鷹の爪は、いつものように資金難に悩まされていた。大家の家賃の取立てから逃れようとした総統達は、博士の作ったマシンで逃走を試みたが、そのマシンは宇宙へ飛び立つ夜逃げ用だった。彼等は宇宙ステーション“ピースボール”に救出される。そこでは各国の首脳達が集まり、パーティーを開いて馬鹿騒ぎをしていた。そして正義の味方デラックス・ファイターも大酒を飲んでいる…。 テレビ朝日の深夜番組として放映され、カルト的な人気を博した「THE FROGMAN SHOW」の「秘密結社　鷹の爪」の劇場版第一弾です。現在、第二弾「私を愛した黒烏龍茶」が公開中です。ヘタウマなキャラクターにチープな映像、お惚けナンセンスな世界観が面白い作品。鷹の爪団は、東宝映画のキャラクターとしても起用されております。映画の上映前に流れるマナー喚起用のミニムービーが面白いので好き。初めて観た時、笑いを堪えるのが苦しかったです、あれは。鷹の爪団は島根県在住です。総統を筆頭に、戦闘主任の吉田くん、熊の姿をしたレオナルド博士、プロレスラーみたいなフィリップ、良く判らん菩薩峠くんで構成されています。敵対するフェンダー・ミラー将軍は、メカ化して登場。メカなので、オリジナル以外に、大勢居ます…。そして総統の生き別れの息子？と思しき、ステーションの案内係和夫も。総統って、妻子が居たんだ…。総統が世界征服を志した理由は、世界を平和にする為だったのね。いい人だ、総統。ってか、この作品では、総統が一番常識人だよね。(^_^;)正義の味方の筈のデラックス・ファイターは、迷惑なだけの困ったちゃんだし。大家のオバサンは、人工呼吸している内に、体の芯が火照って、総統に恋してしまうし。後ろでは団員達が、おぞましさにゲロを吐いている…。制作スタッフが予算が足りないのに、ピザばかり注文しているので、途中で資金が無くなり、効果音も人間のアテレコに変わり…。この問題は、キャラクター達が、楽天！他のスポンサーの名前の書かれた服を着るという、プロダクト・プレイスメントで解消される。笑。総統の生き別れの息子は、実はとても身近に居たというオチが最後にあった…。この映画は、特に説明は不要ですね。独特のテイストは観て頂かないと伝わらないので。心底バカ臭くてナイスです。皆さん、ご一緒に、「た～か～の～つ～め～」↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Jun 3, 2008

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  「ナルニア国物語／第２章：カスピアン王子の角笛」(2008)

  只今、全国ロードショー中です。"THE CHRONICLES OF NARNIA: PRINCE CASPIAN"監督・・・アンドリュー・アダムソン 原作・・・Ｃ・Ｓ・ルイス 出演・・・ジョージー・ヘンリー ルーシー・ペベンシー スキャンダー・ケインズ エドマンド・ペベンシー ウィリアム・モーズリー ピーター・ペベンシー アナ・ポップルウェル スーザン・ペベンシー ベン・バーンズ カスピアン王子 ピーター・ディンクレイジ トランプキン ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ グロゼール セルジオ・カステリット ミラース ワーウィック・デイヴィス ニカブリク コーネル・ジョン グレン・ストーム ヴィンセント・グラス コルネリウス博士 ダミアン・アルカザール ソペスピアン卿 シェーン・ランギ アステリウス 出演(声)・・・リーアム・ニーソン アスラン ケン・ストット 松露とり（トリュフハンター） エディ・イザード リーピチープ ・物語序盤・ベベンシー家の四人兄弟が異世界のナルニア国から、母国イギリスへ帰って一年が経過しようとしていた。現在、ナルニアは好戦的な民族テルマール人に支配されていた。先王の弟で王子の摂政であるミラースの妻が男の子を出産した事で、王位継承権を持つ王子カスピアンは命を狙われる身となった。恩師コルネリウス博士によって、辛くも暗殺から逃れ、森へと逃げ込んだカスピアンだったが、窮地に追い込まれ、コルネリウスから受け取った象牙の角笛を吹く。その笛には、ナルニアに危機が迫る時、伝説の四人の王を呼び戻すという言い伝えがあった。果たして、地下鉄構内に居たペベンシー四兄弟は、時空の歪みから、懐かしいナルニアへと戻ってきた。しかしそこは彼等の知るナルニアではなく、1300年の年月が経った、かつての繁栄の面影も無い世界と化していた。 前作は個人的に、今一つ入り込めず、冷めた目で観てしまったのですが、今作は世界観に慣れたのか、自分の中でかなり盛り上がりました。多分、メインが魔法や喋る動物達ではなく、人間だったからだと思います。子供向けのファンタジー色が、前作よりも薄く、ドラマ的に面白さが向上した感じでした。しかし上の二人、最後に「時が来た」みたいな台詞で肩叩きされていたなぁ。子役として年をとり過ぎたので、次回からは出られないよって意味ですか？そんな事を言ったら、ハリー・ポッターはどうなるんだ？カスピアン王子はポスターに描かれている絵ほどハンサム君ではなかったなー。充分、グッドルッキン♪ですけどね。惚れたーって感じはなく、普通に綺麗な子ねって程度で。今後の活躍に期待しましょう。なんだかスーザンと、いい感じになってて、何二人で青春してんの～？という、オバちゃんのやっかみも多少入っております。笑。前作で一番萎えた点が、異世界なのに出てくる動物が、こっちの世界と同じだよ…という所でした。折角ファンタジーなんだから、見た事の無い住人にしてほしかったのです。ただ人間の言葉を喋るだけの見馴れた動物達って、映像化してもらっても、有難味が少ないじゃないですか。(^_^;)今回は前述したように、そんなナルニアの世界が滅んで、テルマール人という人間(正真正銘の人間だった…。)達が支配する王国に変わり、登場人物達も大人だったので、王家の策謀という大人の世界が繰り広げられたのが、世界に入り込み易い要因でした。二作目という事で、余計な説明に時間を割く必要性も無く、ドラマだけに重点を置いていたのも良かったと思います。因みにナルニア軍は、ファンタジーでお馴染みのドワーフやセントール(半身半馬)、ミノタウロスがメインで活躍しているので、喋る動物の出番は削減されてます。鼠の騎士という、お茶目なキャラクターも登場しますが。さて、角笛の力で伝説の四人の王が戻ってきたナルニアですが、伝説と言っても、中身は非力な子供達。圧倒的な軍事力を誇るテルマール人の脅威を、薙ぎ払う力などありません。長男としての責任感が強い第一の王ピーターは、強引でも先制攻撃を仕掛けて、敵の城を落とそうとしますが、元々無理のある作戦だったのと、カスピアン王子が叔父ミラースと口論を始めて、手筈通りに門を開けなかったという凡ミスも重なって、仲間の多くを失ってしまいます。ピーターの独断専行も問題だけど、カスピアン君も使えねー。(~_~;)使えない子達に率いられたナルニア軍団が可哀想よん。やっぱりナルニアの真の王は、創造主・獅子の姿を持つアスランでございます。そしてナルニアを一番理解しているのは末っ子のルーシー。アスランを信じる純粋無垢な心を持ち続けているルーシーにだけは、アスランの姿が見える。大人に成り掛けている、ピーターやスーザンには、御伽の国は卒業して、現実の世界で生きなくてはという思いが、心に芽生えている。心の何処かでアスランを避けてしまっている彼等には、既にアスランは見えないのだ。大人の心で、大人の戦術を用いて、大人達と戦おうとするピーター達。ナルニアの民達も姿を消して数百年になるアスランの存在を疑っている。けれどもここは魔法の国ナルニアなのです。心から求める気持ち、曇り無く信じる心があれば、魔法を復活させる事ができる。精霊達も呼応してくれるのだ。そしてその時こそ、彼等が無敵の力を手に入れる時。ドラマティックな展開と勇壮な戦闘シーン。指輪物語の戦闘シーンを観た時も思いましたが、私も参戦させろー！となりました。笑。剣や弓矢で戦うシーンを見ると、ついつい血が沸騰してしまう私なのです。面白かったです。次回作はいつになるんでしょうね？↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Jun 2, 2008

• 「P２」(2007)

  http://www.p2-movie.jp/"P2" 監督・・・フランク・カルフーン 出演・・・レイチェル・ニコルズ、ウェス・ベントリー、サイモン・レイノルズ、グレース・リン・カン、他。 ・物語序盤・皆が早めに仕事を終え、家路を急ぐクリスマスの夜。けれどもアンジェラ書類の作り直しを命じられて、独り遅くまで残業する羽目に。姉夫婦の家で開かれるパーティーに、サンタの衣装を持って行く約束だったアンジェラは、大急ぎで仕事を片付けた後、姉のロレインに、あと30分程度で着ける筈だと電話をして、地下駐車場へ向かう。だが運の悪い事に、車のエンジンが掛からない。駐車場管理人のトーマスは、バッテリーが上がっているのではと試してくれたが、矢張り車は動かなかった。アンジェラはタクシーを呼ぶと言い、再び地上階へと上がってきた。暫く後、タクシーは来たものの、今度は玄関の自動ドアがロックされていて外へ出られない。警備員のカールも見当たらず、おたおたしている間に、タクシーは帰ってしまった。途方に暮れ、地下駐車場を歩くアンジェラは、照明まで消されて慌てふためく。そして突然、彼女は背後から羽交い絞めにされ、薬を嗅がされて失神してしまう。目覚めた時、アンジェラは白いドレスに着替えさせられ、足は鎖で繋がれており、目の前にはサンタの衣装を着たトーマスが居た。彼は一緒に、クリスマス・ディナーを食べようと笑い掛けるのだった…。悪役のウェス・ベントリーが、私好みのキュートな顔立ちだったので、私ならあの状況からでも、仲良くなれそうな気がしましたわ。(#^.^#)あんなイケメン君が純情な恋心を抱いてくれていると知ったら、私はアンジェラみたいに怒ったりしないなぁ。事件が起こる前に、ディナーを一緒にどう？と訊かれた時も、もっと本気で申し訳なく謝絶していただろうし。しかし、彼のルックスに惹かれたのは私だけではあるまい。という訳で、この映画、イカレ野郎の配役を間違っている。もっと誰が見ても、ウギャ～キモ～ッ！と思えるオタク系みたいな男を選ぶべきです。

  May 30, 2008

• 「イエスタデイ　沈黙の刻印」(2002・韓)

  http://www.gaga.ne.jp/yesterday/"YESTERDAY"監督、脚本・・・チョン・ユンス 出演・・・キム・スンウ ユン・ソク隊長 キム・ユンジン ノ・ヒス博士 チェ・ミンス ゴリアト キム・ソナ メイ ・物語序盤・南北朝鮮が統一された2020年の朝鮮。特殊捜査隊隊長であるユン・ソクは、今から約１年前、愛する一人息子ハンビョルを誘拐され、犯人グループのアジトへの突入後の銃撃戦で、一味の男と共に椅子に縛られていた我が子を射殺してしまった。血塗れの息子の胸に掛けられていた風見鶏のペンダント。その一件が原因で、ユンは妻とも離婚し、事件の記憶に今も悩まされていた。大都市インター・シティでは、この一年間に五人の老人が誘拐され殺害されていた。事件の担当に指名されたユンは、被害者の胸に、あの風見鶏のペンダントが掛けられているのを知って、辛い記憶を蘇らせると共に、一連の殺人事件には何か共通点があると睨む。その頃、退官式典を迎えた警察庁長官キムの元に、娘キム・ヒス博士が現れる。彼女は記憶障害を患っていたが、プロファイリングの第一人者として活躍する女性だった。ヒスは式典への招待と車の手配を父に感謝するが、キム長官は関知していない模様。特に気にせず、会場に向かった二人だったが、ヒスが講演をしている間に、キム長官が武装グループに拉致される事件が起こる。彼もまた、殺害された五人と同様に、闇に封印された国家機密"プロジェクト・ルカ"に関わる人物だった。ヒスは父を救出する為、分析官として、ユンの特殊捜査隊に協力する事を願い出る。これも韓国のお国柄が如実に出た作品ですね。ただ、恋愛モノは正直、勘弁して下さいとなるのですが、サスペンス系での、独特の緩やかな時間の流れは、結構好きなんです。なかなか核心に迫ってくれない、言葉少なな脚本も。画面がかなり暗いので、鑑賞する際は、テレビ画面の明度設定を一番明るくして観るのをお勧め致します。銃撃や格闘をしていても、誰が誰やらさっぱり見えず…。ついでに序盤は、話の説明が一切無いので、画面は見えんわ、筋書きは見えんわで、かなり苦労すると思います。最初に登場した、キーマンらしき"神父"も我慢して観ていないと出てこないですしね。主人公のユン・ソクが、プロジェクトに深い関わりを持っているというのは、推測できるのですが、どんな形でなのか、全貌は最後まで観ないと明かされません。キム・ヒス博士、キャラクター紹介を見ると、名前がノ・ヒス博士となっていて、これはネタバレだろうと、ちょっとツッコミ。キム長官の養女である事は、中盤まで明かされていないのですから。彼女の本来の姓が、プロジェクトの中心人物だった、ノ博士と同じである点は、物語の鍵ですよ…。(；一_一)

  May 29, 2008

• 「ランボー　最後の戦場」(2008)

  只今、全国ロードショー中です。http://rambo.gyao.jp/"RAMBO"監督・・・シルヴェスター・スタローン 第一作原作・・・デヴィッド・マレル 出演・・・シルヴェスター・スタローン ジョン・ランボー ジュリー・ベンツ サラ・ミラー ポール・シュルツ マイケル・バーネット医師 マシュー・マースデン スクール・ボーイ グレアム・マクタヴィッシュ ルイス レイ・ガイエゴス ディアス ティム・カン エン・ジョー ジェイク・ラ・ボッツ リース マウン・マウン・キン ケン・ハワード アーサー・マーシュ ・物語序盤・元グリーンベレー隊員で、ベトナム戦争で屈指の戦士として名を馳せたジョン・ランボー。しかし終戦後、帰国したランボーに居場所は無く、現在はタイ北部のジャングル地帯で、観光客向けのショーに使う毒蛇を捕獲して売り、ひっそりと暮らす毎日だった。そんな彼の元に、隣国ミャンマーで軍事政権の圧政と苛烈な迫害に苦しむ、キリスト教徒の割合が多いカレン族に、医療品などの救援物資を届けたいというキリスト教支援団が訪れる。リーダーのマイケル・バーネット医師は、ランボーに現地まで船を出してくれるよう要請するが、紛争地域に丸腰で踏み込もうとする無謀な彼等をランボーは相手にしなかった。ランボーを軽蔑して立ち去ろうとしたマイケルを制して、紅一点のメンバー、サラ・ミラーがランボーの説得に当る。必ず世界は変えられると訴える、サラの一途な思いに心を動かされたランボーは、無茶は承知でボートを出してやる事に。しかし目的地に着く途中で、船は海賊に遭遇し、有り金全部とサラを渡すよう要求される。海賊達を皆殺しにして窮地を脱したランボーに、何があろうと人殺しは許されない罪だと怒るマイケル。一団は現地に到着し、マイケルは帰りは陸路を使うので、ランボーの助けは要らないと彼を返す。村人に支援物資を渡し、医療行為を行っていた一団。しかしそこへ陸軍の襲撃があり、殆どの村人達は虐殺され、支援チームの白人達は拉致された。その後、マーシュと名乗る人物がランボーの元を訪れ、拉致されたメンバーを救出する為に雇った、５人の傭兵を先日彼等を降ろした場所まで連れて行ってほしいと依頼する。神の行いの肩代わりを、悪魔の手先にさせるのだと、鼻で笑う傭兵のリーダー。ランボーは案内を引き受けた後、独り剣を打ち、サラを救う為に戦う事を決意していた。第１作「ランボー」(1982)から数えて、４作目にして最終作となる「ランボー」シリーズ。１作目の原作はデヴィッド・マレルの「たった一人の軍隊」"FIRST BLOOD"です。前作となる３作目から、丁度20年目の公開。今回はスタローン自らがメガホンを取っています。暫く日本では話題にならなかったミャンマーの軍事政権ですが、思わぬ自然災害サイクロンの被害で、圧政が再びクローズアップされていますね。この時期に映画が公開になったのは、ミャンマーの置かれた現状に目を向ける、良い切っ掛けだと思います。映画だから過度に脚色されている部分もありますが、逆に映画では描ききれない、更に過酷な現実もあるでしょう。先日新聞の編集後記に、マンションで同じ階に住む男に若い女性が殺害された事件を受けて、まるで戦場のようだと書いてあったのですが、あれを読んだ時、吹き出しそうになりましたよ。今の日本レベルが戦場というのなら、本当の紛争地域は何と表現すべきでしょうね？この世の地獄？それ以上の言葉が見付かりませんが…。全く噴飯モノの超おバカな記者だぜ。脳天にナパーム弾でも落としてやろうか。(；一_一)一遍、ミャンマーに行って、現地の兵隊共に死ぬほどケツの穴掘られてこいってんだよ。そうしたら戦場って単語の意味が、よーく理解できると思うよ。笑。まあ、そんな余談は置いといて、映画の話を致しましょう。真面目な角度から語るのは、敢えてやめよう。戦争の残酷さや、独裁政権下における一般人への虐殺・略奪・暴行ｅｔｃ、帰還兵のＰＴＳＤ問題とか、言い出したらキリが無いので。そんなもん、幾ら語っても答えは出ないし。

  May 28, 2008

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  「僕の彼女はサイボーグ」(2008・日本)　試写

  ５/３１(土)より全国ロードショーです。監督、脚本・・・クァク・ジェヨン 出演・・・綾瀬はるか、小出恵介、桐谷健太、吉高由里子、斉藤歩、田口浩正、遠藤憲一、小日向文世、竹中直人、吉行和子、他。 ・物語序盤・今から一年前。２０歳の誕生日を迎えた大学生のジローは、デパートで挙動不審な美女を目撃する。彼女はジローに笑顔を向けると、洋服や靴を盗んで逃げてしまう。その後、恒例のようにレストランでパスタを食べて、独りで誕生日を祝っていたジローの前に、先刻の美女が現れ、彼のテーブルで一緒に食事を始めた。大量の料理を平らげる彼女も、今日が誕生日だと言う。破天荒な行動でジローを振り回す彼女と過ごした数時間。彼女に恋をしてしまったジローだが、彼女はあっさりと彼の前から姿を消してしまった。それから一年後の誕生日。去年と同じレストランで誕生祝いをしていたジローの前に、再び彼女は現れた。しかし銃を持った男がいきなり店内で発砲し、彼女は超人的な力で犯人を倒してしまう。帰宅したジローの前で、彼女は目から光線を出し、ホログラムの映像を映す。そこには６０年後の自分の姿があり、彼女はジロー自身が作り、未来から彼の元へ送り込んだサイボーグである事が判明する。本来、ジローは今日の発砲事件で重傷を負い、車椅子の生活を送る筈だった。過去を変えた事により、今後ジローに災難が降り掛かるだろうが、サイボーグである彼女が必ず守ってくれると言って、ホログラムは消えた。彼女には人間らしい感情は無いが、一緒に過ごす内に魂を与えられるだろうという話だったが…。　　 何故、敢えて、邦画にクァク・ジェヨンを監督・脚本として迎えたのか、その意図が不明。日本人の感覚に合った映画が撮れない事は明白なのに…。鑑賞前から、ある程度、予想はしていましたが。ジェヨン監督と言えば「猟奇的な彼女」が大ヒットしましたが、邦画の味というのは、彼には理解できない世界ですからね。「僕の彼女を紹介します」を観た時に、こんな彼女紹介してくれなくて良いから…と思いましたが、サイボーグの彼女も別に紹介してもらう必要性は無かったな。韓国の恋愛映画独特の、お笑い要素を織り交ぜたノリと、特に無意味なシーンを延々と映す間怠い時間の流れ。観ていて、日本語喋ってる韓国映画だよ…と、どっと疲れた気分に。兎に角、一つ一つのシーンを引っ張り過ぎ。日本なのに、微妙に日本じゃないし。良く判らん、無国籍映画みたいです。もっとメリハリのあるエピソードを盛り込んで、物語をテキパキ展開させて行かないと、かったるくて早送りしたくなります。韓国恋愛映画のノリと相性の良い人しか楽しめない映画でしょうね。だから若干名ですが、笑っている人はケタケタ笑っていました。私も小ネタでクスっとは笑えましたけど、それも緩いテンポに飽きる前の序盤の間だけ。ダメ男役の小出恵介が、如何にも韓国映画に出てくるダメ男のルックスで、この人が起用された理由が判る気がしましたね。日本で公開せずに、いっそ韓国語で喋らせて、勝手に韓国だけで公開すれば？と言いたくなるようなダルい映画。あと、地震のような災害ネタを軽々しく使ってほしくないですね。不愉快ですよ。丁度、時期的にもタイミングが悪いし。地震というより、日本沈没みたいな完膚なきまでの破壊シーンは、映像的には綺麗だけれど、そんな中にあっても、二人の姿しか映さないカメラ。何十万人という人々が死んでますよ、あの地震では。それなのにお気楽に、二人の恋愛を追い続けるストーリーに呆れ果ててしまいました。お前等の恋愛なんか、どーでもいいって…。皮膚は生体組織を使っていると言っていたくせに、コンクリートの塊の下敷きになっても、傷一つ付かない彼女の顔。鋼鉄製じゃないですか。嘘吐き。(；一_一)日本人監督を起用していれば、もう少し観られる映画になったと思うので残念です。韓流もすっかり廃れたのに、何故今になって、こんな代物を作ってしまうのか…。冒頭に繋がってくる最後の未来の女の子のエピソードも、中途半端で感情移入できなかったな。第一、タイムパラドックスについて、全く考察されていない点が、好い加減も甚だしいと思いました。未来からサイボーグを送ってきた本人が言うように、過去を変えると、運命はその捩れを修正しようとする。その点に言及しながら、次々に都合の良いように起こる筈の事件を未然に解決してしまうサイボーグ彼女、と言うか、そうプログラムした未来の本人…。良いのか？それで良いのか？彼女は何が起ころうとも必ず君を守ってくれるって…、その為なら、大地震で何十万の人が死んでも構わない訳ですか。(－－〆)恋する二人がイチャ付くプロモーション映像だけ撮れれば良い。後の枝葉は深く考えないで、そう言っている監督の言葉が聞こえてきそう。綾瀬はるかは「世界の中心で愛を叫ぶ」(ＴＶ版)に出演していましたが、あれ韓国でリメイクされましたよね(「僕の、世界の中心は、君だ。」)。見事にダラダラとストーリーも何も無い、恋する二人のプロモーション映像に変わっていました。正に、その世界観です。韓国だなぁ、の一言でした。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 26, 2008

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  「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(2005・米/加)

  "A HISTORY OF VIOLENCE"監督・・・デヴィッド・クローネンバーグ 原作・・・ジョン・ワグナー、ヴィンス・ロック 出演・・・ヴィゴ・モーテンセン トム・ストール マリア・ベロ エディ・ストール エド・ハリス カール・フォガティ ウィリアム・ハート リッチー・キューザック アシュトン・ホームズ ジャック・ストール ハイディ・ヘイズ サラ・ストール ピーター・マクニール サム・カーニー保安官 スティーヴン・マクハティ レランド グレッグ・ブリック ビリー ・物語序盤・トム・ストールは、インディアナ州の田舎町で小さなダイナーを経営する善良な市民。妻エディの良き夫であり、息子ジャック幼い娘サムの良き父である。ある晩、トムの店に、拳銃を持った二人組の強盗が押し入ってくる。犯人の一人がウェイトレスを射殺しようとした瞬間、トムは目の前の男を強打し、男の落した銃で一人を射殺、殴った男に脚をナイフで刺されたものの、これも銃で撃ち殺した。この強盗犯は各地で凶行を繰り返している凶悪犯だった。従業員と客の命を救ったトムは、マスコミにも大きく取り上げられ、一躍町のヒーローとなり、ダイナーも大繁盛。だが彼の店に、見るからに堅気とは違う雰囲気の黒服のスーツの男が、手下を従えてやって来る。片目を抉られた傷を持つ男は、トムをジョーイ・キューザックと呼んだ。人違いだと言うトムに、一度は黙って引き下がる男。弁護士である妻エディは、直ぐに保安官のサムに電話をして、彼等の身元を調べてもらう。男の名はカール・フォガティ、フィラデルフィアにシマを持つ筋金入りのマフィアのボスだった。証人保護プログラムを適用されたのかと問うサムに、自分はトム・ストーン以外の何者でもないと答えるトム。だがフォガティーはその日以来、トムや家族の周囲に付き纏うようになり、トムももしもの時は全力で戦うと誓う。エディとサラの前に現れたフォガティは、何故トムが咄嗟に鮮やかに人を殺せたのか尋ねてみよと、不敵な笑いを残して去った。トムはこれまで文句の付け所の無い夫だったが、エディの中にも疑念が生じてくる。 観る前までは、もっと社会派の作品だと思い込んでいました。蓋を開けたら、普通のサスペンスだった。(~_~;)面白かったけど。渋い顔触れを集めた、何気に豪華キャストな映画です。ヴィゴって華やかさに欠けるけど、この役どころでは、控え目な彼のキャラクターが活かされていました。(昔「指輪」の時にテレビに出ていたけれど、とても物静かな人で、普段も見た目の通りの人なんだなぁと。笑。)冒頭に出てくるモーテルに泊っていた怖い二人の男は、何者なんだろう？と思っていました。何の説明も無く、場面が切り替わって、主人公達の話に移ります。成程、そこへ繋がってくる訳かと、暫く観ていると再び登場してきます。ツッコミ所も結構あるのですが、余り気にせずに、楽しめる作品でした。私は自分のパパ、若しくは旦那が、トムみたいな人だったら、ちょっと嬉しいぞ。だって、メチャクチャ強いもん。誰かに嫌がらせされたら、直ぐに言い付けて、シメてもらうもんね。(^_^;)丸腰でも全然問題なし。武装したマフィア達相手でも、一歩も引けを取らない格闘術。殴ったら、鼻もげてるし、凄いの一言だ！強すぎるぜ、ヴィゴ。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 24, 2008

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  「ダイブ!!」(2008・日本)　試写

  ６／１４(土)より全国ロードショーです。 監督・・・熊澤尚人 原作・・・森絵都『DIVE!!』(角川文庫刊) 出演・・・林遣都、池松壮亮、溝端淳平、瀬戸朝香、光石研、蓮佛美沙子、江守徹、他。 ・物語序盤・坂井知季は平凡な中学生。子供の頃に偶然見掛けた飛び込みに魅せられて、ダイビングクラブＭＤＣに通っている。だがクラブは経営難で、存続の危機に立たされていた。そんな時に現れた新コーチが、アメリカから帰国したばかりの麻木夏陽子という元飛び込み選手。彼女は上層部と掛け合い、クラブ経営続行の条件を勝ち取ってきた人物だった。しかしそれは、クラブ内から北京オリンピック出場選手を出すというシビアなもの。麻木はメンバー達に厳しい指導を開始するが、中途半端にしか練習をしていなかった者達は、彼女の方針に反発する。クラブの経営者で専属のコーチ冨士谷の息子・要一は、中学生チャンピオンの実績を持つエリート選手。それに引き替え、知季は全く目立たない選手だったが、麻木は彼には"ダイヤモンドの瞳"があり、鍛えれば必ず伸びると宣言。俄然やる気を出した知季は、家でも基礎練習に励むが、付き合っていた彼女とは溝が開いてしまう。クラブの仲間や学校の遊び友達からも冷たくされ、更に麻木は強化メンバーとして、津軽の野性児・沖津飛沫をスカウトしてくる。沖津の祖父は日本屈指の飛び込み選手だったが、戦争の為にオリンピックに出場出来なかった悲劇のダイバーでもあった。彼女を弟に取られ、一時はやる気を失い掛けた知季だが、瞬間視力を活かして、高難度な技に挑戦せよという麻木の言葉に奮起するのだった。観る前は、可愛い男の子達を使った、単なるアイドル映画だろうと高を括っていました。チクショー、熱いじゃん！！主役級の三人は、三ヶ月間飛び込みの猛特訓をしたそうですが、意気込みが伝わってきました。演技も基礎はちゃんと出来てるし、映画として入り込める作品です。確かに、出来すぎたストーリーではあるのですが、真剣な競技シーンに、こちらも興奮してきます。三人それぞれの物語や背景も、丁度良い具合に、筋書きに溶け込んでいて、脚本も綻びが無い。津軽から来た野生派の沖津クンが、お前は本当に中学生か？という位、大人びてるんですが。(^_^;)彼女とも大人な恋愛してるし。笑。一言で言って、面白かったー！同世代の子達は勿論ですが、大人でも十分楽しめると思います。熱く生きるって良いよな、と思える一本です。主役の坂井知季を演じる林遣都クンは、「バッテリー」で日本アカデミー新人俳優賞を受賞、孤高のエリートダイバー富士谷要一を演じるのは、「ラストサムライ」「砂時計」にも出演している池松壮亮クン。こういう確り演技の出来る実力派の若手を起用した事が、成功の一因でしょうね。野性児ダイバー役の溝端淳平クンについては、俳優業はこれからという子でしたが、役柄が寡黙なタイプという事もあって、若干演技面で劣るのは感じられましたが、然程、違和感も無く無難にこなしていました。全員、腹筋パックリで、猛特訓の成果が一目瞭然です。飛び込みの姿勢も綺麗に決まってましたし。子供でも、プロって凄いなと。ストーリーは前述の通り、それは出来過ぎ…と言わざるを得ない部分も多々あるんですけど。ぶっちゃけ、潜在的な素質があっても、数ヶ月という短期間で、それまで全く目立たなかった選手が、世界に通用する程の実力を付けるというのは無理でしょう。そんな事が可能なら、何年も必死に地道な練習をしているトップクラスの選手は報われませんよ。(^_^;)でも直向きに頑張る健気な姿を見ていると、思わず応援してしまうんですよね。映画だし、コンパクトに楽しめたら良いかと。笑。"ダイヤモンドの瞳"とは、並外れた動体視力みたいなものです。高速で移動する景色を静止画のように捉える事が出来る能力で、飛び込みに於いては、常に自分の位置や飛び込みポイントを視認出来るので、非常に重要な才能。それまでの人生で、誰から期待された事も、自分に何かを期待した事も無かった知季。親に自分にどうなってほしい？と尋ねたら、真っ直ぐ健康に育ってくれれば良いわよ、なんて返事が返ってくる。何の為に生まれて、何の為に生きているのか判らない。自分がとても小さなツマラナイ枠に閉じ込められた存在に思える。一方、幼い頃からコーチである父に、マンツーマンで英才教育を受けてきた要一も孤独だ。確かに、苟も競技の世界に身を置く者ならば、孤独を恐れてはいけない。お友達と仲良く、お手々繋いでゴールイン出来る訳はないのだから。彼はそれを良く理解している。それでも父を父と呼べない寂しさは、心の隅から無くならない。そとてクラブ存続の為に、自分の挑戦したい技には挑めず、ミスの無い機械的な演技を要求される。自分にとって、飛び込み選手である事の意味は何だ？最後に、悲劇の飛び込み選手と言われた天才ダイバーを祖父に持つ飛沫は、祖父の見た世界を自分の目で見てみたいと望んでいる。点数を稼ぐだけの守りの飛び込みはしたくない。しかし独り腰の故障に苦しみ、一時は競技から身を退く決意をする。祖父の得意技だった、ただ両手を広げて飛ぶだけのスワン・タイブは、単純だが美しい。(モノクロのビデオに映っていた男性(祖父役の人)のスワンダイブは、本当に鳥が舞い降りるようで目を奪われました。)彼等はそれぞれに、自分を縛っていた枠を超え、新たな次元へと飛鳥した。飛び込み台から着水までの、ほんの数秒間に己の全てを賭ける。今迄、地味な競技だと思っていた飛び込みでしたが、ワクワクしながら見入ってしまいました。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 23, 2008

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  「最高の人生の見つけ方」(2007)

  只今、公開中です。"THE BUCKET LIST"監督・・・ロブ・ライナー 出演・・・ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン、ショーン・ヘイズ、ビヴァリー・トッド、ロブ・モロー、アルフォンソ・フリーマン、ロイナ・キング、他。 ・物語序盤・カーター・チェンバーズは、結婚以来４０年間、自動車整備士として働き、家族を大切にしてきた実直な男。彼の趣味は雑学で、クイズ番組を見るのが大好き。そんな彼の元に病院から、検査の結果が齎される。癌を宣告されて、茫然と立ち竦むカーター。一方、大富豪のエドワード・コールは、自らの持つグループ経営の病院の傘下に、経営難の病院を加える為の法廷に出席していた。しかし咳き込んだ際、ハンカチには鮮血が…。図らずも、自分の所有する病院に入院する事になったエドワード。彼の経営方針は、病院に贅沢は無用。よって例外なく一室二床というもの。エドワードが入院する事になった病室には、先客であるカーターが居た。個室にしろと、忠実な秘書のトマスに命ずるエドワードだが、病院の方針をオーナー自身が変えてはいけないと却下される。エドワードの癌は全身に転移しており、余命は六ヶ月、長くもって一年と診断された。医者の殆ど居ない病院で、自分の病状すら教えてもらえずにいたカーターも、エドワードから叱責された医師から、同様の診断結果を言い渡される。エドワードはカーターが遊び半分でメモしていた、死ぬまでにしたい事を列挙した"棺桶リスト"を見て、実行しようと言い出す。苦しい化学療法を続けて、空しく死んでゆくのを待つより、最後くらい自分のやりたい事をやるべきだと言うエドワードに、カーターも同意し、二人はカーターの妻バージニアの反対を押し切り、人生最後の冒険旅行に出掛けるのだった。思いの外、混雑していましたね。客層はやはり年配の人が多い。皆、共感できると思って観に来るのかな？安全牌作品だから、普段映画を観ない人達には、この程度でも満足できるかもしれない。逆に映画好きから言うと、在り来りで物足りない感も否めません。予想の範囲を超えるものではありませんでしたが、無難に纏めてきたなという印象ですね。旅の途中、少しだれてしまう所もありましたが、全体的には可のレベルでしょう。最後はちょっと泣けるかなという程度。一番お気に入りのキャラクターは、秘書のトマスでした。しかし、たとえ死の間際でも、自分の願い事を全部叶えてくれる大富豪に会えるなんてラッキーよなぁ。因みに、アルフォンソ・フリーマンはモーガン・フリーマンの息子です。親の七光で映画出演。性格的には、私はエドワード寄りでしょうね。神も信じなければ、助言者も求めていない。自分の人生の舵は、絶対に他人には握らせない。生き方も死に方も、自分で決める。きっとそれは、とても孤独でハードな人生だと思うけれど。家族に囲まれて夕食を取るカーターと対照的に、若い女二人をホテルに呼びながら、窓の外を向いて泣いているエドワード。自分もきっと、死が迫った時、独り咽び泣くんだろうなと思いながら、でもやっぱり、私はエドワードのようにしか生きられないし、そう生きたいと望んでいると思いました。この映画を観ながら、ぼぉーっと考えていた事。人は独りだよ。みんな、独りで生まれて独りで死ぬ。そして人生はその人のもの。自分を殺して家族に尽くすのも、思いのままに生きるのも、どちらも自分の選択。最期の時に、色々悔む所もあったけど、自分の選択は、まあ良かったんじゃないの、と納得して死んでゆけたら本望だ。カーターとエドワードは、最後の旅を終えて、自分が納得できる答えに行き着いたと思う。個人的に鬱陶しいと思ったのが、エドワードの妻バージニア。これはアメリカ女性の一般的な考え方なのかな？割りと日本人女性って、配偶者の希望を叶えてあげたいって気持ちが強いですよね。でもバージニアは、夫が旅行に行く事を反対して、私達家族の傍に居てと言い張る。彼女の妊娠が判って、志半ばで大学を中退し、不本意な自動車修理工の職に就いて、それでも４０年、文句一つ言わず、妻子を養ってきた。その夫が死を間際にして、たった一度だけ、自分のやりたかった事をする旅に出たいと望んでいるのに、未だ家庭に縛り付けるのか？やな女～って思っちゃった。(^_^;)私だったら、よっしゃ行ってこい！と景気良く送り出しますけどね。それで、もし出来れば、自分も同行したいぞ、あの旅行なら。笑。旅の間は、夫婦である事は忘れるからさ。お互い干渉なしの自由行動で。一番お気に入りキャラは、秘書トマスと書きましたが、キュートなんですよね。多分、傍に仕えるには、灰汁が強過ぎるエドワードの毒舌を、ひらりとかわして、確り言う事は言う。実に有能な秘書であり、忠義の心を持つ部下です。オープニング・エンディングでも、実はとても大きな役割を果たしている彼。オープニングから、あんな険しい場所を歩いているのは誰なんだろう？と思っていたら、彼でしたか。ナレーションは終始カーターなので、エドワードが先に死ぬのかな？と思いきや。死人に死後の話まで語らせるのは、ちと反則かもしれないね。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 22, 2008

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  「ハードキャンディ」(2005)

  "HARD CANDY"監督・・・デヴィッド・スレイド 出演・・・パトリック・ウィルソン、エレン・ペイジ、サンドラ・オー、ジェニファー・ホームズ、ギルバート・ジョン、他。 ・物語序盤・出会い系サイトのチャットで３週間ほど会話し、意気投合したヘイリーとジェフは、カフェで待ち合わせる約束をする。ヘイリーは未だあどけなさの残る外見と大人びた話し方をする１４歳の少女。一方、ジェフは３２歳のプロの写真家だった。暫く楽しくお喋りをした後、ヘイリーはジェフの家に行きたいと言い出す。まんざらでもないジェフは、好奇心旺盛で無防備な少女を自宅へと連れ帰った。父親が医学部の教授だと言うヘイリーは、ジェフの出した飲み物に、父から中身の判らないものを口にしてはいけないと注意されていると言い、自分でスクリュー・ドライバーを作って、ジェフに手渡す。その後、自分の写真を撮ってほしいとはしゃぐヘイリーにカメラを向けるジェフだが、気分が悪くなり、意識を失ってしまうのだった。そして目覚めた時、ジェフは椅子にロープで縛り付けられていた…。　ハードキャンディとは、堅いけれど噛むと脆く壊れるお菓子。俗語では、興奮時の男性器を意味します。またヘロインの隠語でもあります。作品を端的に示す、絶妙なタイトルだなと思いました。実にスリリングで面白い映画でした。ほぼ主役の二人のみで繰り広げられる密室劇。低予算でも脚本が面白ければ、傑作を作れる。やっぱり脚本は映画の要だなぁ、と実感しました。スリラーとしても一級品ですが、その陰に隠れた痛切なメッセージも心を砕く。男が最後に問う。「お前は一体、何者だ？！」と。私は全ての少女。残虐な大人の男達に、殴られ犯され殺された、全ての少女。年端も行かない少女の性に群がる、心の歪んだ下劣な大人の男達。性犯罪に巻き込まれる青少年は後を絶たない。この映画の面白さは、真実が最後まで判らず、観客も判断に迷い続ける点にあります。見た目や言動からは、良識を弁えたプロのカメラマンのジェフ。以前、不幸な事件に巻き込まれたのであろう、精神の均斉が取れていないような少女ヘイリー。薬の混入された飲み物を飲んで、気を失ったジェフが目を覚ますと、彼は椅子に縛られ身動きも取れない状況に陥っていた。ヘイリーはジェフを小児性愛の変質者と断じて、部屋中を漁り、その証拠となる物を見付けだそうとする。カメラマンなので、モデルの写真を飾ってあるだけ、本職は風景写真を撮る事だと、必死に彼女を宥めようとするジェフ。しかしヘイリーの行動はエスカレートする一方。また気絶させられたジェフが意識を取り戻すと、テーブルの上で下半身は裸、股間には氷のパックが…。行方不明で捜索願いのポスターが貼られている少女の写真を見付けたヘイリーは、ジェフが犯人であるとして、彼に去勢手術を施すと宣言する。カフェで偶然会って、スナップ写真を撮っただけと、絶望的な状況でヘイリーに訴えかけるジェフ。本当に最後の最後まで、ジェフが失踪事件に関わっている残忍な変質者か否か判りません。単に年下の女の子が好きな、犯罪性の無いロリコンなだけかもしれない。(彼を捨てた元恋人は、成人女性ですが。)だから、ハラハラして、最後まで目が離せません。去勢手術の映像が全然映らなくて、一体、少女の手元ではどんな行為が行われているのだろうと、凄く気になりました。見えない事も、後々の伏線で、ちゃんとした意味があるんですけどね。ツッコミ所と言えば、幾ら意識を失っているとは言え、１４歳の少女の力で大の男を台の上に運んだり、天上の柱にロープでぶら下げたり出来るというのは、絶対に無理があります。まあ、その程度の事は流しましょう。あと、ご近所さん役で、日本人の奥さんが登場するのですが、明らかに中国人の顔だろ…。同じアジア民族でも、微妙に骨格は違うんだよ。兎に角、こいつは良く計算された脚本に練り込まれたプロット、実に面白い映画だ。手に汗、握りました。(*^^)v↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 17, 2008

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  「ディセント」(2005・英)

  "THE DESCENT"監督、脚本・・・ニール・マーシャル 出演・・・シャウナ・マクドナルド、ナタリー・メンドーサ、アレックス・リード、サスキア・マルダー、マイアンナ・バリング、ノラ＝ジェーン・ヌーン、オリヴァー・ミルバーン、モリー・ケイル、他。 ・物語序盤・ハードなアウトドアレジャーが好きなサラ達は、いつも集まって冒険を楽しんでいた。仲間のベスとジュノーの三人で激流下りをしたサラは、夫ポールの運転する車で帰路に付く。しかしポールは何か思い悩んでいる様子で、前方不注意から交通事故を起こしてしまう。　その事故で、サラはポールと最愛の娘ジェシーを失った。それ以来、ショックから立ち直れないサラを仲間達は心配していた。ジュノーは彼女を励ます会として、アメリカはアパラチア山脈にあるチャトゥーガ国立公園内のボアム洞窟探検を企画する。参加したメンバーは、冒険好きのタフな女性ばかり六名。だが真の探検を求め、功名心に逸るジュノーは、洞窟に入る前に地図を車に置いてくる。ロープを伝って、銘々に地下洞窟へと降下してゆくメンバー達。下調べと進路が違うと訝る仲間も居たが、ジュノーの連れてきた新入りメンバーのホリーは先走る性格で、狭い穴でも迷わずに突き進む。狭い進路を進む際、しんがりを務めたサラは穴に挟まってしまい、その後運悪く岩板が崩落して、一行は退路を断たれてしまった。更に、彼女等の入った洞窟が、当初予定していたものではなく、ジュノーの独断で前人未到の名も無き地下洞窟だった事が判明する。救助隊の希望も無く、地下3000メートルという洞窟の中、別の出口を探して歩き回る一行。ずっと何かの気配を感じて、独り辺りを見回っていたサラは、洞窟の奥に白い人影らしき者が動くを目撃する。 面白かったです。笑えた。笑う映画じゃないけど、このネタで真面目に作っている所が笑える。こんな洞窟があるなら、是非私も行きたいです。完全武装して、奴等と戦いたいですねぇ。動きは俊敏ですが、割りと雑魚敵なので、銃器ではなく、剣や斧などでの格闘がベストでしょう。公開前から、怖いと話題になっていたホラーでした。楽しみにしていたのですが、結局、映画館には行けず、今頃鑑賞する事に。率直な感想。これ、怖いですか？何処が怖いですか？私にはギャグとしか思えなかったのですが。(^_^;)でも娯楽としては、ノンストップで面白いので好きです。中盤までは、人間の心の汚さと、「この洞窟は何？」という怖さで引っ張り、"白い奴等"が登場してからは、只管、激闘の連続。この映画の困ったちゃんは、アジア系のジュノ。オープニングで、主人公サラの旦那と何やら怪しげに視線を交わして、この二人が不倫関係にある事を示唆します。彼女の事で思い悩んでいた旦那ポールは、心ここに在らずの状態で車を運転していて事故る…。前方から来た車に乗っていた金属のポールがグサッ！で、憐れ愛娘は顔面串刺し～で即死。旦那の方は刺さった映像は映らず、生死が判らなかったのですが、その後の話の内容から、一緒に亡くなった模様。あの事故で傷付いたのは、サラだけじゃないのよ！と逆切れしていたジュノ。止せば良いのに、友情と後ろめたさと功名心の入り混じった複雑な気持ちで、サラを励ます会を企画。でも皆を騙して、前人未到の大洞窟へ連れて行くという迷惑極まりない女です。メンバーの一人が洞窟の入り口を見て、トゥームレイダーじゃないのよ…とビビっていましたが、正にそこは、ララ・クロフト並の戦闘能力が無ければ、生還出来ない恐怖の地下洞窟でした。トラブルメーカー・ジュノのせいで、どエライ目に遭ってしまう一行。悪役っぽいですが、独り逸れたサラを見捨てられないと、彼女を探す友達思いの一面もあります。でも瀕死のメンバーから、ジュノと亡夫の関係を知ってしまったサラは…。ラストは出口に辿り着いたのかー、と思わせといてのバッドエンディング…。そしてまた前人未到の地下洞窟は、未踏の地として、奴等の住処であり続けるのであった。まあ、ホラーとしてあるべき結末でしたね。ところで奴等は、元は人間だったのでしょうか？↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 13, 2008

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  「少林サッカー」(2001・香港)

  "SHAOLIN SOCCER""少林足球"監督・・・チャウ・シンチー、リー・リクチー アクション監督・・・チン・シウトン 出演・・・チャウ・シンチー、ン・マンタ、ヴィッキー・チャオ、パトリック・ツェー、カレン・モク、セシリア・チャン、ヴィンセント・コック、ウォン・ヤッフェイ、チャン・クォックワン、他。 ・物語序盤・"黄金の右"と呼ばれるサッカー選手のファンは、チームメイトのハンが持ちかけた八百長試合に荷担したことがきっかけで、自慢の脚を折られてしまった。それから20年の月日が流れ、ハンがサッカー界の首領として君臨する一方で、ファンはハンの雑用係に身を落としていた。ハンと口論になったファンは、かつての八百長試合がハンが仕掛けた罠だった事を知る。ハンへの憤りを胸に、街を彷徨っていたファンは、不思議な青年シンと出会う。少林拳法を信奉するシンは、くず拾いをしながら少林拳を熱心に説いて回っていた。脚が不自由でも少林拳は習えると指摘されたファンは怒り、思わず手にしていた缶を投げ付けるが、シンはそれを空のかなたへ蹴り飛ばす。その後シンは、饅頭屋の店頭で、太極拳を使って絶品の饅頭を作るムイと出会う。誰にでも気さくなシンは、同じ中国拳法の使い手としてムイにも友好的に接するが、吹き出物のせいで、醜い赤ら顔になっている彼女は心を閉ざしていた。だが優しいシンと接する内に、ムイの頑なな心は少しずつ開き、彼に淡い気持ちを抱くように。一方ファンは、以前シンが蹴り飛ばした缶がレンガ塀にめり込んでいるのを発見し、シンの恐るべき脚力に気付く。サッカーへの情熱を取り戻したファンは、サッカーチームを作る事をシンに持ちかけた。敬愛する少林拳を広める好機だと考えたシンは、かつて少林寺で共に修行した兄弟子達をスカウトしに行くが…。巷では、少林寺拳法が流行りなのか、「少林●●」「カンフー●●」というタイトルの映画が矢鱈多いな。笑。前から観てみたかったのですが、機会に恵まれず、漸く鑑賞。一言で言えば、有り得ねー映像と展開で笑わせるおバカ映画なんですけど、意外とじわっと来たりして。なんか良い話だったかもと。(^_^;)良い人なんだけど鈍感なシンを想い続ける、ムイの健気な乙女心が可愛くて、判ってやれよ～と画面の前で、シンの馬鹿！とヤキモキしてしまいました。吹き出物がいっぱいあって、真っ赤な顔になってしまってる女の子が、恋にどれだけ臆病か。人間顔じゃないなんて言うけど、実際に人は見た目で判断されるものです。自分に自信が持てなくて、いつも俯いて歩いてしまう気持ち。心を閉ざして、引っ込み思案になってしまう気持ち。自分は女として欠陥品だからと、道化役を演じ続ける気持ち。コンプレックスを持っていない人には、全く判らない気持ちだろうけど。あれはブサイク・メイクで、ヴィッキー・チャオは可愛いアイドル女優だってのは判っていても、切なくて胸にグサグサ矢が刺さりましたよ。後ろからシンを蹴飛ばしてやりたかったわ。笑。アホ映画で思い切り笑うつもりが、胸が苦しくなってしまった。(T_T)サッカーシーンのＣＧ映像は、馬鹿馬鹿しくてナイスでした。お前等にサッカーは無理、という連中なのに、いきなり覚醒して、少林寺拳法の心を思い出して、神技プレーヤーになってるし。笑。敵も味方も、馬鹿馬鹿しい連中ばっかりで、くっだらねー！と思いつつ、つい見入ってしまう映画です。でもヘンテコ映像だけじゃなくて、お話としても面白くて、ストーリーは単純なんだけど、心が温かくなったりして、結構良い映画じゃんと、全体的に高評価でした。エグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねている、現在公開中の「少林少女」はかなりダメダメな映画のようですが。汗。チャウ・シンチーは好きです。これからも頑張って下さ～い。 ↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 12, 2008

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  「大いなる陰謀」(2007)

  http://movies.foxjapan.com/ooinaru/"LIONS FOR LAMBS"監督・・・ロバート・レッドフォード 出演・・・ロバート・レッドフォード マレー教授 メリル・ストリープ ジャニーン・ロス記者 トム・クルーズ アーヴィング上院議員 マイケル・ペーニャ アーネスト デレク・ルーク アリアン・フィンチ アンドリュー・ガーフィールド トッド・ヘイズ ピーター・バーグ ファルコ中佐 ・物語序盤・イラク戦争開戦以降、共和党の支持率は下降する一方だった。初当選時、共和党のホープとマスコミで取り上げられ、大統領の椅子を狙う野心家の上院議員アーヴィングは、ニュース番組のベテラン・ジャーナリスト、ジャニーン・ロス記者を指名して、独占インタビューをさせる。彼は対テロ戦争打開策として、アフガニスタンンへの少数部隊での斬り込みと誘き出しを提案し、大統領の側近となった。アーヴィングは旧知のジャニーンに、アフガニスタンへの秘密作戦の情報を流し、特ダネとして報道するよう誘う。ジャニーンは彼の巧みな甘言の裏に、仕組まれた真実を察知し、ジャーナリストとして国民に知らせる義務を感じる。その一方、大学で教鞭を取るマレー教授は、最近出席率が悪くなった学生を呼び出して面談する。裕福な家庭に育った白人である彼は、講義開講当初は優秀な生徒で熱心に授業に出ていたが、醜い世界の現実を前にして、学習への意欲を失いつつあった。マレー教授は彼に、今後一切授業に出ずにＢの成績を貰うか、自分の提示する他の条件を取るかと選択を迫る。マレー教授はかつて有望な教え子で、兵役に志願して入隊したアリアン・フィンチとアーネスト・ロドリゲスの話をする。彼等は正に、アーヴィングの立案した作戦に参加し、アフガニスタン上空へとヘリで向かっており、そこに待ち伏せしていた武装集団によって攻撃を受ける。狙撃されヘリから転落した相棒を見て、アリアンは雪原へと飛び降りるが…。 タイトルから予想するような陰謀絡みの戦争映画ではなく、イデオロギーを語り続ける内容でした。ドンパチ映画ではないので、娯楽を求めて観ると裏切られます。アクションは殆ど無く、政治思想について考えさせられる映画です。私は好きですが、解決策は何も示されず、見方によっては、救いの無い話かもしれません。ただ、現実の社会とはこんなものなので、改めて驚く事はないですが。日本人の政治離れについては、個人的に昔から苦々しく感じていましたが、アメリカ国民も似たようなものなのですね。また民主国家のなれの果て、という単語が浮かびました。国民は何も考えず、施政者達の用意した動物園の檻の中で、自分を自由で幸福な存在だと信じて、見えない檻の中でせっせと働き、税を納めて暮らしていれば良い。上層部が望むように思考し、彼等の手の内の中で行動する有益で無害な家畜。日本人はずっと、そうなるよう調教されてきたし、多くの国民が現実に、何の疑いも持たない、国家の思い通り、飼い葉桶に首を突っ込んでは己の欲望のみ満たす、無知で従順な家畜として暮らしてきた。まあ、最近は泥船ニッポンが沈没仕掛かっている現実を、流石に政府も隠しきれなくなってきて、国民も自分の利害に関する範疇では怒り始めていますが。(^_^;)でも、もう手遅れかと…。沈みつつある泥船の上で、未だ泥試合を続けている政治家も怖いけどね。各々早い所、ノアの方舟を用意した方が賢明でしょう。それとも、この国と共に沈みますか？でも劇中でレッドフォードが、エリート学生に言っていたよね。街頭でビラの一枚配るなり、ポスターの一枚でも貼ってこいと。憤って空論を吐いているより、ずっと生産的な行為だと。百の議論より、一つの行動の方が、ずっと価値がある。確かに、その通りだ。戦場に行って、銃をぶっ放したくなってきたぞ。笑。トム・クルーズは今回は所謂、悪役的な位置に居ます。大統領の席に近いと言われる、野心家の共和党議員。選挙で票を集める為に、新たな軍事作戦を立案して、イラク戦争で失墜した国民の支持を取り戻そうと考える。作戦内容は、少数部隊を囮として敵地に配置させ、敵を誘き寄せるというもの。アーヴィング上院議員は、勝つ為ならば、どんな手段も厭わないと言い切った。彼が勝ちたいのは、対テロ戦争ではなく、勿論、合衆国内の選挙戦である。一流大学の優秀な学生でありながら、兵役に志願した二人の若者は、黒人とメキシコ人、つまりマイノリティーのグループに属する。彼等は恵まれた白人学生とは違う。学費も奨学金で賄われており、卒業後に大きな負債を抱える事になる。しかし軍隊に志願して、一定期間の兵役を務めれば、学費の返済が免除される。彼等にとって、兵隊への志願は、命に関わるリスクではあるが、大いなるメリットでもあるのだ。けれども彼等を待ち受けていた運命は残酷だった。無謀な作戦に参加させられた二人は、敵地の真ん中で負傷し孤立する。敵兵達は彼等を生け捕りにしようと、遠方から取り囲んで機会を窺っている。軍は、上空からレーダーで彼等の動きを確認しているものの、救助は出さない。名指しの独占取材で、アーヴィングから軍事作戦について話を聞いた記者ジャニーンは、選挙の為の無益な派兵であるのを見抜きながらも、上司からそれを報じる事を禁じられる。彼もまたかつては、正義と信念を貫いていたジャーナリストだったが、既にその志は失せていた。ジャニーンももう若くはない。不正を暴露して今の仕事を失えば、次に彼女を雇用するマスコミ関連の企業は無いだろう。結局、彼女も議員が伝えたがっていた、表向きの情報のみを報道する事しか出来ないのだ。敵地に取り残され、見捨てられた二人の末路は悲しいが誇り高かった。ただ一点、とても気になったのは、アフガニスタン側の正当性が一切考慮に入れられなかった事。彼等は最後まで、「敵」であり「悪」としてしか捉えられていない。彼等には彼等の正義があり、信念がある。過酷な状況下で、命懸けで戦っているのは同じ事。徹底してイデオロギーを論じるのならば、敵とされている人々の言い分も取り入れるべきではなかろうか。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 11, 2008

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  「ＮＥＸＴ -ネクスト-」(2007)

  http://next-movie.gyao.jp/"NEXT"監督・・・リー・タマホリ 原作・・・『ゴールデン・マン』フィリップ・Ｋ・ディック 出演・・・ニコラス・ケイジ クリス・ジョンソン ジュリアン・ムーア カリー・フェリス ジェシカ・ビール リズ トーマス・クレッチマン スミス トリー・キトルズ キャバノー ピーター・フォーク アーヴ ホセ・ズニーガ ジム・ビーヴァー ・物語序盤・クリス・ジョンソンはフランク・キャデラックという芸名で、ラスベガスの二流ステージに立つマジシャン。彼には自分に関する２分先の未来を予知できる能力があった。子供の頃から研究機関で、厭と言うほど研究材料にされて育ったクリスは、今は目立たずに小銭を稼ぎながら生きている。ある晩、いつものように予知能力を使って、カジノで小額の賭けで勝っていたクリスは、監視室で自分が疑われている事を察知する。予知能力を駆使して、巧みに警備員の追跡をかわしたクリスは、客の車を盗んで長年付き合いのあるアーヴのアジトに潜り込む。一方、ＦＢＩ捜査官カリー・フェリスは、テロリストが合衆国に持ち込んだ核爆弾の行方を追っていた。テロリスト集団はロサンゼルス爆破計画を企てているようだったが、潜伏先は全く判らぬままだった。クリスの予知能力を突き止めたカリーは、彼を捕獲してテロリスト達の動きを予知させようと考える。だが彼女の来訪を見越していたクリスは、面倒事に巻き込まれたくないと、寸での所で逃亡。クリスには一つ気になる事があった。普段は２分先しか予期できない未来だが、あるダイナーで遭遇する筈の若い女性に関してだけは、ずっと先の未来が見えるのだった。それがどういう意味なのか、付き止めようとしていたクリスは、危険を冒して、ダイナーに通い続けていた。そしてついに、その女性リズは彼の前に現れた。　ここからまた仕切り直しか～？と思った瞬間に終わりました。(~_~;)正直、またやり直すには長過ぎると思いましたが、唐突にエンディングでビックリもしました。意表を突く結末だったなぁ。しかし結局、リズはどうして特別だったんだろう？そこの説明はなされないままだった気が…。オープニングのテロップで、ピーター・フォークの名前が出で、お懐かしや！となりました。残念ながら、"and"枠での特別出演なので、登場は序盤のみです。もっと物語に絡んでほしかったですね。ポイントは、クリスの見える未来はクリスに関わる事だけという事。そして、未来とは、その時点での未来であって、その時取った行動によって、刻一刻と変化してゆくものだという事。クリスの予知できる未来の範囲は２分以内。これは使える能力なのか…？せめて５分、いや、１０分は欲しい。２分では、本当に目前に迫った危機しか回避できないよ～。それでも、与えてやると言われれば、喜んで頂戴致しますが。しかし競馬で大穴当てようにも、２分先では馬券も買えないけど。映画はそこそこ面白かったです。そこそこ、まあまあ、普通に。ニコラス・ケイジの髪型が微妙で、失笑しそうになるんですけど。笑。ＦＢＩ捜査官のカリー、テロリストを探す切り札として、２分先しか予知できない男を、そこまで必死に執拗に追い掛けなくても…。そんなチンケな能力じゃ、余程上手く使わないと、テロリストを出し抜けませんよ。彼女がクリスに拘る事に説得力がありませんでした。しかしテロリスト達との攻防戦となる終盤では、そんなに便利な使い方も出来るのか、と驚きましたけど。一所に立ち止まって、四方八方に念を飛ばすクリス。２分先なら、一度に何通りもの未来を見る事が出来るのか。分身の術みたいになってて、凄かったです。敵を追い詰めさえすれば、短時間の未来予測でも、充分利用価値がありますね。絶対に殺せないもんね。ここで撃たれると判れば、さっと身を翻す。でも、至近距離から何発も撃たれて、全ての弾丸を避ける妙義には、目が点でしたけど。幾らなんでも、あれは人間の運動能力を超えております。完璧、マトリックス状態じゃん。期待していたほど、面白い作品ではなかったな。観ている間は普通に楽しめるんですけど、なんか不完全燃焼で、印象に残らない映画ですね。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 10, 2008

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  「王妃の紋章」(2006・中国/香港)

  http://wwws.warnerbros.co.jp/ouhi/"CURSE OF THE GOLDEN FLOWER""満城尽帯黄金甲"監督・・・チャン・イーモウ 出演・・・チョウ・ユンファ、コン・リー、ジェイ・チョウ、リィウ・イエ、リー・マン、ニー・ターホン、チェン・ジン、チン・ジュンジエ、他。 ・物語序盤・　唐王朝が滅亡した10世紀、五代十国時代の中国。国王を頂点とする絶対権力に支配され、栄華を極めた国。だが宮廷内部には不穏な空気が漂っていた。元将軍で前国王の娘を王妃とする王には、三人の王子が居た。亡き妻との間に儲けた長男・祥と、王妃との子である次男・傑と三男・成。しかし夫婦の仲は冷え切っており、王妃は生さぬ仲の祥王子と三年前から不倫関係にあった。だが祥は彼女を拒絶し、医師の娘・嬋と恋仲に。王は病気がちな王妃を気遣い、自ら薬を処方して、毎刻彼女に煎じて飲ませ続けていた。しかしその中身は、微量のトリカブト。王妃の命を受け、薬の中身を探っていたのは、医師の妻で顔に罪人の証である烙印を押された女。しかし捕えられた彼女を見た王は驚き、彼女を釈放する。一方、赴任先から戻った武勇に優れた王子・傑は、母の衰弱を見て心を痛めていた。父王によって毒を盛られていると、母から聞かされた傑は、何とか彼女を救いたいと決意する。そして王妃は、重陽の祝典を前にして、混濁しつつある意識と格闘しながら、取り憑かれたように、菊の刺繍で紋章を作り続けていた。また、無邪気に両親を慕っていた成の心にも、いつしか闇が広がってゆくのだった。観終わった直後の感想。みんな、家族なんだから、もっと仲良くしようよ…。(^_^;)初めてタイトルを聞いた時、某長寿少女漫画が映画化されたのかと思いました。笑。張芸謀監督作品でしたか。物凄くセットが豪華絢爛で、何処を見ても金ピカです。某所で書いている駄文の参考に、パンフを買って帰ろうかと暫く悩みました。でも私が知りたいのは、物の名前なので、写真だけではなぁと。汗。映画は一応、時代モノですが、架空の物語。服装なども自由で、今風にアレンジされています。最初のシーンで、王宮の女官達が朝起きて着替えをしますが、彼女等の制服は見事に胸を盛り上げて見せる形で、西洋のドレスを彷彿とさせます。そんな露出の多い衣装、この時代に有り得ないだろ…と思いつつ、ファンタジーだし良いかと。一番腹黒い国王を演じている俳優さん、髭を蓄えていたので、家に帰ってキャストを調べるまで、チョウ・ユンファだと気付きませんでした。通りで、悪人のくせに、正義の鉄槌が下らん訳です。彼は元々は軍人上がりで、妻子ある身だったのですが、己の野心を満たす為、妻の一族に濡れ衣を着せ、始末してしまった男。その後、国王の姫と結婚して、まんまと王座を手に入れたのですが。王になってからは、権力を恣にして、絶対君主として君臨しております。気に入らない王妃に、何年もちびちびと毒を盛る。一方王妃は、毒を毎刻飲まされていると判っていても、王の処方してくれた薬とあらば拒絶できない。えーん、王宮って怖いよ…。殺される前に、形勢逆転を狙う王妃は、菊の紋章を苦しい息の下で刺繍し続ける。それは密かに決起しようと企む反乱軍の徽章。それぞれの登場人物が、ドロドロな関係で繋がっています。王妃は王の先妻の息子とデキているが、彼は医師の娘に心変わり。王妃は彼等の仲に激怒しますが、その理由は嫉妬ではありません。王妃の命を受けて、薬の中身を調べていた間諜の顔には、罪人の証である焼印が。彼女は報酬を受け取らず、王妃ならば奴に復讐してくれるから協力したのだと答える。しかし姿を見咎められて、彼女は囚われの身に。彼女を見た王は、二十年ぶりだろうか等とぬかしている。この間諜、現在は医師の妻となっているのですが、正体は察しが付くでしょう。戦闘シーンはスケールが大きいですね。王宮前の広場でのモブシーンは圧巻です。遂に決起した反乱軍。そのリーダーは王妃の第一子・傑。毒と知りつつ、薬を飲まされている母を救いたい一心で、父に反旗を翻した王子。最初に、王はこの勇猛で正義感の強い息子に告げていた。余が与える物以外を欲してはならない、と。王の軍隊の方は、一体何処に隠れる場所があったんだよ？とツッコミ入れたくなります。防御壁のような物がずらーっと出てくるのですが、そんな大きな物、隠せる場所無かったでしょ…。ついでに、影の薄かった末の王子・成も、俺を子供扱いして蔑ろにしやがってとキレます。この成の殺され方も残虐度がナイスでした。国王、怖すぎ。逆らう者は、たとえ我が子であろうと容赦しません。腰に巻いていた黄金の帯で、原型を留めない肉塊になるまで打ち据え続ける。シェイクスピアの悲劇を見ているみたいでしたね。残酷なお伽話です。しかし悪人が最後まで何の罰も受けず、不敵な笑みを浮かべたまま終わる物語って、後味悪いなぁ。(~_~;)↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 9, 2008

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  「ステイ」(2005)

  http://www.foxjapan.com/movies/stay/"STAY"監督・・・マーク・フォースター 出演・・・ユアン・マクレガー、ナオミ・ワッツ、ライアン・ゴズリング、ケイト・バートン、ボブ・ホスキンス、ジャニーン・ガロファロー、Ｂ・Ｄ・ウォン、エリザベス・リーサー、エイミー・セダリス、他。 ・物語序盤・橋の上の交通事故現場に立つ若者。彼は事故に遭遇した者の一人らしいが、ふらふらと歩き始める…。ニューヨークで暮らす精神科医のサムは、同僚医師が病気療養の為、暫く休職したので、彼女の患者のヘンリーを受け持つ事になった。ヘンリーは風変りな雰囲気を持つ大学生で、３日後の２１歳の誕生日に自殺すると予告し、好天の最中に、雹が降ると言って帰ってしまった。果たして、ヘンリーの告げた通り、雹は降り、サムを驚かせる。サムの恋人ライラは美術教師だが、アーティストとしての自分の才能に絶望し、かつて自殺未遂を経験したサムの元患者だった。ライラとヘンリーを重ねるサムは、彼の身を案じて、彼を救おうと懸命になる。しかしヘンリーと関わりを持ち始めてから、サムの周りでは現実世界が歪み始め、彼自身が何が現実か判らぬ渾沌とした時空で彷徨う事に…。公開当時、最後のワンシーンで全てが判るという触れ込みでしたが。観終わった後、え？となってしまった私は、頭を抱え込む羽目に。(^_^;)取り敢えず、この現実は現実ではないという事は判るし、誰かが誰かであるという事も、観ていると何となく想像できるのですが、これが正解だ、という筋の通った説明が出来ず…。他の人のレビューを読んで、それがオチなのかと、端的な答えは判りましたが、でもその一言で片付けるのは勿体無い気がする作品だと、私は思いました。こういう時空の歪んだ、なかなか全貌を掴ませない映画というのが、私は好きなので。系統としては「マルホランド・ドライヴ」のような感じですが、こちらはずっと判り易いので、全く判らず終わるという事はないと思います。好き嫌いは分かれる作品だと思いますけどね。精神科医サムと患者ヘンリーの同一性については、観ていると何となく、この二人は一人ではないのか？という疑問が自然と湧いてくると思います。不図、頭に浮かんだのが「ファイトクラブ」でした。実は俺達一人だったんだ、というオチか？と。ただ、それだけでは説明が付かない部分も多く、最後まで謎めいた作りになっています。じゃあ、ライラは誰なのか？と。自殺と絵画というキーワードで、ヘンリーとライラは繋がっています。トリスタン・リバーという、ヘンリーが愛し、ライラも熟知している幻の画家。彼は自分の作品を全て廃棄した上で、自分の誕生日に橋の上で拳銃自殺を遂げた人物。ラスト近く、ライラは自宅で、ヘンリーのサインのある何枚もの絵画を見付ける。ではライラもヘンリーなのか？ヘンリーの持つ予知らしき能力は、やがてサムにも現れます。前に見た光景と同じ場面に遭遇するサム。そして彼は、ヘンリーの実家で、彼が死んだと言っていた母親と会って話し、何年も前に死んだ飼い犬に手を噛まれる。チェスをしていた知り合いの博士は、ヘンリーによれば、彼の死んだ筈の父親。そしてヘンリーは部屋の壁一面を、"forgive me"という許しを乞う言葉で埋め尽くし、家族と愛する人を死なせてしまった自分を責め続けている。時折フラッシュバックのように挿入される、鍵となる交通事故のシーン。繋がりのないシーンを素早い変化で、切れ目なく繋いでゆく技法は、この映画の神秘性を高めるのに成功していたと思いました。同時にシークエンスとして、流れを一度も止めない効果も持っています。場所も時間も異なる場面を違和感なく繋ぎ、観客にも時空の歪みを体感させる。巧い演出だと感じました。ここからは他の方の見解を借りた謎解きですが。未見の方はお読みになりませぬように。要するに、この話は、交通事故で死に瀕した青年が、死を迎えるまでの短い時間で、偶然現場に居合わせて、彼を救助しようとしていた他人同士のサムとライラの意識を借りて、走馬灯として自分の記憶を再生させたというもの。突然のタイヤのパンクで、スピンし横転してしまった車。同乗させていたのは、大切な両親と最愛の婚約者。けれども彼等は死んでしまった。自分の責任で…。重傷で瀕死のヘンリーは、薄れゆく意識の中で、許して許してと何度も彼等に謝り続ける。それがタイトル"STAY"の意味する所。事故現場に留まった、瀕死の若者の悔悟の念。なんとも切ない話だ。一度観ただけでは、全てを呑み込めない気がします。全てを理解した上で、再度鑑賞すれば、判らなかったピースの意味が見えるでしょう。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 7, 2008

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  「クラッシュ」(2004)

  "CRASH"監督・・・ポール・ハギス 出演・・・サンドラ・ブロック ジーン ドン・チードル グラハム マット・ディロン ライアン巡査 ジェニファー・エスポジート リア ウィリアム・フィクトナー フラナガン ブレンダン・フレイザー リック テレンス・ハワード キャメロン クリス・“リュダクリス”・ブリッジス アンソニー タンディ・ニュートン クリスティン ライアン・フィリップ ハンセン巡査 ラレンズ・テイト ピーター ノーナ・ゲイ カレン マイケル・ペーニャ ダニエル ロレッタ・ディヴァイン シャニクア ショーン・トーブ ファハド ビヴァリー・トッド グラハムの母 キース・デヴィッド ディクソン警部補 バハー・スーメク ドリ トニー・ダンザ フレッド カリーナ・アロヤヴ ダニエル・デイ・キム ・物語序盤・　様々な人種と階層の人々が暮らす街ロサンゼルスは、クリスマスを迎えようとしていた。黒人刑事グラハムと同僚で恋人のメキシコ人のリアは、殺人事件現場に来ていた。しかし停車していたリアの車に、中国人女性の車が衝突し、彼女はリアを非難する。黒人差別に腹を立てているアンソニーとピーターは、自分達の目の前で方向転換した白人の男女に怒り、彼等の車を強奪した。被害者は地方検事のリックとその妻ジーンだった。立場に関わると事件を、上手く揉み消そうとするリック。一方パニック状態のジーンは、玄関の鍵を取り換えていた黒人の職人に、聞えよがしの人種差別を口にする。彼は幼い娘を持つ善良な人物だった。病気で苦しむ父を持つ差別主義者の白人警官ライアンは、電話の医療相談で、アフリカ系の女性に冷たくあしらわれた事に腹を立て、リックと同じ車種に乗っていた裕福な黒人夫婦キャメロンとクリスティンを停車させ、ボディーチェックを口実に、クリスティンに猥褻行為を働いて憂さを晴らす。彼とパートナーを組んでいたハンセン巡査は、ライアンに嫌気が差して、黒人の上司に彼と同乗したくないと嘆願するが、人種的に難しい立場にある上司は、ライアンの行為を有耶無耶にしてしまう。ペルシャ人の雑貨店経営者ファハドは、銃砲店で銃と弾丸を購入しようとするが、店主は彼を見下した態度を取り、商品を渡さず金だけせしめようとするが、ちゃんと英語の話せる娘は、憤慨しつつも銃と弾丸の箱を買った。ファハドは鍵屋に壊れた鍵を修理させるが、鍵屋はドア自体が外れかかっているので、ドアを交換すべきだと勧める。しかしファハドは聞き入れず、暫く後、彼の店は泥棒に荒らされ、滅茶苦茶にされてしまう。 アカデミー賞で作品賞を取った作品でしたが、今迄観る機会に恵まれず、漸く鑑賞。群像劇は話を纏めるのが難しいのですが、流石に良く出来た映画だなぁと。綿密に計算された構成に、脚本も担当したポール・ハギスの卓越した技量が窺えます。ＴＶ界ではベテランですが、これが映画監督としてはデビュー作になるのですね。最初は、大きな交通事故(crash)が起こって、そこに登場人物全員が巻き込まれる話なのかと、勝手に思い込んでおりました。そういう意味のクラッシュではないのですね。(~_~;)人間同士の摩擦や衝突。否、本当の意味で彼等の誰も正面衝突はしていない。衝突したくても、衝突すら出来ない、そこから生じるフラストレーション。冒頭のナレーションがこの映画の全てを物語っていますが。皆、心の奥底では、互いに触れ合いたいと願っている。けれども心の中にある見えない壁が、彼等を阻む。あと一歩、踏み込む勇気があれば。ほんの少し相手を理解し、信頼し、思い遣る心があれば。そっと差し伸べる手、肩に添える手の温もりがあれば。この作品では人々の触れ合いを阻む主たる壁は人種差別でしたが、それ以外にも壁となるものは幾らでも在ります。家族同士でも、友達同士でも。だからこれは人種の坩堝のアメリカだけではなく、日本人である私達にも共感できる物語だと思います。登場人物の中で、完全に問題が解消された人は誰も居ませんでした。それでもこれからも続いてゆく人生に、指針となる僅かな光明は差したと思えました。救われる度・救われない度は、キャラクターによってまちまちです。最初に登場する、殺人現場を訪れた黒人刑事は、悲劇的な現実と対面する事になりますし、ライアン巡査の行為に腹を立てた、若く正義感のあるハンセン巡査にも、皮肉な運命が待ち受けていました。思わず胸を撫で下ろしたエピソードもありました。鍵修理工が愛娘に、弾丸の当たらない魔法のマントを着させる話。彼が関わるのは、白人検事夫妻とペルシャ人雑貨店店主ですが。娘の纏った見えないマントこそ、この世界を少しだけ幸せにし、円滑に回転させるのに必要とされているものの象徴でしょう。それは、信じる心。幼い少女の純真な心が、父親の命だけでなく、絶望と恨みで何も見えなくなった雑貨店店主の心をも救いました。画面の前で、思わず「良かった～！」と言葉が漏れましたね。それぞれのエピソードが心に残るものでしたが、個人的にはマット・ディロンが良かったです。相棒の巡査のように、もう若くもなく、警官の仕事が理想や正義感だけで務まらない事も、世の中に満ちている悪意も知り尽くしている。彼の父は、かつて自分の起こした会社で黒人達を優遇し、その後出来た法律によって、全てを失い、今は尿道炎と診断されているが、もっと深刻な病気が疑われるにも拘らず、規則のせいで、他の病院で保険診療が受けられずにいる。電話医療相談のアフリカ系シャニクアの冷たい応対に、思わずカッとなり、差別的な捨て台詞を吐くライアン。彼は腹立ち紛れに、無関係なテレビプロデューサーの妻キャサリンを辱め、心に深い傷を負わせてしまう。本当は父親思いの、良い人なのにね。ただ、毎日向き合わねばならない過酷な現実のせいで、人生に疲れ果て、世の中に失望しているだけ。決して腹の底まで、ドブ泥に穢れ切ってしまった訳ではない。彼を取り巻く現実は改善されはしませんでしたが、彼はキャサリンを救ったし、自分自身も救ったと思う。世の中は汚いし、生きゆく事は辛い。その事実は何も変わらない。それでも彼は少しだけ変わったと思う。そして彼の心に生じた僅かな変化が、彼の人生を少しはマシな方向に導いてくれると信じたい。サンドラ・ブロックも久し振りに真面目な役を演じていましたね。彼女はアメリカ社会で、優遇された上層階級に住む人間の象徴。傍から見れば恵まれた環境にある彼女もまた、心に堪え難い葛藤を抱きながら生きる女性。悲しみや痛みを打ち明けたくても、十年来の友達すら、忙しいからと電話を切ってしまう。誰が彼女に、魔法のマントを掛けてあげるのだろう？自分の人生を救えるのは自分以外には居ない。だが、ほんの少しだけ、背中を押してくれる手も必要だ。私の手は誰かに届くだろうか？鑑賞後に、不図、そんな事を考えました。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  May 5, 2008

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  「ハイド・アンド・シーク／暗闇のかくれんぼ」(2005)

  "HIDE AND SEEK"監督・・・ジョン・ポルソン 出演・・・ロバート・デ・ニーロ、ダコタ・ファニング、ファムケ・ヤンセン、エリザベス・シュー、エイミー・アーヴィング、ディラン・ベイカー、メリッサ・レオ、他。 ・物語序盤・エミリー・キャラウェイは、ニューヨークに住む、人形好きな９歳の女の子。母親のアリソンと仲が良く、毎晩眠る前に、かくれんぼをして遊ぶのが日課。しかし、ある年の元旦、幸せだった筈の一家に悲劇が訪れる。アリソンが浴室で手首を切って自殺を遂げたのである。そのショックで心を閉ざしてしまったエミリーを見て、心理分析医の父親デビッドは、郊外への引っ越しを決意する。だがデビッドの努力も空しく、親子の距離は縮まらず、エミリーはお気に入りだった人形を捨てて、チャーリーという見えない友達と会話するように…。デビッドの話を電話で聞いた、彼の元教え子で同僚のキャサリンは、早急に病院に戻って、治療を受けさせるべきだと説得するが、デビッドはあと半月様子を見てみると答えた。隣家に住む夫婦は、子供を亡くしたばかりで、精神的に参って挙動不審な夫に、デビッドは不安を覚える。一方、夫と離婚して、姉夫婦の家に居候中のエリザベスは、デビッドと親しくなり、家を訪問するようになるが…。二通りのエンディングが収録されていたので、見比べてみました。劇場公開版は、この手の映画によく有り勝ちな、含みを持たせた結末。もう一方は、救いの無いものでした。(←エミリー、病院送り…。)在り来りですが、劇場版の方が合っていたと思いますね、私は。それにしても、エンディング一つで、映画の雰囲気って、随分変わるものですね。公開時に余り評判が良くなかったと記憶していますが、私は楽しめました。ただ、ホラーだと思って観ると、騙された気持ちになるかも。ストーリーの進み方も緩やかで、中盤までは、これと言って、事件も起こらないので、スピーディーな展開を求める人には向かないと思います。最初は空想好きな女の子が、怪しげな屋敷に引っ越してきた事で、そこに取り憑いていた幽霊と会話するようになる、ホラー映画に良くあるパターンかなと思わせて、話が進んでゆきます。気味の悪い隣人に、愛想の悪い保安官と、田舎の人間というのは、余所者には冷ややかで、都会人には居心地が悪いものです。そして娘は殆ど口もきかず、客が来ても冷淡な振舞いしかしない。妻アリソンの遺体を発見した午前２時過ぎに、何度も目を覚ますデビッド。浴室へ行くと、彼女が亡くなった時のように、アロマキャンドルに火が灯っており、カーテンには、「お前が彼女を死なせた」という血文字が…。母親の自殺を、父親のせいだと、エミリーが非難していると感じるデビッド。その後も同様の事は何度も起こり、猫を殺してバスタブに浸けておくなど、行動はエスカレートする一方。しかしエミリーは、チャーリーの仕業で、自分はやっていないと繰り返すばかり。チャーリーとは、エミリーの空想した別人格なのか、それとも彼女の主張する様に、実在する第３者なのか。そして遂には、死人まで出てしまう。大人の遺体をバスタブに運ぶなど、到底幼い少女に出来る犯行ではない。彼女を殺したチャーリーは、一体何処に…？そして、その正体は？エミリーは仲の良いキャサリンに、電話を掛けて助けを求めます。もうチャーリーに会いたくないけれど、パパではチャーリーに勝てないと。これ以上は書けませんが、私は某有名古典ホラー映画を思い出しました。お前かいっ、と。(^_^;)どうでも良いけど、デニーロとダコタでは、親子というより、祖父と孫という感じですよね。一体、幾つの時に、子供作ったんですか、アナタ…。設定に無理を感じました。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。　

  Apr 30, 2008

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  「ミッシング」(2003)

  "THE MISSING"監督・・・ロン・ハワード 原作・・・トーマス・イードソン『ミッシング』（ソニー・マガジンズ刊） 出演・・・トミー・リー・ジョーンズ、ケイト・ブランシェット、エヴァン・レイチェル・ウッド、ジェナ・ボイド、アーロン・エッカート、ヴァル・キルマー、エリック・シュウェイグ、セルジオ・カルデロン、スティーヴ・リーヴィス、ジェイ・タヴァレ、サイモン・ベイカー、他。 ・物語序盤・1885年、アメリカはニューメキシコ州。マギー・ギルクソンは荒野の一軒家で、治療師として、二人の娘リリーとドットを育てていた。恋人ブレイクとは内縁関係で、リリーとドットの父親もそれぞれ違う。彼女はブレイクからの求婚も断っており、重い過去を背負っているようだった。年頃の娘となったリリーは、同年代の娘達のように町で遊びたがるが、マギーは厳格な態度を取る。男にだらしないくせにと、母親に反発するリリー。そんなある日、ブレイクがマギーの元に、アパッチの男を連れてくる。彼はマギーをマグダレーナと呼び、マギーは蒼褪めた。その男サミュエル・ジョーンズは、20年前にアパッチ族との暮らしを選び、家族を捨てて出て行った、マギーの父親だった。積年の恨みがあるマギーは、せめてもの償いにと、金を渡そうとするジョーンズを拒絶して追い払おうとする。翌朝、二人の娘達はブレイクに連れられて、町に出掛けたが、何者かに襲撃され、ブレイクは虐殺、リリーは攫われていった。難を逃れたドットは、相手が凶悪なアパッチの一団だった事を、母親に告げる。騎兵隊に助けを求めるマギーだが、奴等が軍から脱走したアパッチである事が判明しただけで、誰も捜索に出動させてはくれなかった。ネイティヴ・アメリカンに詳しいジョーンズは、軍は見当違いの方向に目を付けており、リリーが保護される事は無いと予測する。メキシコ国境で、拉致した娘達を売り捌くに違いないというジョーンズに、償いの金を払う代わりに、娘を取り返す手伝いをするよう依頼するマギー。２人はアパッチの足取りを追い、一緒に追跡を開始するのだった…。借りて観るまで、現代劇だと思い込んでいました。おっとっと、西部劇だよ～。トミー・リー・ジョーンズ＆ケイト・ブランシェットという事で、前から気になっていた映画でした。父と娘という間柄での共演です。他にも、アーロン・エッカートやヴァル・キルマーも出演しているのですが…。アーロンは序盤でいきなり、無残な遺体に変わり果ててるし。ヴァル君に至っては、騎兵隊隊長として、ほんのワンシーン出てくるだけ。なんだか無性に悲しかったぞ…。ロン・ハワード監督作品という事で、キャリアは長いがパッとしない俳優の弟クリント・ハワードも使ってもらってる…。でも何役で出演したのか判らないよ…。お兄ちゃん、もう少し目立つ役どころを用意してあげて下さい。更に、お父さんのランス・ハワードまで出演しているではないか。お話は要するに、若い娘達を拉致して、外国に売り飛ばす悪党に攫われた娘を、母と祖父が追跡するというもの。深い人間ドラマはありません。敢えて、深淵に触れないまま、追跡劇のみにスポットを当てた作りとなっていました。マギーの過去に何があったのかも判らぬまま。トッドの父親とは結婚していたが、蒸発してしまったという話はありましたが。リリーの父親は誰なのか。きっと酷い目に遭わされて、孕んだ子なのだろうなぁ、と推測するのみ。ジョーンズがトッドに、母さんには絶対に訊くなよと釘を刺していましたから、観客にも他人の傷口は抉らせないという事なのでしょう。映画の台詞だけでは、ジョーンズについての詳細も良くは判りません。最後の方で、お前はアパッチではないと指摘されていたので、彼が元々は普通の白人で、アパッチとしての暮らしを選んだ人間なのかな、と思う程度で。何故、マギー等を捨ててしまったのかも、納得のゆく理由は明かされませんでした。人生、色々あるんだよ。その辺は察してくれ、って事だろうか。(^_^;)悪党アパッチ集団の親玉は呪術師という設定なのですが。ちょっとアパッチを馬鹿にしてませんか？と言いたくなる場面もありました。マギーが逃げる際に、ブラシを落とすのですが、それを呪術師に拾われてしまいます。なんとこの男、本当に呪いを掛けられるのです。奴の術で、マギーは死の淵を彷徨う結果に。そしてそれを救うのも、ジョーンズの旧友で、同じく身内が悪党に拉致されたネイティヴ・アメリカンの男なのですが。それまで、普通の世界だったのに、唐突にまじないや呪いが出てきて、ジャンル可笑しくないか？と、目が点に…。根底に、ネイティヴ・アメリカンを怪しげな連中と見做している、白人の思想が感じられて、厭だなと思いましたね。丁度、ハリウッド映画に出てくる、変な日本人像と同じような不快感と違和感がありました。観る側が、アパッチ族＝悪党みたいに直結させてしまいがちな構図も、どうかと思います。彼等から居住権を奪い、狭い居留区に押し込めて、生きる権利さえ奪っていったのは白人。食う為に騎兵隊に所属しても、結局は内部で迫害され、ある者達は脱走して、悪の道に走るしかなかった。騎兵隊も略奪集団でしかないというシーンも、冒頭で一瞬出てきましたが、全てに於いて、時代背景の描写が少な過ぎて、特にアメリカ人以外が観た場合に、裏側にあるものを察するのは無理ではないでしょうか？だから、特に記憶に残る話でもなく、何で西部劇なんだろう？と、それだけ。(^_^;)感想と言っても、特記したい事柄も無く。もっとドラマや歴史背景を詳細に描いてくれれば、本当に訴えたかった事が見えたと思うのに。面白くない訳ではないですが、とても普通な西部劇でした。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 28, 2008

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  「ＬＯＦＴ　ロフト」(2005・日本)

  "LOFT"監督、脚本・・・黒沢清 出演・・・中谷美紀 春名礼子 豊川悦司 吉岡誠 西島秀俊 木島幸一 安達祐実 亜矢 鈴木砂羽 野々村めぐみ 加藤晴彦 村上 大杉漣 日野 ・物語序盤・春名礼子は賞も獲得した売れっ子作家だが、最近はスランプ気味だった。軽く新しいジャンルをと、編集部長の木島が与えたのは、陳腐な恋愛小説の仕事だった。精神的に来るストレスのせいか、礼子は体調を崩し、泥のような液体を吐くようになっていた。礼子は何処か執筆に集中できる場所があれば、仕事も捗ると、木島に東京郊外の閑静な場所にある洋館を用意してもらった。引っ越しの際、前の住人が置いていった荷物が残っていたが、その中には原稿用紙に書かれた小説もあった。周囲は自然に囲まれ、最初は居心地の良い場所だと思っていた礼子だったが、深夜裏手にある廃屋に、人間の遺体のような物を運び込んでいる怪しい男を見掛けて、恐怖を覚える。同僚のめぐみの調べにより、その建物が大学の研修所で、男は吉岡誠という大学教授だという事が判明する。吉岡は最近池の底から発見された千年前のミイラについて研究しているらしい。気味が悪いと思いつつも、どうしても吉岡と運び込まれた人間らしき物が気になる礼子は、研修所に忍び込んで、中の様子を偵察するのだった。 極力台詞を減らし、ＢＧＭも無い、静寂の世界が広がる、独特の雰囲気です。最後まで観ても、これが真相だという結論は出ません。ただ、ずっと薄気味の悪い空気が漂う世界を、観客にも共有させてくれます。泥にはミネラルが豊富に含まれている為、若さと美しさを保とうと、昔の女性は泥を食べたという話が、この物語の中心的エピソードです。泥を飲んだ事で千年以上も、水底で腐敗せずにいたミイラ。そのミイラには曰くがあり、実は数十年前にも一度引き上げられており、理由は判らないが、再度沼に沈められたという経緯があります。儀式の生贄とされたのか、自らの美貌を永遠にする為に泥を飲んで死んだのか、彼女が死に至った経緯は判らない。だがミイラとなった高貴な女性は、永遠を手に入れたと同時に、消えない愛という呪いを残す存在となる。吉岡は、この呪いに縛られている。安達祐実演ずる亜矢という女性は、恐らくミイラの化身としての位置にあると推測される。ミイラが生きていた時代の女性の平均身長と同じ位と思われる、身長の低い安達を起用したのも、ミイラとの同一視を引き出す鍵だろう。そして彼女も愛の呪いを齎す女だった。彼女は作家を志す女性だったが、どうやら木島と関係があった模様。礼子が執筆に専念する為に宛がわれた洋館に、亜矢は以前住んでおり、その後失踪して行方不明のまま。なかなか話が進展せず、何故、吉岡が亜矢の幽霊に悩まされているのか、その関連と理由が判りません。徐々に謎解きはなされてゆくのですが。全てが霧に包まれた世界のような、違う時間で支配されているような、不思議な空間で繰り広げられる物語です。吉岡を地獄に連れて行くと言う亜矢。愛の呪いから逃れようとする吉岡。吉岡と惹かれ合い、彼を呪縛から解放しようとする礼子。そして不穏な気配を漂わせる木島。起承転結のあるストーリーではありません。結局何だったのかという点も、観客に大いに推測の余地を持たせる作りです。ただ、漂う空気はとても不気味で、謎めいたパズルのピースだけを与えられた観客は、何とも言えない怖さを感じ続けると思います。最後まで淡々とした静かな時間が流れて、謎は謎のまま深い水底へ沈めてしまうという感覚なので、好き嫌いが分かれる作風であると思われますが、私は好きですね。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 27, 2008

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  「ブラックサイト」(2008)

  只今、公開中です。"UNTRACEABLE"監督・・・グレゴリー・ホブリット 出演・・・ダイアン・レイン ジェニファー・マーシュ ビリー・バーク エリック・ボックス コリン・ハンクス グリフィン・ダウド ジョセフ・クロス オーウェン・ライリー メアリー・ベス・ハート ステラ・マーシュ ピーター・ルイス リチャード・ブルックス タイロン・ジョルダーノ ティム・ウィルクス パーラ・ヘイニー＝ジャーディン アニー・ヘイスキンス ティム・デザーン ハーバート・ミラー クリス・カズンズ デヴィッド・ウィリアムズ ・物語序盤・ジェニファー・マーシュはFBI特別捜査官で、サイバー犯罪担当のスペシャリスト。警官だった夫を亡くして以来、母親と幼い娘と共に、ポートランドで暮らしている。　ある日、"killwithme.com"という不審なサイトの情報が入り、彼女は同僚のグリフィン等と共に捜査を開始した。そこは猫の虐待映像をライヴで流しているサイトだった。サイトオーナーは突出した専門知識の持ち主らしく、ジェニファー達は発信元を特定する事もサイトを削除する事も出来ないでいた。やがて猫が死亡すると、次は拘束され、血友病を誘発する薬物を投与されている男性の映像が流されるようになる。薬物の投与量は、サイトのアクセス数に比例して増やされる仕掛けになっており、興味本位でアクセスする一般人達によって、男性は出血多量で死に至ってしまう。その後、被害者の遺体は、ネットに法的制限は不要と主張する下院議員の車のトランクで発見された。そして、ジェニファー等を嘲笑うかのように、冷酷な犯人は次なる犠牲者を捕獲してゆくのだった…。ストーリーとして観ると、特に目新しいものは無いです。殺害方法が残虐で凝っているという点では、「ＳＡＷ」シリーズを彷彿とさせました。唯、この映画が訴えたかったテーマの怖さや重み、そして難しさには、色々と考えさせられるものがありました。　人間の飽くなき好奇心。他人の不幸を囃し立て喜ぶ心。他人が苦しみながら死んでゆく様を見てみたいという、多分全ての人の心の奥底に潜む闇の部分。誰もが容易に他人の尊厳を踏み躙る動画をアップでき、誰もがそれにアクセスできてしまう、現在のネット環境。誰も見なければ、誰も死なない。けれども匿名の観客達は、自分が人殺しの加害者の一人であるという罪の意識も持たずに、他人の苦痛を面白がる。これは飽く迄フィクションなので、極致を描いていますが、ここに至らずとも、似たような行為はネット上に蔓延しています。犯人の言うとおり、遺族の心を蹂躙し嘲弄する、匿名の加害者達の殆どは野放し状態。爆発的なスピードで広がったネット社会に、社会も法律も追い付けず、管理する事が出来ないでいる。映画自体は、残酷なサスペンスとして楽しめるものですが、その裏側にあるテーマは、解決の糸口すら見えない問題です。一見、残虐な方法で、時間を掛けて人を殺す事に興奮を覚える快楽殺人のように思われる、シリアルキラーによる犯行。犯人はコンピューター技術に精通しており、頭脳明晰な人物。サイバー事件専門であるFBI特別捜査官ジェニファーですら、犯人の足跡を追えずに手を拱く。被害者達はランダムに選ばれているのか、それとも何らかの共通項があるのか？ヒントを与えてくれたのは、犯人の素性に迫り、逆に囚われてしまった同僚のグリフィンだった。以前、ライヴ中継される殺人行為を見ながら、自分なら瞬きでモールス信号を送って、何らかの情報を送るのにと言っていたグリフィン。徐々に濃度が増す硫酸の水槽の中から、瀕死の状態で目を瞑り信号を送るグリフィンに、ジェニファーは気付いて解読を頼む。読み取れたのは、最後の数文字だったが、そこには犯人の特定に繋がる決定的な言葉が隠されていた。これは快楽殺人ではなく、悲しい復讐だった。家族の死をネットで晒し者にされた遺族の。自分と無関係な人間の死は、自分に痛みを与えない。男が頭を拳銃で撃ち抜く映像も、ごく短い「ボン！」という小馬鹿にしたタイトルで、動画サイトにアップされる。興味本位で人の死に際の映像に群がるネットユーザー達。それは悪意の無い悪意。最も恐ろしい悪意だ。ＦＢＩ捜査官まで恨むというのは、ちょっと行き過ぎだとは思いましたけどね。映画の中でも言ってますが、一件の事件を解決するだけでも、相当な手間暇が掛かる訳で。野放しが現状ではいけないのですが、一つ一つの事件を懸命に捜査している個々の捜査官を恨んでも始まらないよな…。でもお上に怒りをぶつける気持ちも判る。そこ以外、取り締まれる組織は無いのだから。それにしても、最初に猫を殺す事は無かったと思うぞ。どう考えても、猫は悪くない。飼い主をターゲットにすべきでしょう。まあ、映画のセオリーとして、最初はＦＢＩも本腰を入れない小動物虐待で幕を開けるというのは理解できますけど。だけどやっぱり、猫ちゃんは殺しちゃダメ！↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 26, 2008

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  「紀元前１万年」(2008)

  ４/２６(土)全国ロードショーです。"10,000 B.C."監督・・・ローランド・エメリッヒ 出演・・・スティーヴン・ストレイト デレー カミーラ・ベル エバレット クリフ・カーティス ティクティク ナレーター・・・オマー・シャリフ ・物語序盤・紀元前１万年の地球。狩猟によって生き延びていた部族に、ある時、一人の少女が連れられて来る。家族を殺され一人になった少女は、青い目をしたエバレット。精霊の声を聞く巫母は、最後の狩猟の時、４本足の悪魔が集落を襲うと予言する。白い槍を持つ長を父に持つデレーは、父が理由も告げずに集落を去った事で、裏切り者の子と呼ばれるように。孤独なエバレットとデレーは、いつしか心を通わし、成長すると愛し合うように。だが部族の男カレンもまた、長の座とエバレットを欲していた。長となれるのは、誰より勇敢で強い男。マンモス狩りで、デレーは運良く獲物を一人で仕留め、皆からリーダーとして認められるが、それが単なる偶然だと知っていたデレーは、白い槍を返してしまう。それから暫くして、馬に乗った強暴な集団が集落を襲い、奴隷として若い男達を拉致し、一味のリーダーの目に留ったエバレットも連れ去られる。デレー達は彼女や仲間達を救出する為に、一団の跡を追跡してゆくのだった。率直な意見として、何故この物語を敢えて映画にしなければいけなかったのだろうかという疑問が、最後まで消えませんでした。巨額の資金を投じて作る価値のある映画とは思えないのです。特に何も目を引くものはないですし、胡散臭い紀元前１万年前の世界が広がっているだけ。ストーリーも、攫われた愛する女性を救いに行くヒーローという、安直なもの。マンモスのＣＧは良く出来ているとは思いますが、だからと言って、恐竜みたいに迫力は無いです。観る前から、余り興味は無かったのですが、予想の範疇を全く出ない映画でした。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 25, 2008

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  「クローバーフィールド／HAKAISHA」(2008)

  只今、公開中です。"CLOVERFIELD"監督・・・マット・リーヴス 製作・・・Ｊ・Ｊ・エイブラムス、ブライアン・バーク 出演・・・マイケル・スタール＝デヴィッド、オデット・ユーストマン、ジェシカ・ルーカス、リジー・キャプラン、Ｔ・Ｊ・ミラー、ベン・フェルドマン、ライザ・ラピラ、クリス・マルケイ、他。 ・物語序盤・ニューヨーク、マンハッタン。副社長への就任が決まり、日本へ赴任するロブの栄転を祝う為、ロブの兄ジェイソンや親友ハッド達は、サプライズ・パーティーを開いた。ジェイソンからロブのビデオカメラを渡され、来客達からのコメントを録画するよう頼まれたハッドは、片思いのマレーナも来ていると知り、撮影係を引き受ける。カメラを見たロブは、入れてあったフィルムに重ね撮りされていると知り困惑顔。と言うのも、そこには恋人ベスとの思い出が記録されていたのである。日本行きを隠し、赴任を期に関係を終わらせると決めていたロブ。ロブとベスは口論の末に喧嘩別れし、ベスはパーティー会場から去った。その数分後、凄まじい轟音が響き、客達は何事かとビルの屋上へと向かう。彼等は一部の建物が爆発炎上している様子を見ていたが、間も無く、更なる爆発が起き、ビルの屋上に爆風で飛ばされたコンクリートの塊が飛来してくる。辺りは騒然となり、人々は街へと慌てて逃げだした。広がり続ける惨禍、そしてビルの蔭から一瞬だけ垣間見えたのは、巨大な怪物だった。その後、橋を渡って逃げる途中、ジェイソンが怪物に襲われ死亡する。携帯電話に入ったベスからの救難メッセージを聞いたロブは、彼女を救い出す為に、最も危険な地域へと向かい、彼を引き止めようと説得していたハッド、マレーナ、ジェイソンの恋人リリーも彼に同行する。宣伝方法が特異だったので、話題の作品となりましたね。初めはタイトルも出ない予告映像とチラシが映画館で見られました。その後、噂で凡その雰囲気は判りましたが。結論から言うと、私は充分、楽しめました。お金払って観ても悔いは無し。ただ、注意点としては、ある程度、作品のあらまし位は調べた上で観て下さいって事。宣伝に踊らされ、騙されたと怒っている人が続出していますが、私に言わせれば、ただのおバカさん達です。(~_~;)細かく内容まで調べたら面白みが無くなりますが、自分の好みのジャンルかどうか位は調べてから行くのが当たり前でしょう。まぁ、ロシアン・ルーレット的に当り外れも含めて楽しみたいツワモノには、何も申すまい。この映画に向かない人。私見。・何も知らず、話題になっているからという理由だけで、観に行くタイプ・年に数回しか映画館に行かないような、映画ファンでもない一般人・映画には起承転結が無ければならないと決め付けている、頭の堅いタイプ・「ブレアウィッチ・プロジェクト」にも、同様の手口で騙され、激怒した経験のある人。上記に当て嵌まる人は、この映画を楽しいと感じる事は先ず無いと思うので、もっと一般受けする、お手軽な娯楽映画をご鑑賞下さい。手振れがひどいのは判っていたので、いつもより後ろ目の座席を買ったのですが、すぐ後ろにお姉ちゃん二人組が居たので、静かに鑑賞したい私は、一列前のど真ん中の席に席替え～。始まってすぐは、本当に手振れがひどくて、気分悪くなりそう…と、再度座席をチェンジしようかと悩みつつ、画面から少し目を逸らせて、字幕のみを読んでおりました。でもメインストーリーとなる、パーティー会場の場面になってからは、手振れも若干弱まってきたので、その後は普通に鑑賞できました。この映画、冒頭で、ビデオテープの詳細がテロップで出ます。一般にセントラルパークと呼ばれる地域で、軍によって回収されたテープであると。この時点で、察しは付くと思いますが、このテープの持ち主は既に死んでいる訳です。だから、録画しているハッドやロブ達の運命は、バッドエンディングへ繋がっているのだなと。それが判っても、この映画は基本的に筋書きのある映画ではないので、作品に対する関心が削がれる事は無いでしょう。ツッコミというか、ご都合主義というか、そう思える所は幾つかあります。事件に遭遇した一般人が、手持ちカメラで録画した記録という形を取っていますが、本当にあの状況下にあったら、そんなに綺麗な映像は撮れないだろっ！と思う事数え切れず。笑。パニック状態で猛ダッシュで逃げている間も、確り後方を撮影し続けている…。まあ、映画だから、カメラ振り回されて、全然見えないと困りますけどね。実録風を装いつつ、映画は確り映画なのよね、と。あと、バッテリー長持ちするビデオだなぁという感心も。笑。パーティーの間中、撮影していたのに、最後まで回ってましたから。トンネルではライトまで付けてたし。バッテリー、消耗するから、やめときなって…。それから主人公達は、あの怪獣ちゃんに愛されているのか、何処へ逃げても奴と遭遇する。記者なら泣いて喜ぶような、ベストショットを何度も録画出来てるんですよね。怪獣ちゃんは、なかなか全貌を晒してくれません。手足がとても長いというのは確認できるのですが。全身が見えるのは、映画も後半に入ってから。子供も多数生むのですが、これも人間を襲うので脅威です。喧嘩別れしてしまったベスを助けたいロブが街中に戻るのは判るが、全然関係ないマレーナは、途中で逃げる人達と合流すれば良いのに。彼女の判断基準が判らんかったぞ。結局、チビ怪獣に噛まれて、あらら～な最期を遂げるのですが。それと、ヘリが撃墜されても、殆ど無傷で出てくる、タフなお二人さんには笑った。この映画、インスピレーションの元となったのは、我が国が誇るスター、ゴジラ君です。何度もゴジラに破壊されている東京を見て、ニューヨークにも怪獣を出現させて、街を破壊させたいという熱い思いから生まれました。演出として素敵だなと思ったのは、ロブとベスの幸せな記録が撮られたフィルムに上書き録画されているので、切れ目に彼等の仲睦まじい映像の断片が映し出される事。ラスト、激しくネタバレですが、「このテープ残り三秒でーす。」と二人が観覧車の中で笑っています。私は面白かったけど、普段あまり映画を観ない人が、敢えて映画館に出向いて、チョイスする作品ではないという点だけは留意しておいて下さいね。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 24, 2008

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  「うた魂♪」(2008・日本)

  只今、公開中です。監督・・・田中誠 出演・・・夏帆 荻野かすみ ゴリ 権藤洋 石黒英雄 牧村純一 徳永えり 野村ミズキ 亜希子 松本楓 岩田さゆり 青柳レナ ともさかりえ 黒木杏子 間寛平 荻野知恵蔵 薬師丸ひろ子 瀬沼容子 ゴスペラーズ、吉川まりあ、山本ひかる、矢部裕貴子、粕谷佳五、他。 ・物語序盤・北海道、七浜高校に通う女子高生・荻野かすみは、コーラス部に所属しており、天性の才能を持った少女だが、自分の歌声とルックスに自己陶酔していて自意識過剰。密かに想いを寄せる生徒会長の牧村純一から、写真のモデルになってほしいと頼まれたかすみは、牧村が自分を好きだと早合点して有頂天に。しかし牧村が、コーラス部壮行会で歌うかすみを撮った写真は、大口を開けている間抜け面。歌っている時のユーモラスな顔が撮りたかったと言う牧村に、かすみは大ショック。更にその写真を学校新聞の表紙に載せられ、かすみを嫌う青柳レナにも、産卵中のシャケみたいな顔だと嘲笑される。自分は美しいと信じ込んでいたかすみは、自信を喪失し、歌う勇気も無くして、退部を決意するのだった。臨時教員でコーラス部の臨時顧問・瀬沼容子は、辞める前に夏祭りの合唱祭だけは記念に出るように勧める。だがかすみは舞台でも、全く気が入らず。一方、その夏祭りに来ていたヤンキー団体は、部長の権藤洋が率いる湯の川学院高校の合唱団だった。格好こそ不良だが、彼等の歌には熱いソウルが感じられた。権藤はかすみを呼び止め、半端な態度で歌を冒涜する奴は、コーラスを辞めろと叱責するのだった。 予期せず、泣いてしまったよ。笑。ストーリーにというより、歌に心を揺さ振られたのだと思います。人の歌声には、心を高揚させ、浄化させる作用がありますね。やっぱり歌うってイイナァと実感。この映画では、綺麗なハーモニーの、洗練されたコーラスが沢山聴けます。尾崎豊の楽曲を合唱で聴いたのは初めてでしたが、案外、イケるもんですね。盗んだバイクで走り出す～♪と歌うヤンキー合唱団は楽しいです。団員の誰も高校生には見えませんが…汗。だって部長がガレッジセールのゴリだからねぇ。テーマ曲を歌っていたゴスペラーズも、コンクールの審査員役で並んでいました。彼等のルックスを知らない私は、「誰、このグラサンの兄ちゃん？」と思ってしまった。ストーリーも程々に、くどさも無く、素直に観られる感じでした。爆笑するような映画ではなく、ぽわんとした温かい気分にしてくれる映画かな。やる気を感じさせない代用教員の薬師丸ひろ子さんも、少しですが歌声を披露してくれます。尾崎の曲で。薬師丸さんの声って、丸みがあって耳に快いですよね。また歌でも活動してくれたら良いのに。日本は大人の歌手を受け入れる土壌が出来ていないのが寂しいです。若い内だけの消耗品みたいなアーティスト達ばかりで。夏帆さんは、今迄名前は何度も見掛けたのですが、どの人か認識していませんでした。そんなに美人てタイプでもないと思いましたけど。(^_^;)敵役で出てくる同級生の方が今時のカワイイ子って感じだった。でもソプラノの歌声は綺麗でしたよ。他の出演者では、多くを語らないが、孫を理解し応援している祖父役の間寛平さんが、なかなか良かった。無駄に喋るとボロが出るのですが、この映画では言葉少なな所が吉と出ましたね。趣味の熊の彫り物、鮭の産卵顔と嗤われた孫を思い、鮭が熊に噛み付く形の物を作って御守りに渡してくれたりして、優しいおじいちゃんでした。ラストシーンの会場全体での大合唱は、涙が込み上げてきましたね。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 23, 2008

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  「The FEAST／ザ・フィースト」(2005)

  只今、公開中です。"FEAST"監督・・・ジョン・ギャラガー 出演・・・バルサザール・ゲティ、ヘンリー・ロリンズ、ナヴィ・ラワット、ジュダ・フリードランダー、ジョシュ・ザッカーマン、ジェイソン・ミューズ、ジェニー・ウェイド、クリスタ・アレン、クルー・ギャラガー、他。 ・物語序盤・テキサスの山間の田舎にあるバー。常連客やたまたま立ち寄った客、様々な事情を持つ彼等で、バーはいつもの賑わいを見せていた。そこに突然、ショットガンを抱えた、血塗れの男が飛び込んで来た事で、辺りは一瞬にして騒然とした空気に包まれる。バーテンの老人は、こちらにも銃があると彼を威嚇するが、男はもうじき、ここを正体不明の怪物達が襲撃に来ると警告し、バーの全ての入口を封鎖するように命じる。男の見せた気味の悪い怪物の頭部に驚く客達だが、未だ事態を正確には把握していない。バーテンに何者かと誰何された男は、お前達の救世主だと名乗った瞬間、窓の外から謎の怪物に襲われ、首だけを持って行かれた。猶も怪物の襲撃は続き、パニックに陥る店内。銃を持つ者は盲滅法に銃を乱射し、銃弾を受けて負傷した者も。その直後に店に現れたのは、先刻死んだショットガン男の妻だった。彼女は客達を鼓舞して、戦いの準備をさせるのだった。ベン・アフレックとマット・デイモン主催の新人発掘脚本コンテスト“プロジェクト・グリーンライト”から誕生したスプラッタ・ホラーです。二人も製作総指揮に名を連ねています。いやはや、とんでもないＺ級映画に遭遇しました。どういう基準で脚本を選んでいるのやら、ベンとマットは…。お話とか、特に何も無いです。訳の分からないモンスターが、いきなり襲撃してきて、訳も判らぬまま命懸けで戦う人々の一夜。冒頭のキャラクター紹介が面白い。彼等に個々の名前はありません。画面下のテロップで出るのは、職業や特技、そして残りの寿命。その書き方も悪ふざけのようなもので、この映画のノリが判ります。流血や汚らしいシーンは満載ですが、恐怖とは全く繋がらないです。殆どゲームのような感覚。ゴア・シーンのみを撮り続けたかった、そういう映画と見受けました。ストーリーが無いに等しいので、始終ギャーギャーワァワァと騒ぎ立ているわりに、観ている方は退屈してしまいます。最後まで観ても、結局モンスターが何なのか一切解説は無く、良く判らん凶暴な異生物に襲われた人達というだけで。"ヒロイン"という名で登場した気丈な女性は、"ヒーロー"という名の夫と二人で、子供を実家に預けて、車での小旅行の途中でモンスター達と遭遇しました。そいつ等の一匹を車で轢き殺してしまったのが原因と言えば原因なのですが。バーに居た同年代の子持ちの女性は、子供を育てる為に、店のボスの専属娼婦のような立場で、生きる希望も無いまま、髭面の横暴なボスに身を任せる日々でしたが、モンスターによって、我が子を殺されます。嘆き悲しんでいた彼女ですが、最後にはぶちキレて、勇ましく立ち上がります。そしてまたもや冒頭に出たテロップが。役割が"ヒロイン？"となってるよ。笑。一代目ヒロインは、客の一人に誤射され、怪物の餌食になってしまったので。日本全国でも数カ所しか公開されていませんが、よくこれを買い付けて、配給しようと思ったね。その事に驚きです。マニアもマニア、筋金入りのマニアが話のネタに観る位でしょう。それもＤＶＤで観るのが精々。鑑賞途中から、溜息ばかり出てしまいました。クソ映画とか、そういう評価範囲を超越したモノです。貶す気力も根こそぎ奪われます。(^_^;)↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 20, 2008

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  「バンテージ・ポイント」(2008)

  只今、公開中です。"VANTAGE POINT"監督・・・ピート・トラヴィス 出演・・・デニス・クエイド トーマス・バーンズ マシュー・フォックス ケント・テイラー フォレスト・ウィッテカー ハワード サイード・タグマウイ スワレス エドゥアルド・ノリエガ エンリケ エドガー・ラミレス ハビエル アイェレット・ゾラー ベロニカ シガーニー・ウィーヴァー レックス ウィリアム・ハート アシュトン大統領 ゾーイ・サルダナ ブルース・マッギル ジェームズ・レグロス リチャード・Ｔ・ジョーンズ ホルト・マッキャラニー レオナルド・ナム ・物語序盤・アメリカ合衆国とアラブ諸国がテロ撲滅の為の国際サミットを、スペインのサラマンカで開催する運びとなった。大観衆が集まった広場はお祭り騒ぎの人々や、アメリカの専横に抗議するデモ隊、多くのマスコミで鮨詰め状態。市長のコメントの後、檀上でアシュトン米大統領によるスピーチが行なわれようとした矢先、衆目の中央で、大統領が狙撃される。瞬時に大混乱となる広場。これより少し以前、大統領を狙撃から庇って銃弾を受けたシークレット・サービスのトーマス・バーンズにとっては、復帰後初めての仕事だった。バーンズは同僚のケントらと共に、狙撃犯の捜索と情報収集に翻弄する。狙撃直後に檀上に駆け上がって来た、エンリケは市長護衛の警官だが、バーンズに取り押さえられる。エンリケが必死に叫ぶ中、ビデオ撮影を続けていた観光客のハワードに、映像を見せてもらうバーンズ。彼が危険を察知した直後、広場で大爆発が起こり、多数の死傷者が出る。辛くも軽傷で済んだバーンズは、映像を生中継しているロケバスに向かい、録画映像を調べるが、彼は驚愕の場面を目にする…。 この映画を観ていて、ふと思った事。これより少し前に「フィクサー」を鑑賞しましたが、向こうはアカデミー賞にノミネートされて、こちらは候補にすら上がらない。アカデミー賞は社会派作品や文芸大作など、所謂、真面目路線の映画が選ばれるのが常ですが、「フィクサー」に関して言うなら、あれはサスペンス、もっと言えば娯楽サスペンスの範疇に入る作品だと思うのですよね。「フィクサー」も良かったけれど、この作品もとても面白い。境界線は何処にあるのだろうかと。さて本作について。一言で言って、とても良く出来たサスペンス＆アクション映画で、上映時間は短いものの、凝縮された内容に見応えたっぷり。合計８人の視点から見たテロ事件の光景を、順番に見せてゆく事で、少しずつ事件の核心に迫ってゆく構成になっています。一度進んだ時間が、事件発生前の正午直前の時刻に、何度も巻き戻されます。それぞれの視点だけでは解明しきれなかった事件の真相が、各々では謎めいただけのピースを集める事で、徐々に完成されてゆく。それぞれのパートに、登場人物達の人間ドラマを織り交ぜる演出で、同じ場面の繰り返しから来る退屈を巧みに防いでいました。デニス・クエイドは遅咲きで、余り華のある俳優ではありませんが、堅実な演技を見せています。核心へと近付いた終盤は、テンポアップされて、俄然アクション映画色が強まります。息も吐かせぬカーチェイスに、手に汗握りながら鑑賞。当初予想していたより、大掛かりで綿密に練られた大統領暗殺計画。後になってから、最初に聴こえた遠方での爆発は、これの事だったのかと驚かされます。良く考えられたプロットに感心しました。シガニー・ウィーヴァーは、本当にゲスト出演という感じでしたね。テロップではwithの位置。そしてandで、出演者の最後に来たのは、大統領役のウィリアム・ハートでした。彼もキャリアは長いですが、大スターにはならなかった人ですよね。一時はもっと大物になる予感がしたのですが。(~_~;)これは文句無しに面白い娯楽映画。一見の価値ありの秀作です。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 12, 2008

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  「魔法にかけられて」(2007)

  只今、公開中です。"ENCHANTED"監督・・・ケヴィン・リマ 出演・・・エイミー・アダムス ジゼル パトリック・デンプシー ロバート・フィリップ スーザン・サランドン ナリッサ女王 ジェームズ・マースデン エドワード王子 レイチェル・カヴィ モーガン・フィリップ ティモシー・スポール ナサニエル イディナ・メンゼル ナンシー・トレメイン サマンサ・アイヴァース ナンシー 出演(声)・・・ジェフ・ベネット ケヴィン・リマ ナレーション・・・ジュリー・アンドリュース ・物語序盤・魔法の王国"アンダレーシア"は、女王ナリッサの統治する国。ナリッサは継子であるエドワード王子が運命の相手と結婚して、自分から王座を奪う事を危惧していた。そこでナリッサは家来のナサニエルに命じて、エドワードがまだ見ぬ未来の妃と出会わぬように気を逸らせていた。一方、森の中で友達の動物達と暮らす、純真で夢見がちなジゼルは、夢の王子様との出会いを恋い焦がれていた。狩りの途中、ジゼルの歌声を耳にしたエドワードは、彼女と運命的な出会いを果たし、翌日には結婚式を挙げる運びとなる。挙式を阻止しようとするナリッサは、魔法で老婆に化け、願いの叶う井戸があるとジゼルを騙して導き、彼女を突き落してしまった。井戸の先に続いていたのは、現代のニューヨークだった。人と車でごった返す街中のマンホールから外に出たジゼルは、自分が何処に居るかも判らず、必死に城を探す。だが街の人々は冷たく、誰も彼女を助けてくれない。途方に暮れていたジゼルは、キャッスル・カジノと書かれた看板を見て、城の事が判ると誰も居ない屋根に攀じ登る。そこへ偶然通り掛かったのが、弁護士のロバート・フィリップ。ロバートは、夢物語を信じないリアリストで、六歳の娘モーガンにも堅苦しい偉人の伝記を贈るような男だった。行掛り上、ジゼルを助けたロバートは、自分とは正反対の性格の彼女に翻弄され、困り果てるが…。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 11, 2008

• 「ノーカントリー」(2007)

  http://www.nocountry.jp/"NO COUNTRY FOR OLD MEN"監督、脚本・・・ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 原作・・・コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』（扶桑社刊） 出演・・・トミー・リー・ジョーンズ エド・トム・ベル保安官 ハビエル・バルデム アントン・シガー ジョシュ・ブローリン ルウェリン・モス ウディ・ハレルソン カーソン・ウェルズ ケリー・マクドナルド カーラ・ジーン ギャレット・ディラハント ウェンデル テス・ハーパー ロレッタ・ベル バリー・コービン スティーヴン・ルート ・物語序盤・ルウェリン・モスは人里離れたテキサスの荒野で、妻のカーラ・ジーンと共にキャンピング・カーで生活する男。モスはベトナム戦争にも従軍した、沈着で優秀なハンター。彼はハンティング中に、数台の車と複数の遺体を発見する。どうやら麻薬取引が拗れて、激しい銃撃戦が行われたらしい。冷静な分析で、金を持ち去った男の居場所を見付けたモスは、既に絶命している男の傍に、200万ドルの詰まった鞄を発見して持ち帰る。妻には詳細を告げなかったモスだが、彼は現場で独り瀕死の状態の男から水を求められた事が心残りだった。自分でも愚かだと思いつつ、水を持って現場に戻ったモスは、そこで裏組織の人間と思しき男達に遭遇する。暫く話をした後、男達の中の一人が、残りの二人を射殺した。そしてモスも銃撃を受け、命辛々逃亡する。負傷しながらも自宅に帰り付いたモスは、妻カーラを実家に帰し、自分は鞄を持ってメキシコへと高跳びする事に。だが彼を追っている殺し屋は、アントン・シガーという名の冷徹非情な男で、狙った標的は何処までも追い掛けて抹殺するプロ中のプロ。一方、祖父の代からずっと保安官を務めていたベル家の老保安官エド・トム・ベルは、この事件の捜査に乗り出すが、次々と死体ばかりが増えて行く現状を見て、古き良き時代を思い悲嘆するのだった。アカデミー賞で、作品賞・助演男優賞・監督賞・脚色賞を獲得した力作。 助演男優賞に輝いた不気味な殺し屋役のハビエル・バルデムは、スペイン出身の実力派俳優。「夜になるまえに」(2000)でも、アカデミー主演男優賞にノミネートされた実績がある。今回は鬱陶しい髪型(笑)で、異様な無感情の殺し屋を熱演。一方、シガーと息詰まるチェイスを繰り広げる、明敏な歴戦の猛者を演じるジョシュ・ブローリンも、アワードこそ無縁だが、長いキャリアを持つベテラン俳優。奥さんがダイアン・レインなのですね。風貌は、チャールズ・ブロンソンを彷彿とさせました。トミー・リー・ジョーンズは、直接ストーリーの進行には関わらない狂言回しのような役柄でしたね。恐らく、原作者及び監督であるコーエン兄弟の伝えたかった事を、スクリーンを通して観客に話して聞かせる役どころです。予備知識を入れたくないので、筋書きなど全く知らないまま鑑賞しました。こういう話だったのかと、意外で驚きましたね。作品賞を取るだけあって、見応えは充分です。原題は"NO COUNTRY FOR OLD MEN"、老人にとって安全な国は最早無いというような意味。近年、日本でも増えてきましたが、万人が納得するような理由も無く、無表情で他人の命を奪う人々。人を殺してみたかった。むしゃくしゃしたので、誰でも良いから適当に殺した。そんな動機を良く耳にするようになりました。それを特異だと驚きもしないし、ある種の共感すら覚える自分が居ます。アメリカでもそれは同じ。何故、人々の心は、こんな風に荒んでしまったのでしょうね？これが民主国家という形態が、行き過ぎた発展の先に、辿り着く末路なのでしょうか。答えを見出すのは、とても困難です。物語が始まる前に、シガーとモスの、全く別の場所での話が展開され、この二人はどう関わってくるのだろうと、興味を掻き立てる手法が巧いですね。この冒頭部分で、同時に、主要人物のパーソナリティーを紹介しています。シガーの持っているガスボンベ式の銃(？)、何を発射しているのかと思ったら、弾丸の無いエアガンでした。圧縮空気そのものを撃ち出す事で、無防備な一般市民の脳天を打ち抜いたり、施錠されたドアのロックを吹き飛ばします。なかなかのアイデア商品だなぁ。(^_^;)最初にシガーは保安官に逮捕されていたのですが、すっかり気を抜いて電話をしている保安官を、後ろから手錠の鎖で絞殺します。この時に、ドカンと勢い良く二人が後方に転倒するのですが、「ハビエル、大丈夫かぁ？！」と心配しましたわ。映画撮影に生傷や負傷は付き物ですが、あれは脳震盪を起こしてしまいますよ。汗。彼だけでなく、他の俳優達も怪我だらけだっただろうなぁ。映画の内容以前に、そんな心配をしてしまう私。( ^^) _旦~~皆さん、物凄く熱演されていたので。一方、最も危険な男から追われる身となったモス。素人が、組織絡みの金に手を出してはいけません…。これが第一の基本です。鉄則です。とても冷静に金を探し当てたモスですが、何処かに人情が残っていたのでしょう。死にゆく男が最期に求めた水を持って、深夜に現場へと…。何故、そんな所で妙な情けを出すかな。でも少し無理矢理なこの行動も、後から考えると、物語の展開に不可欠なんですよね。もしモスが現場に戻らなければ、彼は自分の身が危険に曝されている事に気付かぬまま、シガーに発見されて抹殺されていたでしょうから。それから、危険な物を手に入れた際は、先ず最初に、中身を隈なく調べましょう。これも基本です。私だったら、中身を全部出して調べ上げ、鞄は捨てて、幾つかの袋に分けて入れるな。ろくに中身を確認せずに、猫ババした時のままの鞄を持ち歩くモスの行動に疑問が…。頭良いのか、悪いのか。まあ、そうしてしまうと、シガーが彼を発見する経緯を別途考えなくてはならないから、その辺は間抜けな失態をさせたんですね。背景にある思想云々は抜きにして、娯楽として掛値無しに面白い一級品だと思います。正に命懸けの逃亡と追撃。追う側も逃げる側も、多くの死線を潜り抜けてきた、何事にも動じない男です。頭脳戦と冷徹な攻防に、最後まで目が離せません。でもシガーは見た目はいい人っぽく見えるんですけどね。彼の生きてきた世界の中で培われてきたルールに忠実に生きているだけで、案外優しい人なのではと思ってしまったり。でも彼に遭遇して、コイントスで答えを迫られたら厭だなぁ。「お前、自分の言っている事が解っているのか？」って、判りたくないよ～。ぶるぶる。

  Apr 10, 2008

• 「デッド・サイレンス」(2007)

  http://www.dead-s.jp/"DEAD SILENCE"監督・・・ジェームズ・ワン 脚本・・・リー・ワネル 出演・・・ライアン・クワンテン ジェイミー・アーシェン アンバー・ヴァレッタ エラ・アーシェン ドニー・ウォールバーグ リプトン刑事 ボブ・ガントン エドワード・アーシェン マイケル・フェアマン ジョーン・ヘニー ローラ・レーガン ドミトリー・チェポヴェツキー ジュディス・ロバーツ ・物語序盤・妻のリサと二人で、街中にあるアパートメントで暮らすジェイミー・アーシェン。ある晩、彼の部屋に、差出人不明の贈り物が届いた。開けてみると、そこには腹話術人形が一体入っていた。その後、テイクアウトの中国料理を買い出しに行ったジェイミーを驚かせようと、リサは人形をベッドに置いてシーツを被せる。しかし時間の止まったかのような不気味な気配を感じた後、リサは人形の居る部屋へと引き摺り込まれた。帰宅したジェイミーは、リサの声に導かれて寝室へ行くが、彼が見たのは無残な妻の遺体だった。事件の捜査を担当したリプトン刑事は、ジェイミーの供述に疑問を抱き、彼が妻殺しの犯人ではないかと疑う。ジェイミーは遺体を発見する直前まで妻が喋っていたと言い張ったが、リサは舌と下顎を切り落とされていたのである。犯人捜しに全く興味を示さない刑事に、保釈されたジェイミーは、自ら事件の真相を探ろうと、生まれ故郷のレイブンズ・フェアへ向かった。そこでは昔から、腹話術師メアリー・ショーを歌った忌わしい詩が言い伝えられていた。大きな屋敷で彼を出迎えたのは、父エドワードの後妻エラだった。エドワードはかつてジェイミーの実母を自殺に追い遣った冷酷な男で、親子は長年、音信不通となっていたのだが…。「ソウ」で監督・脚本のコンビを組んだ、ジェームズ・ワンとリー・ワネルが手掛けたサスペンス・ホラーというのが宣伝文句でした。裏を返せば、それしか売りに出来る点が無い作品という事でして。(~_~;)巷の評価は頗る低いです。私も敢えて、この映画を評価しようとは思いません。よくもまあ、これだけ、何の新鮮味も無い筋書きを映画にしましたね。半世紀ほど前の映画だよと言われても、素直に納得してしまいそうです。ノスタルジックと言うか、表現に詰まってしまう映画ですねぇ。何を表現したかったのでしょうか。一体、何時何処の話ですか？と訊きたくなる、レイブンズ・フェアの風景。陰惨なファンタジーの舞台か、はたまた地獄の一丁目か。笑。いきなり、ゴーストタウンです。そして貴族の荘園邸の如き、豪華な主人公の生家。現実味を全く感じさせない異世界です。更に、数十年前、街が繁栄していた頃、失われた湖に建っていた劇場。空爆か地震にでも遭ったのかい？何故そこまで倒壊しているんですか？そのくせ、湖の畔には確りした木製のボートと、すぐに火の燈るランタンが…。都合良過ぎますって。全ては主人公を招き寄せる罠ですと言われれば、それまでですが。劇場の天井裏のような場所にある、メアリーの暮らしていた私室。今にも外れそうなボルトで留められた金属の吊橋の先にあるのですが、最初と最後だけしか渡ってなかったよ。行き来するシーンは省略としても、あんなに何回も往復していたら、最後のシーンより前に、確実に落ちていたと思うんですけど。この映画に入り込むのは、かなり努力が要りますね。

  Apr 9, 2008

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  「シーズ・オール・ザット」(1999)

  "SHE'S ALL THAT"監督・・・ロバート・イスコヴ 出演・・・フレディ・プリンゼ・Ｊｒ ザック・シラー レイチェル・リー・クック レイニー・ボグス ケヴィン・ポラック ウエイン・ボグス マシュー・リラード ブロック・ハドスン アンナ・パキン マッケンジー・シラー キーラン・カルキン サイモン・ボグス エルデン・ヘンソン ジェシー・ジャクソン ポール・ウォーカー ディーン・サンプソン ジョディ・リン・オキーフ クレア・デュヴァル ・物語序盤・ザック・シラーは頭脳明晰でルックスも良し、家庭は上流階級で、高校では生徒会長を務める、学園一のイケメン。彼にはジェシーという、学園のクィーンである彼女が居たが、夏休みの間に、彼女はテレビ俳優と浮気をして、あっさりザックを振ってしまう。ザックは自分と居れば、どんな女でもクィーンになれると豪語し、彼の悪友はダサい女学生をプラムでクィーンの座に付けられるかで、賭けをしようと持ち掛ける。これを受けて立ったザックだが、事もあろうか、白羽の矢が立ったのは、学園でも最高の根暗ブスとして有名なレイニー・ボグス。それでも負ける訳にはゆかないザックは、レイニーを落としに掛かるが、確固たる自分の世界を持っているレイニーは、全く歯牙にも掛けず。レイニーの幼馴染の親友から、デート用にと演劇のチケットを貰ったザックは、レイニーがそこの舞台に立つパフォーマーである事を知る。そしてザックも主催者に誘われるまま、舞台に上がり、初めてのパフォーマンスをする。その後もレイニーにしつこく付き纏うザックだが、相変わらず彼女の態度は軟化しなかった。 有り勝ちなストーリーですけどね。映画なら「マイ・フェア・レディー」の頃から、繰り返されてきたお話。ブスでイケてない女の子が、あれよあれよと言う間に美しく変身して、初めは見下していた男も真実の恋に目覚めてゆく。こういう映画でいつも思う事。どブス役で出てくる女の子、一生懸命ブスを装ってはいるが、素ッピンでも充分綺麗なんだよ！だって、この映画で言うなら、レイニー役のレイチェル・リー・クックはモデル出身。元の出来が、本当のブスとは全然違います。思い切って本当のブスちゃんを起用して、それなりに綺麗になった姿を見せてほしい。人間が人間に惹かれるのは、外面ではなく、内面の持つ輝きである事を見せてくれないと、結局はルックスが綺麗でないとダメなのかと思ってしまうのですよねぇ。

  Apr 7, 2008

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  「ヒットマン」(2007)　試写

  ４/１２(土)より全国ロードショーです。"HITMAN"監督・・・ザヴィエ・ジャン 出演・・・ティモシー・オリファント、ダグレイ・スコット、オルガ・キュリレンコ、ロバート・ネッパー、ウルリク・トムセン、ヘンリー・イアン・キュージック、マイケル・オフェイ、他 ・物語序盤・身よりの無い子供達を集めて、あらゆる殺人術を習得させ、非情の殺し屋を作り出す機関で成長した男。最強の暗殺者となった彼の新たなターゲットは、ロシアの大物政治家ミハイル・ベリコフだった。彼は、いつものように正確な射撃で、冷徹にターゲットを射殺し、手慣れた様子で人混みへと姿を晦ます。その後、ホテルに戻った彼の元に、事件の目撃者が居たので、抹殺するようにとの指令が入る。接触場所へと出向いた彼は、ターゲットである娼婦ニカと視線を合せて違和感を抱いた。目撃者である筈の彼女は、彼の顔を見ても全く気付かないのである。そこへビルの屋上から、彼を狙った狙撃が…。ホテルに戻った彼は、自分が罠に嵌められ、消されようとしている事を知る。ホテルで襲撃を逃れた彼は、何らかの情報を知っていると思われるニカを拉致する。ニカの顔に彫られた刺青を見て、自分の後頭部に彫られたバーコードの刺青を思い、彼はニカの中に、自分と似通った何かを感じ、殺す事を思い留まった。そして二人は、自分達を捨て駒にして、始末しようとしている陰謀の首謀者を突き止めようと動き出すのだった。 　名を持たず、ただ番号のみで呼ばれる、敏腕エージェント４７を主人公とした、人気テレビゲームを映画化した作品です。全ての面で、何だかなぁ…と言いたくなる映画。正規の料金を払ったら、確実に卓袱台引っくり返したくなる映画でしょう。(；一_一)ゲームの「ヒットマン」シリーズはタイトルは知っているものの、私は未プレイ。だから、どういう雰囲気なのか、はっきりとは判らないのですが。しかし、この映画のように、甘ちゃんなものではないと思うんだけどなぁ…。先ず、４７役のティモシー・オリフェントが駄目。顔立ちが優しく、わりと肉付きも良いので、物心付く前から、只管殺人術を教え込まれた、非情なアサシンというイメージと懸け離れています。もっと頬の扱けた、眼光の鋭いタイプの俳優を起用しないと、常に生と死の挟間を渡るタイトロープの上を歩いている男の冷めた殺気が出せないよ。ヒロイン、ニカ役のオルガ・キュリレンコは、最新007でボンド・ガールに決まった新星との事。ルックスはなかなか可愛くて良いと思います。４７の風貌も殺し屋に見えなければ、性格もとても冷徹な殺し屋と呼べるようなものではありません。何処を褒めて良いのか判らない映画なので、貶し出したらキリがないのですが…。子供の頃から、戦い殺し合う事しか教えられなかった人間が、成長してどんな大人になるかは、想像するに容易いと思います。それなのに何故、組織きってのヒットマンである４７が、ニカの涙と頬の刺青を見た途端に、情に絆されているのか…。愛情や人間らしい感情なんて無いと思いますよ、そういう暮らしをしてきた人には。その辺の初な兄ちゃんみたいに、人間臭く紳士的で優しい４７。殺し屋なので、普通に人殺しはするのですが、一方でニカの裸を見たら照れてしまったりと、キャラクター設定がちぐはぐ。ニカの方も、自分を拉致して殺そうとした相手に、何故すぐに懐くかな…。恋人のように、笑ったりじゃれ付いてみたり、なんだか変です。最初は頑なに心を閉ざしていた二人が、傷を背負った孤独な者同士のシンパシーで、次第に打ち解け、惹かれ合って行く。要するに描きたかったのは、そういう流れなのでしょうけど、兎に角、脚本が下手過ぎて、変だとしか言いようが無いのです。彼等が巻き込まれる陰謀というのも、何だか好い加減な話だなぁと。もしこれがアクションゲームで、プレイしながら時折挿入されるムービーだったら、この程度のストーリーでも、きっと許せたと思うんです。でも、まかりなりにも映画として見せるのなら、もうちょっと気合いを入れて作らないと…。全てが温くて緩い。映画全体に漂う空気も、ちぐはぐです。シリアスなのか、おふざけなのか、統一性が無いので、観ている方も作品の方向性を決めかねてしまいます。クールでスタイリッシュなアクション映画にしてしまえば良いのに、随所に、バカじゃないの？と思ってしまうシーンがあって、これは寧ろ、コミカル路線を狙っているのか？という疑念も湧いてくる。でも、殺す所は確り殺すので、やっぱりシリアス路線？と、最後までどっちよ？！と思い続けていなければなりませんでした。微妙にコミカルなシーンは、洒落のつもりで入れているのかもしれませんが、映画自体に基本的な土台が出来ていないので、馴染まずに浮いてしまっています。舞台はロシアですが、お前等全員、ロシア語下手過ぎ…。ロシア訛りの英語を話して、ロシア人を装っていますが、ロシアを舞台にするなら、メインキャストには、英語も話せるロシア人俳優を起用して下さい。ロシア人向けの演説の途中で、いきなり英語を話し出されると、唖然としてしまう。しかし、こんな瑣末な事は、この映画に於いては、大した問題ではないですけどね。何しろ始めから終りまで、全てがなってないから。(^_^;)ミハイルの弟、なんでドラックや武器の密売人なんですか…。しかも見た目がマフィアのチンピラみたいなのが、更に納得いかんのよ。闇の仕事に関与しているにしても、表向きは上流階級の紳士とした方が、普通に受け入れられると思いますが。あと４７さん、素早く変装するのが得意なのは判ったけれど、後頭部にバーコードのスキンヘッドじゃ、何を着てもアナタだと見破られてしまいますよ…。変装するなら、鬘も被ろうね。スタイリッシュに決めようとしたけれど、ゲーム的な感覚から抜け出せないまま、適当に作ったら、こんなん出ました～、という映画でしょうか。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Apr 3, 2008

• 「８８ミニッツ」(2007)

  http://www.nikkatsu.com/88minutes/"88 MINUTES"監督・・・ジョン・アヴネット 出演・・・アル・パチーノ ジャック・グラム アリシア・ウィット キム・カミングス エイミー・ブレネマン シェリー・バーンズ リーリー・ソビエスキー ローレン・ダグラス ウィリアム・フォーサイス フランク・パークス デボラ・カーラ・アンガー キャロル・リン・ジョンソン ベンジャミン・マッケンジー マイク・ステンプ ニール・マクドノー ジョン・フォースター リーア・ケアンズ サラ・ポラード スティーヴン・モイヤー ガイ・ラフォージ ポール・キャンベル カジ＝エリック・エリクセン ジュリアン・クリストファー ティム・ヘンリー クリスティーナ・コープランド ブレンダン・フレッチャー ・物語序盤・1997年、若い女性ばかりを狙った連続猟奇殺人事件が発生し、容疑者ジョン・フォースターが逮捕される。裁判で精神医学的見地から証言をした、ＦＢＩ異常犯罪分析医ジャック・グラムの意見が決め手となり、一審で無罪だったフォースターは、一転、死刑判決を受ける。フォースターはグラムに向かって、不敵な笑みを浮かべ「チクタク」と言葉を投げ掛けた。それから９年後。精神分析医としてＦＢＩで勤務する傍ら、シアトルの大学で教鞭を取るジャックの元に、謎の人物から、「お前の命はあと８８分だ。チクタク。」という脅迫電話が掛かってくる。折りしもその日は、フォースターの死刑執行日だった。そして街では、かつてフォースターが起こした事件と同じ手口の猟奇殺人が発生。俄かに、フォースター冤罪説が浮かび上がり、猟奇殺人に関してトラウマを持つグラムの証言に、でっち上げの疑念を抱く者も。刻一刻と迫ってくる、殺しの予告時刻。誰が自分を狙っているのか。見渡せば、周囲は疑わしい者達ばかりである。グラムは唯一信頼できる秘書の協力を借りながら、事件の核心を探り出そうとするが…。普通に面白いサイコ・サスペンスでしたよ。小規模な公開しかされないのが残念ですね。それだけアル・パチーノのネームバリューが低下しているという事なのでしょう。彼だけでは客は呼べないと見做されたのですね。確かに見た目にも老いを感じますし、最盛期のようなパワーも既にありません。でも若さや人気だけで、全てを決めてしまうのは勿体無いし哀しい。同じ脚本で、もし主演が今が旬な俳優ならば、当り前のように全国の主要封切り館で公開されたと思います。傑作とは言いませんが、このレベルの映画なら、普通に全国公開されても問題ないので、アル・パチーノ・ファンとしては、寂しいものを感じますね。

  Apr 1, 2008

• 「マリア」(2006)

  http://www.maryandjoseph.jp/"THE NATIVITY STORY"監督・・・キャサリン・ハードウィック 出演・・・ケイシャ・キャッスル＝ヒューズ マリア オスカー・アイザック ヨセフ ヒアム・アッバス アンナ（マリアの母） ショーン・トーブ ヨアキム（マリアの父） キアラン・ハインズ ヘロデ王 ショーレ・アグダシュルー エリサベト スタンリー・タウンゼント ザカリヤ アレクサンダー・シディグ 天使ガブリエル ナディム・サワラ メルキオール エリック・エブアニー バルタザール ステファン・カリファ ガスパール ・物語序盤・ナザレはローマ支配の下、地方領主であるヘロデ王にも支配される町。二重の税を課せられた人々は、希望の無い圧政に喘いでいた。そこに暮らすマリアは美しい娘だったが、父は税を払えそうもなく、その場合、若い娘は不足した税の代りとして、乱暴な男達に連れ去られてしまうのである。以前からマリアに思いを寄せていたヨセフは、マリアの父親の代わりに不足分をこっそり払い、没収された唯一のロバも取り返してくれた。しかしマリアを待っていたのは、突然のヨセフとの縁談。親の決めた結婚に刃向えるような時代ではない。だが、殆ど面識も無いヨセフとの結婚を強要されて、マリアは悲しみを隠せなかった。そんな折、彼女は天使ガブリエルと遭遇し、自分が救世主となる神の子イエスを身籠る事を告げられる。同時に、ザカリアの妻である年長の従姉エリザベトが、ヨハネという男児を身籠っていると告げられた彼女は、父に願い出て、エリザベトの住む町へ行く許しを得る。果たして、エリザベトは本当に妊娠しており、彼女もまた天使からお告げを受けていた。処女の身で受胎を告げられた当初は戸惑っていたマリアも神の意志を確信し、神の子を生む決意を固める。だが、収穫期に故郷ナザレに戻ったマリアの膨らんだ腹を見て、ヨセフと両親は絶句。自分を裏切ったとマリアに怒りを感じるヨセフだったが、彼もまたガブリエルからお告げを受け、マリアの言葉を信じ、周囲の非難を覚悟で、まだ関係を持ってはいけない間柄であった彼女の腹の子を、自分の子だと断言する。その結果、マリアとヨセフは住民から白眼視され、無視されるように。一方、自分の立場を脅かす救世主の出現を危惧したヘロデ王は、予言の内容から救世主を見付け出し、抹殺しようと試みる。ベツレヘムより未来の救世主が現れると知った王は、全ての領民に生まれ故郷へ戻るよう布告を出す。ベツレヘム出身のヨセフは、身重の妻マリアを連れて、遥か遠い故郷へと旅立つ。原題の中の単語、"NATIVITY"は"生誕"を意味する単語ですが、"THE NATIVITY"と定冠詞を伴って使われる場合は、"キリスト降誕"を指します。何故、邦題を「マリア」にしたのか謎です。「マリア」と言うなら、私は寧ろ「ヨセフ」と題してあげたいくらい。 それ位、ヨセフ、凄く頑張るの物語なんですもの。笑。せめて、「マリアとヨセフ」辺りにしてやれよ…。明らかに自分の子なのに、イエス＝神の子という定義の為に、影の薄～い存在にされてしまった気の毒な旦那さん。大抵、偉人の出自が賤しい場合は、こういう無茶な逸話が後から作られますが。(^_^;)この映画のヨセフは、物凄く素敵な旦那様なので、私はうっとりしてしまいましたよ。こんな素晴らしい人が居るなら、是非、結婚して頂きたいものです。笑。

  Mar 31, 2008

• 「クィーン」(2006・英/仏/伊)

  http://queen-movie.jp/"THE QUEEN"監督・・・スティーヴン・フリアーズ 出演・・・ヘレン・ミレン エリザベス女王 マイケル・シーン トニー・ブレア ジェームズ・クロムウェル フィリップ殿下 シルヴィア・シムズ クィーン・マザー（皇太后） アレックス・ジェニングス チャールズ皇太子 ヘレン・マックロリー シェリー・ブレア ロジャー・アラム サー・ロビン・ジャンヴリン ティム・マクマラン スティーヴン・ランポート ・物語序盤・1997年のイギリスでは、国民の絶大な支持の元、若き首相トニー・ブレアが誕生した。彼の妻シェリーは大の王室嫌いで、ブレア首相自身も王室に対して批判的な考えを持っていた。女王エリザベス２世を公式訪問し、首相として承認されるブレア。しかし新政権が発足したばかりの同年8月31日、チャールズ皇太子と離婚したダイアナ元皇太子妃が、フランスに滞在中、パパラッチとのカーチェイスの末に、交通事故に遭い他界するという一大事が起こる。王室を離れてからも、英国国民に愛されてきたダイアナの突然の訃報に、一般市民達は深い悲しみに包まれる。女王を始め、夫フィリップや妹などは、故ダイアナに対し、生きていても死んでいても厄介な存在だと冷淡な態度を見せる。既に王室と無関係の者であると、公用機の使用を渋るエリザベスだが、皇太后よりチャーター機を借りて、チャールズ皇太子は元妃の遺体を引き取りに行く。ブレア首相は逸早く、ダイアナ元妃に対する追悼のコメントを発表したが、エリザベス女王は自分がコメントする必要性は無いとして、首相からの進言を無視する。そして王室一家はマスコミから遠ざかる為、宮殿から離れて、別の領地で鹿撃ちに興じていた。追悼の意も表わさず、半旗を掲げる事すらしないエリザベス女王に、国民は怒りを露わにし、女王は窮地に立たされるのだった。エリザベス女王役のヘレン・ミレンが、アカデミー主演女優賞を受賞した作品。ヘレン・ミレンの演技は貫録があったと思うのですが、作品としては、私は特に何も感じなかったですね…。誰にも感情移入できませんでした。こういうものって、他人が幾ら作ってみた所で、空想でしかないと思うんですよ。英国国内のみならず世界中からも、英国王室の非人間的な体質が非難されたので、擁護の映画も作ってみました～、という感じにしか、私の目には映らなかった。脚本自体も、物語として観るには盛り上がりも無く、あまり巧くない。擁護する立場で撮るにしても、踏み込みが浅くて、「エリザベス女王、可哀想…。」という思いが浮かばないです。更に不味いと感じたのがブレア首相の描き方。最初は厭な婆さんと思っていた気持ちが、最後には立派な正に女王たるに相応しい人物と、大絶賛に変化するのですが。本来ならば、観客も共感できるような経緯を描くべきなのに、特に何も無いまま、唐突に立派だと言い出したようにしか見えないのです…。そこまで劇的に、彼の考えが変化した理由が見えず、ただ違和感が募るばかり。エリザベス女王の言葉を借りるなら、大袈裟に振る舞わず、心の内は明かさない英国人気質を、脚本に於いても具現して見せたのでしょうか。(^_^;)でも映画ですから、もう少し感情移入できるように作ってほしいなぁ。表現が奥床し過ぎて、何も伝わらないんですって。だからこれを観ても、私自身は、やっぱりダイアナの方が何倍も可哀想でしょう…としか思えなくて、映画の意図とは反対の気持ちを抱いてしまいました。チャールズ皇太子が、すごく善人に描かれているのも嘘っぽくて。確かに、結婚前から愛人は居たにせよ、一度は結婚しようと決意して、子供も二人生した女性ですから、全然ショックじゃないとは思いませんが。しかし、カミラ夫人の存在など初めから無いもののように、元妻を失って嘆き悲しんでいるだけの良き皇太子として描くのは空々しいとしか言えないです。擁護する為には、ある程度、彼等の非も認めないと、説得力が無いんですよ。生前ダイアナ元妃は、自分の浮気の一つを認めて、その上で自分の置かれた不遇な立場、王室の冷酷さを強調して、同情を集める事に成功していたと思うのです。論述の戦法の初歩ですが、自分の小さな非を認める事で大きな欠点を隠し、同時に敵を攻撃する。この映画の脚本は、その辺が曖昧にしか書けていないので、「彼等も辛かったのね」と思う前に、「嘘っぽくて空々しいよ…。」と感じてしまいました。

  Mar 30, 2008

• 「フィクサー」(2007)　試写

  4/12より全国ロードショーです。http://www.fixer-movie.com/"MICHAEL CLAYTON"監督・・・トニー・ギルロイ 出演・・・ジョージ・クルーニー マイケル・クレイトン トム・ウィルキンソン アーサー・イーデンス ティルダ・スウィントン カレン・クラウダー シドニー・ポラック マーティ・バック マイケル・オキーフ バリー・グリッソム デニス・オヘア ミスター・グリーア ジュリー・ホワイト ミセス・グリーア オースティン・ウィリアムズ ヘンリー・クレイトン ジェニファー・ファン・ダイク アイビー メリット・ウェヴァー アンナ・キサーセン ロバート・プレスコット ミスター・ヴァーン ケヴィン・ヘイガン レイモンド・クレイトン ショーン・カレン ジーン・クレイトン デヴィッド・ランズベリー ティミー・クレイトン ケン・ハワード デヴィッド・ザヤス テリー・セルピコ ・物語序盤・マイケル・クレイトンは、ニューヨークの大手法律事務所ケナー・バック＆レディーンに所属する弁護士。表向きは普通の弁護士だが、彼の主たる業務は、顧客が公表されては困る様々なトラブルを、裏で処理する揉消し屋"フィクサー"としての仕事。私生活では、妻との離婚、ギャンブル依存、更に従弟と共に経営する筈だったレストランの資金を持ち逃げされ、借金８万ドルの返済を迫られる羽目に陥ったりと、踏んだり蹴ったりの状況だった。法律事務所は、巨大農薬会社Ｕ・ノース社が販売した農薬による被害に対する3000億円の集団訴訟で、企業側の弁護を任されていた。しかし主任弁護士のアーサー・イーデンスは、長期間に及ぶ裁判と家庭崩壊によって、深刻な躁鬱病を患うようになっていた。そして重要な協議の最中に、原告側の若い女性アンナ・キサーセンに向かって愛していると騒ぎ立て、全員の注視の中で全裸になるという奇行に及んでしまう。その上アーサーは、顧客であるＵ・ノース社が敗訴する決定的な機密文書を持っており、それをアンナに渡すつもりでいるらしい。これを察知したＵ・ノース社法務部部長カレン・クラウダーは、絶体絶命の危機を乗り切る為に、越えてはならない一線を越える覚悟を決める…。カレン役を演じたティルダ・スウィントンが、アカデミー賞助演女優賞を受賞した。他、全７部門でノミネートされた快作サスペンス。取り上げられた題材は平凡だが、秀でたアイデアが作品全体の格を押し上げたという印象。また謎めいたオープニングが、ラストに繋がってくる演出も良い。この映画の中心となるのは、マイケルの息子ヘンリーが夢中になっている児童向けファンタジー「王国と征服」の構成である。この本の中の登場人物は、それぞれに個性的だが、互いの存在について知らない。話す機会も無いので、相手がどんな性質の持ち主であるか、自分にとって敵なのか味方なのか、判断する事が出来ないのだ。この映画の登場人物も、互いに関わりを持ちながら、相手の本質については何も知らない。それが各々の選択肢を狭め、的外れな行動へと押し遣り、絞める必要の無い自分の首を絞めてしまう結果に結び付く。上記の荒筋を読むと、どういう話か簡単に判るのですが、実際に映画を観ていると、暫くは話の筋が見えてきません。謎かけ的な序盤の映像から、四日前へと場面が展開して、最終的に現在に戻ってくるという構成になっています。最初は賭博場でポーカーをしているマイケルに、裏仕事の依頼電話が掛かってくる所から。大物の顧客が交通事故を起こして、轢き逃げしてしまったので、何とか解決しろと。その後、車を走らせているマイケルが、停車して丘の上に佇んでいる三頭の馬に近付くシーン。一体これは何だと思っていたら、背後で突然、車が爆発炎上。更に、脇の下に、ぐっしょり汗を掻いている女性が登場。彼女は鏡の前で、インタビューに答える練習を繰り返している。この人物は誰なのか？こういった形で、それぞれの登場人物が誰で、どんな役割を担っているのか、理解するのに時間が掛かる仕組みになっています。そして明確な答えを示さないまま進んでゆくストーリーは、ラストの息詰まる攻防戦へと突入。

  Mar 27, 2008

• 「マザー・テレサ」(2003・伊/英)

  http://www.motherteresa.jp/"MADRE TERESA"監督・・・ファブリツィオ・コスタ 出演・・・オリヴィア・ハッセー マザー・テレサ ミハエル・メンドル エクセム神父 エミリー・ハミルトン アンナ セバスチャーノ・ソマ セラーノ神父 ラウラ・モランテ マザー・ドゥ・スナークル イングリッド・ルビオ ヴァージニア／シスター・アグネス ・物語序盤・1946年、インドのカルカッタ。マザー・テレサは既に20年、この地に住み、カトリックの修道院内の女学校で教鞭を取っていた。だが貧しい瀕死の病人が、誰からも顧みられず駅に横たわっているのを見た時、彼女は自分の働く場は、修道院の中ではないと悟る。それは神との対話でもあった。しかし彼女の願いは聞き届けられず、修道院に残るか修道女を辞めるかの、二者択一という冷酷な通達が…。漸く貧民街での奉仕活動が許可されたマザー・テレサだったが、彼女の遣り方に不満を抱く者も少なからず居た。カトリック教会は品位を貶めると、またカルカッタの富裕層は街に貧困のイメージを植え付けると反発。またイスラム教やヒンズー教など宗教の異なる人々も、キリスト教の布教を目的としていると、彼女等に敵意を剥き出す者も多かった。限界を感じたマザー・テレサは、立ちはだかる障壁を乗り越えて、自ら新たな組織"神の愛の宣教者会"を作り、真にイエスの教えを貫く、清貧で見返りを求めない献身的な活動を続ける。仕事は厳しく、組織の運営は金銭的に決して楽なものではなかったが、ニュースに取り上げられる事で、徐々に寄付も集まるようになる。その後、マザー・テレサは仲間達と共に、ハンセン病患者等を収容する平和の村の建設を構想するが、様々な壁に直面するのだった。36歳から87歳までのマザー・テレサの軌跡を描いた作品。懐かしいオリビア・ハッセーが、円熟した手堅い演技を見せている。建設中の建物を壊すユンボーなどが、日本から流れてきた中古なのですよ。日新建設(株)という文字が大写しになって、何も関係していないのに、悪者にされたような気の毒な使われ方をしていました。(^_^;)オリビア・ハッセーって、アルゼンチンとイギリスのハーフなのですね。私の年代だと、布施明の嫁というイメージが強いかな。映画だと「ロミオとジュリエット」のみで、後は作品に恵まれなかったのが気の毒な女優さんでした。日本だと「復活の日」に出演していた事を覚えている人も多いと思います。あのレベルの映画でも大ヒットしたのですから、昔は良かったねぇ。(遠い目)オリビア、今作で久々の復活という感じで、出演の話を聞いた時は嬉しかったです。もっと活躍してほしいですね。さて、マザー・テレサ。その名を知らない人は居ないと思います。(故人になってしまったから、ひょっとして今の若い子は知らなかったりして…汗。)しかし、彼女の辿って来た軌跡を、詳しく知る人は少ないのではないかと。私も、こんなに大変な道程だったのね、と改めて認識。功績ばかりが脚光を浴びる世の中ですが、何かを成し遂げる迄には、多大な努力と犠牲が必要な訳で。マザー・テレサも同じく、一歩進めば壁にぶつかり、何とかそれを乗り越える、すると再び、まなかいには新たな壁が…という繰り返しでした。かつてイエスが教えを広めて歩いた時、彼は貧しい最下層の人々を救おうとしていた筈。けれども現在のカトリックの中心地バチカンに、その初志は存在しない。両の手に余る物を持ってはならぬと、イエスは説いた。しかし教皇以下、高位の聖職者達は、豪奢な衣装で着飾り、宝飾品を身に纏い、飽食を貪りつつ、互いの衣を引っ張り合っては、権力闘争に明け暮れている。真に彼等がキリスト教徒であるなら、仰々しい法衣を脱ぎ捨て、市井に下って、マザー・テレサのように、見捨てられた人々に尽くすだろう。自分達が保身に走るだけなら、いざ知らず、修道院を出て、病人の看護をしたいというマザー・テレサの願いまで拒否するというのだから、権威主義もここに極まれりといった感じです。貧しい人々の為に、粉骨砕身で働く彼女に、教会の威厳を損なうものだと批判する連中。なんか、可笑しくないか？イエスは、そんなものを守れと、いつ教えたんだ？人間は弱い、そして弱さ故に、容易に醜く変質する。高潔な意志を保ち続け、どんな苦境が待ち構えていようとも貫き通すには、とても強い心が必要なのだ。彼女の意志に賛同して集まった修道女達も、余りの過酷な労働に、音を上げて去ってゆく者も多かった。生半可な情熱では続けられない奉仕である。テレサの元に馳せ参じた女性達の中に、アンナという人が居た。彼女は硬化症を患い、母国に帰る事を余儀なくされるのだが。マザー・テレサは、貴方に出来る協力をしてほしいと言う。それは祈る事。そして何度目かの苦境に立たされた際も彼女に電話をして、今こそ貴方の協力が必要であると。どうか祈ってほしいと。世界中の人々の、一つ一つの小さな祈りが集まって、大きな力となる。恐らく、と言うか、間違いなく、私は途中でギブアップして辞めてしまう人間の一人だと思います。ここまで自分を殺して、他人に尽くす覚悟は、私には持てない。神が望むなら、物事は実現するし、望まぬのなら、立ち消えになる。マザー・テレサは常に、そう考えていた。彼女は神の手が持つ鉛筆。神が書くのなら、それを止める事は誰にも出来ない。同時に、そんな純粋な神の使徒であった彼女の傍で、実際的な運営について、遣り繰りしていた神父様にも、ご苦労様でしたと言いたいです。あらゆる駆け引きを否定する人の傍で、蔭に日向に協力して支えてゆくのは、本当に大変だったでしょう。とことんピュアな信念の人だから、何とか助けてあげたいと思う反面、融通が利かないので、周りの人間は現実と折り合いを付けるのに四苦八苦です。最後に、映画なので町並みは貧しいと言っても綺麗でしたが、実際のインドの不潔さと言ったら、筆舌に尽くし難いものがあります…。流石に、映画では、あれだけ汚い街は映せないよね…。

  Mar 26, 2008

• 「明日への遺言」(2007・日本)

  http://www.ashitahenoyuigon.jp/監督、脚本・・・小泉堯史(英語脚本：ロジャー・パルヴァース) 原作・・・大岡昇平『ながい旅』（新潮社刊） 脚本： 小泉堯史 出演・・・藤田まこと 岡田資 ロバート・レッサー フェザーストン主任弁護人 フレッド・マックィーン バーネット主任検察官 リチャード・ニール ラップ裁判委員長 西村雅彦 町田秀実 蒼井優 守部和子 近衛はな 小原純子 加藤隆之 岡田陽 田中好子 水谷愛子 富司純子 岡田温子 ナレーション・・・竹野内豊 ・物語序盤・真珠湾攻撃の後、第二次世界大戦はアメリカの参戦を招き、太平洋戦争へと発展する。当初、日本本土への空爆は、国際法に基づき軍事関連地域に絞られていたが、米軍の司令官交替に伴って、一般都市部への無差別攻撃が行われるようになり、主要都市は壊滅的打撃を受けていた。1945年5月に、名古屋市街に対して行われた絨毯爆撃の際、撃墜されたＢ２９からパラシュート降下した米軍搭乗員38名が日本軍により拘束される。東海軍司令官であった岡田資中将は、彼らを略式裁判によって処刑と決定し、38名は軍刀によって斬首された。日本の無条件降伏という形での終戦後、岡田中将をはじめとする部下20名は、捕虜を正規の裁判無しで殺害した罪により起訴される。敗戦後の米軍による一方的な裁判に憤っていた岡田中将は、一連の法廷闘争を"法戦"と名付け、信念を曲げず徹底抗戦する事を誓う。岡田側の主任弁護人フェザーストンは、国際法に違反する無差別爆撃を行った搭乗員は、ジュネーブ条約の定める"捕虜"ではなく、"戦争犯罪人"であるという論点から、岡田等の行為は正当であると主張する。岡田中将は、敗戦間際の日本国内の状況を説明し、略式の手続きが止むを得ない手段だった事を主張する傍ら、処刑に関する全責任は、部下の行為も含め全て、司令官であった自分にあると強調し、部下達を守り抜く姿勢を貫くのだった。第二次大戦後の軍事裁判と聞くと、Ａ級戦犯を裁いた東京裁判の事ばかり思い浮かべてしまいがちですが、先ずオープニングで、これほど多くの場所で戦犯達が裁かれていたのだという事実を知って驚きました。第一、「戦犯」と簡単に言ってしまうのも気の毒なのですが。日本から遠く離れた地で敗戦を迎えた兵士達は、そのまま現地で、裁判などと呼べる代物ではない手続きの後、事務的に殺されてゆきました。そんな死に方をする位なら、戦死していた方がまだ良かったな、と。捕まって吊るされた兵士達は、そう思ったんじゃないかな。遺骨すら故郷に帰る事もなく、無念でしょうね…。最終的に終戦した後も、千人近くの兵隊が殺されたというのですから、本当に戦争は絶対に負けてはいけないと実感しました。みんな、国の命令で駆り出されただけじゃないか。何で戦争が終わったのに、殺されなきゃならないのか。でも破れた側は、勝者のなすがままになるしかない。だから負ける戦争はしてはいけないのだ。国内各地でも、Ｂ～Ｃ級の裁判は行われていました。しかし勝てば官軍の理論で、日本側の言い分など全く通らず、一方的に理不尽な断罪が行われるだけの場です。この映画の主人公となった、岡田資中将も軍事裁判で、散々煮え湯を飲まされた一人。そんな状況下で彼は、法廷闘争を「法戦」と名付けて、独り徹底的に戦う事を決意するのです。

  Mar 22, 2008

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  「君のためなら千回でも」(2007)

  "The Kite Runner"監督・・・マーク・フォースター原作・・・カーレド・ホッセイニ『君のためなら千回でも』(早川書房刊)出演・・ハリド・アブダラ アミール ホマユン・エルシャディ ババ ゼキリア・エブラヒミ 少年時代のアミール アフマド・ハーン・マフムードザダ 少年時代のハッサン ショーン・トーブ ラヒム・ハーン アトッサ・レオーニ ソラヤ アリ・ダネシュ・バクティアリ ソーラブ ゼキリア・イブラヒミ、他。・物語序盤・2002年アメリカＮＹ。作家として初めての小説を出版したアミールは、妻と共に歓びを分かち合っていた。そこへ父の旧友であり、子供時代、自分の小説を評価してくれた理解者でもあるラヒム・ハーンから電話が掛かってくる。パキスタンに住むラヒムはアミールに、故郷へ戻るよう要請し、アミールは恩人に逢う為、政情不安定なアラブ圏へと旅立つ事を決意。時は遡って1970年代のアフガニスタン。アミールは兄弟同然に育った召使の子ハッサンと、常に行動を共にしていた。気の弱いアミールにとって、ハッサンはいじめっ子達から彼を守ってくれるボディガードでもあった。反骨の人である父親は、そんなアミールの軟弱さを日頃から嘆じていた。当時、街では子供達の凧揚げが盛んで、アミールとハッサンもペアを組んで、毎日喧嘩凧を楽しんでいた。ハッサンは凧拾いの名人で、糸の切れた凧の落下地点を常に見抜いていた。街中がお祭り騒ぎとなる凧揚げトーナメントの日、アミールとハッサンは、新しい凧でライバルを破って見事優勝を果たす。だが戦利品の凧を拾いに行ったハッサンは、日頃から彼等と反目していた少年達に捕まり、性的暴行を受けてしまう。その現場を目撃したアミールだったが、恐怖の為に、ハッサンを見殺しにしてしまう。それ以来、ハッサンに対して気まずい思いを抱くようになったアミールは、彼を避けるようになる。やがてソ連によるアフガン侵攻が始まり、アミールは父に連れられてアメリカへと亡命した。 先ず最初に一言。アミール、ヘタレ過ぎ…。しかも卑怯…。いくら軟弱でも、少しは根性見せてくれ。当り前の事なんですが、アフガンにも平和な時期があったんですよね。中東地域というと、常に紛争が絶えず、街は破壊され、人々は簡単に殺されるというイメージがありますが、穏やかに暮らしていた古き良き時代もあったのだという事を知り、それが失われてしまうという事が、とても痛々しく感じられました。ソ連のアフガン侵攻によって、見る影も無く破壊された街並み。緑豊かだった土地の樹木を、ソ連軍は全て伐採していました。その後、タリバン政権の台頭により、人々の生活は益々狂気に脅かされてゆく。かつて、ケバブの香ばしい匂いの漂っていた平和な街は、市民を迫害する武装したタリバン兵士達と、放置されたままの遺体と異臭に包まれた、荒んだ場所へと変貌していた。もし自分の住む町が、こんな風になったら、私達はどう感じるでしょうね？何故人は人を差別し、平気で殺すんだろう。簡単に理性を失い、下劣で野蛮な獣の本性を剥き出しにしてしまうんだろう。アミールの父は、誤った戦争の中でも、正しさを見失ってはいけないと、銃を突き付けるソ連兵に立ちはだかった。私は逆巻く狂気の中で、正気を保っていられるだろうか…？この映画を観ようと思った切っ掛けは、新聞に載っていた原作小説の紹介。荒筋に惹かれたので、是非足を運ぼうと。始まりは、成人してＮＹで暮らすアミールが、念願の作家デビューを果たして、送られてきた自分の単行本を前に、妻と二人で喜び合う場面から始まります。そこへ遠い国からの電話が。今こそ、やり直すチャンスだと。そこから、アミールの子供時代に場面がターンして、その後は終盤まで、少年時代の話が続くという構成になっていました。再び成人後のアミールのパートに戻る終盤は、予想以上にスリリングな展開で、アクション映画宛らの様相。命懸けの救出劇で、ハラハラさせられるのですが、相変わらずアミールはヘタレ。笑。それぞれ人には得意分野があるので、どんな状況でもアミールに肉弾戦は無理なんですね。しかし、一発くらい殴り返せよ…。少年時代のハッサンを演じるアフマド・ハーン・マフムードザダ君が、円らな瞳のいたいけな子供で可愛いんです。当時はまだ平和な時代のアフガンでしたが、人種差別はありました。ハッサンは差別される側の人間であり、使用人の息子。生まれた時から、雇い主の坊ちゃんであるアミールの為に滅私奉公する事が当然で、彼自身何の疑問も抱かず、アミールを愛し、アミールの忠実な僕として尽くしています。空想の物語を考えるのが好きな、内向的な少年アミールは、いじめっ子に絡まれても、喧嘩すら出来ない臆病な子供。そんな彼を守って戦うのが、ボディガードであるハッサン。常に毅然とする事を良しとするアミールの父は、男らしくない息子を不甲斐無く感じて、苦言を繰り返す。お産で母親を殺したから、父が自分を嫌っているのだと思うアミール。解り合えない親子。それでも、アミールとハッサンは親友同士として、いつも仲良く行動を共にしていましたが…。物語には隠し玉が用意されています。これが後半の展開の鍵となってくる訳ですが。街の名士であったアミールの父親。彼は少年のアミールに言いました。人間の罪で最も悪いのは、盗みであると。全ての罪は、盗みの変形である。友への裏切りは、相手の信頼を盗む事。と、立派な言葉を言っていたお父さん…、お前もかいっ！彼がとても勇敢で良識のある紳士である事は間違いありません。アメリカに亡命した後も、ガソリンスタンドの売店の店員という、母国での生活からは程遠い、屈辱的な仕事をして、一人息子を大学までやる、立派なお父さんなのです。でも人間だから完璧ではない。間違いを犯してしまう時もありますよねって事で。(^_^;)最後は頑張るアミールですが、矢張り彼らしく言葉のみで。かつて彼が考えていた物語の名を持つ、ハッサンの息子ソーラブに、差別意識を剥き出しにする義父に、きっぱりとした口調で自分の意見を述べる。何も恥じる事は無い、他人に訊かれたら、自分が言った通りに答えれば良いと。誰にでも経験があると思います。ふとした瞬間、勇気が持てずに躊躇し、大切なものを失い、後々までも悔やんでしまう事。これは長い長い贖罪の物語です。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Mar 15, 2008

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  「エリザベス：ゴールデン・エイジ」(2007・英/仏)

  http://www.elizabeth-goldenage.jp/"Elizabeth: The Golden Age"監督・・・シェカール・カプール 出演・・・ケイト・ブランシェット エリザベス女王１世 ジェフリー・ラッシュ フランシス・ウォルシンガム クライヴ・オーウェン ウォルター・ローリー リス・エヴァンス ロバート・レストン ジョルディ・モリャ スペイン国王フェリペ２世 アビー・コーニッシュ ベス・スロックモートン サマンサ・モートン スコットランド女王メアリー トム・ホランダー エディ・レッドメイン アダム・ゴドリー ・物語序盤・１６世紀、イングランドはエリザベス１世によって統治されていた。当時、最強を誇っていた国家はスペイン。カトリック教徒であるフェリペ２世は、プロテスタントであるエリザベス１世とは、宗教的にも反目する関係にあった。またイングランド国内でも、国民の半数はカトリックであり、反エリザベス派の謀略が渦巻いていた。更に幽閉状態にある、エリザベス１世とは従姉妹同士に当たる、スコットランド女王メアリ・スチュアートも、不義の子となる妾腹のエリザベスを正当な女王とは認めず、王位継承権は自分にあると主張し、イングランド内のカトリックの同士を集めて、エリザベスに対する謀反を画策していた。欧州全土をカトリックの勢力下に置きたいと望むフェリペ２世は、イングランドを無敵艦隊で攻める好機を窺っており、エリザベス１世は危険な立場に立たされていた。そんな折、新世界から帰還した航海士ウォルター・ローリーが、女王に謁見を求める。彼は数多の海賊行為によって、スペイン船に被害を齎していた。イングランド駐在スペイン大使は、ローリーの敵対行為を非難するが、エリザベスは特に罪を問わなかった。女王として心許せる相手を持たぬエリザベスは、ローリーに惹かれるものを感じるが、全ての好意は打算の上にある事も弁えていた。またエリザベスと同じ名を持つ女王のお気に入りベス・スロックモートンも、ローリーに好意を抱く。 公開前から待っていた筈なのに、気が付けば、上映終了日…。取り敢えず、ノルマを果たす。さて、映画について。もっと精神的にも揺ぎ無い絶対君主のエリザベスの君臨を想像していました。内面の苦悩にスポットを当てていたので、イメージよりも脆い女性像として描かれていましたね。個人的には、屈強な精神の持ち主であるエリザベスの方が好きだったので、この描写は微妙だな。特にメアリ・スチュアートを処刑する下りのエリザベスに強い不満が。そんなに悩み、嘆く必要性あるか？女王と言えど、生身の人間、心の裡に弱い部分はあったと思います。でも君主として立つエリザベスには、強くあってほしかった。きっと私も、イングランド国民の目で観ていたのでしょうね。周囲を威圧するリーダーシップと、神々しいばかりのカリスマ性を求めていたんです。恋愛だの何だのという浮世の戯言など、とっくに超越した存在でいてほしかった。脚本家は敢えて、一人の女性であるエリザベスを強調したかったのでしょうが、私はここまで来たら、全てを一笑して払い除ける位のキャラクターにすべきだったと思うのですが。その方が、観客もスカッとしますよね。威勢良く啖呵を切る、堂々たる女王こそ、観るに値する存在なのに。未だ、しょうもない色事で悩んでるの？と、今更感が漂いました。女王なんだから、気に入った相手、好きなだけベッドに引っ張り込めば良いじゃん。愛なんて名の、クソの役にも立たない庶民的幻影なんぞ要らねー。日頃の激務を癒す、刹那の享楽さえあれば良い。それが頂点に立つ者の感覚ってもんじゃない？なんだか納得いかないエリザベス像に、もやもやが募りました。

  Mar 14, 2008

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  「シスターズ」(2006)

  SISTERShttp://www.sisters-movie.jp/監督・・・ダグラス・バック 出演・・・クロエ・セヴィニー グレース・コリエ スティーヴン・レイ フィリップ・ラカン医師 ルー・ドワイヨン アンジェリーク／アナベル ウィリアム・Ｂ・デイヴィス ガブリエル・ローズ ダラス・ロバーツ ＪＲ・ボーン ・物語序盤・小児病院ズルワン診療所。フィリップ・ラカン医師は助手のアンジェリークと共に、子供達の前で手品を披露していた。ピエロの扮装で潜入したジャーナリストのグレース・コリエは、ラカンに病院で起きた子供達の不審死に関してインタビューを試みるが、強制的に追い払われてしまう。診療所で働き始めた医師ウォレスは、アンジェリークの美貌に惹かれる。　フィリップから逃れようとしているアンジェリークを助けたウォレスは、彼女に家まで送ってほしいと頼まれる。アンジェリークが、かつてフィリップの患者で元妻だった事をウォレスは知るが、二人はその夜、肉体関係を持つ。その様子を部屋に仕掛けられた監視カメラで、フィリップは見ていた。アンジェリークには、同居している双子の姉アナベルが居た。誕生日だとアンジェリークから告げられたウォレスは、街へ出て、双子の姉妹の為にケーキを買いに行く。一方、ラカン医師の情報を掴みたいグレースは、彼の自宅兼オフィスに忍び込み、証拠物件を探していた。机に置かれたパソコン画面には、何処かの部屋で男が女に背中を刺されている映像が映っている。驚いたグレースは警察に電話をするが、その後、丁度正面のビルの窓から、先程襲われていた男が助けを求めてもがいている姿を目撃し、その場所がアンジェリークの自宅である事を知った。また、アンジェリークから助けを求める電話を聞いたフィリップは、家に駆け付け、アナベルに殺害されたウォレスの遺体を急いで隠す。 デ・パルマ監督作品「悪魔のシスター」(1973年)のリメイク作品。しかしオリジナルを未見なので比較できない…。この映画の製作国がアメリカとなっていた事に、驚きと違和感を感じました。アメリカ的な空気ではないんですよね。エンドロールにカナダのマークが出たので、観た時はカナダ映画かと思ったのですが。とにかく、漂う雰囲気が異質で、ハリウッド映画ではない。映画の始まりにも、何処の国の何処の都市という説明のテロップは一切出ません。ただ、アンジェリークとウォレスの会話で、アンジェリークはフランス人で、ＮＹから来たと言うウォレスに、「二人とも異邦人ね。」と話していたので、アメリカでない事だけは判ります。出演者も個性派というか、悪く言うと無名に近い俳優ばかりを起用しています。役名や出演者の名前を見ても、仏系の人が多くて、やはりここはカナダなのではないかと思うのですが。お金の出所がアメリカで、撮影はカナダで行ったのかも。アンジェリーク役のルー・ドワイヨン、気だるい色気を漂わせるエキゾティックな容貌です。ストレートに美人かと言うと、微妙なラインなのですが。下顎が少し出っ張り過ぎ…。でも何だか、コケティッシュで色っぽく、吸い寄せられるような魅力を持った人でした。ジャンルは、ホラー若しくはサイコサスペンス。でも今時の、残酷シーンを過剰に見せる映像ではなくて、何処か懐かしさを感じさせる作りです。全体的に、気持ち悪い話だなぁ、と思わせる、独特の澱んだ空気に包まれた映画でした。過激な表現に食傷してしまった私には、逆にこの映画のオーソドックスな手法が新鮮に感じられて、ほっとリラックスできる気分に。ネタ的には、普段は殆ど先読みしない私にも、普通に謎が見えてしまうという弱点はありました。多分、この映画には観客を驚かせる意図は無いのだと思います。どんよりした全体の雰囲気が伝われば良いという感じかな。はっきり判らない所は、記者のコリエが抱えるトラウマ。断片的な映像が挿入されただけなので、彼女の身に何が起こったのか判別出来ませんでした。後で映画館の外に貼ってあるプレスシートを読んだのですが、詳細は記載されていませんでした。ただ、アンジェリークもコリエも、男性から人間としてではなく物として扱われてきた被害者、一歩退いて広く捉えれば、人間社会の長い歴史に於いて、女性が置かれてきた(現在も変化していない)立場、男に抑圧され支配される存在である事を表したキャラクターであるという事。一見、全く共通項の無いように見える二人の間にあった、男達の横暴による被害者としての共感。そこから、若干強引と思える結末の展開が導き出される訳です。

  Mar 12, 2008

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  「ダンサーの純情」(2005・韓)

  http://www.dancer-j.com/"INNOCENT STEPS"監督・・・パク・ヨンフン 出演・・・ムン・グニョン チャン・チェリン パク・コニョン ナ・ヨンセ ユン・チャン チョン・ヒョンス パク・ウォンサン マ・サンドゥ（ジェームズ・マ） キム・ギス イ・チョルヨン ・物語序盤・才能豊かなダンサーのナ・ヨンセは、ダンス大会前に、パートナーをライバルのチョン・ヒョンスに横取りされた。別のパートナーと大会に出場したヨンセに、ヒョンスは更に、仲間に指示して、彼を転倒させ、わざと脚を負傷させる。やる気を失い自堕落な生活をしていたヨンセの元に、彼の先輩でありダンス教師であるマ・サンドゥが訪れ、チャン・チェンミンという若い中国人ダンサーを新しいパートナーに迎えて、三ヶ月後の大会で再起を賭けろと言う。しかし正規のルートでは迎えられないので、偽装結婚をしなければならないとの事。ヨンセは渋々チェンミンを空港に迎えに行く。だが故郷から蛍の卵を持ち込もうとしていたチェンミンは、何時間も空港で足止めを食う。漸く現れたチェンミンは、服装も洗練されておらず、見るからに世間知らずな童顔の少女だった。自宅に彼女を連れ帰って、指示された通りに婚姻届を出したヨンセに、マ先生からチェンミンとして入国した娘が、ダンス未経験の妹チェンリンだったという連絡が入る。怒ったヨンセはチェンリンを追い出すが、彼女がストリップダンスの店に騙されて連れて行かれた事を知ると、彼女を引き受ける覚悟をした。ヨンセはチェンリンをダンスパートナーと決め、ダンス大会に向けて猛特訓を開始するのだった。 流行遅れも甚だしい、今更ながらの韓流映画特集で観てきました。ムン・グニョン特集だったので、もう一本「マイ・リトル・ブライド」も同時上映されていましたが、これだけで充分です…。何処かのレビューで泣けるとあったので、少しはマシな映画かな、と思って行ったのですが、これで泣けと言われてもなぁ。でも場内のあちこちから、鼻を啜る音が聴こえたので、好きな人は泣けるみたい。もともと韓国の恋愛映画の感覚に、付いて行けない私には、ちょっと厳しかったか。「冬のソナタ」も未見の私が、韓国の恋愛映画を断ずるなとお叱りを受けそうですが、この映画も、「ああ、韓国だなぁ…。」と溜め息が出てしまうものでした。冬ソナにハマれる人は、これも好きだと思う。ベタ過ぎる泥臭～く恥ずかしい展開、リアリティー度外視の、取り敢えず泣きに持って行く純愛モノ、必ず出てくる無意味なお笑い要員、等など、そういう要素にアンテナがビビビと反応する方ならハマれる筈。その他は、ムン・グニョン萌えな方に…。どっちでもない私は、なんともコメントし辛く。中国からスカウトされたチェンミン嬢、実はその妹のダンスなんて全く知らないチェンリンなのですが、アンタ、なんで韓国語ペラペラなの？その時点でツッコミ入れてしまうと、この映画は観られないのですが、どうしても「そりゃ変だよ…」という感覚が。物語の展開も、根本的に可笑しくないか…？と思ってしまうのです。ヨンセは色々な大会で優勝してきた実力派ダンサーなのに、ジェームズ・マ(ぷっ)先生は、ヒョンスにのみ肩入れしてんのか。彼を復帰させる事も、師匠たるマ先生の利益に繋がると思うのだけれど。一応、金を理由にしてましたが。それ以前に、ヒョンスの画策も意味不明っす。ヒョンスは以前、ヨンセの育てたパートナーを横取りしたのですが、結果的に彼女セヨンは、ヨンセ以外の人とでは実力を発揮できないと判り、彼女を捨てたという経緯があります。それなのに、ネタバレだけど、またヨンセにパートナー育てさせるって思考が理解不能…。ダンスど素人だったが、ヨンセとの二人三脚で、三ヶ月という短期間で大会で優勝できる程の実力を身に付けたチェンリン(有り得ねぇ…)を、再びヨンセから強奪して、今度の女は下手に染まってなくて良いと、ほくそ笑むヒョンス。本当に良いのか、それで…。思い切り、ヨンセへの愛で染まってますけど…。狡猾なのか馬鹿なのか、良く判りません、ヒョンスさん。汗。でもルックスは好きだったな、個人的に。韓国では、男性はマッチョ系が好まれますよね。ヒョンス役のユン・チャンも、良いガタイしてんだわぁ。逞しく盛り上がった胸筋がセクシィィ～。ダンサー役なので、殆どの場面で、胸元半開きなので、ナイスな胸筋が見放題です。顔も、個人的には、ヨンセ役のパク・コニョンより好みだったな。チェンリンがヨンセを呼ぶ時の呼称、字幕では"オジサン"と出ていたのですが、韓国語ではどの辺のニュアンスなのかな？日本語のオジサンとは、少し違う感覚みたいなのですが。少なくともヨンセは、"オジサン"と呼ばれる事に何の抵抗も感じていませんでしたから、年寄り臭いという意味合いは無い模様。日本なら必ず、オジサンじゃなく、お兄サンと呼べ！という台詞が入りますよね。年上の男性に対する一般的な呼称なのでしょう。多分。ダンスは皆さん、お上手でした。その辺は流石にプロ根性だなぁと。恐らくソーシャル・ダンスの経験は無かったと思われますが、猛特訓の成果か美しく踊っていました。私も踊りたいな社交ダンス。エヘ。でも芸能人にダンスさせる番組が流行ってから、憧れが汚された感じで、不愉快に思っている私です。兎に角ですね、有り得ないだろっ！というベタベタな展開に共感できる方は泣いて下さい。冷静に観てしまうと、少しツライ時間になりそうです。

  Mar 11, 2008

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  「ブラブラバンバン」(2007)試写

  3/15(土)より全国ロードショー監督・・・草野陽花 原作・・・柏木ハルコ『ブラブラバンバン』（小学館ヤングサンデーコミックス） 出演・・・安良城紅、福本有希、岡田将生、足立理、近野成美、徳永えり、若葉竜也、さとう珠緒、藤村俊二、森本レオ、原日出子、宇崎竜童、他。 ・物語序盤・中学時代同じブラスバンド部に所属する女子生徒に告白し、あっさりフラれた白波瀬歩は、音楽を続ける意欲も失い掛けていた。白波瀬は夜の公園で、独りホルンで「ボレロ」を吹く美しい女性と遭遇し、思わず持っていたトランペットで協奏する。彼女はまるで幻のように天に舞い上がり消えて行った。それが芹生百合子との運命的な出会いだった。やがて、白波瀬は県立根戸ヶ谷高校に進学して、退屈な日常を送り始める。ブラスバンド部に入りたい新入生・八田は、白波瀬を誘うが、彼は全く関心を示さない。その上、部は部員減少の煽りで、今年から廃部が決定していた。白波瀬は放課後の校庭から、音楽室でホルンを吹く芹生を見付けて、音楽室へダッシュ。しかし以前と同じように、トランペットを吹き始めた白波瀬に、芹生はふらふらと近付き、なんと彼の服を脱がせて押し倒してしまう。慌てて逃げ出した白波瀬は、後日彼女から、自分が何をしたのか問われる。芹生は音楽を聴いて気分が高揚すると、何故か発情してしまう特異体質であり、その間の記憶を失っている事が発覚。その為に、大好きな音楽を諦めねばならない状況にある芹生の為、白波瀬は新たに作られたブラスバンド部で活動を始めようと考える。その後、クラスでも女子に人気のある村雨が、別の曲を吹く芹生に合わせてトランペットを吹くと、再び彼女は発情して、彼に抱き付く。その現場を目撃した村雨に片思いの神野さくらは激怒。事情を聞かされた神野は、そんな馬鹿げた話は有り得ないと、事の真偽を確かめる為に、ブラスバンド部へと入部。そして素人が殆どの急ごしらえのブラスバンド部は、地区コンクールに出場する事に。神野の選んだ自由曲は、ストリップ劇場でお馴染の「タブー」だった…。久し振りに、強烈なダメダメ映画に遭遇しました。単館系でのロードショーとは言え、これでＧＯサイン出しますか…。幾ら青年誌掲載の漫画が原作と言っても、お粗末過ぎる内容に唖然。音楽を聴くと気持ちが昂って、性的興奮状態に陥るヒロインという設定は、如何にも青年誌のエロ漫画的有り得ない系ネタ。それはともかく、何が一番腹が立つかと言うと、この原作者も映画製作に携わった監督、脚本家、その他のスタッフの誰も、ブラスバンドについての知識が全然無く、知ろうともしない姿勢です。青春物バカエロ漫画＆その映画化としても、ブラバンをネタにするのなら、最低限度の事は調べて描け＆作れ。原作者、楽器演奏した事無いだろ…。漫画描く前に、何処かの高校のブラバンに取材にすら行ってないだろ…。空想だけで、こんな感じで良っかと決めて、スケベ漫画描きました…、それが真相でしょ…。最初から違和感ありありでしたが、段々それが積み重なるにつれて怒りに変わってきて、「お前等、ブラバン舐めんのも大概にしろよ！」と最後は怒り心頭でした。なんだ、こりゃ。本当にひどい。その上、この無茶苦茶な設定で、シリアスなちょっと良い話に仕上げようとしている所が、怒りの炎に油を注ぎます。上映時間短いくせに、間延びしてテンポ悪いし、描くべき事はすっぽり抜けているくせに、余計なシーンが矢鱈多い。とんでもねー、クソ映画だよー。音楽に携わった事のある人は勿論、経験の無い人も、すぐにリアリティーの欠如を見破ると思います。全てが有り得ない。その上、コメディでもなく、笑う事すら出来ない。救いようが無いね、これは…。主演の安良城紅さんは、本業は歌手です。アメリカ人と日本人とのハーフという事で、ルックスは抜群です。ヴォーカリストとしての実力もある。この映画には無関係だが、英語もペラペラ。しかし致命的な難点があります。実年齢より老けて見えるのです。1986年生まれで21歳なのですが、アメリカの血が混じっているせいか、２０代後半でブラバン部顧問の先生ですと言われても、そのまま納得してしまう老け顔…。この人がセーラー服を着て、女子高生を演じるのだから、無理あり過ぎ。コスプレ・バーの店員でしょ…って外見で、周囲の普通の高校生に見える俳優から、独り浮きまくり。女優として芸の幅を広げる所か、アーティストとしての経歴に汚点を残しただけではなかろうか…。でもこの映画で、私は彼女の存在を知り、シンガーとして興味を抱いたという点に於いては、同じような人が、この映画を契機に現れれば、ブレイクする可能性だってある訳だから、映画はヒドイけど、売名には繋がると割り切るしかないか。映画は終始、違和感の塊でした。ブラスバンド部が部員数減少の為に廃部になったという始まりから、私はえ～？と首を傾げました。ブラバンて、文化系では花型のクラブなんですよ。何か行事と言えば、ブラバンが演奏に駆り出される訳で。特に必死に部員を募らなくても、自然と一定数の新入生は確保できる部であります。もしブラバンが廃部に追い込まれるとしたら、それは学校側の事情ではないかと。金食い虫なのでブラバンは。取り敢えず、楽器は高い。私がブラバン部に在籍していた頃も、学校はなかなか新しい楽器を購入してくれませんでした。だから、学校側が経済的に苦しくて、部に対する補助金を打ち切るみたいな事になれば、存続できないと思う。そんな訳で、人気が無いから廃部になったよ、という理由付けに、それは無いと思うけど…と引っ掛かりました。そこからは、ずーっと最後まで、変な事だらけです。(；一_一)これ、私の楽天史上初、二回に分けてレビュー(クレーム)を書かなければならない映画かも。とても一回では、文句言い足りないわ。って事で、続く。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Mar 8, 2008

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  「Sweet Rain　死神の精度」(2007・日本)　試写

  3/22(土)より、全国ロードショーです。監督・・・筧昌也 原作・・・伊坂幸太郎 『死神の精度』（文藝春秋刊） 主題歌・・・藤木一恵 『Sunny Day』 出演・・・金城武 千葉 小西真奈美 藤木一恵 富司純子 かずえ 光石研 藤田敏之 石田卓也 阿久津伸二 村上淳 青山 奥田恵梨華 竹子 吹越満 大町健太郎 ・物語序盤・とある教会で行われている葬儀に、黒服の男がやってくる。男は椅子に座っている少女の隣に腰掛け、少女から死神でしょう？と訊かれる。人を殺すのが仕事かという問いに、不慮の死を遂げる人間と対面し、その人物が死ぬべき時か判定する審判のようなものだと答える男。男は少女を伴って、嘆き悲しむ両親や親族達を残し、教会から姿を消した…。その死神の次なるターゲットは、27歳のＯＬ藤木一恵。死神は死ぬ運命の人間と行動を共にして、７日後に"実行＝死"か"見送り＝生かす"かを決定するのが役目。その死神・千葉が、現世に現れる時は決まって雨天。常に黒犬を伴っており、こよなく愛するものはミュージック。藤木一恵は電器メーカーの苦情処理係で、地味で陰気な性格故に、同僚からも馬鹿にされ、面倒な仕事を押し付けられる毎日。その上、毎回彼女を指名してくる、しつこい客まで居る。今回も機械的に仕事をこなす筈だった千葉は、誤って素手で一恵の手を掴んでしまう。死神に直接触れられると、生命体は生気が奪われるのである。気絶した一恵はコインランドリーで目覚めて、如何にも怪しげな千葉を訝る。だが、普通の日本語が通じず、会話が噛み合わない相手だったが、悪い男ではなさそうだと判断した一恵は、次第に千葉に心を開いてゆくのだった。 主題歌を歌っている藤木一恵は、映画の中に出てくる役名で、実際には小西真奈美が歌っています♪金城クンは久し振りの日本映画出演ですが、相変わらず棒読みな日本語を披露。笑。彼って、母国語や英語で演じている時も、こんな棒読みなのだろうか？普通に日本語を話せる人だから、演技も出来る筈よね。何故に棒読み…。ルックスは良いけど、謎の人です。ツッコミ所は多々ありますが、ジャンルがファンタジーだから、まあ許容範囲か。ぽわーんとした雰囲気に騙される感じです。でもオープニングから、日本なのに教会で葬式やってるし、参列者は普通そんなに泣かないよ…という程、全員鼻グス状態だし、何かしらの違和感は持つと思います。この冒頭で、この映画の世界観はこういうものだと、自分の心の針を調整しないと、最後まで物語に入り込めずに終わる可能性あり。精度(の曖昧さ)を問われるのは、死神ではなくて、観客の方かも…汗。細かい事は気にしない、感度弱めの広～い心で観てやって下さい。しかし個人的には、決して嫌いではないですよ。続きはいずれの日にか。↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。

  Mar 6, 2008

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  「カリートの道」(1993)

  "CARLITO'S WAY"監督・・・ブライアン・デ・パルマ 原作・・・エドウィン・トレス 出演・・・アル・パチーノ カリート ショーン・ペン クレインフェルド ペネロープ・アン・ミラー ゲイル ジョン・レグイザモ ベニー・ブランコ イングリッド・ロジャース ステフィー ルイス・ガスマン パチャンガ ヴィゴ・モーテンセン エイドリアン・パスダー ジョン・アグスティン・オーティス ジョン・セダ ジェームズ・レブホーン ・物語序盤・かつて麻薬王として君臨していたカリート・ブリガンテは、兄弟同様の弁護士クレインフェルドによって、３０年だった刑期を短縮され刑務所から出所する事が叶った。堅気になって、普通の暮らしをしようと考えているカリート。クレインフェルドから、経営の傾いたクラブを紹介され、カリートはそこを買い取ってオーナーとなった。かつて交際していたゲイルと再会したカリート。彼女は舞台女優を夢見ていたが、現実は厳しく、今やストリップ・ダンサーとして生計を立てる身だった。再び付き合いだしたカリートとゲイル。店の経営も順調で、カリートは将来、南国でレンタカー・ショップを経営する事を夢見ていた。一方、クレインフェルドは弁護を引き受けていたイタリアン・マフィアのボスから、賄賂の金を横領したと難癖を付けられ、脱獄に加担しなければ殺すと脅迫されていた。追い詰められたクレインフェルドは、カリートに泣き付き協力を仰ぐ。長年の親友であり、大きな借りのあるクレインフェルドの頼みを、カリートは受諾する。しかし恐怖の余り錯乱したクレインフェルドは、自分のボートで拾い上げる筈のボスと、同行した息子を殺してしまうのだった。予期せぬ展開に巻き込まれたカリートも窮地に立たされる…。もっと昔の映画だったという印象だったのですが、意外にも９０年代ですか。それにしても、アル・パチーノは暗黒街が似合う人ですね。本当に住んでるんじゃないでしょうか。笑。弁護士のクレインフェルド、有り得ないカーリーヘアで、全然ショーン・ペンの面影が無いのですが。(~_~;)ヴィゴ・モーテンセンも、何処に出ているのだか？基本的に地味な顔立ちだからなぁ、ヴィゴは。アメリカの人種問題について、確り理解していないと、この作品の本質は伝わらないと思います。アメリカ人に向けて作ったアメリカ映画なので、人種の坩堝である街の抱える混沌とした問題については、知識があるという前提で作られています。アメリカ人なら名前を聞いただけで、こいつは何系の奴と判るのですが、日本人にはこの辺の事情に詳しくないので難しい。だから単にストーリーを観るだけで終わってしまいがちです。カリートはコルシカ系プエルトリコ人、所謂ヒスパニック系、そしてクレインフェルドはユダヤ人。台詞の中には、ぽつぽつと出てきますが、立場や背景は違えど、共にアメリカでは嫌悪され居場所のない人間です。

  Mar 4, 2008

• チケット入手、しかし時間が…

  「明日への遺言」のチケット、ゲッツです。気付いたら落ちてたが正解なんですけど。促販用の一枚1000円のじゃなくて、1300円のちゃんとした前売券の方。シネコンで加算されるポイントが違うので、買うなら正規の前売券の方がお得なのだ。毎月一回行ってる場末～な映画館のチケットもゲッツ。しかし何たる事か、２件落ちてしまった。落ちてしまったからには買うしかないので、今月は４枚あるぜ。(；一_一)なんか韓流映画特集を開催しているので、観たい映画と合わせて、２回２本立て鑑賞してきましょう。映画じゃないけど、写真展のチケットも貰ってんだよねー。友達誘って行く予定ですが、日程も食事する店も決めてない…。全部、お任せされてしまっているので、情報に疎い私は困っております。観たい映画は終わってしまいそうだし、スケジュールはあれこれ詰まっているしで、どうするべと頭抱えてまーす。結局、日曜日に行こうと思っていたレイトショーも、疲労の為に断念してしまったし。今日は無理っ、と速攻で帰りの電車に乗ってたもんな…。うう、早く観に行かねば…。

  Mar 3, 2008

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  「ミスター・ロンリー」(2007・英/仏)

  http://misterlonely.gyao.jp/"MISTER LONELY"監督、脚本・・・ハーモニー・コリン 出演・・・ディエゴ・ルナ マイケル サマンサ・モートン マリリン ドニ・ラヴァン チャップリン ヴェルナー・ヘルツォーク 神父 レオス・カラックス レナード ジェームズ・フォックス ジョセフ・モーガン アニタ・パレンバーグ ・物語序盤・パリの一角で、マイケル・ジャクソンのモノマネ・パフォーマンスで生計を立てる若者"マイケル"。彼は幼い頃から、周囲に埋もれる凡庸な自分のままで生きるより、著名な誰かの真似をして生きる方が、幾分かマシな生き方だと思いながら成長した。そして大人になると、モノマネ芸人となり、仕事以外の時でも、ずっとマイケル・ジャクソンとして生きる生活を送るように。フランス語が話せないマイケルには友人も殆ど居ない。毎日、路上でマイケル・ジャクソンのパフォーマンスを披露して、小銭を稼ぐ。数少ない友人から、老人ホームでの仕事を回してもらった彼は、そこにやってきた、マリリン・モンローに出会う。彼女もまた、モノマネ・パフォーマーだった。アメリカ人だという彼女と、久し振りに人間らしい会話をしたマイケルは、マリリンとして生きる彼女に恋心を抱く。だが彼女は既婚者で、娘の居る女性。彼女の夫も同じ職業で、チャップリンのモノマネをしており、七歳の娘はシャーリー・テンプルをやっていた。マリリンは、スコットランドの古城で、他のモノマネ芸人達と共同生活をしており、そこで仲間達と地上最大のショーを開くのだと語って聞かせる。マリリンに惹かれるマイケルは、彼女に誘われるまま、スコットランドにある彼女等の楽園に行き、仲間の一員に加わった。 ハーモニー・コリン８年振りの復帰作、と言われても、コリン監督を知りませんでした、私…。１９歳の時に「ＫＩＤＳ／キッズ」の脚本を書いたそうです。その後、「ガンモ」で監督デビュー、２作目「ジュリアン」を撮った後、忽然と一線から姿を消した、"恐るべき子供"と異名を取った人物らしい。チラシやオフィシャルサイトから受けた印象とは、かなり異なった作風の映画でした。少なくともキャッチ・コピーの「かりものの人生、ほんものの幸せ」なんて、生易しいハートフル・ムービーでは決してない。ラヴ・ストーリーなどでも断じてない。間違っても、幸せな気分になれる映画ではありませんが、同時に泣ける映画でもないです。痛いかと言うと、微妙なラインです。何故なら、人生がこういうものだという事を、私は既に解っているから。全然解っていない人には、全く理解できないでしょうし、少し判り掛けている人には、若干痛いかもしれない、そういう作品です。私はと言えば、うん、そうだね、と頷くしかなかった。そう、初めから全部、判ってた。だから、それで良いんだよ、と。そしてマイケルと一緒に、私も刹那の楽園を後にして、パリのアパルトマンに帰りました。それでも続く自分の人生を生きる為に…。自分のレビューに他者のコメントを載せるのは、意に染まないのですが、折込み式の小さなチラシにあった文章が、この映画を端的に表現していると感じたので転載します。「いまどき勇気があるのは鈍感な人だけで、繊細な人にはもちろん未来はない。」(三田格/ﾗｲﾀｰ)詳細は後程。

  Feb 29, 2008

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